第35話 魔人遭遇
シオン達は花の妖精に聞いた村の側にまでやって来ていた。
「シオン君、あの村ですよね?」
レィナが遠くに見える村を見ながら言う。
「そうだと思うけど・・・・」
シオンは曖昧に答える。
「なんかボロボロじゃない?」
リィナがそんなことを言う。
そう、遠くに見える村は人が住むにしてはボロボロなのだ。
「でも、誰かいる感じがするよ!」
フィーがそんなことを言ってきた。
「フィーちゃん、分かるの?」
「うん!なんとなくだけど」
どうやらフィーは人の心や感情だけではなく、そういったことも分かるようだ。
「それなら、とりあえず行ってみようか。もうすぐ陽が暮れてくるし」
人がいるならこの辺りにグリフォンがいないか聞いてみるのもいいかもしれない。
そう考えてシオン達は村を目指すのだった。
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「この先の洞穴を根城としているようなんですが」
アミラはベッフェルを連れてグリフォンが根城にしているだろう洞穴に案内した。
「なるほど、村の保存庫のような場所ですか」
洞穴は村のすぐ脇にあり、明らかに人工的に作られた穴だったのだ。
「・・・確かに中になにかいるようですね」
ベッフェルは中を凝視しているとそんなことを呟いた。
「今回はこの瘴玉をグリフォンに埋めてみようと思います。アミラ、貴方は捕えるのではなく、足止めしてください」
「わ、わかりました!」
アミラは返事をして詠唱を始めた。
そして、穴倉の中に向かって黒い風の砲弾を撃ち込んだ。
「まだ貴方は詠唱しているのですか?」
「は、はい。魔法名は言わなくなりましたが、詠唱しないとどうも安定しなくてですね」
アミラは言い訳をするように答えた。
「貴方が魔法使いだったことを考えれば納得できますが、早く詠唱しないで瘴霊魔法使えるようなりなさい」
「は、はい!」
ベッフェルが言った瘴霊魔法とは精霊魔法はマナを操るのに対し、瘴気を操って事象を起こす魔法のことだ。精霊魔法同様に詠唱をしないで事象を起こすことが出来るが、精霊魔法とは違うところがある。
瘴癘魔法で起こした魔法にはすべてにおいて瘴気と同じ作用があること。通常の魔法障壁は瘴気の特性である魔法無効化で貫通する。迎撃しようとしても同じように通常の魔法では霧散してしまうという特性がある。
『キュオァーーーー!!』
洞穴からグリフォンの叫び声が聞こえた。
「来ましたね。足止めお願いしますよ」
「はい!」
ベッフェルとアミラはグリフォンと戦い始めるのだった。
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『キュオァーーーー!!』
シオン達が村の中に足を踏み入れた時にグリフォンの声が聞こえてきた。
「「「!!」」」
シオン達ははっとして声がした方向を見た。
「行ってみよう!」
「「はい!!」」「うん!」
シオンの言葉にリィナ、レィナ、フィーが返事をし、声がした方向に皆で走り出すのだった。
ドン!!
シオン達は声のした方に近づいて行くと戦闘音らしき音が聞こえてきた。
「ねぇ!シオン君!」
「これって誰かが!」
「戦っているね」
その認識は同じ様だったようだ。
「嫌な感じが・・・」
フィーだけは何かを感じ取りレィナの後ろに隠れてしまった。
「フィーちゃん?」
レィナが自分の後ろに隠れるフィーに声を掛ける。
「あれ!」
リィナが声を上げ、指差した先には空中に飛んでいるグリフォンが黒い風のようなものに捉えられて、黒いローブの男に胴体を貫かれている姿だった。
「おや?貴方達は」
黒いローブの男、ベッフェルがシオン達の存在に気が付いた。
ベッフェルは瘴玉をグリフォンの体内に入れ終わると、腕を引き抜き地に降りた。
グリフォンは苦しみながら、大地になんとか不時着した。
「お前は何をやったんだ!」
シオンはグリフォンの苦しみ方がおかしいことに気付きベッフェルに向かって叫んだ。
「ベッフェル様」
いつの間にかアミラが殺意をシオン達に向けながらベッフェルの隣に姿を現し、小声でベッフェルに話しかけてきた。
「アミラ、この子供たちが私が言っていた子供たちです。今の貴方だと少々危険な相手ですから今は引きなさい」
「・・・わかりました」
ベッフェルにそう言われ、シオン達に殺意を向けることを緩めた。
「初めまして。私はベッフェルといいます。貴方達には私の部下にする予定だった翼竜がお世話になりましたね」
「「「!!!」」」
その言葉を聞いたシオン達は驚いた。
「あれはお前がやったのか!」
シオンはベッフェルに向かい叫んだ。
「そうですよ。今はこのグリフォンに部下になるよう説得している最中でしてね」
シオンとベッフェルが話している間にも、グリフォンの容態がおかしくなってきている。
「「シオン君!!」」
リィナとレィナはシオンの両頬にキスをする。すると以前のように二人のマナにシオンのマナが染まったのがわかった。三人共顔が赤く染まっていた。
「ありがとう」
シオンは武器を構えながらお礼を言った。リィナとレィナも戦闘態勢を取る。フィーはレィナの首の後ろに隠れているようだ。
『キュオァアーーーーーーーーーーーーーー!!!』
グリフォンが今までとは比べ物にならないほどの叫びを上げた。
その途端
「・・・え?」
「体が大きくなって・・・」
「・・・まさか!瘴魔!!」
グリフォンの体が1.5倍ほど大きくなったのだ。そして、黒い瘴気を纏い始めた。
「ふむ、今回作った瘴玉は効き目が早くていいですね」
ベッフェルがそう呟く。
「しょうぎょく?しょうぎょくとはなんだ!?」
シオンはその言葉の意味を知っとかなければならないと思い叫んだ。
「教えるのは筋違いですが・・・まぁ、簡単に言うと瘴化させる瘴気の玉ですね。瘴化というのは貴方達が先程言った呼称の瘴魔になることです」
ベッフェルが説明している間にもグリフォンが纏う瘴気も大きくなっていた。
「これぐらいならそれなりに強くなっていそうですね」
ベッフェルがそう言ってアミラと共にグリフォンに近付こうとした。
「待て!!お前たちはいったい何者なんだ!!」
シオンは離れるベッフェルに聞いた。
「貴方達人間から魔人と呼ばれる存在ですよ」
シオンの予想していた通りの答えが返ってきた。
「なら、あんたを倒せば!」
「終わるってことですね!」
リィナとレィナは魔人と聞きマナをものすごい凝縮し始めていた。
リィナとレィナがベッフェルに向かい精霊魔法を解き放った。その時の二人の片目は輝いていた。
リィナは巨大な炎球、レィナは巨大な氷塊。
本来ならば、火と水でマナ同士の干渉を起こし消滅するのだが二人は息を合わせることで、ありえない事象を起こした。
「何!?」
ベッフェルは咄嗟に瘴気で障壁を強く張る。
そこへ氷塊が青白い炎を纏いながらベッフェルとアミラの場所に突っ込んでいった。
ドガァーーーーーーーン!!!
大きな音を立ててベッフェル達のいた場所は青白い炎と白い霧に包まれる。
全てが晴れた場所にはベッフェルが片腕に大きな傷を負って立っていた。
他にも服は焼けこげたり、凍っていたりしている。後ろにいたアミラはほとんど傷を受けていないようだ。
「これは驚きました。貴方達のような子供が複合魔法を、しかも対属性で使って来るとは・・・。アミラ」
「は、はい!」
ベッフェルがアミラに指示を出すと同時に、ベッフェルが瘴気の大きな球を作り出し、リィナとレィナに向けて撃ってきた。
二人は大きな魔法を使った後で、あの威力を相殺できるほどの障壁を張れそうにない。瞳の輝きも失っている。
二人は少しでも和らげようと半端なまま障壁を張ろうとするが
「まかせて!」
シオンが二人の前に立ち、障壁を展開した。
シオンは事前に二人のマナに染まっていたこともあり、瘴気の球を防ぐことが出来た。
「「ありがとう」」
二人がお礼を言い、ベッフェルが立っていた場所を見るとすでに姿は無かった。
「二人のおかげでもあるけど・・・。向こうには逃げられたみたいだね」
シオンがベッフェルがいた場所を見てそう呟いた。
「「ごめんなさい」」
二人は同時に謝ってきた。
「シオンも大丈夫?」
フィーがレィナの首の後ろの辺りから飛んできてシオンを心配した。
「大丈夫だよ。それより今はあっちだね」
シオンが視線を向けた先には瘴魔と化したグリフォンが立っていた。
「あわわわ」
フィーは慌ててまたレィナの首の後ろの辺りに隠れてしまった。
「今度、フィーの隠れるとか守れたりする何か作った方がよさそうだね」
レィナはフィーが隠れる度に少しくすぐったそうにしているのだ。
「そうしてもらえると助かります」
そして、シオン達はグリフォンの方に向き構える。
「どうやら瘴化とやらが終わっちゃったみたいだね」
グリフォンがシオン達に敵意を向けているのはすぐにわかった。
「二人とも、まだ戦える?」
「もちろん!」「もちろんです!」
そう言って二人はまた両頬にキスをしてくる。何度味わってもこのキスの感触には慣れそうにないとシオンは思った。二人も頬を赤くしているので同じことを考えているのだろう。
シオンはまたマナが染まったのを自覚して、シオンの方も瘴魔と戦う準備ができた。
「さっきの行けそう?」
シオンが言うさっきのとは、ベッフェルで使った魔法である。
「さっきのは勢いというか・・・」
「今は厳しいかもしれません」
「わかった。今できる最大限で行こう!」
そしてシオン達は瘴魔となったグリフォンと戦うのであった。
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「ふぅ、少々危なかったですね」
ベッフェルとアミラはアミラの幻術を使い、姿を消して上空にいた。
「大丈夫ですか!ベッフェル様!」
アミラは庇って傷を受けてくれたを心配そうに詰め寄ってくる。
「大丈夫ですよ。・・・ん?」
ベッフェルは地上にいるシオンの所にいる妖精に目が留まった。
「あれは・・・」
ベッフェルが妖精を見て何かを思いついた。
「あの妖精は・・・。・・・を使えば・・・」
「ベッフェル様?」
なにかぶつぶつ言いだしたベッフェルを心配してアミラが声を掛ける。
「ん?ああ大丈夫です。とりあえず今は退散しましょうか」
「あのグリフォンはどうするのですか?」
「あの子供たちにやられなければ、恐らくアルマポールトを襲うでしょう。回収はその時にでもしますよ。あの男の様子も気になりますしね」
「あの男?」
「こっちの話です。さぁ、行きますよ」
二人はアルマポールトの方へ飛んでいくのだった。




