第50話 未開の森
シオン達は更に三日ほど歩いて森の入口にたどり着いた。
「ここだね」
シオンは木々が生い茂った森をみて言った。
「入口みたいな道も無さそうだね」
リィナが周りを見渡しながら言った。
「そこ少しですが草とかが倒れていませんか?」
レィナが指さした方を見ると、何かが通った跡のようなものがあった。
「うん!少し道みたいになっているよ!」
フィーが飛んで確認をしてきた。
「でも何かいっぱいいるよ」
フィーは森の中にいる生物の気配を感じたのか、何かいることを教えてくれた。
シオン達もマナを薄く拡げて探索をしようとしたが
「・・・二人とも何か感じた?」
「ううん」
「何も感じないというより、広がらないっといいますか」
シオンもやっているのだが何かに阻まれているのか、薄いマナではうまく拡げて感知が出来ないのだ。
「何かがこの森にあるのかもしれないね」
「でも何でフィーちゃんはわかるの?」
リィナが言う通り、疑問に思うのは最もなことだ。
「妖精族ってマナは多少扱えるけど、精霊魔法を起こせてもわずかな効果しかできない。だけど、人間にはない能力があるだろ?」
「人の感情や心がわかるってやつですか?」
レィナはすぐに気付いたようだ。
「そう。それは精霊魔法ではなく、妖精族に備わっているものだから別物なんだ」
「じゃあ、フィーちゃんは生物の感情や心を感じ取っているってこと?」
「そういうことになるね」
妖精に備わっている一つの能力みたいなものだ。実際どれくらいの距離まで把握できるかは分からないが、マナが通りずらいこの未開の森のような場所ではありがたい能力だ。
「フィー、何か近くに嫌な感じがしたら教えてもらってもいい?」
「うん!わかった!」
フィーは元気よく頷いた。
「一応武器はすぐに構えられるようにしようか」
「わかった」「はい」
シオンは二人にも森に入る前に注意を促した。
「じゃあ行こうか」
シオン達はこうして深い森へと足を踏み入れるのだった。
--------------------------
シオン達は太陽の光さえも届かない深い森を真っ直ぐに歩き続けた。
「このまま行っても大丈夫なのかな?」
「私がちょっと見てくるね」
フィーが木々の上の方へ飛んで行った。恐らく空から見てみるつもりだろう。
フィーはすぐに帰ってきた。
「向こうの方に木がない場所があるよ」
フィーは指を指して教えてくれる。
「木がないってことは森が切れているってことか・・・。とりあえずそこを目指すか」
何もないよりは目印が合った方が動きやすい。
「じゃ、案内するね」
フィーは三人の前を飛び案内を始めた。
しばらく森を歩いていると、視界が開けた場所に出た。
広場というより何かがあったと思わせる場所だ。瓦礫のような物が点々とある。
「何か建物でもあったのでしょうか?」
「これって遺跡の一部だったりしないのかな?」
「遺跡の一部だとは思うけど」
三人はその瓦礫の側に行き、観察を始めた。
「っ!シオン!何か来る!」
突如フィーが空を見上げながら声をあげた。
シオン達も上を見ると、2mはある大きな鳥の魔物が襲って来ようとしていた。
魔物はリィナに向かって急降下で襲って来る。
「わわ!」
リィナは何とか避けるが
スパ!
外套と服の一部が切れてしまった。
「え!避けたのになんで!」
リィナはなぜ切られてのか分からなかった。
「っ!避けて!!」
レィナがリィナに向かって叫ぶ。
鳥の魔物は避けられた後、リィナの方にに向きを変え翼を大きく羽ばたかせ風を起こした。
シオンは身体強化でリィナの側に行き、抱えて離脱する。
すると、その風がリィナのいた場所を草を切り刻みながら通過していった。
「大丈夫?」
「あ、ありがと」
「あれは風の精霊魔法に近いことが出来るみたいだね」
シオンは今は上空からまだ狙いをつけている魔物を見て言った。
魔物は翼を大きく動かして先程と同じ攻撃をしようと構える。
『やめなさい!』
女性の声で、シオン達が知らない言葉が響いた。
すると、その鳥の魔物は何処かへ飛んでいってしまった。
声がした方向に目を向けると肌の露出が少なめの踊り子のような衣装を身に付けた女性が立っていた。少し幼く見える顔だが、少し神秘的な雰囲気を出していた。
「あなた達は・・・」
今度はシオン達が知っている言葉で話しかけてきた。
「・・・なるほど、賊ではないようですね」
女性はシオン達の姿を見て賊ではないと判断したようだ。
「えっと、あなたは?」
シオンが代表して聞く。
「私はこの森に住む舞い巫女のユンク。あなた達は?」
どうやら原住民の巫女さんのようだ。
「僕はシオンといいます。こちらはリィナ、こちらがレィナです。一応冒険者です」
シオンが後ろに来ていた二人も紹介する。
「シオン、リィナ、レィナね。あなた達の目的は何?事次第では森を出ていってもらうけど」
どうやら森を侵すのではないかと考えているようだ。
「僕達はこの森に瘴気や瘴魔と呼ばれるものがこの森付近で姿を見たという情報を元に訪れました」
「・・・・・・・」
ユンクはシオン、リィナ、レィナと順番に見た後、シオンの肩の上に座っているフィーを見た。
「え?」
フィーは目が合うと不思議そうな顔をする。普通の人間には見ることが出来ないフィーを。
「妖精が一緒に行動しているということは、あなた達は良い心の持ち主なのですね」
ユンクはそう解釈した。
「ユンクさんも妖精が見えるのですか?」
レィナが質問する。
「ユンクでいいわ。見た感じ同い年ぐらいだし。その代り私もシオン、リィナ、レィナと呼ばせてもらうけどね」
ユンクはそう言って微笑んだ。
「妖精さんに名前はあるの?」
「私はフィーだよ」
フィーはユンクが悪い人ではないと判断し近くに行き挨拶をした。
「フィーね。私は霊獣と共に生きる巫女でもあるから、霊体やそれに近い存在なら見ることができるわ」
「霊獣?」
リィナが首を傾げて聞く。
「さっきあなた達が戦っていたのも霊獣の一体よ。彼は空から集落への侵入者を撃退するように言っておいたの」
「だからユンクの一言で攻撃をやめたのですね」
どうやらさっき戦っていた鳥の魔物と思っていたのは、ユンクの従えている霊獣だったようだ。
「そういうこと。こんなところで話すのもあれだし、集落に来る?あなた達なら歓迎するわよ」
「それは嬉しい誘いですが、いいのでしょうか?」
「舞の巫女の私が言えば集落のみんなは納得するわ。それに冒険者の4人組も一昨日から里で手伝ってもらっているしね」
「冒険者ですか?」
「ええ、最近集落でいろいろあってね。その冒険者達は遺跡に用があるって言っていたけど、今は私達の問題の解決に力を貸してくれているわ。もしかしたら、さっきシオンが言っていた瘴気や瘴魔に関連しているかも」
どうやらいきなり何か情報が入るかもしれないと考えて、シオンはリィナとレィナを見る。
「いいんじゃない」
「原住民であるユンクからの情報はありだと思います」
二人も集落に向かうことに異論はないようだ。
「ユンク、集落までの案内よろしくお願いします」
シオンはユンクにそう言うのだった。




