第17話 瘴魔への対策
三人は学校へ向けていつものように腕を組んで歩いていた。寮から学校までの距離は徒歩5分もないのだが
「ねぇ、あれが・・・」
「昨日オレみたぜ・・・」
「そうらしいな・・・」
三人を見て噂話がいろんな所から聞こえていた。
「やっぱり噂になってるね」
「まぁ・・・仕方ないよ」
「でもリィナ、私たちにはシオン君がいるし、父上も何とかするって言っていたじゃない。前向きに行きましょう?」
「そうだね」
そのまま三人は学校へ向かうのだった。
教室まで行く間も生徒から噂話は聞こえてきていた。
「教室だとどうなっちゃうのかなぁ」
リィナが先ほどから、噂話を聞いて不安なようだ。
「大丈夫だとは思うけど・・・」
そう言いながら、少し賑やかな教室へのドアを開ける。
『・・・・・』
ドアを開けた途端、教室の中が静寂になった。
三人は軽く会釈をして席に座った。
座った時にはもう周りは談話を始めていた。
「あのぅ・・・三人共、少しいいかしら?」
三人に話しかけてきたのはシンシアだった。
「えーと・・・シンシアさんでしたよね。なんでしょうか?」
シオンは記憶の中にあるクラスメイトの名前を引っ張り出した。
「はい、シンシアです。シオン君。ってすみません。いきなり君付けは生意気ですね」
「大丈夫ですよ。君付けでも」
「でも・・・」
「なら僕も気軽にシンシアって呼んだ方がいい?」
「・・・じゃあ、それでお願いします。シオン君」
二人は少しぎこちなかったがとりあえず挨拶を済ませた。
「で、シンシア、何か用かな?」
「あ!そうでした。昨日のことなんですけど」
その言葉を聞いて両隣のリィナとレィナはビクっと震えた。
「そのその、リィナ様とレィナ様ってあんなに強かったんですね!」
「「・・・・・・え?」」
二人はきょとんとした。
「実は昨日の襲撃の時、私は救護班の治癒団の手伝いで近くにいていまして」
シンシアは少し興奮気味に話を続ける。
「休憩がてら、その、城門のほうを見ていたら、三人がすごい速さで走ってくのが見えて、追いかけたんです。そしたら、リィナ様とレィナ様が翼竜と対峙ている所を目撃してしまったんです!」
シンシアの説明を聞いている時、談話していた他のクラスメイトはその話を聞き入っていた。
「私たちと同い年の、しかも王女様のお二人が翼竜と対峙して、そのまま討伐するなんてすごいです。感動しました!」
「感動・・・」
「ですか・・・?」
リィナとレィナはまだ戸惑っているようだった。
「そうですよ!だって騎士団の方々でも苦戦して押されていたのに、お二方は徐々にですけど押していって最後はたおしてしまったじゃないですか!」
シンシアはすごい勢いで二人を褒めているようだ。
「失礼かもしれないですけど、夏季休暇前の二人ってたしか初級魔法が使えたぐらいではなかったですか?私も似たり寄ったりだったので覚えています」
「え~と・・・」
「まぁ、そうでしたね」
二人は言葉に迷いながら肯定した。
「ですよね。やっぱり夏季休暇中に何かあったのですか?それとシオン君も戦ったんですよね?」
「まぁ、一応は戦ったけど・・・」
シオンは曖昧に答えた。
「シオン君は一人で倒してたよね」
「そうですね。魔物化した翼竜を」
リィナとレィナがあっさり言ってしまった。
『え!?』
その言葉を聞いたシンシアだけでは無く、クラスメイト全員が驚いた。
「おい!シオン!お前、魔物化した翼竜を倒したのか!?」
すぐ近くにいた1年生で主席のクロイス・フリージアが聞いてきた。
「え~と・・・クロイス・フリージア君だったよね?」
シオンが尋ねると
「クロイスでいい。で倒したのか?」
「まぁ・・・倒したけど」
「すげーな、お前って!オレは一応主席で入学したが、まだ中級クラスの魔法ですらうまく扱えないってのに」
クロイスはシオンに感心しているようだった。
「で?そんなシオン君と同時に婚約者になったリィナ様とレィナ様は、やっぱり強さの秘訣はシオン君にあるってことで言いのかしら?」
シンシアはそんな質問をしてきた。
「え~と・・・・」
「シオン君・・・どうする?」
「どうしよっか」
一応アルバルトからはできる限りの黙認をするようにしているため、三人は答えられずにいると
「ああ、そうだ。シオン君はリィナ様とレィナ様の魔法の師匠に当たる」
そう言いながら教室に入ってきたのは、フレデリック先生だった。
『おお~!』
フレデリック先生の言葉を聞いてみんなはやはり驚く
「やっぱり、そうだったんだね」
「なるほどな、師匠だったのな」
シンシアとクロイスはなんか納得しているようだ。
「一応このことを話すのは陛下の許しが出たっということだ。だが、全部ではないがな」
「全部ではないってどういうことですか?」
シンシアは説明を求めた。
「一教師である僕からは言えない」
フレデリックは首を横に振りながら答えた。
「・・・それなら深く追及はできないか」
クロイスを始めクラスメイト達は諦めたようだった。
「これは国家命令のようなものだと思っていてほしい」
そう言って本日の授業が開始するのであった。
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午後の実技の授業の時間、三人にとっては特訓の時間なわけだが、いつもの面子に一人追加された人物がいた。
「昨日ぶりだね。シオン殿にリィナ様、レィナ様」
そこにいたのは魔法師団団長のジンだった。
「あれ?ジン殿?なにかあったのですか?」
シオンが質問すると
「昨日陛下から、あるものを作製出来ないかと頼まれてね。三人の訓練を覗きにきたのさ」
「あるもの?」
「何なんですか?」
リィナとレィナも会話に加わる。
「三人が旅に出た時に王都で役に立つものを作ろうとしていてね」
その言葉でシオンは何を言いたいか分かった
「それって障魔に対するリィナとレィナ以外の対抗手段・・・ですか?」
「さすが、シオン殿は頭も切れるみたいだね」
まぁ、シオンも旅に出ると話を聞いた時から、そのことが気がかりだったのだが。
「で、シオン殿は何かいい案ないかな?」
シオンは考え込む。
「防御となるとやはり結界のようなものでしょうか・・・でも王都全部を囲うとなると・・・」
「まぁ、難しいだろうね。で、逆に撃退用には二人の精霊魔法が必要になる。人間族にはほとんど使い手はいないと聞いている」
「そうですね・・・。それでヒント探しにここまで来たのですね」
「そういうことだ」
シオンはリィナとレィナにマナの制御特訓をしてもらっている間に、ジンと考えることにする。
「撃退が難しいのならやっぱり結界を張るしかないかな?」
ジンがシオンに聞いた。
「そうですね。長時間にわたって結界を張る。しかも瘴魔に耐性がある結界となると・・・」
二人が考えていると
「ねぇ、シオン君?」
「里の結界みたいのはどうです?」
シオンにリィナとレィナが質問する。
「あれは里の中心にある大精霊アレティア様が宿っている大樹が結界を張っているんだよ。僕も詳しくは知らないけど・・・。ん?」
シオンはなにかが引っかかった。
「何か方法が思いついたかい?」
ジンがシオンを見て何かを思いついたと思ったらしい。
「えと・・・なんだったかなぁ・・・。確か里の古文書で・・・瘴魔や魔物に対する結界・・・!!そうだ!聖石の!」
「聖石ってあれか?穢れを払う石って言われている」
「そうです。それがあれば王都を囲う結界が作れるかもしれません」
それを聞いたジンは
「聖石と呼ぶかは分からないが、王城の宝物庫に何個か宝石類はあるから調べてみよう」
「お願いします。こちらも冬季休暇の時に里へ調べに行けたら行ってみます」
「わざわざいいのか?貴重な休みだろう?」
「ええ、道中の魔物の討伐も修行になりますし。身体強化の修行と並列でやれば1週間ほどで帰れるかと」
シオンの言葉に怪訝な顔をするジンだが
「場所は西の森と聞いたが・・・シオン殿が言うのだから可能なんだろうな」
「ええ。道中宿を取ると考えても3日もあれば里までは行けるかと」
「調べるのに1日しか時間が無いようだが大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です」
「なら、頼んだ。こちらも聖石とやらを探しておこう」
「お願いします、こちらも冬季休暇まで時間があるので少し考えておきます」
そして相談は終わった。
その後の訓練はマナの性質を理解しようと色々試してみようってことになった。
「ねぇ、シオン君。さっきの話だとシオン君は里に一回戻るの?」
「そうだね」
「私たちも一緒に行くのですか?」
「ん~・・・二人が行きたいのならいいけど」
「「行きたいです!」」
「でも、かなりのスピードで走るけど大丈夫?」
「うっ!でも今から練習を頑張れば!」
「そうです!まだ冬季休暇までは2か月は有ります」
二人の強い要望もあり、ついてくることが決まった。
「じゃあ、訓練にマナと体力の持久力を上げるような訓練も取り入れようか」
「「お願いします!」」
そうして、ある程度の方針が決まり、対瘴魔の結界や武器の研究、三人のマナと体力の向上等の訓練が続く日々が続いて、2か月が経ち、冬季休暇が近くに迫っていた。




