第37話 帰路で
シオン達は廃村の海辺でグリフォンと戦い、陽が落ちたこともありその場所で野宿した。
翌朝、起きると手分けしてテントをしまい、異空間袋から大きめな袋を取り出し、グリフォンの亡骸から素材として使える部分を剝ぎ取った。
大きなものは異空間袋に入らなかったため、担いで帰ることになったが、身体強化が使えるのでそこまで問題にはならなかった。
問題は昨日に会ったベッフェルとアミラという魔人と呼ばれる存在ついてだった。三人と一匹?はそのことを話しながらアルマポールトへ向けて歩いていた。
「魔人ってシオン君が里で族長と話していた時のだよね?」
「そういえばそんなこと言ってましたね。瘴気は魔人が発するとか」
「族長の家にあった伝記みたいのにそう書かれていただけだけどね」
リィナとレィナはうる覚えながらも、内容は覚えていたようだ。
「それにしても魔人が二人いたことに驚いたけど、もっといるのかな?」
リィナが恐ろしいことを言ってきた。
「でも、ありえない話ではない・・・か」
「そうですね。それに瘴玉も問題です」
レィナが言った瘴玉はベッフェルの口振りから言うと、生物を瘴化。すなわち瘴魔に変質させる代物のようだった。
「そうだね。これからはあのベッフェルという男を追うことになりそうだ」
シオンはあのベッフェルという男が黒幕の一部と考えていた。
「あのシオン!ちょっといいですか?」
フィーがシオンの前に飛んできた。
「昨日伝えるの忘れたけど、あみらだっけ?私が捕まっていたときと同じ感じがしたの」
フィーが突然そんなことを言ってきた。
「ちょっと待って!と言うことは・・・」
「密輸で運ばれた生物は魔人が奪っていた、ということになりますね」
「そうだよね!」
「結構嫌な方向に話が傾き始めたね」
今分かったことの整理をすると、フィーが捕まっていた時にいた女性がアミラだということ。そして、アミラは魔人ベッフェルに従う魔人で、ベッフェルはアミラが逃がしたグリフォンを瘴魔にして手下にしようとしていた。
フィーの話だと他にもいろんな生物や魔物が捕えられていたということ。ベッフェルはそれらを瘴魔としようとしていると考えるのが妥当ということになる。
「フィー、グリフォンの他にいた生物って何がいたか分かる?」
「ん~~と・・・大きな蛇みたいのとか・・・後、グリフォンではないけど、同じくらい大きな獣みたいのがいた」
フィーは頑張って捻り出そうとしたがそれぐらいしか出てこなかった。
「うぅ~・・・ごめんなさい」
「いや、謝る必要はないよ。ありがとう、フィー」
「そうですよ。私達なんか見ていないのだから分からなかったんです。少しでも情報があるのはすごく助かります」
シオンとレィナが本心を伝えると
「・・・ほんと?」
目に涙を浮かべて聞いてきた。
「うん」「はい」
二人でそう言って頷くと
「・・・えへへ」
嬉しそうに笑ってシオンの肩に座るのだった。
「アルマポールトに帰って報告したら、ギリアムだっけ?貿易の会頭さんとかに何か聞けないかな?」
「本人が知っているかはともかく、再度確認はした方がいいかもね」
リィナの言葉にシオンは同意した。
「会ったとしても教えてくれない気がしますが」
「でも一応会ってみよう。何か変わるかもしれないし」
レィナは気が進まないみたいだ。
「私も会うのは嫌だけどさ、シオン君みたいに直に見られるわけじゃないから我慢しよ?」
「・・・そうですね」
「何のこと?」
シオンは途中から話が見えなくなった。
「あのエロオヤジ、うるさく喚いていた時も、私とレィナの胸やお尻をちらちら見てきたの」
「あの視線はすぐに気が付きますからね。シオン君以外のああいった視線は不愉快です」
「なるほどね」
どうやらギリアムはエロオヤジだってことが分かった。
「ん?さっき直にって、そんな僕見ていないよね?」
「シオン君、私達と一緒に何回お風呂入っているの?」
「シオン君、私たちの下着姿とか何回見ましたか?」
「それは・・・」
シオンは押し黙ることしか出来なくなった。
「大丈夫だよ。シオン君」
「シオン君に見られても平気・・・というわけではないですが、嫌ではないですから」
二人は優しくそう言ってくれた。
「そ、そう?」
シオンはその言葉を聞いてほっとした。
「私もシオンになら平気だよ~!」
なぜかそこにフィーまで入ってきた。
「ふふふ、良かったね、シオン君」
「そうですね。寛容な心を持った女性ばかりで」
フィーが入ってきた途端、空気が変わり始めた。
「なんか二人とも怒ってる?」
「「怒っていません!!」」
「は、はい」
シオンは返事をすることしか出来なかった。
「リィナとレィナはどうしたの?」
シオンの肩に座っているフィーがシオンに聞いてきた。
「・・・よくわからない」
「ふーん・・・そうなんだ」
シオンには女心がいまいち理解できなかったのであった。
「やっと見えて来たね」
リィナが遠くを眺めて言ってきた。
「そうですね。もっと時間がかかるかと思いましたが、二日間で終わってしまいましたし」
「まぁ、しばらくはこの町にいる予定だし、宿屋も後五日分はお金払っちゃったから少し魔人絡みのこと調べてゆっくりしようか」
「うん」「そうですね」
そういって夕日に染まる道をアルマポールトを目指して歩いて行った。
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「グリフォンはやられてしまいましたか」
ベッフェルが町の倉庫がある高台からシオン達が来るのを見ていた。
「やっぱり早めに片付けたほうがいいのではないですか?」
隣にアミラの姿もあった。
「そうなんですけどね」
ベッフェルは早く片付けたほうがいいとわかっているのだが、いなくなってしまったら自分のしている研究が進みが遅くなってしまうのではないかと考えていた。普通の人間にあのグリフォンをぶつけたらグリフォンが勝つだろう。物理も魔法も瘴気を浄化しなければ通らないのだから。
自分が開発したそういった生物と戦い倒してしまう相手、それならもっと強くしなければと意欲が沸いてくるのだ。
「まぁ、今回は見逃すとしましょう。これから起こるかもしれないこともありますから」
「はぁ」
ベッフェルがこの町に撒いた種はもう一つある。
それがどうなるのかが楽しみなのだ。
「それが起こるまでこの町付近に潜伏しますよ」
「はい、わかりました」
そして、二人の姿は忽然と消えるのであった。
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「おお!やってくれたのか!」
クラークは大きな声で叫んだ。
すでに陽は沈んでいたが報告するためにシオン達はアルマポールトの冒険者の拠点に訪れていた。
「はい、事情により討伐することになってしまいましたが」
シオンはそう言ってグリフォンの素材をその場に出した。
「おい、あれ見ろよ」
「まさか、グリフォンか?」
「でも、ただのガキにしか見えんが」
「俺この前、港でグリフォンと戦って追い払ったところ見たぜ」
「実力はあるってことか」
「このあたりの冒険者ではなさそうだが」
「何でも旅をしているとか」
酒場や掲示板の所にいる冒険者たちがシオン達を遠目で見始めていた。
「この視線には慣れませんね」
シオンが苦笑いしながらクラークに言った。
「まぁ、君達のような若くして実力者っていったら、このあたりだとカイ君達ぐらいだからね」
「カイさんもこっちに来るのですね」
「ああ、彼らはこの中央大陸中心に活動している冒険者だからね。君達もカイ君達を知っているんだね」
シオン達は注目を浴びながらも会話をしている。
「ええ、僕達の試験の相手がカイさん達でしたから」
「え!それは本当かい!?」
その言葉に周りで見ていた人たちも緊張が走った。
「ええ。まぁ、僕はカイさんと引き分けるのがやっとでしたが」
「私たちは一応フィルジアさんとルシルさんに勝ったけどね」
「そうですね。その後も続いていたシオン君とカイさんの戦いは割り込む余地がなかったですけど」
三人が説明するとクラークも周りの人も唖然としていた。
暫くすると周りがさっきよりすごい勢いで騒ぎ始めた。
「まじか!」
「あの女の子二人も強いってことだよな!」
「俺フィルジアさんにぼろ負けしたのに!」
「ルシルさんも魔法の詠唱速度が速くて近づくこともできないぞ!」
「それに、カイさんと引き分けるってなんだ!」
「あの人は竜でさえ単独で倒してしまう人だぞ!」
ここでもカイさん達はすごい人気があり、有名人のようだった。
シオン達はその騒動に驚きながらもなんとかその場で耐えていた。
「クラークさん」
「あ、ああ、なんだい?」
クラークは名前を呼ばれて戻ってきたようだ。
「さっきの事情についてできれば人がいないところで話したいのですが」
シオンがそう言うと
「その顔は何かありそうだね。わかった、僕のギルド長室に行こうか」
シオン達はクラークに付いて行き、ギルド長室に行くのであった。
シオン達がいなくなった後も酒場ではシオン達の話題で盛り上がっているのであった。




