第28話 出発
シオンとリィナ、レィナの三人は水着を買い、時刻が夕方に近かったため、アルマポールトには翌日に向かうことにした。
最初は王城の二人の部屋に止まろうかと考えていたのだが、旅の前に王都の宿屋に泊まってみたいというリィナの言葉で今、王都にある平均的な宿屋に来ていた。
「え!?リィナ様!レィナ様!」
当たり前だが宿屋の主人に驚かれてしまった。
「構えないでいいですよ」
「そうそう、普通にお客さんとして来ただけだから」
二人の言葉に主人は少し落ち着きを取り戻した。
「わ、わかりました。本日はお泊りでしょうか?」
ここの宿屋はレストランも経営しているらしく、宿泊か食事かを聞くことになっているらしい。
「お泊りで!」
リィナが元気よく答える。
「え~と・・・部屋はどうしましょうか?一人部屋、二人部屋、四人部屋とありますが」
主人はシオンもいるので、一人部屋と二人部屋取るものかと思っていたのだが
「二人部屋一つでお願いします」
リィナがそんなことを言った。
「・・・二人部屋が一つですか?」
「はい」
「・・・・・・」
主人は固まってしまったようだ。
「あの~?」
レィナが声を掛けると
「っは!失礼しました。では、お部屋へ案内いたします」
そう言って二人部屋に三人を案内するのだった。
「すみません、ベッドは動かしても大丈夫ですか?」
部屋に案内してくれた主人にレィナが聞いた。
「ええ、戻していただければ特に問題はありませんが」
「じゃあシオン君、先に動かしてもらっても大丈夫ですか」
「わかった」
レィナがそう言うと、シオンは身体強化を使い、ベッドを二つ繫げるように配置した。
「・・・・・・」
宿屋の主人はその配置を見て、どのように寝るのかを想像してしまい、またしても固まってしまった。
「どうしたの?」
「っは!」
リィナの言葉で現実に帰ってきたようだ。
「なな何でもございません、ごゆっくりどうぞ」
主人はそう言って慌てて戻っていくのだった。
「二人はどんな水着を買ったの?」
シオンは二人と水着を買いに行ったのだが、買った水着は袋のまま異空間袋に入れてしまったのもあるが、実際に選ぶときも別々だったため、どんな水着を買ったのか知らないのだ。
「ふふふ、もちろんお披露目するまで秘密だよ」
「そうですね。シオン君、楽しみにしててください」
二人はニコニコしながらそんなことを言ってきた。
「わかった。実際に見るまで楽しみにしておくよ」
そうして三人は宿屋の下の階にあるレストランで夕食を取り、いつものように三人で手を繋ぎながら眠りに着くのであった。
翌日、宿屋を後にした三人はアルマポールトに向かうべく王都の南門辺りに来ていた。
「え~と・・・馬車で大体三日ぐらいだっけ?」
シオンが二人に聞くと
「そうですね」
この中央大陸は南側が内湾になった三日月の様な形をしている。東と北は高い山があり、山の向う側は小国がある。西側は精霊の森が広がっている。南側は内湾がありアルマポールトを始め、小さな村や町が海岸沿いに点々とある。
「じゃあ、馬車で行く?」
シオンはそう言うと
「私最初は歩いて行きたい!」
リィナがそんなことを言ってきた。
「リィナ、本気なのですか?」
レィナは馬車でいく物ばかりと考えていた。
「馬車だと旅って感じが薄いような気がしてさ」
リィナの言葉は何となくわかるような気がした。
「それに確かアルマポールトに行くまでに点々と村があるって聞いたから野宿もなさそうだし」
一応は考えてはいるようだった。
「なら最初は徒歩でいこうか?」
「・・・そうですね。途中魔物も出たら、素材の回収含め実戦の経験も積めるでしょうし」
レィナも徒歩での旅で大丈夫なようだ。
「じゃあ出発しようか!」
リィナはシオンの腕に抱き付いて歩きだす。
「だからリィナはなんでそうやってすぐに抱き付くのですか!」
レィナも負けじと反対側に抱き付き口論する。
「いや、二人とも抱き付いているけど、このまま行くの!?」
シオンは二人の柔らかさを感じつつ言うが
「「・・・ダメ?」」
二人でそんな上目使いでそんな風に言われたら
「ダメ・・・じゃないです」
シオンは折れるしかなかった。
こうして三人はアルマポールトに向けて歩きだすのであった。
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「レィナ!」
「わかってます!」
レィナに向かって走ってきた2mほどの猪の魔物に水球をぶつけ、凍結させる。
そこにリィナが一気に間合いを詰めて
「とどめ!」
短剣を胴体に突き刺し、マナを流し込み前方方向へ爆発が起こった。
「ふぅ」
リィナが額の汗をぬぐうと
「おつかれ、二人とも」
シオンは二人が戦いたいと言ったため見ていたのだ。
「でもリィナ、素材を爆発させるとほとんど爆散してしまうから気を付けたらどうです?」
レィナが言う通り、リィナは何かと爆発系の精霊魔法ばっかり使うので、素材が無くなってしまうのだ。
実際今の猪の魔物も牙に当たる物が片方しか残っていない。
「う!今後は気を付けます」
そんなやり取りをしつつ三人は問題なく道を進んでいく。
「そろそろ昼ご飯でも食べようか」
シオンが草原の脇に大きめな木と草が開けた場所があったので提案する。
「そうだね。けっこう歩いたから疲れたしお腹も減ったし」
リィナはすぐに食いついてきた。
「それにしてもここだけずいぶん草が少ないのですね」
レィナは休もうとした場所に草が少なくなっているのが気になったらしい。
「たぶんだけど旅人や冒険者が休憩とった後なのかもしれないね」
シオンは土が黒ずんでいる場所を指さして言った。
「それは・・・焚火の跡ですか?」
「たぶんね」
シオンがレィナに教えていると
「ねぇ!シオン君早くお昼ご飯食べようよ!」
リィナはシオンがなかなか異空間袋からご飯を出さないので駄々をこねてきた。
「わかったって」
シオンは王都の出店で買ってきたサンドイッチと熱々の紅茶の入ったポットを出した。
「ふぅ、こんな場所でサンドイッチと紅茶が出るなんて贅沢ですよね」
レィナはそんな感想を口にする。
「まぁ、食べ物も紅茶もこの袋に入れれば時間は止まっちゃうみたいだからね」
「でも、おかげさまで旅にはもったいないくらいの贅沢出来るね」
リィナは大変好評のようだ。
サンドイッチを食べ終わり、ゆっくり紅茶を飲みながら休憩を続ける三人。
「シオン君、そういえばテントみたいのってどうなったのです?」
レィナは旅の買い物をしている時にシオンからそんな話をちらっと聞いていたのを思い出した。
「ああ、あれはね。こんな形になった」
シオンがそう言いつつ異空間袋から布が巻き付いている棒を取り出した。
「わぁ!それなに!?」
リィナは結構大きなものが出てきて少し興奮気味だ。
「よくそんなものも入りますね」
レィナが言う通り袋の口は直径30㎝しかなく、長さ自体も60㎝ほどしかない。
出てきたものは布が巻いてある棒は30㎝より細いが長さが150㎝もあるのだ。
「まぁ、この袋の口より細ければどんな長い物も入るからね」
シオンが説明すると
「じゃあさ!お布団とかも入っているの?」
「そこまで厚みがあると入れるの難しいから少し薄めの物なら多めに入れてあるよ」
「やった!」
リィナは嬉しそうだ。
「シオン君、いろいろ気を使っていただきありがとうございます」
「ん?」
「これほどいろいろと用意していただいたのが申し訳なくて」
レィナは自分達が王族だからシオンが無理して用意したものだと思っているようだった。
「ああ、気にしないでいいよ。前に討伐した翼竜の報酬金がかなりあったし、僕もあまり質素なまま旅に出るのが不安だっただけだから」
シオンが自分で考えていたことを言うと
「本当にありがとうございます」
レィナは結局お礼を言うのだった。
「じゃあ、今日はこれらで野宿するの?」
リィナは相変わらず興奮気味でいる。
「できればどこか村にでも入れればと思っているけど、暗くなりそうだったら野宿になるよ」
シオンがそう言うと
「確かに使ってみたいけど、どこかの宿でベッドの方がいいもんね」
リィナは少し落ち着いてきて納得はしたようだ。
「じゃあ、そろそろ出発しようか」
シオンは出した物を片付けながら二人に言う。
「わかった」「わかりました」
二人も返事をして出発するのだった。
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ここはアルマポールトの港にある船の発着所となる場所だ。
「なぁ、聞いたか?」
「何をだよ?」
「また消えたらしいぜ」
「またって最近噂になっているやつか?」
「そうそう」
二人の船乗りと見られる男が話している。
「なくなっているのは密輸されているものだって噂だが」
「そうだけどよ、いつ正規ルートの物を狙われるかわかったもんじゃないからな」
「それに俺が聞いた噂にはこういうのもあったぜ?」
「なんだよ?」
「消えてなくなるのは生物や魔物だって噂だ」
「マジかよ!」
「ああ、もしかしたらなくなっているんじゃなくて、逃げ出しているだけなのかもな」
「そうだったらここにいる俺らもあぶねぇじゃねぇか!」
「まぁ、そうだろうな。だから噂なんだよ」
「あ!・・・なるほどな」
そんな男達を遠くから見ている女性の姿があった。
「ベッフェル様の言う通り書かれている出来るだけの物は集めてはいますが・・・」
黒いローブを着た女性、アミラは少し悩まし気だった。
「ん~・・・この倉庫も幻術が掛けてあるからベッフェル様が来るまでは見つからないとは思いますが・・・」
アミラは倉庫の中に入る。
そこにはいろんな動物や魔物の姿があった。
「うぅぅ・・・ぐすっ」
そんな中、女の子がすすり泣くような声がした。
「ったく、こんな妖精も何かに使うのかしら」
すすり泣く声の方に視線を向けると大きさは10㎝ぐらいだろうか。
小さな女の子で背中に透明な羽を生やしている、妖精の姿があった。
服は背中が羽のために空いている花のような服を着ている。
妖精は生物でありながら精霊に近い存在と言われ、姿を見たものはほとんどいないと言われている。
「ぐすっ・・・」
「もう、泣くんじゃないわよ!」
アミラは鳴き声をずっと聞かされてすこしイライラしていた。
「ほんと・・・何に使うのかしら」
その日も妖精のすすり泣く声が倉庫内に響くのだった。




