第38話 方針
シオン達はクラークと共にクラークのギルド長室にいた。
「で、話というのは何だい?」
クラークはさっそく要件を聞いてくれるようだ。
「クラークさんは瘴気や瘴魔という言葉はご存知でしょうか?」
シオンは隠すことなく聞く。
「瘴気というのは聞いたことがある。瘴魔は初めて聞く言葉だね」
「瘴気とは伝承によると魔人といわれる者が発すると伝えられています。瘴魔とは最近だとこの町から東に海岸沿いに言った村の魔物の集団行動や、王都近辺で起こった猪騒動、翼竜で瘴化と呼ばれる現象で瘴魔となったことを確認しています」
「ん?海岸沿いのあの村も関わってくるのかい?」
「ええ、魔物は魔力の暴走です。ですから通常は理性が無く集団で行動したりすることはないですが、瘴魔となった生物は魔物のような狂暴性でありながら暴走はしないのです。集団で行動したと報告があるので王都の方では瘴魔ではないかと話は上がっています」
シオンは知っている情報を説明する。話をするにつれクラークの顔も険しくなっていく。
「なるほど、この話の流れだとグリフォンも瘴魔とやらになったのかい?」
クラークは聡明なようだ。
「はい、町中で瘴魔になっていたらもっと被害が出ていたでしょうからよかったですけど」
「逆に町中、もっと近場だったなら君達以外の冒険者の助けもあったと思うが」
クラークは三人に押し付けたことを少しは気にしているようだ。
「いえ、逆に被害が拡大するだけです。瘴魔は普通の攻撃や魔法はすべて通用しませんから」
「なんだと!?」
シオンの言葉にクラークは目を見開き驚いた。いつもの口調も少し崩れている。
「瘴魔は瘴気を纏った魔物のような生物です。瘴気は魔法は無効化し、物理攻撃も詳しくは判りませんが何かに弾かれると聞きました」
「待て、なぜ君達はその瘴魔を討伐できた?」
「それは」
「「私たちの力です」」
シオンの言葉を引き継ぎ、リィナとレィナが前に出てきた。
「君達の・・・ちから?」
「「はい」」
二人は強く頷いた。
「クラークさんは精霊魔法はご存知ですか?」
「あ、ああ。フィルジア君が使っているのを見たことがあるから知っているよ。確か、エルフにしか使えない魔法だとか」
「厳密には人間族には扱えない魔法ですけどね。その精霊魔法は僕達も使用できるんです」
「そ、そうなのか?」
「はい、少し長くなりますが精霊魔法について説明させていただきますね」
シオンはそう言ってクラークにマナのことや精霊魔法のこと、そして自分たちのことを話した。
「そうか、君達のマナが特殊なマナで、瘴気に対抗するために必要なマナってことか」
「はい、そう言うことになります」
クラークはすぐに理解を示し、シオン達の強さの秘密も知ることが出来た。
「それでまだ聞きたいことがあるのだろう?」
クラークは今の話はこれからの話のために必要な知識だと認識していた。
「はい。今回グリフォンを発見した場所は東の例の村の所だったのですが」
「偶然にしてはひどい偶然ですね」
「ですね。で僕達がその村に到着した時にすでに先客がいたのです」
「先客ということはそのグリフォンと戦っていた、ということかな?」
「はい。そして僕達がその場に着いた時に見たのは、空中でグリフォンの体に腕を突き刺した黒いローブを着た男だったのです」
「空中で・・・腕を・・・」
「そしてその男は地上に降り立ち、グリフォンも少し離れた場所で苦しみ始めたのです」
「その男が何かしたのですか?」
「はい。男はベッフェルと名乗り、自分は魔人だ。と言いました。傍らに女性のアミラという魔人も一緒でした」
「よく魔人と相対して無事で」
「二人のおかげで無事でした」
シオンはそう言ってリィナとレィナを見た。
二人もシオンが顔を向けてきたので微笑み返した。
「その魔人は瘴玉というものをグリフォンの体に埋め込んだと言っていました」
「その瘴玉というのを埋め込まれたグリフォンが瘴化、瘴魔になったと」
「そういうことです」
「そのベッフェルとやらの魔人は?」
「リィナとレィナが攻撃をしてダメージは通ったみたいなのですが、その後の攻撃を障壁で防御した際の煙幕で逃走されてしまいました」
シオンが逃走されてしまったことを悔やんでいると
「君達がまず無事だということで良しとしましょう。瘴魔や魔人達には君達の存在が不可欠なのは間違いないのですから」
「ありがとうございます」
シオンは何か言われるかと思っていたがそんなことはなかった。
「その女性の魔人、アミラの方なのですが、ある情報からわかったことが有りまして」
「・・・なんでしょうか?」
「グリフォンを含め、密輸で違法に取引がされていた生物が消える事件。その消えた生物を見張って管理していたのが、そのアミラという魔人だったのがわかりました」
「ちょっと待ってください!それは港に魔人がいたということでは!!」
驚き大声を上げながらクラークは聞いてきた。
「その可能性は非常に高い。だからギリアムに密輸の件をもっと聞くなり調べるなりしないとまずいことになるかもしれません」
シオンがそのことを伝えるとクラークは深呼吸をして、心を落ち着かせていた。
「取り乱してすみません。わかりました、ギルドの最大限の力をもってギリアムとその周辺を調べましょう」
「よろしくお願いします」
「何かあったらすぐに君達の宿屋に連絡を入れるとしよう」
「僕達は倉庫の方を調べてみます。魔人が関わっているなら普通の人では発見できなかったことがわかるかもしれませんので」
「ああ、わかった。そちらもよろしく頼むよ。それと魔人については絶対他言無用だよ。町が混乱するからね」
「はい、わかりました」
こうしてシオン達は今回のことについての報告が終わり、報奨金を受け取って宿屋に戻った。
「シオン様、リィナ様、レィナ様、お帰りなさいませ」
宿屋に入るとセネルが迎えてくれた。
「ただいま、セネルさん」
「ただいま」「ただいま戻りました」
出迎えの挨拶を済ますと
「けっこうお戻りが早かったのですね」
一週間分のお金を入れて出て行ったのに二日目の夜に帰ってきたので、意外だったらしい。
「ええ、思ったより早く片が付きましたので」
「では、払い戻されますか?」
どうやら宿屋の先払いした代金は戻すことも可能らしい。
「いえ、このまま宿屋を利用させていただきたいので、払い戻しはしないで大丈夫です」
「それはありがとうございます」
セネルも嬉しそうだ。
「では、部屋に戻らせてもらいますね」
セネルから鍵を受け取り部屋に戻っていった。
「はい、疲れを取ってくださいね」
後ろからそんな声が聞こえた。
部屋に入ると三人でソファーに腰を落とした。
「歩き疲れたねー」
「そうですね~」
リィナとレィナもお疲れモードのようだ。シオンも口には出していないが結構疲れて、ぐったりしていると
「三人ともだらしないよ」
フィーが三人を見ながら言ってきた。
「フィーちゃんはシオン君の肩に座っているだけだったじゃん」
リィナが抗議した。
「私も少しは飛んだよ!」
確かに何回か近くの花の方へ行ったり来たりはしていた。
「お風呂はどうする?二人とも先に入っちゃう?」
シオンは外へ出て昨日は体を拭くこともしていないから、先に風呂を進めた。
「ん~・・・そうだね。汗とか流したいし」
「お言葉に甘えさせてもらいますね」
二人はお風呂道具を持って風呂場の方へ歩いて行った。
「フィーも一緒に入ってくれば?」
「私はシオンと入りたい!」
シオンは日中歩いている時、フィーが会話に入ってきた途端にリィナとレィナの機嫌が損ねたことが頭をよぎった。
「フィー、今日はリィナとレィナと入って来てもらってもいい?」
シオンは嫌な予感がしたため、フィーにお願いをする。
「ん~・・・わかった!いってくるね!」
フィーはそう言ってリィナとレィナの後を追って飛んで行った。
「・・・まさか・・・嫉妬なのかな」
シオンはフィーは小動物のような扱いなので気にしていなかったが、二人にとっては嫉妬する対象であるのではと考え始めた。
「少しは注意しておくか」
シオンは一人でそう決めたのだった。
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「気持ちいねー」
「そうですねー」
二人は浴槽の中でくつろいでいた。
「それにしてもなんか大事になり始めたね」
「ですね。瘴魔を作り出す瘴玉に魔人ですからね」
二人は体を湯船に委ねながら考えていた。
目の前をフィーが泳いで遊んでいた。そんなフィーを見て
「今は疲れを取ることに集中しましょう」
「そうだね。フィーちゃんがちょっと羨ましいかも」
二人はフィーを見てそう言うのであった。
「そういえばさ、当たり前で気にしていなかったけど、私達って双子じゃん」
「まぁ、そうですけど」
「性格は違うけど・・・身体もほとんど一緒だけど違う所ってあるのかな?」
「まぁ・・・瞳の色は違いますが」
リィナは橙色をした瞳、レィナは淡い青の瞳をしている。
「それだけなのかなって思ってさ」
「ん~どうなのでしょうか?」
二人は湯船から上がりお互いの体を見始めた。
それは二人にとっては鏡を見ているような感覚でおかしくなってきた。
「見た感じだと胸もお尻とかも一緒だもんね」
「そうですね。でも・・・」
レィナは片手を自分の胸に、もう片方をリィナの胸に触る。
「ん!な、なに!?」
いきなり胸を触られて驚くリィナ。
「いえ、形は一緒でも感触は違うのかと思ったのですが」
「どうだった?」
「同じようにしか感じませんでした」
「そう・・・」
どうやら柔らかさも同じぐらいなようだ。
「でも私だけ触られるのはずるいから私も触る!」
「え!ちょっ!まっ!待って!」
レィナの静止を聞かずにリィナはレィナの胸を揉み始めた。
「くすぐったいですって!」
レィナも負けじとリィナの体を触り始める。
「あ!そこはダメだって!」
二人でじゃれ合っていると
「あ!私も混ぜてー!」
二人で楽しそうにしているのを見てフィーまでもが混ざってきた。
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「・・・なに騒いでいるんだろう」
シオンはリビングでくつろいでいたが、二人の声は筒抜けだった。
「一応他の客もいるし注意しておくか」
シオンは迷惑になりそうだったので風呂場に向かった。
「ねぇ!三人とも!少し静かにしたら!」
シオンは外から声を掛けるが
「あははは!」
「きゃー!」
「わーい!」
三人?はまだくすぐり合って気付いていなそうだった。
「・・・仕方がないか」
シオンは意を決して風呂場に入った。
「ねぇ、声がうるさいと他人の迷惑になるから静かにし・・・」
シオンがそう言って湯船への方を覗くと三人?は裸でくすぐりあっていた。
シオンはせいぜい話に花を咲かせているだけで湯船に体が浸かっていると考えていたが実際は湯船から出て騒いでいた。
「「「え?」」」
リィナとレィナとフィーはシオンに気付いた。
「わー!シオンも一緒に入ろ!」
フィーはいつもの通り飛んできてシオンと一緒にお風呂に入ろうと言ってきた。
リィナとレィナは生まれたままの姿でくすぐり合ってすごい体勢になったまま固まっていた。
胸は丸見えだし、角度的にシオンの方にはいろいろ見えていそうな感じだった。
「・・・失礼しました」
シオンは二人がそうゆう関係だと今は片付けて何も見なかったことに徹しようとした。そう思い込まないといろいろ危ない。
シオンが立ち去った後、二人は自分達の体勢を見た。
リィナはレィナを押し倒すような形で四つん這いになりお尻をシオンがいた方向に向けていた。
レィナはリィナに押し倒されて仰向けでシオンがいた方向に足を開いていた。
首から上が一気に赤く染まり
「「いやぁーーー!!」」
少し遅れてから二人の悲鳴が響くのであった。
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その後は少し気まずい空気ではあったが、疲れの方が上まっていたのですぐに眠りに落ちた。
眠る前に言われたのは出来るだけ忘れてほしいというお願いと、リィナとレィナはシオンが思っているような関係ではないという主張だった。




