第36話 瘴魔グリフォン
シオン達はアルマポールトでの戦いの時のように加減する必要がないので、遠慮なくグリフォンと戦っていた。
「シオン君!」
リィナがシオンの名前を呼び注意喚起をする。
シオンはグリフォンの爪の攻撃を剣でうまく逸らして、マナを込めて斬り付ける。だが
キン!!
グリフォンが纏う風の障壁に阻まれてしまう。しかし、シオンはその弾かれた勢いを利用してグリフォンから距離を取った。
「いっけーーー!」
リィナが声を上げて短剣に纏わせた炎をグリフォンの後ろから近付き振り下ろす。
しかし、グリフォンは尻尾を振り回して迎撃しようとする。
「きゃっ!」
まさか尻尾で攻撃されると思っていなかったリィナは弾き返されてしまう。
リィナはその勢いのまま壊れた家屋の方へ飛ばされてしまった。
「リィナ!!」
シオンはリィナの名前を叫ぶ。
「私が!」
レィナがグリフォンがリィナの方へ低空飛行で向かおうとするのを水の壁で阻み、その間にリィナの方へ駆けて行く。
突然現れた水の壁にグリフォンは水の壁の前で急停止をした。
「そこ!!」
シオンはグリフォンの後ろ飛び掛かり、リィナをふっ飛ばした尻尾を切り落とす。
『キュオーーー!!』
グリフォンはリィナを諦め、後ろから迫るシオンに向き合った。
そして、シオンはリィナのことをレィナに任せ、グリフォンの注意を引きつけるように戦うのであった。
「リィナ!無事!?」
レィナは壊れた家屋に入り込んだ。
「ううぅ・・・なんとか」
リィナは障壁がぎりぎり間に合ったらしく大きな怪我はしていない様だった。
「とりあえず、急いで治癒魔法かけるから」
レィナはリィナの近くに行き、治癒魔法で小さな傷を治し始めた。
「わかった。ありがと」
「リィナ!大丈夫!」
フィーもレィナの首の後ろから出てきた。フィーは目に涙を浮かべていた。
「心配かけてごめんね」
フィーに安心するように指で頭を撫でた。
「さぁ!お返ししなきゃね!」
レィナの治癒が終わり、リィナが気合いを入れる。
「リィナ、戦闘終わったら服を直しますからね」
レィナに言われ、リィナは服を見ると
「ああ~・・・お気に入りの服なのに」
いつも旅装束として着ている動きやすく作られている簡易ドレスのスカートや袖の部分が少し破けていた。
「ちゃんと直してね」
「直しますよ、シオン君が。とりあえず戻りますよ!」
「そうだね。シオン君一人で頑張っているんだもん」
「フィーちゃんはここで隠れていてもらっていいですか?」
レィナはフィーにここに隠れるように言った。
「・・・わかった!ここで応援する!」
レィナも動いて戦うため、フィーを連れて行くのは危険と判断したことだった。
「応援、よろしくね」
「よろしくお願いします」
「うん!」
二人に言われフィーは力強く頷いた。
「っく!」
シオンはグリフォンの風の障壁を破る威力の魔法は使わずに時間稼ぎのため撹乱するように動いていた。
(とりあえず、リィナの治療が終わるまでは時間稼がないと!)
シオンはグリフォンの攻撃を基本回避、回避が難しい黒い風の攻撃には最低限の魔法で迎撃していた。
(そろそろ二人のマナが薄くなってきているな)
シオンはリィナとレィナのマナに染まったマナが薄くなってきているのを感じていた。
グリフォンが黒い風を操り、大きな黒い竜巻を起こしてきた。
シオンは咄嗟に距離を取り、竜巻を見上げる。
グリフォンは竜巻の中にいるようで、竜巻の中にうっすらと影が見える。
「・・・どうしようか」
シオンはどうやって対処しようか考えていると
「っと」
竜巻の中から黒い風の砲弾が飛んできた。
「竜巻の要塞ってところか」
シオンがそう呟くと
「「シオン君!」」
リィナとレィナの声が聞こえてきた。
「お待たせ!」「お待たせしました」
シオンの近くにやって来た。
「で、シオン君」
「あれは何ですか?」
黒い竜巻を見上げてシオンに聞いた。
「あの中にグリフォンがいる」
「やっぱりか~」
リィナは想像していた通りだったので少しめんどくさそうな顔をしていた。
「シオン君、上手く海の方へ誘導できますか?」
竜巻はシオンの方向に徐々に近付いて来ていた。
「やってみるよ」
シオンはリィナとレィナがいない方向へ走り、竜巻に向かって風や火の精霊魔法を打ち込みながら海の方へさらに走って行く。
「私達はシオン君より先に海へ行きますよ!」
「う、うん!」
リィナはレィナに言われたまま、海へ一緒に走って行く。
シオンはグリフォンの攻撃も避けつつ海にたどり着いた。
海の方を見るとリィナとレィナが膝ぐらいまで海水に浸けて、なにやら集中しているようだった。
「リィナ!レィナ!」
シオンは声を上げ、二人に注意を促した。
「シオン君!そのままこっちへ!」
レィナが叫んだ。
「リィナ、先程話した通りにやりますよ」
「うん、わかってる。にしてもよく思い付いたね」
「今は集中しますよ!」
「はいはい」
二人はそのまま集中をし続けた。
シオンは言われた通り、二人の側にやって来た。
「二人とも!」
「シオン君は下がっててください」
「シオン君、こっちに来て」
レィナを残し、リィナと一緒に離れた位置に行く。
そして、遂に竜巻は海に入って来ていた。
竜巻は海水を巻き込みながらこちらに迫って来ている。
「いきます!!」
レィナが叫ぶと、竜巻に巻き込まれた海水が凍り始めたのだ。
竜巻の中に砕かれた氷の礫が飛び交い、竜巻の中にいるグリフォンにダメージを与えていく。
そして、海水をどんどん巻き込み、どんどん凍って行く。最後には竜巻の中にグリフォンがいる、氷のオブジェになっていった。
「レィナ、早くこっちに!」
リィナがレィナに叫ぶ。
レィナは急いでこっちに走って来た。膝ぐらいまで海水があるので走りづらそうだ。
氷のオブジェとなった竜巻にヒビが入り始める。
「っ!いくよ!!」
氷が壊れる前にリィナはマナを増幅させる。
ドッギャアァァァーーァン!!!
突如、氷の竜巻のオブジェが大爆発を起こした。
海水にリィナのマナを溶け込ませていたので、一気に海水が沸騰するぐらいまで温度を上げたのだ。
結果、一気に空気が膨張して爆発を起こしたのだ。
「きゃーー!!」
レィナは爆発に近い場所にまだいたため、爆発には巻き込まれなかったが、爆風に背中を押されて飛ばされてきた。
「よっと!」
シオンは上手く飛んできた先に行き、レィナを抱き止めた。
「大丈夫?」
「あ、ありがとう・・・ございます」
レィナはシオンに思いっきり抱き締められたため顔が真っ赤になり顔をシオンの胸に埋めていた。
「二人とも!!」
リィナの声で二人ははっとした。リィナは少し不機嫌そうだった。
「グリフォンは!?」
シオンが爆発のあった方を見ると傷だらけのグリフォンが黒い瘴気をちらつかせながら倒れていた。
そして、瘴気が完全に消えた時、グリフォンは完全に動かなくなった。
「ふぅ~・・・」
「何とか勝てましたね」
シオン達は海から上がり砂浜に腰を下ろした。
「最後のよく思いついたね」
シオンはレィナが思いついた作戦に驚いていた。
「ふふ、この前の練習の印象が記憶に強く残っていたようです」
と、レィナは微笑みながら言った。
「みんなーーー!!だいじょーぶーー!!」
遠くからフィーが飛んできた。瘴魔の禍々しい気配が消えて飛んできたのだろう。
「大丈夫だよ。フィー」
シオンの顔に抱き付いてきたフィーをなだめるように言った。
「だって!竜巻が!あんな大きな竜巻が!!」
どうやら壊れた家屋の中から竜巻を見ていたようだ。
「フィーちゃん、それでも勝ちましたから大丈夫ですよ」
「そうだね。フィーちゃんも大丈夫だった?」
離れていても竜巻の付近では巻き上げた物が落下してくる可能性もある。現にこの周囲には瓦礫やら、いろんなものが散らかっている。
「私は大丈夫!あの後もちゃんと隠れてたから」
フィーも酷に怪我はないようだ。
「それならよかった」
「とりあえず今日はここで野宿にしようか」
もうすでに薄暗くなってきている。早めにテントとかを出して設営しなければならない。
「わかった」「わかりました」
そして皆でテントの設営を開始した。
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テントが張り終わり、最初は火を起こしご飯を作ろうとしたのだが
「ねぇ、シオン君。これ直せる?」
リィナが来ている服の破れている所を見せてきた。大きく切れてしまっている場所はリィナの素肌も見えていた。
「いろいろ破けちゃってる所があるのか・・・。うん、たぶん大丈夫」
「よかった!ありがとう。後で他の服に着替えたら渡すね」
シオンはとりあえずその服のままではかわいそうだと思い、持っていた服を異空間袋から取り出しリィナに渡して、テントの中で着替えてくるように促した。
「シオン君、あれも直せるのですか?」
レィナがあんなに切れた服も直せるのか疑問に思って聞いてきた。
「一応ね、精霊魔法を使えば直せるよ」
リィナやレィナ、シオンもそうだが、着ている服は魔法が掛けられている。その魔法の中に衝撃緩和などの防御以外にも、汚れや傷が付かないようにするのも入っている。
シオンが利用しようとしているものは後者の方だ。三人の服にはちょっとした解れぐらいなら、修復してくれる魔法も入っているのだ。シオンはその魔法を精霊魔法で模倣して破れとかを修復することが出来る。
「私も覚えてみたいですね」
「なら今度時間ある時に教えてあげようか?」
「はい!お願いします」
それから、レィナが精霊魔法で明かりを灯しながら、シオンが夕食を作るのであった。
リィナは着替えてテント内でフィーと談笑していた。




