第14話 瘴魔討伐
シオン達は魔道師団の人の案内で王都を東側の城門から出て、街道から少し南の方に逸れながら、草原地帯を歩いていた。
これから討伐に向かうというのに二人は相変わらずだった。シオンは旅装束、リィナとレィナも里から王都へ向かう時と同じ、簡易ドレスのような恰好だ。
後から聞いた話だがこの簡易ドレスは二人が可愛い旅装束が欲しいと要望して作ったものらしい。一応防御系の術式がかけられているとか。
「すこし緊張するね」
「ですね、でも恐怖は感じないです」
「そうだね・・・って二人は何でこんな時も腕を組んでくる!?」
そう、魔導師団の人の案内中だというのに、二人は腕に抱きついていた。
「それは」
「もちろん」
「「こうしたいから」」
「だよね?」「ですね?」
二人はそう言いながらされに密着してくる。
「でも本当はシオン君が無事で戦えるように」
「あ・・・」
「シオン君が勝てるようにくっついています」
シオンは忘れかけていた、シオン自身の内にあるマナをリィナとレィナのマナに染めなければ、瘴魔とは戦えないということを。
「シオン君は無茶する事があるから」
「絶対無茶しないでくださいね」
「そうだね。ごめん。そしてありがとう」
「「ふふっ」」
そんなやり取りを魔道師団の人が乾いた笑いをしながら見ていた。
それから暫く進むと
「「「っ!」」」
3人はあの2つの頭があるオオカミの瘴魔と同じような魔力を感じた。
「この先になります」
魔法師団の人がそう言ってきた。
「そうみたいですね」
「「うん」」
「ここからは僕たちがやりますので、あそこに隠れている人と一緒に下がっていて下さい」
シオンは少し離れた所の茂みを指さし、そこに隠れている人と下がるように言った。
「・・・よくお気づきになられましたね」
魔道師団の人は驚いていたようだ。
シオン達からすれば、あからさまに変な魔力が有ったので、気付くことは容易だった。
そして下がったことを確認して、禍々しい魔力が感じるほうに3人は走るのであった。
3人が目にしたのは何かの動物の群れを貪っている魔物の姿だった。騎士たちは何も見えていなかったようだが、魔物たちは黒い瘴気を纏っていた。
魔物たちはシオン達に気付きこっちに向き直していた。
「僕があの豚の瘴魔に突っ込む!猪の方を足止めでいいから頼む」
そう言いながら、剣を抜き放ち風も纏い、豚と思われる魔物の集団に切り込んだ。
シオンはリィナとレィナは複数の敵と戦うことに慣れていないと、判断してのことだった。
「レィナ!あの大きいのやるよ」
「わかりました!」
リィナとレィナは5mもある猪の魔物に向き合って短剣と短杖を構えるのだった。
シオンは直進で来る魔物を通り抜けると同時に、ものすごい剣速で切り裂き無力化している。シオンが放出系の精霊魔法を使わないで近接戦闘をやるには理由があった。
(恐らく前回はオオカミを一掃するためにマナで周囲の風を操り一気に片付けた。でもその後に戦った親玉には、こっちの攻撃が一切通用しているようには見えなかった。だとしたら、二人の染まったマナを出して精霊魔法を使わなければもっと戦えるのではないか)
シオンはそう考えて、放出系の精霊魔法を使わないようにしていた。
豚の瘴魔は直進しか能がないのか突っ込んで来るだけだった。
ただ、左右同時や背後からと考えて行動しているような攻撃が見られる。
シオンは同時に来たら同時に切り伏せ、背後の攻撃もギリギリのところで交わし、カウンターを叩き込む。
攻撃さえ通れば問題なく対処できた。
結果として、風を纏ったシオンの動きを追い切れずに豚の瘴魔23頭は1分もたたないで全滅するのであった。
そして、シオンは猪の大型瘴魔に向かい走りだした。
「リィナ!シオン君が来るまで耐えますよ!」
「わかっているってば!」
二人は今の自分達の力量を理解していた。
だから、シオンが来るまで耐える方法を採った。
レィナは精霊魔法で水球を作り奴が走ってくるだろう場所に着水させ水たまりを作った。レィナの
思惑通り走ってきたところで
「凍っちゃいなさい」
水たまりを凍らせ足を滑らせ転倒した。そして転倒して水たまりに胴体が付くとそのあたりが凍結し始めたのだ。
「レィナ!すごいね!」
「でももう持たない!破られます!」
そう言ったところで凍結下場所を無理やり、引き剝がし立ち上がりうとしていた。
「まだ動かないでよ!」
今度はリィナが3mほどの炎球を作り出し猪の瘴魔が起き上がろうとしたところに命中した。
「レィナ!」
「わかっています!」
リィナは炎球が当たり弾けた炎を膨れさせた。そこに
「いきます!」
レィナは炎が膨れた瞬間に風の渦を作り出した。
そして出来上がったのは、炎の竜巻だ。5mはある猪の瘴魔を包み込むほど大きな精霊魔法だ。
これは上級魔法の威力に相当するであろう精霊魔法だ。まだ一人では難しい威力の魔法だが二人でなら可能にしていた。
この複合魔法は特訓中に何回か練習した精霊魔法だ。
お互いの中級クラス相当の威力の精霊魔法しかできないが、複合魔法にすることで上級クラスの魔法の威力まで上げているのだ。
「これで足止めになってくれるかな」
「あの巨大な体躯をもった障魔です。油断しないほうが」
二人は炎の竜巻を維持し続けるために集中して足を止めていた。
突然、炎の竜巻の中から瘴魔が無理やり突進して出てきた。
近くにいたリィナは、精霊魔法に集中していたせいで反応が遅れた。
「リィナ!!」
レィナはリィナの名前を呼ぶが、リィナが避けるのには間に合わない。
リィナが猪の瘴魔の牙に突かれる寸前に横からリィナを突き飛ばす影が見えた。
シオンは急いで向かった時は炎の竜巻が猪を捕まえていた時だった。そして、竜巻が揺らいだのを確認したときには、竜巻の近くにいたリィナに走っていたのだ。
結果、リィナは突き飛ばされたおかげで猪の瘴魔の突進を避けることが出来たが、
バキ!!
と音が後から聞こえてきた。
音のほうを見るとシオンの右側の脇腹がかなり抉れ、相当な量の出血をしていた。
シオンは傷が酷いのかショックなのか動かなかった。
「「しおん・・・くん・・・」」
二人は同時にそう呟いていた。
猪の瘴魔はシオンを突き飛ばした後、止まれなかったのか少し離れた所でUターンしている最中だった。
「「・・・・・許さない・・・絶対に許さない!!」」
そう言った二人の目は輝きだしていた。リィナは右目が、レィナは左目が。
リィナが腕を猪の瘴魔に向かって突き出す。その瞬間
ドゴーーーン!!
と猪の瘴魔の足元から火柱が上がった。
火柱に包まれた瞬間には、火柱も一緒に凍結し凍り付いていた。レィナがリィナと合わせて凍らせたのだ。そして
「砕けちゃえー!!」
リィナがそう叫ぶと火柱だった氷柱が内側から爆発を起こし猪の瘴魔ごと砕いた。砕かれた猪の瘴魔からはかなり濃い瘴気が出ていたが、炎や氷の破片に触れると消えていった。この間はたった5秒に満たない攻撃だった。
「「シオン君!!」」
二人は急ぎシオンのもとへ向かった。
「レィナ!早く!」
「わかってます!」
そう言って急ぎシオンの治療を開始した。
すると、すぐに傷が塞がり綺麗になっていき、シオンはすぐに目を覚ました。
「・・・リィナ?無事・・・?」
シオンはリィナの無事かどうか聞いてきた。
「シオン君のおかげで無事だったよ。・・・でも!無茶はしないでって・・・いったのに・・・うう・・・」
怒ったと思ったら泣き出してしまった。
治療を終えたレィナも泣いていた。
「シオン君・・・本当に死んじゃうかと思いました・・・・無茶はしないでって言ったのに・・・ぐすっ・・・」
シオンは少し怠い体を起こし二人を抱きしめた。
「本当にごめん・・・。助けてくれてありがとう」
シオンは心から謝り、感謝をした。そして
「二人とも・・・大好きだよ」
そう言うと
「「うわーーーん!!」」
二人はシオンに抱き付き、大泣きするのであった。
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その頃、王都では別の事件が起こっていた。
「クソ!何で結界が動いてねぇんだ!!」
バルトルがイラつくように言った。
「原因が解らない以上、今は奴らを先に何とかしよう」
ジンがそう言いながら、南側の城門の方へ向かおうとする。
「ちっ!そうだな」
バルトルもジンに続いた。
「おい!!早くこっちに来い!!」
「早く城壁の内側に入れ!」
騎士たちが城壁内へ市民を誘導していた。
城壁の外には、ある生物が騎士と魔法使いと対峙していた。
「障壁張れる奴は3人以上で張れ!1人だと貫通されるぞ!」
魔法使いは幾重に重ねて障壁を張っていた。
とそこへ
『キュァーーーーーーーーーーーー!!』
何かの鳴き声と共に城壁の内側に大きな影が落ちてきた。
約6~7mの翼竜が目の前に降り立ってきた。
「くそ!」
「もうだめだ・・・逃げろ!」
目の前に突然立たれた恐怖で、逃げ腰になっていく騎士と魔法使い達。
ドゴーーーーン!!
突然翼竜の顔に向かって、3mはある炎球が当たった。それを受けた翼竜は苦しみながら後退して行った。
「騎士団、魔道師団たちよ!ここで下がれば、王都市民たちの命が危険にさらされる!」
「城壁の上の魔法使いと連携して、奴らを退かせるのです」
そう言って鼓舞したのは、それぞれの団長であるバルトルとジンだった。
「ジン!私が引きつける間にでっかい魔法ぶつけてやれ!」
バルトルがそう言いながら、先ほどの後退した翼竜に騎士剣を構えながら、突っ込んでいった。
「相変わらず、適当な注文だ」
口では非難を言いながらも、他の魔法使いとは比べ物にならないほどの量を詠唱をしている。
「バルトル!下がれ!」
声がした途端バルトルは渾身の一撃をお見舞いし、その衝撃で一気に後退した。
「クリムゾンランス!」
上級クラスの火属性魔法の1つ、3mを超えるほどの真っ赤に燃える炎の槍を形成し、敵に放つ魔法。だがこれだけでは魔道師団団長の魔法は終わらない。
クリムゾンランスが翼竜の胸を貫通し、刺さったままの状態の翼竜に対して
「弾けろ!エクリクシス・ファイア!」
二重詠唱をしていたジンの2個目の魔法、エクリクシス・ファイアも上級に当たる魔法だ。任意の自分の火属性の魔法を爆発させる魔法。
その結果、翼竜は胸を中心にはじけ飛び絶命した。
だが、翼竜はまだ5頭はいる。
「さすがだな!ジン!」
「貴方も引き付け役、ご苦労様です」
「でもこの近辺にこんな翼竜が出る場所なんかあったか?」
「いえ、この大陸だと東の端にある岩山にしか生息していないはず・・・」
「でもこいつら南から来たぞ」
「ええ、だから不可解なんですよ」
そんなやり取りをしている二人の向うからまた翼竜がやってきた。
「っち!ジン!さっきのもう一発行けるか?」
「魔力量を考えるとすべて倒すのには足りないかもしれないが、できる限りはやってやろう」
「了解だ。じゃあ行くぜ!てめぇらも気合入れて行け!」
「「「「おおーーーーー!!」」」」
二人の強さと勢いを団員たちは団長たちを信じ、立ち上がりのであった。
(私の魔力量では後3回ほどが限界ですか・・・最近は研究ばっかでなまってしまいましたか)
ジンはそう思いながら、対策が何かないかと頭を捻らせるのであった。
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「「シオン君大丈夫?」」
シオンとリィナ、レィナは猪の障魔を討伐した後、少し休憩し王都へ向けて歩いていた。
「大丈夫だよ。二人と抱き合っていたら、なんか体の怠さも軽くなったから」
「そうですか」
「それならいいけど」
(たぶん、密着が激しかった分、マナが活性化して治癒効果が高まったかな?)
シオンはそんなことを考えていた。
そして遠くに王都がはっきり見える場所まで来ると異変に気付いた。
「ねぇ!あれ!」
シオンが声を上げ指を指す。
「あれって・・・」
「もしかすると魔物の襲撃!」
レィナ、リィナも気付いたようだ。
「急ごう!」
シオンがそう言うと3人は身体強化を掛け、草原を王都に向かって駆け抜けるのであった。
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「ふむ・・・」
黒いローブを着た男は王都の南門から東へ行った所の空中に立っていた。
そして王都の南門辺りを襲撃している翼竜と騎士達の戦いを見ていた。
「翼竜は下位の竜種とはいえあの程度の瘴玉では魔物化がやっとですか・・・」
男は戦っている翼竜の背後の方にいる10mはあるだろう翼竜を見て言った。
「翼竜は群れで生活するのは本当だったようですね。頭が狂った命令を出しても従ってしまうとは」
翼竜は本来、リーダーのような翼竜を作り群れを成している。リーダー以外の翼竜はリーダーがいうことに忠実に従う習性がある。
この黒いローブの男はそれを利用して翼竜を私物化しようとしていたのだが
「まったく。せっかくの瘴玉が無駄になってしまうじゃないですか。また・・・」
そして何かぶつぶつ言いながら、戦いの観戦をしているのであった。




