第13話 緊急事態
魔法学校は普通に授業をしている時間、シオンとリィナ、レィナの3人は王城内の作戦会議室に来ていた。
「3人とも学校があるのに呼び出してすまないな」
アルバルトが申し訳なさそうに言ってきた。
「いえ、大丈夫ですけど」
「「父上?なにかあったのですか?」」
二人がシオンの言葉の後に呼び出しの理由を聞いた。
「その話をする前に、少し待ってもらってもいいか?呼んでいる者がいてな」
3人が無言でうなずく。
それから1分も立たないうちに
「「遅くなって申し訳ありません、陛下」」
ノックと共に二人の男が入ってきた。
一人は騎士甲冑の男だ。かなり良い体格をしている。
もう一人はローブを着ており、騎士甲冑を着ている男より若い印象がある。
「「リィナ様、レィナ様。ご無沙汰しております」」
そう言いながらリィナとレィナに頭を下げる。
「「ご無沙汰しております」」
リィナとレィナも二人に挨拶を返した。
「「そして、シオン殿、お初にお目にかかります」」
「私はバルトル・アールド。この国の騎士団の団長を務めている。よろしく頼む」
騎士甲冑をきた男の人が名乗った。
「僕はジン・スーウェルといいます。私は魔道師団の団長を務めさせてもらっているよ。よろしく」
続けて、魔法使いと思われる人が名乗ってきた。
「バルトル殿にジン殿ですね。僕はシオンといいます。こちらこそよろしくお願いします」
挨拶を受けシオンも自ら名乗ると
「では、役者が揃ったので緊急会議を始める!」
アルバルトが緊急会議と称し話し合いが始まった。
「シオンとリィナ、レィナの3人は事情がわからないだろうから、まず近況報告からだ。バルトル、ジン、説明してやってくれ」
「「了解しました」」
そして、団長二人の報告が始まった。
「まず約2週間前にこの王都から南東に行った所に家畜を中心に生活している100人にも満たない村があるのだが、家畜と共にすべての人が消えていた事件があってな」
バルトルが最初に説明してきた。
「発見したのは私の部下でな、この王都近辺の見回り中だった。そいつらが言うにはいつも遠目に見えていた家畜がいないとと気付き、急いで村に立ち寄ったそうだ。で、そこで部下たちが見たのは、荒れに荒れまくった村だった。そこには人っ子一人もいなかったそうだ、家畜もな」
バルトルがその報告を受けた時のことを思い出し、悔しそうな顔をした。
「そこで僕らの魔道師団で何か魔法的な何かが無いか調べた。そこで判明したのは家畜の魔力の暴走、魔物化をしたことが分かった。何頭魔物化したかは分からなかったがな。しかし、魔物化したとしても1頭だけなら恐らく村にいた者でも討伐できるはずだ。村の周りは草原で日常的に魔物が村に入ってくることもあるそうなのでな」
ジンの部隊が魔法絡みで調べたみたいだ。
「村の被害を見ると魔物化したのは複数、それも同時に魔物化したのではという考えになった。少し緊急性があると判断して、我々騎士団と魔道師団で少数で隊を組み、付近の巡回に当たることになった」
「2日ほどはなにもなく、魔物化した家畜もどっか遠くに行ってしまったと考えていた時、まさに油断だったのだろう。1隊が集合時間になっても帰ってこなかった。我々魔法師団と騎士団の団員が3名ずつで組んだ隊でそれなりに優秀だったんだが・・・」
「残りの部隊で戻らなかった隊を探しに行ったそうなんだ。そこにあったのは騎士甲冑や剣や杖といった武器防具だけだったらしい。血の匂いもすごかったらしいから恐らく魔物にやられたんだろう」
二人はその話をするときの顔は、本当に悔しそうだった。
「残った部隊はそのことの報告をするために足早で戻ってきて無事でした。それから暫くは何もなかったのです」
それで、その話は終わるかと思ったが続きがあった。
「そして先日、この王都に繋がる街道で商人の者と見られる馬車が無残な姿で発見されました」
「馬車が発見されたのは昼前で、我々両方の動けるものを動かし王都の周りを警戒に当たった。そして発見したのは、5mはある猪の魔物1頭と2mの豚と見られる魔物が、少なくも20頭はいたらしい。騎士団は討伐を試みたんだが、魔物に触れる前に剣が何かに弾かれるかのような衝撃を受けたらしい」
「魔道師団の方も魔物に魔法を放ったのだが、触れたと思ったら霧散してしまったんだ。あれはやばいと思ったらしく、魔物の近くで戦っていた騎士団を呼び戻し、魔法で地面を大きく陥没させることで、足止めして無事に帰ることが出来たんだ」
「その魔物が異常だと判断した我らは陛下に相談を煽った。これが昨日の夜だ」
「それと魔道師団の中に治癒特化の部隊がいるのですが、騎士の一人がその豚の魔物に噛まれた傷が治せないようなのだ。治癒魔法も傷に触れた途端に霧散してしまってね」
そこで説明が終わりのようだ。
その話を聞いて三人は嫌な予感しかしなかった。
「それで今日お前たちに集まってもらったというわけだ」
「アルバルトさん・・・その魔物って・・・」
シオンたち三人はもう予想がついていた。
「ああ、察する通りだ」
「「瘴気の魔物・・・」」
リィナとレィナはそう呟いた。
「そうだ。今後は瘴気の魔物を瘴魔と呼称するとしよう。そして、我が知る中で瘴魔を討伐出来うる可能性があるのはお前たち三人だけと見ている。手を貸してくれないか?」
アルバルトが腰を折り、頼み込んできた。そんな陛下の姿を見て団長二人は驚いている。
「父上、その前にいいですか?」
「レィナ、何かあったか?」
「いえ、先ほどで怪我をした騎士がいると聞いたのですが、その方は無事なのですか?」
アルバルトは団長2人の顔を見た。するとジンが教えてくれた。
「まだ治癒院のほうで治療中です。傷の方は悪化をして、手の施しようがない状態です。一応包帯や薬で手当てはしていますが」
それを聞いたレィナは
「私をその騎士様がいる治癒院に連れて行ってくれませんか?私が治癒魔法を試してみます」
「レィナ様、治癒魔法は効かなかったのです。レィナ様でも手の施しようが」
「ジン!恐らくだがもしかするとレィナなら治癒できるかもしれん。連れて行ってやれ」
「は、かしこまりました」
ジンはそう言い、レィナと一緒に出て行こうとする。
「我々も立ち会おう」
突然アルバルトがそう言ってきた。
「陛下がそのような場所に行かなくてもいいのですぞ?」
バルトルがそう言うと
「我が今日この場にシオンとリィナ、レィナを呼んだ理由を簡単に説明できると思ってな。シオンとリィナも一緒に行くぞ」
アルバルトの一声で、その場の全員で治癒院に行くのであった。
治癒院に行くと、この面子にみんなが慌てて労いの言葉をかけて来た。
(さすがに国王がこの場に来るとは思ってなかったのだろうな)
シオンはそう思った。
件の騎士は苦しそうに息をして、意識が無い状態だった。
「今この部屋にいるのは我々だけだ思いっきりやってみてくれ」
この部屋には今、先ほどの面子しかいなかった。アルバルトが人払いをしたのだ。
「はい、父上」
そうレィナが答えると、騎士の近くに行き、魔法ではなく精霊魔法で治癒を開始した。その光景を見た団長二人は
「今のは?」
「詠唱もなしに・・・?」
そう呟きながら目を丸くしていた。
そう言っている今でも治癒は開始している。治癒魔法は弾かれたと言っていたが、レィナの精霊治癒魔法は白い光の粒をまき散らしながら騎士にその光の粒を収束させていく。すると
「う・・・こ・・こは・・・?」
傷は塞がり、あんなに苦しそうな状態だったのに騎士は目を覚ましたのだ。
「・・・陛下、この魔法は?」
魔道師団団長だからなのか魔法の方が気になったみたいだ。
「我も詳しくは分からないが、精霊魔法と呼ばれる魔法の一種だそうだ。ここでの出来事は他言無用だぞ」
アルバルトは精霊魔法のことを説明し釘を差した。
そうしている間に騎士団団長は騎士の無事を喜びその騎士と喜びあっていた。
一行は王城の会議室に戻っていた。
「我がこの3人を呼んだ理由はわかっただろう?」
アルバルトは戻ってから3人をここに呼んだ理由を話した。
シオンが精霊魔法の使い手だということ、娘たちであるリィナとレィナも特殊な精霊魔法が使えること、瘴魔に唯一対抗できる有効手段だってことを。
「我々はこのような若者に任せきりでいいのでしょうか・・・」
バルトルはそう呟いた。
「我もそのことに関しては迷っている所ではある。が、現状これしかないのだ」
「陛下、失礼を承知で聞かせてください」
ジンがアルバルトに聞いた。
「リィナ様、レィナ様は陛下にとっては可愛い娘であるはず。それでも、緊急だからと言って戦いの場に出すことに躊躇はないのですか?」
ジンは思いきって聞いた。
「確かに可愛い娘を戦場に出すのは、我としても避けたい。だが、今はそうは言っておれん。それに婚約者であるシオンが守ってくれると信じているからな」
突然話を振られたシオンだが
「僕が命に代えてもお守りしますよ」
そう言ったのだが
「「シオン君!」」
リィナとレィナが突然声を上げた。
「シオン君、私はシオン君と一緒に戦うよ」
「シオン君、私も戦いますよ。サポートは任せてください」
二人は強い決意でシオンに向けて言ってきた。
「そうだね。それに僕一人ではあの瘴魔には勝てない。二人の力が必要だ」
「そういうこと」「そういうことです」
3人で少し見つめ合い笑い合う。
「アルバルトさん」「「父上」」
最後もう一度3人で頷き合い宣言するのであった。
「僕たちが」「「私たちが」」
「「「その瘴魔を討伐します」」」
そして瘴魔の現在の居場所を特定するために、騎士団と魔道師団は動き出すのであった。
瘴魔が発見されたのは翌日の昼過ぎであった。
今は魔法師団の人が隠蔽魔法で離れたところに隠れて、観測しているとのことで、シオン達三人は魔法師団の人に案内してもらい、瘴魔の居場所まで行くのであった。
その瘴魔に向かって行く三人の背中を見たアルバルトは
「シオンと出会ってからの娘達は本当に変わった・・・。しっかりと意志を持って戦場に行ったか。・・・・シオン、娘たちのこと頼んだぞ」
アルバルトは急にしっかりし始めた娘達に少しの寂しさを感じながら、シオンに娘たちのことを託すのだった。
そしてその頃、王都の南側の結界石の安置所前では
「おい!ここは許可がないと立ち入り禁止だ」
騎士の人が言った。
「・・・・・・・・」
黒いローブを着た男は無言で騎士の人を見ていた。
「聞いているのか!」
そう言いながら黒いローブの男に近くに行こうとすると
ガシャン!
と音がして、騎士が倒れてしまった。気を失ってしまったようだ。
「やっと静かになりましたか」
黒いローブの男はそう言いながら、結界石の安置所に入って行く。
「これが王都を囲う結界の8個の魔石の一つですか」
男は2mはある魔石を見ながら呟いた。
「今回は実験ですし、これ一つにしておきましょうか」
そう言いながら、何かを取り出した。
それは豆粒ほどの大きさの黒い結晶だった。男はそれを結界石に向かって投げた。
すると、結界石の中に吸い込まれるようにして消えた。
「それでは退散してもう一つの実験をしましょうか」
そして男はその場所からいなくなるのであった。




