第19話 聖石の修復
シオン達三人は聖石の修復にあたりアレティアにある場所まで呼ばれていた。
「うわぁーーー。本当に大きいねぇ」
リィナが見上げて声を上げる。
「本当に大きいです・・・」
レィナも同じように見上げる。
「この木は数千年生きてるって言われているしね」
シオンが説明する。
三人とアレティアは大樹の前にやってきていた。
「ようこそ。私の本体へ」
アレティアは嬉しそうに歓迎してくれた。
この場へ来ているのはシオンとリィナとレィナだけだ。大人数で押しかけるわけにもいかないと族長が言ったのだ。
「リィナ、レィナ。先に謝っておくわね」
「「なにがでしょう?」」
突然謝られて混乱する二人。
「私は一時的とはいえ契約するわ。人間で言うと夫婦の契りに近いことなの」
それを聞き二人は少し考えた。
「「大丈夫です」」
「シオン君はこれからずっと私たちと生きていくと言ってくれましたから」
「そうです。私たちは常に三人で生きていきますから」
「そう・・・。シオン、貴方愛されているわね」
「・・・はい」
シオンは少し照れくさくなった。
「じゃあ、始めるわよ。リィナは太陽のマナを私とシオンを包むようにしてもらってもいいかしら?」
「はい!」
そしてシオンはアレティアをすごく近くに感じ、アレティアの大きな精霊の源であるマナに包まれていくのであった。
(シオン!大丈夫!?)
シオンは頭の中で響いた声で目が覚めた。
「シオン君!大丈夫!?」
目の前にはレィナがいた。どうやら少し気を失っていたようだ。
リィナはマナの制御に集中していた。
「大丈夫だよ。あれ?アレティア様は?」
「シオン君とアレティア様が光ったと思ったら消えてしまったのですが」
レィナは説明してくれた。
(シオン。私は貴方の中にいます)
「え?アレティア様?」
「え?」
シオンは頭の中に響いたアレティアの声に驚き、レィナは突然アレティアを呼ぶシオンに疑問を抱いた。
(ですから、貴方の中にいて、貴方の心に直接話しかけているのよ)
「シオン君?」
「なんか僕の中にいるみたい」
「・・・そうなの?」
レィナは納得したのかわからないが呆然としていた。
(シオン、早速ですが、聖石を見てください)
「え?これは・・・」
シオンは手に持っていた聖石を見ると、すごく細かい模様なようなものが聖石に浮かんできた。
「これが術式・・・」
(そうです。私はマナが流れていないから壊れていると表現をしましたが、どこが壊れているのかはわかりません。私はただ、貴方にこのマナの流れを見えるようにしただけ。そして、壊れている場所を見つけ、周りにあるリィナのマナを使って直しなさい。同じ太陽のマナなら出来るはずです)
シオンは言われて通り、聖石のマナの流れを細かく見ていく。それは一つの芸術品の様でどこも壊れていない様に見える。それでも、もっと小さく、もっと細かく見ようと感覚を研ぎ澄ませていく。
そして、集中していたためどれくらい経ったか分からないがシオンは不自然なマナの流れを知覚した。
(これか!)
シオンは不自然なマナの流れの周辺をよく観察する。
(これは・・・すごく細かいな。リィナのマナと同質なのは確かだ。・・・でもこれは複雑に絡み合い過ぎて、このまま直すのはかなり難しくなりそうだ・・・。一回中和とかしないとダメか?ってことは)
シオンはリィナとレィナの特訓中にあることに気が付いていた。
太陽のマナと月のマナ、同じ瘴気を浄化する力をもっているマナであり、お互いにプラスにもマイナスにも干渉しやすい性質があることに気が付いた。
気が付いたのは二人と模擬戦をしている時だ。
二人で何かしらの合図で使って来る複合魔法、これはお互いに干渉し増幅させて威力が高くなる魔法。
それに対して、意図せずに魔法同士が接触しようとした時、どちらの魔法も威力が下がったのだ。
その時に、マナを属性の変化をさせずに障壁魔法を使ってもらい、息を合わせようとしないで触れさせた結果、対消滅を起こしたのだ。
二人にも簡単にこのことは説明してある。
「レィナ」
シオンはレィナを呼ぶと
「何ですか?」
すぐ近くにいたのですぐ返事があった。
「レィナの月のマナを少し使いたいから、手を繋いでもらってもいい?」
「いいですけど・・・。私もマナを制御してシオン君の周りに出さなくていいのですか?」
「これは太陽のマナでできた聖石だから、対である月のマナを当てると、余計に壊れるかもしれない。だけどそれを逆利用して、ほんの少しだけ壊したい場所があるんだ。だから、僕の手を握って細い糸みたいにマナを操って、僕の中に通してほしい」
それを聞いたレィナは、シオンのマナの対消滅の話を思い出し
「わかりました。細い糸のイメージですね」
そう言うと、レィナはシオンの手を握り、細い糸のようなマナをシオンに流してきた。
(これなら!)
シオンは作業を再開させる。
(さっきの不自然になっている場所にレィナの月のマナを当てて・・・よし!上手く対消滅させられた。次はリィナの太陽のマナで正しく自然な流れになるように繫げていって・・・)
そして暫くの間、マナの消滅と流れが自然になるようにつなげる作業を続けていた。
「・・・できた」
それからどれくらい経ったか分からないが、夕方から始めた作業だったが、辺りは暗くなっていた。
「ほんと!」「本当ですか!」
(うん・・・。確かに機能し始めているわ。今はもう陽が沈んで来ているからほとんどマナを集めていないのでしょうけど)
「アレティア様、ありがとうございます」
(私もこのまま契約状態は慣れると怖いから、契約破棄するわね)
そう言った途端、シオンの体が光り始めたと思ったら、隣にアレティアが姿を現した。
「ふぅ、何百年振りに契約したのかしら。シオンの中はマナがいっぱいあって、とっても気持ちよかったわ」
「「きもちいい・・・」」
リィナとレィナはアレティアの気持ちいという言葉に反応した。
「それはともかく、本当にありがとうございます」
シオンは敢えて無視して、再度アレティアにお礼を言った。
「ふふ。私もいい経験をさせてもらったわ。もし今後、精霊と契約しないのであれば、私とまた契約してね」
「「ダメーーーー!!」」
「あらあら。貴方の婚約者達に否定されてしまったわ」
アレティアは二人をからかうため、冗談を言ったのだが、真に受けてしまったリィナとレィナは声を上げて否定をするのだった。
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その日の夜は、アレティアと大樹の前で別れ、シオンの家に行きリーティンと挨拶を済ませて夕食をご馳走になるのだった。
そのまま、シオンの部屋にリィナとレィナは泊まることになり、いつもより狭いベッドで密着して眠るのであった。
もちろんシオンはそんな状態で眠れるはずもなく、ほとんど徹夜に近い状態になったのは言うまでもなかった。
翌朝、シオンは夜明けぐらいに、ようやく眠れたのだが、早朝にリシアによるダイブにより叩き起こされるのであった。
「あら、シオンにリィナちゃん、レィナちゃんもおはよう」
起きて着替えた後、リビングに降りるとリーティンが出迎えた。
「「おはようございます」」
「う~・・・おはよう。・・・眠い・・痛い」
シオンはそのおかげでかなりの寝不足だ。
「兄さん、ごめんんさい」
リシアは目覚ましダイブでダメージを与えたことに付いて、申し訳なく思っていた。
「シオン君大丈夫?」
「大丈夫ですか?」
リィナとレィナはその時、隣で寝ていたのでダイブがすごい衝撃だったことがわかっていた。
「う~・・・でも!兄さんもいけないんだよ!」
リシアは抗議し始めた。
「何でせっかく布団出したのに誰もそっちで寝てないの!!」
「あら?そうなの?」
そう、昨晩布団を出してもらいシオンは布団で寝ようとしたのだが
「シオン君が布団で寝るなら私もそっちで寝る」
「私も布団で寝ます」
と二人が言いだしたのだ。
いろいろ討論をしたが結局、狭い一人用のベッドで三人で寝る羽目になった。
「まぁ、いろいろあって」
シオンが眠そうに答える。
「私たちはいつも通り、シオン君と一緒に寝たかっただけだもん」
「そうです。確かに一人用のベッドで寝る前から抱き付く形にはなっていましたが、おかげさまで私たちは快眠でした」
「こっちはおかげさまで寝不足だよ」
三人はいつものようなやり取りをする。
「「・・・・・・・」」
リーティンとリシアは今の会話を聞いて沈黙した。
「え~と・・・兄さん?いつも一緒に寝ているのですか?」
「え?そうだけど・・・」
「三人で?」
「そう」
「・・・・・・・・」
リシアはまた沈黙した。
「ずるい!私も兄さんと一緒に寝たい!」
「そっち!?」
シオンはまさかの言葉に驚いた。
「シオン・・・。間違いは犯してないのよね?」
「犯してないよ!本当に一緒に寝ているだけだって」
「でも、リィナちゃんとレィナちゃんはシオンに抱き付いているって」
リーティンも少し疑っているようだった。
「ごめんなさい!それは私たちが・・・」
「ごめんなさい!抱き付き癖があるといいますか、シオン君に抱き付いていると落ち着くといいますか」
リィナとレィナも自分達が悪いと思い謝り始めた。シオンのことがただ好きで、その行為でシオンだけが怒られているのが嫌だったのだ。
「・・・・・・・」
そんな二人を見たリーティンは
「本当にシオンのことを好いてくれているのね」
「「え?」」
突然そんなことを言いだした。
「それにシオンも二人のこと好いているようだし、安心したわ。だってそうでしょ?三人共で会ってからすぐに婚約を押し付けられたのだから、ちょっと心配していたのよ」
リーティンはそんなことを言いだした。
「三人っていう特殊な恋なのに受け入れている。お互い好きなんだってわかる。それがわかったから安心したわ。リィナちゃん、レィナちゃん。ウチのシオンをこれからもよろしくね」
「「はい、任せてください!」」
リーティンの言葉に二人は力強く答えるのであった。
「なんかいい感じにまとめられている感があるけど・・・私は兄さんのことまだ完全に諦めたわけじゃないからね!」
最後はリシアがそう宣言するのであった。
シオン達は朝早い内に王都へ向かうことにした。
「じゃあ、母さん、リシア、族長、行ってきます」
「「行ってきます」」
「はい、行ってらっしゃい」
「兄さん、気を付けてね」
「聖石の扱いには気を付けるのじゃぞ」
それぞれの見送りの言葉をもらい、三人は精霊の里を後にした。
森の中にを歩きつつ三人は、いつも通りにシオンを真ん中に右がリィナ、左がレィナで腕を組んで歩いている。
「ふ~・・・。朝は少し緊張したね」
「でもリーティンさんに認めてもらえましたね」
リィナとレィナは満足そうな顔をしていた。
「とりあえず、聖石の確認は終わったし、王都に戻ったら結界を張る構成も作らないとね」
シオンがそう言うと
「前から思っていたけど、魔道具ってそんなすぐに作れるものなの?」
とリィナが聞いてきた。
「物によって変わるけど、ただの結界だったらそこまで時間は掛からないけど、今回は王都全部囲うような結界だから、アルバルトさんと相談して、使えるものは使うって感じにできないか考えている」
「あ!もしかして王都を囲っている結界石のこと?」
「そうだよ」
シオンは今王都を囲っている結界石と呼ばれる魔石に追加の付加をして、結界の仲介点として使う予定だった。
「父上もそれなら許してくれるとは思うよ」
「うん、それに関しては僕も大丈夫だとは思うんだけどね」
「何か問題があるのですか?」
「一つだけ問題があって、その結界石に付与を起こしている間、王都は結界が切れてしまうんだ。だから騎士団とかとそこの調整をしなくちゃならないかな?」
「そういうことでしたか」
「それなら何とかなるんじゃないかな」
「だといいけどね。それと今はまだ腕組んでいてもいいけど、森を抜けたらまた身体強化して走るからね」
「「ええ~~!!」」
そして、森を抜けて三人は王都に向けてまた走るのだった。
「シオン君!今日はどこまで走ればいいの~!」
「そうです。まさかと思いますが来た時と同じペースってことは無いでしょうね!?」
「そのつもりだけど?」
「「オニ~~~~!!」」
二人は叫びながらも頑張って、シオンの背中を追いかけるのであった。
その後、着た時と同じ宿場町で宿を取りつつ王都に向かった。
そして、三人はなんとか1週間以内に王都に到着するのであった。
王都に着くと、さすがにシオンも結構疲れたということで、アルバルトには簡単な報告で済まし、翌日に詳しく話すと伝えた。
そのまま寮に帰ると着替えるのも気力が起きずに服を脱ぎ、肌着・下着姿のまま寝てしまうのであった。
もちろん、朝にお互いの姿を見て、ドタバタが起こったのは当然であった。
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シオン達が精霊の里にいる頃
「さて、これだけの大きめの瘴玉を使えば、さすがの翼竜も瘴化するでしょう」
黒いローブの男は王都の南東にある岩山に来ていた。
男の目の前では、翼竜が瘴気に包まれて苦しそうにしながら、暴れていた。
「さすがにここまで耐えるとは予想外ですが、瘴化するのは時間の問題でしょうね」
薄気味悪い笑いをしながら、男は呟く。
「さて、今度は何処の街や村に出向くとしましょうか」
男は翼竜をそのまま放置して、どこかに飛んで行くのだった。




