第18話 里帰り
「二人とも、大丈夫?」
シオンは少し後ろを歩いているリィナとレィナに話しかける。
「はぁ・・・はぁ・・・なんとか・・」
「はぁ・・・はぁ・・だい・・じょうぶ・・です」
リィナとレィナは肩で息をしながら歩いていた。
今シオン達三人がいるのは王都を西に出て一つ目の宿場町付近まで来ていた。
「少し休憩にする?」
シオンがそう提案する。
「「おねがい・・・します・・・」」
そして街道脇にある木陰で休むことになった。
少し休んでやっと息が落ち着いてきた二人
「シオン君は疲れないの?」
「少しは疲れたけど。まだいけるよ」
「やっぱり体力の差はすごいありますね・・・」
そう、ここまで身体強化で1時間ばかり走ってきたのだ。速さ的には馬車よりかなり速い速度だ。
「まぁ、僕は里でも訓練していたからね。でも二人もだいぶ体力着いたと思うよ。最初よりはぜんぜんね」
そう約2か月前から始めた、身体能力強化での持久走、最初は5分もしないで二人は倒れていたというのに、今は1時間なんとか持つようになった。
この2か月で二人は相当な量のマナを制御できるようになっていた。まだシオンには遠くに及ばないが、前回少し苦戦した翼竜を今なら普通に討伐できるのではないだろうか?
ただ、精霊魔法はイメージも大事なので、今制御できるマナで、どこまでイメージできるかで結果は変わるだろうが
「もう少し休憩したら、出発するよ」
「「はーい」」
シオン達の学校は今冬季休暇に入り、予定通り精霊の里へ向かっているのであった。
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時は少し遡り、冬季休暇に入る前、アルバルトから呼び出しを受けた三人は王城へ赴いていた。
「シオン、これが聖石で合っているか?」
アルバルトは拳ほどの大きさの透明な石を差し出してきた。
「僕も実物を見たことないので、何とも言えませんが。ちょっと拝見させてもらいます」
シオンは聖石と思われる物を受け取る。
(・・・確かに僕が作ったことのある魔法剣に使った精霊石よりは、マナを溜めることは出来そうかな。まぁ、実際にアレティア様にみてもらうしかないか)
「これ、お借りしてもいいですか?」
「む、良いが・・・何か気付いたのか?」
「いえ、冬季休暇中に精霊の里に調べもののために一回帰ろうと思いまして」
簡単に説明すると
「ふむ、その話はジンから聞いていたな。リィナとレィナも同行するのか?」
「「はい」」
即答する二人の答えに
「あの翼竜どもの襲撃があって以来、瘴魔の出現も聞かないから、大丈夫だとは思うが・・・」
アルバルトはいつまた瘴魔が出るか分からないのが不安なようだ。
「一応対策として魔道具を作ったのですが」
シオンがそう言いながら取り出したのは、騎士剣だった。
「これは?」
「この剣の柄の部分にあるのは僕が持っていた精霊石です。ある術式を入れまして、魔力に反応するようにしています。放出系の魔法はすぐ精霊石のマナを使い切ってしますので、剣の刃の部分に魔道具を発動している間、瘴魔にも攻撃が通用するはずです」
「これみは私たちのマナが込められてるんだ」
「一応私とリィナで込めた精霊石は3個ずつしか用意できなかったので、合計6本になりますが」
三人で簡単に説明をする。
「そうか、これがあれば一時的とはいえ対抗できるのだな」
「はい。その間に三人で里の方へ向かう予定です」
「・・・・・・・」
アルバルトは思案する。
「わかった。ここまで用意をしてくれたのならば、三人で向かうことに許可を出そう。我も三人を旅に出すことしか頭が回っておらぬかったから、結界を用意できるのはありがたい」
今この王都を守っているのは騎士団と魔道師団だ。障壁を王都を囲うように結界石があるが、結界石は普通の障壁魔法と変わらないため、瘴魔には対抗するのは難しい。今回の聖石の加工がうまくいけば、瘴魔に対抗できる結界ができるかもしれないのだ。
「そうだ!一つ伝えることがあった」
シオン達が去ろうとした時にアルバルトがそう言ってきた」
「以前、冒険者の拠点の登録の件に付いてだが。先日、ギルド長のウェル・ディメントとやっとのことで会えてな。冬季休みが明けたら、ギルド長自ら監督で試験をやるそうだ」
「「「・・・・・・はい?」」」
三人は試験という言葉に固まってしまった。
本来、冒険者登録は成人するのが条件で手続きだけで、冒険者登録は出来るのだ。
資格として羽と剣がモチーフのバッジを貰い、それが冒険者の証となるのだ。
「アルバルトさん、今、試験って言いましたか?」
シオンが代表として聞く。
「ああ!言ったぞ!」
アルバルトはすぐに肯定した。
「父上、試験は何をするのでしょうか?」
レィナが聞く。
「我も知らん!ギルド長自らが監督する試験としか聞いていない!」
「え~と~・・・何をするか解らないということ?」
リィナが最後に聞く。
「そういうことになるな」
アルバルトは堂々と頷いて肯定する。
「「「・・・・・・」」」
「まぁ、本来は成人しないといけないと決まりがある以上、15歳で冒険者になるには何かしらの証明が必要ということだろう」
アルバルトが最もらしいことを言ってきた。
「・・・わかりました、冬季休み明けですね」
シオンは少し戸惑いながらも了承した。
「うむ、また近くなったら、我から連絡いくか、ギルド長自らそちらに出向くそうだ」
アルバルトにそう言われ三人は寮に帰るのだった。
そして、遠征の許可をもらった三人は冬季休暇になった当日に、里への旅を始めるのであった。
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三人は陽が完全に落ちる前に、なんとか王都から2つ目の宿場村に到着し、宿屋を二人部屋を借り、三人で部屋でのんびりしているとこだった。
「疲れたー・・・」
リィナは疲れるなりベッドにダイブしていた。
「やっぱり王都の寮よりベッドが堅い・・・」
ベッドに対して不満がある様だった。
「二人ともお疲れ様」
シオンはリィナの方を見ないようにして二人を労った。
「シオン君はやっぱりすごいですね」
レィナは椅子に座りながら、足を揉み解している。
「それより、リィナ」
レィナがリィナに話しかける。
「なに~」
リィナはベッドの上で完全に脱力しきっている。
「そうやって寝るのはいいですが、シオン君がいる手前、ちゃんと下着は隠した方がいいですよ」
「ふぇっ!?」
リィナはダイブした際にスカートが捲り上がり、下着が露出していたのだ。慌てて起き上がり、スカートを直してシオンを睨む。
「・・・シオン君、見た?」
「見られていましたよ。気付いてからは向かないように注意していたようですが」
シオンではなくレィナが答える。
「うぅ~」
「あはは・・・ごめんね」
シオンが謝ると
「うぅ~・・・私の不注意だから、まぁいいけど・・・」
リィナは顔を赤くしていたが、許してくれた。
「シオン君!レィナも私とお揃いの下着だからね!」
「ちょっと!?リィナ!?」
今度はレィナが顔を赤くした。
「なんで私の下着までばらすんですか!?」
二人はそのまま口論を始めた。
「あははは・・・」
シオンは笑うことしか出来なかった。
それからもう一回、宿場町で宿泊し、3日目の昼ぐらいには精霊の森の入口に着いたのだった。
「馬車で1週間ぐらいの旅だったのに、身体強化で走るとこんなに早く着くのですね」
レィナが驚きながら呟く。
「とりあえず里までは歩いて行こうか。慣れないと森の中って危ないからね」
「わかった」「わかりました」
そう言って森の中を歩き始める三人
「でもここまで来るのにあまり魔物と会わなかったね」
リィナが言う。
「まぁ、あれだけ速く移動していれば、魔物が近寄ってくる前に、通りすぎちゃうからね」
とシオンが説明する。
「それにしても、この森ってマナが濃いですね。以前は気付きませんでした」
レィナが森の中のマナが濃いことに気付いた。
「この森は大精霊アレティア様の加護があるからじゃないかな?マナの扱いが上手くなったから余計に多く感じるかもしれないね」
シオンは説明しながら歩く。
暫く歩いていると、精霊の里の入口が見えてきた。
「兄さん!お帰りなさい!」
「ただいま、リシア」
リシアがシオンのマナを感じ取っていたのか、入口で待っていた。そしてそのままシオンに向かって抱き付いてきた。
「リィナさんもレィナさんもお帰りなさい」
リシアはシオンに抱き付いたまま、リィナとレィナにも挨拶をする。
「「・・・ただいま、リシアさん」」
リィナとレィナはリシアがシオンに抱き付いているのが気に入らないのか、少し不機嫌になっていた。
「おお、やはりシオンだったか。思ったより早い帰りのようじゃが、何かあったかの?」
そこへ族長ラウルもやってきた。
「「「ただいま戻りました」」」
三人は同時に挨拶をして、戻ってきたことの説明をするために族長ラウルの家へ向かった。
「そうか、その聖石と思われる物を見せてもらってもよいか?」
「これです」
シオン達はここに来た説明を終えると、聖石と思われるものを族長に渡す。
暫く族長はそれを見続けていると
「やっぱりシオン達だったのね」
大精霊アレティアが姿を現した。
「アレティア様、ただいま戻りました」
「「戻りました」」
「はい、お帰りなさい。元気そうで何よりだわ」
アレティアは三人を我が子のように接してくる。
「アレティア様、ちょっとよろしいかの?」
族長がアレティアに話しかける。
「これは何かお分かりになりますか?」
そう言って聖石と思われる物を渡す。
「・・・これは!」
アレティアは明らかに知っている素振りを見せた。
「これをどこで手に入れたのですか?」
「王都アルマスダルクの王城の宝物庫にあったそうです」
「そう・・・宝物庫に・・・」
何かを思うことがあるのだろうか。アレティアは少し寂しげな表情をしていた。
「これが何か知っているなら、教えて頂きたいのですが」
シオンがそう言うと
「そうね。今の太陽と月の巫女は貴方達だものね」
アレティアは少し目を瞑り、心を落ち着けていた。
「これは、貴方達が言っていた聖石と呼ばれているもので、間違いないわ。これには精霊石と同じ様に、マナを溜めることが出来る。普通は精霊石に込めたマナを使い切ってしまったら、精霊魔法が使える者に供給をしなければならない。だから、精霊石は人間族にとってはマナが無くなったら、ただの石になってしまう」
アレティアは一度言葉を切った。
「だけど、聖石は違う。これは恐らく太陽の石と呼ばれる方だと思うけど・・・これは太陽のマナを半永久的に生み出す物よ。私の知り合いだった、太陽と月の巫女が後世のために作り出した物よ。これはある術式が込められているのだけれど、一部が壊れているから今は機能していないみたいだけど」
その話を聞いてシオン達は絶句していた。
「アレティア様、その・・・半永久的ってことは常にマナを作り出している、ということですか?」
シオンが質問する。
「いいえ。これは太陽の光を浴びることで、太陽のマナを集めるものよ」
「用途としては、魔道具みたいに結界を張ることはできるのでしょうか?」
引き続き質問をしていく。
「私は魔道具というのには詳しくはないから、何とも言えないけど・・・出来るとは思うわ。でもこれは術式の一部が壊れてしまっている。だから直す必要があるわ」
「アレティア様にはこれを直すことは」
「出来ないわ。私は精霊であるからこれに書かれている複雑なマナの術式を感じることはできるけど、直すことは出来ない。でも、シオンの協力があれば出来るかもしれないわね」
「僕の協力ですか?」
「そう。リシアに渡したあの魔法剣。あれはシオンが作ったものでしょう?」
「そうですが」
「なら大丈夫だと思うわ。私があなたと一時的に契約を結ぶわ」
「契約ですか!」
精霊との契約はマナの結びつきを強くして、深層心理に渡るまで心を許す行為に等しいと言われている。
「そうよ。私はシオンとなら構わないのだけれど」
「・・・・・・」
シオンは少しの間、迷っていたが
「わかりました。アレティア様。よろしくお願いします」
シオンはアレティアと一時的に契約を結び、聖石の修復に当たることになるのであった。




