第40話 水上歩行
シオン達は市場で昼食を取り、町外れの砂浜に来ていた。
「この辺りなら人に見られずにすむかな」
シオンが辺りを見渡す。そこは町の砂浜からは岩場を挟んでいるので、こちらに覗き込まない限りは見えない位置となっていた。
「えっと・・・シオン君、まだ水着に着替えてないけど」
「あぁ、ごめん。練習する場所があるか先に確認したかったんだ」
先に着替えても練習する場所がなかったら、嫌だったので先に探したのだ。
「更衣室で着替えて来る?」
シオンは二人の水着が入った袋を異空間袋から取り出して、渡しながら聞いた。
「う~ん・・・そこの岩陰で着替えちゃおうかな」
「そうですね。更衣室まで結構離れていますし」
「わかった。僕はそっちの岩陰で着替えて来るから」
シオンは二人と違う岩陰を指差して言った。
「シオン君、覗かないでよ」
「覗かないって」
「でも昨晩、私達のお風呂覗いたじゃないですか」
レィナが顔を赤くしながら言ってきた。
昨晩は二人が風呂場で騒いでいたので、それを注意しようとシオンがその場に行ったのだ。
「それは悪かった。でもそれは二人が騒いでいたから注意しようとしただけたからね」
シオンが抗議する。
「それはわかっていますから許しているんですよ」
「そうだね。そうじゃなかったらシオン君のこと軽蔑しているだろうし」
二人はシオンがそんなことをしないと信じているから、許せるのであった。
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「リィナとレィナはシオンに裸見られるのは恥ずかしいの?」
着替えている最中にフィーが聞いてきた。
「それは恥ずかしいよ」
「好きといっても、異性においそれと裸は見せないですからね」
二人は脱いだ服を畳ながら答えた。
「私は平気だよ?」
確かに以前に皆でお風呂に入った時も、フィーは堂々と裸のままシオンの目の前を飛んでいた。
「フィーちゃんは男の人の前で裸になるのって恥ずかしくないの?」
「妖精だとその辺りの感覚が違うのでしょうか?」
二人は水着を着ながらフィーに聞いた。
「うーんとね、シオン以外だったら恥ずかしいかも」
フィーは特に考えずにそんなことを言う。
それはシオンが好きだと宣言しているようなものだった。
「・・・フィーちゃんがライバル」
「でも、シオン君はフィーちゃんを異性と見ていない気が」
二人は小声でそんなことを話し合っていた。
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「・・・相変わらず遅いな」
なにやら話し声は聞こえるのだが、内容までは聞き取る事が出来ず、シオンはただ海を見て待つだけなのであった。
「お待たせ」「お待たせしました」
暫くしてリィナはビキニ、レィナはワンピースとこの間着ていた水着を着替えてやって来た。
「最初はどうするの?」
「準備運動とストレッチから入ろうか」
練習で怪我をしてはいけないので、しっかりとやる。
「とりあえず、腰の深さぐらいまで行こうか」
三人は腰の高さ辺りまで移動する。
「えっと、水の上に乗るのですよね?」
レィナは水上歩行の練習なのに腰までの深さだと乗れないと考えたようだ。
「うん、膝ぐらいの深さだと転んだ時に足を怪我しちゃうかもしれないからね」
シオンが腰の高さまで海に入る理由を話した。
「それだと波がない?」
次はリィナが聞いてきた。
「一応、水上での戦闘を出来るようになりたいから、波でバランスが崩れるようじゃ戦闘なんて出来ないよ?」
「「・・・・・・・」」
シオンがそう言うと二人は固まってしまった。
「そこまで今日やるの!」
「そんな事出来るんですか!」
どうやら二人は戦闘のことは頭になかったようだ。
「う、うん。僕も水上歩行はやったことないけど、イメージは浮かんでいるからそれを教えるよ」
シオンはそんなことを言っているが出来る自信はあった。
「最初にやって見せるから」
そう言ってシオンは集中した。
思い浮かべるのは水を自分の足の下に集め、その水で自分の体を持ち上げるイメージをする。
すると、シオンがイメージした通りにシオンの足下に海水が密度を増して、押し上げ始めた。
シオンはバランスを取りながらだが海水面に立つことが出来た。
「おお、立ってるね」「立っていますね」
二人から驚きの声が上がった。
だが、シオンが歩こうとすると海水が足にくっついて来てしまった。
「ちょっと改善するか・・・」
シオンは足下ではなく、足下の水面に水が集まるようにイメージすると
「歩いてるよ!」
「水もくっついて来ていませんね」
どうやら成功のようだ。
それからシオンは走ったりジャンプしたりしたが、イメージ通りに海面に水の足場が出来ていた。
シオンは二人のところに戻り、水の中に入った。
「今のイメージを教えるね」
シオンは今成功したイメージを二人に教え始めた。
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二人はなんとかイメージをする事はできたので、実際にやってみることにした。
「わ、わ!」
バシャン!
リィナは上がる途中でバランスが取れなくなり、落水してしまった。
「っと、と・・・きゃ!」
バシャン!
レィナは水面まで上がることはできたが、バランスを崩してしまった。
「結構難しい・・・」
「そうですね。水面まで上がっても歩ける気がしません」
二人は思いの外、バランスが取れずに苦戦しているようだ。
シオンが出来たのはバランス力が二人より優れているため出来たようだ。
「それなら水をもっと集めるイメージをしたり、後は風も使ってみたらどうかな?僕もさっき走る時とかに補助として使ったから」
シオンは風で少し体を押したりして細かなバランスを取っていたのだ。
「よっ!ほっ!とと」
リィナは風を使ってなんとかバランスを取ろうとしているようだ。
「もう少し水を集めてみようか」
シオンはリィナの足場となっている水の密度が少なく感じたのだ。
「う、うん」
リィナはバランス取りながら調整していく。
「お、お?出来た!」
突如リィナが声を上げる。そして、ゆっくりだが歩きだした。
「なんとか・・・歩ける・・・かな」
リィナはふらふらしながらだが、水面を歩いていた。
「とう!」
「うわぁ!」
バシャン!
リィナはシオンの側にに歩いて来ると、シオンを目掛けて飛び付いてきた。
「ぷはっ!急になにするの!」
「ごめん、何か抱きつきたくなった」
すごい理由だった。
「次は私がやってみますね」
レィナはいちゃつく二人をほったらかしにして、練習を始めた。
「もっと水を・・・」
さっきシオンが言ったことを意識してやってみた。
元々、水の精霊魔法が得意だったレィナ。意識して集めると足場ががっしりとしたものになったのがレィナ自身で自覚できた。
「これなら」
そう呟くと同時に水面まで浮くイメージをする。
すると安定したまま水面に立っているレィナがいた。
「おお!すごい安定感だね」
シオンは見ただけでさっきより安定しているのが分かった。
「それで歩ける?」
シオンが聞くと、ゆっくりレィナが水面を歩きだした。
「できた・・・できました!」
レィナが凄く嬉しそうな顔をして叫んだ。
そしてそのまま走ったりしたがイメージが固着したのか沈んだりもせずに地面を走っているように、水面を走ることが出来た。
「私だって!」
リィナも負けじと水面に立ち、走ろうとする。だが
「ぅわ!っと」
足を踏み込んだ水面が歪んでバランスを崩しそうになる。
「リィナ、もっと足場になる水を集めるようにイメージして」
シオンが水面に立ち、リィナのダメなところを指摘すると安定し始めた。
「で、できた!」
リィナも水上歩行は出来るようになったようだ。
「わーーい!!」
少し離れた所からフィーの声が響いた。
「シオンくーん!見てくださーい!」
シオンとリィナがレィナとフィーの声がした方向を見る、なんと水上を滑るようにものすごい速度で滑るように移動していた。
「なにあれ!すごい!」
リィナはすごく驚いていたが
「なるほど・・・こう・・・かな」
シオンはレィナの真似をしようとする。
水の足場だけを移動させると恐らく上に立っているだけでは、しがみつかない限り落とされる。なら水の足場に足を固定するように水で包めばいい。それから足場を移動させる。
シオンはそう考えてイメージすると、レィナのように滑り出した。
「これは面白いね」
レィナの発想に驚くシオンであった。
「でしょ?なんかできたら面白いかなと思っていたらできました」
レィナはいつの間にかシオンの左腕に抱き付いていた。
「これ楽しいね!」
フィーも水上を滑るのは楽しいようだった。
「ねぇ!それどうやるの!?」
リィナはイメージができずにこっちに水面を走ってきた。
「えっとこれは・・・」
シオンも隠そうとはせずにリィナに教えるのであった。
「これで空も飛べないかな?」
リィナが滑って遊んでいるとそんなことを聞いてきた。
「僕もさっき試したけど水面から離れると浮かぼうとする力が弱くなるのか落下スピードは少し遅くなる程度で、飛べなかったんだ」
シオンは滑りながらジャンプして飛ぼうとしたが、滑らかにジャンプしてただ着水するだけで終わった。
恐らく飛行するには何かイメージが足りないのだろう。
「風とかでやったらできませんか?」
レィナも意見を言ってきた。
「風を水みたいに集めてもうまく乗れないんだよ。水みたいに形があるものじゃないから難しいだけなのかもしれないけど」
「そうなんですか・・・」
「そうなの?ちょっとやってみる!」
シオンの言ったことが本当かリィナが風で今やったことをやろうとした。
「あ!それやらない方が!」
シオンは止めたが間に合わずに、リィナは水面からジャンプして風で作った台のようなものに乗った。
ボゥン!
「きゃーーー!」
ばしゃーん!
風で作った台は圧力が掛かったと同時に爆発して霧散してリィナを数mふっ飛ばした。
「リィナ!大丈夫!」
「大丈夫ですか?」
シオンとレィナが急いで水上滑走でリィナが飛ばされた方へ行った。
「う、うん。なんとか・・・水の上で助かったかも」
リィナは水の上に立ちながら答える。
リィナはビキニの水着を着ていたはずなのに、下の水着は着ていたが上の水着はなく、大きな胸が丸見え、ピンク色の部分まで丸見えの状態で立ち上がった。
「っ!!」
「っシオン君!!」
シオンはリィナから目を逸らし、レィナもシオンにリィナを見ないように名前を叫んだ。
「ん?どうしたの?」
状況がわかっていないリィナは首を傾げる。
「リィナ!水着の上は!?」
「水着?」
レィナの言葉を聞いてリィナは自分の胸を見た。
「え?きゃーーー!!」
リィナは水面から一気に海の中へ潜った。
「え?え?私の水着は!?」
どうやらさっきの風の爆発で飛ばされたらしい。
「向こうだよ!」
フィーが指さした先にリィナの水着の上らしき布が浮いていた。
「僕が取ってくるよ」
こんな状態のリィナが近くにいると気まずいので、シオンが取ってくることにした。
シオンが水着を取ってきて差し出すと、涙目で顔を真っ赤にしたリィナが片手で胸を隠しながら受け取った。
「あ、ありがとう」
「シオン君はあっち向いててくださいね」
水の中なのでレィナが着るのを手伝うようだった。
「うぅ・・・お騒がせしました」
リィナはまだ顔が赤いままだ。
「まぁ、事故だからしょうがないよ」
「まったく、シオン君が注意してくれていたのに」
レィナは少し呆れていた。
「ぅ、面目ない」
「それとレィナも直した方がいいよ」
「ん?何がです?」
「いや、さっきから言いづらかったから言えなかったんだけど・・・水上滑走で遊んでいる途中から片方が出そうだよ?」
シオンはレィナの胸をあまり見ないようにして指さした。
レィナは胸元が大きく開いたワンピースの水着だ。恐らく勢いが強い水上滑走で曲がったのだろう。片方の胸がもうすぐ先っぽが視えそうなくらいまで水着がずれていた。
「っ!!!」
瞬間レィナは顔を真っ赤にした。
「それは早く言ってください!!」
レィナは水着を直しながら、シオンに怒るのであった。
そしてそのまま、三人は陽が暮れるまで水上滑走で遊んでいるのであった。




