第29話 アルマポールト
「着いたー!!」
リィナはアルマポールトに着くと大きな声で言った。
「リィナ、目立っていますよ」
レィナがそんなリィナを抑える。
「二人は相変わらずだね」
シオンもこの二人にやり取りは毎回のような感じなので慣れてきた。
シオン達三人は無事にアルマポールトに到着することが出来た。
ゆっくりした徒歩の旅だったので馬車で三日間かかるところ、少し走ったりもしたところがあるが五日間かかった。
「とりあえず、しばらく拠点とする宿屋を探そうか?」
「そうだね」「そうですね」
シオンの提案に二人も同意のようだ。
「あのさ、宿屋決まったら市場行かない?」
リィナが市場に移行と言いだした。
「ん?なんで?」
シオンが疑問に思うと
「市場には食材や素材もいろんな種類が売っているそうなのですが、食事所もあるって話に聞いています」
レィナが丁寧に説明してくれる。
「そうそう!ちょっとお昼ご飯の時間は過ぎちゃったけど」
要するにリィナはお腹が空いているらしい。
「そうだね。じゃあ、早いとこ宿屋探して市場に行こうか」
「うん!」「ですね」
アルマポールトでの最初の方針は決まった。
三人はいい宿が無いか探索しながら歩いた。
暫く歩き、海岸から少し離れた所にある、品の良さそうな宿屋を発見したため中に入ってみた。
「いらっしゃいませ」
宿屋の店員だろうか、若い男性がロビーに立っていた。
「本日はお泊りでしょうか?」
男性は少し黒っぽい髪をしており身長もシオンと同じくらいだが、かなり落ち着きがあり、品もありそうだ。
「はい、しばらくの間、宿泊できる宿を探しているのですが」
シオンが要件を言う。
ここまでの間にも宿屋はいくつかあり、この条件を出すと長くても三日が限度だっていう宿屋が多かったのだ。この港町は観光名所にもなっているとかで人の出入りが激しいからそんな規制を掛けている場所が多かったのだ。
「この宿屋は更新していただければ同じ部屋に泊まり続けることは可能ですよ」
男性の店員はそう説明してきた。
「ならここにしようか」
背後から付いてきているリィナとレィナに聞く。
「そうだね、けっこうお腹も空いてきたしここでいいよ」
「他の宿屋は厳しそうでしたから私はここで構いませんよ」
二人もこの宿屋でいいようだ。
「じゃあ二人部屋一つお願いします」
「え?二人部屋ですか?ウチの宿屋では三人部屋もございますが・・・」
三人いるのに二人部屋を頼むのはやはりめずらしいようだ。
「ええ、その・・・」
シオンはどう説明しようか考えていると
「私たちは三人同じベッドで寝るから二人部屋でいいよ」
「そうです。ベッドを繋げるために動かさせては頂きますが」
二人の説明に男性店員は
「ああ、そのようなご関係でしたか。これは失礼いたしました。でしたらキングサイズのベッドの部屋もございますがどうでしょうか?」
どうやらここはキングサイズベッドの部屋もあるらしい。
「値段的にはどうなりますか?」
「二人部屋と変わりはございません」
「ん~・・・そこにする?」
シオンは一応確かめるために二人に聞くと
「そこがいい!」「そこがいいです!」
二人は即答だった。
「・・・じゃあ、その部屋でお願いします」
シオンは少し引き攣った顔でお願いすると
「か、かしこまりました」
男性店員もリィナとレィナの気迫に押され、少し苦笑いだった。
そして、男性店員に案内をされて宿屋の廊下を歩く。
「けっこう大きいのですね」
シオンは今まで泊まった宿屋よりかなり大きい宿だと思った。
「そうですね。この宿屋はこのアルマポールトでも上質の宿屋ですからね」
店員も説明してくれる。
「ああ、そうだ。暫くこの宿を利用されるのでしたら、改めてご挨拶をしておきましょう。私はこの宿で働いているセネルといいます」
男性店員、セネルは名乗って来てくれた。
「セネルさんですね、僕はシオンといいます」
「私はリィナだよ」
「私はレィナです」
シオンに続き、リィナとレィナも名乗った。
「シオン様にリィナ様、レィナ様ですね。では暫くの間よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「「よろしくお願いします」」
挨拶をしていたら部屋に到着したようだ。
「ここがシオン様達の部屋となります」
案内された部屋はかなり広めで奥に大きなベッドがあった。ベランダもあるようでそちらに行くと
「あ!お風呂がある!」
リィナが叫んだ。
そう、ベランダの一部が風呂場となっていたのだ。
「はい、こちらの宿ではどの部屋にも浴室が設置してあります」
どうやらかなり豪華な宿屋のようだ。
「それで少し高めな値段だったんですね」
シオンはこの部屋の金額を聞いた時、普通の宿屋より高いなと感じたが、今持っているお金だと一年以上はこの宿に泊まっても払えるくらいのお金を持っていたので特に気にしてはいなかった。
「ええと・・・少しではなく結構高めの値段設定のはずですが・・・」
セネルは三人の職業が気になった。
「失礼ですが、三人はどのような職業なのでしょうか?結構お若く見えるのですが・・・」
本来、客の個人情報を聞くのはマナー違反だが気になったのでどうしても知りたくなった。
「一応、僕達は三人共16歳です」
「職業はなんていうか・・・旅人だね」
「でも冒険者登録はしていますよ」
シオンとリィナ、レィナの順で説明した。
「え!?16歳で冒険者ですか!?」
本来18歳以上でないと冒険者登録は出来ないのでセネルは驚いていた。
「この前討伐した翼竜の素材がかなりいいお金になったもんね」
「翼竜!?」
本来、翼竜は冒険者が複数人で倒すのでセネルは驚いた。
「そうですね。魔物化していたのが大きかったらしいですが」
「魔物化!?」
さらに魔物化しているとなると上位のベテラン冒険者でないと太刀打ちできないと聞いたことがあるのでさらに驚いた。
「どうかしましたか?」
シオンはセネルが唖然としていたので声を掛ける。
「あ、いえ。・・・それでこの宿屋でも余裕があるのですね」
セネルはすごく納得いった顔をしている。
「そうだ。セネルさん、ちょっとお聞きしたいのですが」
「は、はい。何でしょうか」
「この町に冒険者の拠点ってどちらにありますか?」
「ああ、それでしたらこの宿を出ていただき、左に行くと大きな通りに出ます。その通りを町の入口に向かって歩けばすぐにありますよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「はい、どういたしまして。それとこれがこの部屋のカギとなります。お出かけの際には鍵を掛け、鍵はロビーにてお預かりしますので」
「わかりました」
こうして三人はアルマポールトでの拠点が決まった。
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「すごい人だね」
リィナはシオンの右腕に抱き付きながら言う。
「ですね。手を繋いでないとはぐれてしまいそうです」
レィナはシオンの左腕に抱き付きながら言う。
「確かに手を繋がないとはぐれそうだけど、二人の場合は腕に抱き付いているよね」
シオンが言うと
「気のせいだよ」「気のせいです」
二人はそんなことを言うのであった。
シオン達三人は決めていた通りに市場に来ていた。
市場は人の往来が激しくはぐれたら大変そうだったので、最初三人は手を繋いで移動していた。
なのに気が付いたら腕に抱き付いている状態になっていたのだ。
それに先ほど言った通り人の往来が激しい。
それなのに周囲の視線はシオン達三人に向いており、かなり目立っていた。
リィナとレィナは王女だからなのかアルマポールトの人達とは少し違う気品があり、背は少し低めだがスタイルも良く、とても可愛い美少女なのだ。
そんな二人を両手に花状態で歩いていれば、男性からは嫉妬、女性からは好奇心の目が三人に向けられているのは当然であった。
「あ!シオン君!私あれ食べてみたい!」
「私は向こうのお店が気になります」
周りの目線なんて気にしない二人は己の願望をどんどんシオンに言っていく。
シオンは視線に当てられ少し疲れていた。
「わかったから、順番に行こう?」
「はーい」「わかりました」
視線に当てられながら三人は出店でいろんな食べ物を買い、食べ歩きをするのであった。
「ふ~、お腹いっぱい」
「リィナは結構食べていたもんね」
シオンは喫茶店のような場所の椅子で満足そうなリィナに言った。
「シオン君も結構食べていたと思いますが」
「まぁ、これでも食べ盛りだからね」
リィナより食べていたシオンにレィナが言った。
そして、三人は少し休憩がてら喫茶店のテラス席でお茶を飲んでいた。
「この後はどうしようか?」
「ん~・・・情報っていうと宿屋のセネルさんに聞くってのもあるけど」
「それは今日帰ったらセネルさんに聞けばいいことですから・・・港の方にでも行ってみますか?」
「港か~・・・確かに船乗りさん辺りだったらなにか情報持っているかもしれないね」
シオンは港町の玄関口で働いている船乗りなら何か瘴魔に関する情報がないかと思ったのだ。
「そうだ!冒険者の拠点は?冒険者が集まるっていうから何か王都とは違う情報もあるかもしれないよ」
リィナが提案してくる。
「確かにここに来るまでに狩った素材の換金もあるからいいかもしれないね」
シオンはリィナの言っていることもいいなと感じたが
「市場からは港が近いし港から行ってみようか。ギルドには明日にでもいこうか。宿屋から近いみたいだし」
シオン達は決めるとお茶を飲んでから港へ向かうのであった。
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ガタン!!
倉庫の中である生物が暴れていた。
「なんでいきなり檻が壊れるのよ!」
黒いローブを着た女性、アミラが叫ぶ。
アミラはベッフェルから言われた通りの生物の確認を見つけたため、幻術を使い、盗って来て倉庫に運び入れている時だった。
その生物は4足歩行で鷲のような翼と顔をしている。大きさはだいたい4mほどだろうか。いわゆるグリフォンと言われる幻獣だった。
グリフォンは檻が壊れたのを見て、倉庫から逃げ出そうとしていたのだ。
「あぅ!」
妖精の檻というより鳥籠はグリフォンが暴れているうちに台の上から落ちてしまった。
その際に籠の金属棒が曲がり抜け出せるぐらいの隙間が出来ていた。
「っあ!」
妖精はその隙間を見て、逃げることを決心する。
「ん!」
妖精はその隙間から抜け出し透明な羽を羽ばたかせ倉庫の小さな窓に向かって飛んでいく。
妖精が飛んだ跡を少しキラキラした軌跡を描いていたためグリフォンがそれに気付き妖精を追おうとする。
「あ!こら!待ちなさい!!」
アミラは妖精が逃げたことには気付いておらず、グリフォンが倉庫の小さな窓に向かって突進するのを止めようと声を上げている。
そんな声を無視してグリフォンは妖精が逃げた窓に体当たりをして、壁に穴を空けて妖精を追って出て行ってしまった。
「う~・・・ベッフェル様に怒られるかしら」
グリフォンが逃げ出したのはアミラが不注意で檻の鍵の確認をしていなかったからだ。
「とりあえず、追いかけた方がいいわね」
アミラはグリフォンが逃げた方向、港へ幻術で姿を隠しながら向かうのであった。




