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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第二章 港に蠢く影(アルマポールト編)
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第31話 妖精フィー

 野太い声でやって来た偉そうな男が騒ぎに対して何事かと文句を言ってきていた。


「なに、荷物の中のある生物が逃げ出して町に被害が出るところを、この子供達に助けられた。ただそれだけのこと。ギリアムよ」

 そう言ったのは冒険者の集団の中にいた、他の冒険者より年齢が上だと分かる男性だった。

「そなたもいたのか!クラーク!なぜ貴様がここにいる!」

 ギリアムと呼ばれた偉そうな男は、冒険者の中にいた男性クラークと知り合いのようだ。



「すまんな、坊主達」

 近くにいた冒険者が小声で謝ってきた。

「え~と、これはどうゆう状況なのでしょうか?」

 シオンが小声で冒険者の男に聞く。

「冒険者のあの方はクラークといって、この町のギルド長さ。で、あの偉そうなおっさんはギリアムといってこの貿易関連を取り締まっている会頭だよ」

「なるほど・・・」

「「ぎりあむ?」」

 リィナとレィナは何かが引っかかったらしい声を上げた。



 クラークとギリアムは言い合っていた。

「なぜと言われても、ここの船乗りから化け物が出たから対処してくれと、直接ギルドの方に来たので、出向いてきただけですが」

 クラークがそう言うと

「なに?化け物だと?」

 ギリアムが怪訝そうな顔でこちらを睨んできた。


「その化け物をそこの子供が倒したとでも言うのか」

「いえ、対処はして頂いたみたいですが、逃げられてしまったようです。ですがおかげさまで町や人に被害は出ません」

 クラークはさっきのシオンの説明を信じてくれたようで、そのまま伝えているようだ。


「ふん!逃げられてはまた狙われるではないか!」

「それについてはこの後、ギルドにていろいろ検討はしますよ」

「当然だ!!早くあのグリフォン(・・・・・)をどうにかしろ!」

 ギリアムはそう言って何処かへ行ってしまった。



「え?」

 ギリアムが歩いて行った後にレィナが小さく声を上げた。

 それに気付いたシオンとレィナが何かあったのか聞こうとすると


「ふぅ、貴方達もすみませんね。こんな出来事に巻き込んでしまって」

 クラークはシオン達に謝ってきた。

「いえ、それと一応僕達も同業者ですのでお気になさらないださい」

「え、ということは最近の連絡にあった王都アルマブルクで成人前の試験に受かった三人というのは貴方方のことですか?」

 どうやら何かの連絡でシオン達三人の試験合格して冒険者登録したというのは知られているようだった。


「はい、恐らくそうだと思います。僕はシオン先日16歳になりました」

「同じく、リィナだよ」

「私もシオン君と同じ16歳になったばかりですが、レィナと申します」

 三人は自己紹介をする。


「こちらこそよろしくね。でさっきギリアムが名前を言っていたと思うが、私はクラークという。この町、アルマポールトのギルド長をしているものだ。先ほどのグリフォンのことも含め協力をしていただけると助かるのだが、どうだろうか?」

 クラークは丁寧な物言いでシオン達におねがいをしてきた。


「僕達で良ければ力になりますよ」

「それはよかった。さっきのグリフォンについては荷物に含まれていないか確認した後に、討伐か捕獲かを検討することになる。なので明日の夜か明後日の午前中ぐらいにギルドまで来てもらうと助かる」

 クラークは結構慎重に仕事を運ぶタイプのようだ。

「わかりました。では、時間を見計らって義理度に顔をお出しします」

「よろしく頼みますよ」

 そう言ってクラークは冒険者を引き連れてギルドの方へ帰って行った。



「それで、レィナ何かあったの?」

 クラークが行ったことを確認してからシオンはレィナに聞いた。

「私といいますか、妖精さんが何か感じ取ったみたいで」

 そう言うとレィナの首の後ろ辺りから出てきた。

「ここだと人の目もあるかもしれませんし、宿屋に戻りませんか?」

 レィナは妖精を見ながら言う。

「そうだね。妖精は普通の人間には見えないけど、注意に越したことはないか」

「え?私も付いて行っていいの?」

 妖精はここでお別れするものだと考えていたらしい。


「大丈夫だよ。それに女の人ってのも気になるから話を聞かせてくれると助かるのだけれど」

 シオンがそう言うと、妖精は目をキラキラさせて

「うん!わかった!シオンに付いてく!」

 そう言って今度はシオンの肩に乗り、シオンの顔に横から抱き付くのであった。

こうやって話してみると、シオンが知っている妖精より幼く感じた。


「「・・・・・・」」

 そんなシオンと妖精の姿を見たリィナとレィナは面白くなさそうな顔をしていた。



「あ!そうだ!私の名前ね!フィーっていうの」

「フィーだね。わかった。しばらくの間よろしくね、フィー」

「うん!」

 妖精の女の子、フィーはシオンにくっつきながらすごく嬉しそうにしていた。



「まさか、妖精がライバルになるなんて」

「でもあのフィーちゃんは妖精ですから、シオン君もそういう対象には見ないのでは」

「でも、フィーちゃん可愛いもん」

「確かに小っちゃくて可愛いですが」

「私たちも負けてらんないね」

「え?わぁ!ちょっ!リィナ!」

 リィナはレィナの腕を取り、少し先を歩くシオンに向かって走り出した。

 そして二人はいつもの定位置であるシオンの両腕にぶら下がるように抱き付くのであった。



--------------------------



 その日は宿屋に戻り、部屋で先ほどの話の続きをすることになった。


「フィー、さっきレィナに何か言ったみたいだけど、何か感じたの?」

「うん。あのギリアムって人、悪い人だよ。ぜったい!」

 フィーはいきなりそんなことを言いだした。

「え~と・・・シオン君、どうゆうこと?」

「私も悪い人と耳元で囁かれただけでしたのでよくわかっていないのですが」

 リィナとレィナはフィーがどうしてそんなことを言うのか分からない様だった。

「妖精って本来、人前に姿を現さないって知ってる?」

「それは聞いたことある」

「ですね」


「妖精って生物でありながら精霊に近い生き物らしいんだ」

「精霊に近いですか」

「たぶん、僕達みたいな精霊魔法を使う人には普通に妖精を認識できるけど、普通の人間には妖精が姿を見せようとしない限り見えないんだ」

「そうなんだ」


「で、もう一つ。実際にそうかは分からないけど、妖精は心や感情をある程度わかるらしいんだ。だよね?」

 シオンはフィーに聞く。

「うん。何となくだけど、いい人なのか悪い人なのかとか分かるよ。後は悲しいとか嬉しいとか」

 フィーは手で大きく表現しながら語っている。


「でも、フィーちゃんはどうして私たちの前に姿を現したのでしょうか?」

「まず、僕達は精霊魔法を扱える、マナを知覚出来るってのもあるけど・・・」

 シオンはそれ以外で理由が見つからなかった。


「あのね!シオンとかリィナもレィナもすごく暖かいの!すごくすごく暖かくて気持ちいの!」

 フィーはそんなことを言ってきた。

「暖かい?」

「うん!近くにいると安心するの!」

「うーん、どうしてかは分からないけど、それならよかったのかな」

「ですね、変な人だから気になったとかではなかったからいい方ですね」

 結局フィーの説明は抽象的すぎてよくわからなかった。


「でも、ギリアムが悪い人となると何か裏ありそうだね」

 シオンがそう言うと

「それなんだけど・・・」

「やっぱりリィナも気付きましたか」

「何かあるの?」

 リィナとレィナは何か知っているようだった。

「一応ここは王都の貿易の玄関口だから何年かに一度、貿易やっている一番偉い人が王城まで出向いて報告することになっているんだけど」

「ここ数年、報告に来ていないのです。それに私の記憶が正しければ、最後に来た貿易のトップは決してギリアムという名前ではなかったはずです」

 二人の言葉にシオンは少し考えて


「ってことはギリアムの前の責任者に何かあって今の会頭がギリアムになったと考えるのが普通かな」

「そうですね。以前の責任者は年に一度は訪れていましたから」

 二人の説明でなんとなくは見えてきた部分があった。

「後は次にギルドに行ったときにクラークさん辺りにでも聞いてみようか」

「わかった」「わかりました」



「それと、フィーが言っていた女の人だけど誰か分かる?」

シオンがフィーに聞くと

「ううん、知らない人。だけど、私の姿は見えていたし、声も聞こえていたみたい」

「どんな人だったかとかは?」

「黒いローブみたいの来てたからよく分からない。でもベッフェル様?がどうとか言ってた。後、グリフォン以外にもいっぱい動物みたいのがいた」

フィーの説明に三人は少し首を傾げる。


「フィーちゃんやグリフォンが飛んできた方向は倉庫がたくさんありましたよね」

「ってことは、倉庫の中に女の人がたくさんの動物とかを捕まえていたということかな」

レィナとリィナが話を整理して話す。

「話を聞く限りだとそうなるね」

シオンは他にもグリフォンが逃げた後、変な気配を感じたような気がしていたのも気になった。

「これもクラークさんに聞いてみようか」

 こうして相談はお開きになった。



「フィーちゃんっというか妖精って食事とかはどうするのですか?」

 レィナが聞いてきた。

「あ、それは僕も知らないや」

「私はいつも花の蜜とかを飲んでいるけど、マナでも大丈夫だよ」

「じゃあ今度花の蜜でも用意できたらしようか」

「ほんとに!ありがと!」

 フィーはすごくうれしそうだ。

「ねぇ、シオン君。そろそろご飯食べに行かない?」

 リィナが言ってきたので、外を見ると暗くなってきていた。

「そうだね。確かこの宿屋に食事所があるってセネルさんが言ってたから行こうか」


「フィーちゃんはどうしようか?」

 リィナがフィーを部屋に残すかどうか聞いてきた。

「フィーはどうしたい?」

「私も一緒に行きたい!」

「わかった。でも人に姿は見せないようにしてね」

「うん!」

 フィーは嬉しそうに頷くとシオンの肩に座る。

「二人共、行こうか」

 そして食事所に向かった。



 フィーは堂々とシオンの肩に座っているが、誰にも見えていないらしく、フィーのことは誰も気にしていなかった。

 どちらかと言うと椅子をシオンのすぐ傍まで寄せて、食べているリィナとレィナに目が行くようだ。


「あの~、二人共?距離いつもより近くないかな?」

 シオンはそんなことを言うが

「いつもと同じくらいだよ」

「そうですよ。何言っているのですか?シオン君」

 二人はやけに大きな声でそんなことを言う。

 当たり前だがシオン達以外の他にも客はいる。特に男連中からの視線が怖い。

「うぅ~・・・今の二人はなんか怖いですぅ」

 フィーは少しリィナとレィナの迫力に押され、シオンの肩の上で震えている。



 シオンはパンを小さく千切り、皿の脇に置く。

「フィー食べてみる?」

 そう言ってフィーにパンを食べてみないか尋ねる。

「え?いいの?」

「いいよ」

「ありがと!」

 フィーはシオンの肩からお皿の脇に降りる。

 目を輝かせてパンをかじると

「っ!おいしいです!これおいしいです!」

 フィーはパンの欠片、フィーにとっては普通の人と同じぐらいの量なのだろうが、パクパクとおいしいと言いながら食べている。


「シオン君、大丈夫なのでしょうか?」

「まぁ、精霊に近いっていっても生物ではあるから食事に関しては大丈夫だと思うよ」

「ふふっ、食べている姿可愛いね」

 三人はフィーがパンを食べている姿に少しの間見惚れているのであった。




 食事から宿屋の部屋に戻ると、少しのんびりした時間が流れていた。

「そいえばお風呂どうする?」

 リィナが聞いてきた。

「ここ露天風呂みたいになっているのですよね」

 レィナは確かめるように視線をベランダの方に向ける。

「そうみたいだね。二人とも先に入ってきたら?」

 シオンは別々に入る気でいたのだが

「いや!今日はフィーちゃんもいるからみんなで入ろう!」

 リィナが力強く宣言してきた。


「なんでフィーがいるからみんなで入るの?それにフィーも嫌でしょ?僕と一緒に入るなんて」

 シオンはフィーは妖精であっても女の子だと認識している。

 当然異性と入るのは抵抗あるのかと思っていたのだが

「ん?わたしはシオン達となら別に入ってもいいよ」

 特に気にする様子もなく言ってくる。


「・・・拒否権はあるのかな?」

「別に拒否してもいいけど」

「シオン君が入っている時に間違って入ってしまう可能性はあります」

「・・・バスタオル巻いて入るんだよね?」

「当たり前だよ」

「そうですよ。まだそこまでは見せませんよ。それとも見たいのですか?」

 レィナが挑発するように言ってきた。


「興味はあるけど今はまだ見ないって何度も言って・・・というかレィナも僕がこういうのがわかっていってるでしょ」

「さぁ、どうでしょうね」

 そして、その日はみんなでお風呂に入ることになった。



 もちろん身体を洗う時は別々で洗うようにして入ったので、肝心な所は見てはいない。

 ただ、フィーはタオルとかないので全裸に羽が生えた姿だったが、シオンも特に気にすることなく入った。

 シオン含め三人曰く、ちいさな人形みたいで可愛らしかったという感想だった。

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