第12話 授業と特訓
翌日の朝も特に問題なく健全に迎えることが出来た。着替えの時は、昨日デートの時に買っておいた大きめな布を天井に吊り、簡易カーテンで区切って着替えた。
朝食も初日みたいな騒ぎもなく順調に取ることができ、いたって平和なまま腕を組んで学校へ向かった。
もちろん登校時間は生徒の姿はかなりある。
「あの野郎!見せつけやがって!」
「本当にラブラブだよね~」
「クソ!クソ!」
・・・・・平和なんだろうか?
そして学校の教室でシオンは初めて学校の授業を体験するのだった。
この魔法学校では午前中が座学、午後からは実技授業となっている。
座学の内容としては大陸や物流関連を除くと、魔法の詠唱や術式の内容となる。授業が始まる前にリィナとレィナから説明を受けていた。実際に今受けている座学の授業もそんな感じだ。
シオンの左側に座っているリィナから
「ねぇ、シオン君?」
「なに?」
「私たちは精霊魔法使えるから、この魔法の詠唱や術式の授業って必要ないと思わない?」
小声でそんな質問をしてきた。
「確かに自分たちは実際には使わないと思うけど、精霊魔法のヒントになる何かがあるかもしれないから、一応ちゃんと受けた方がいいよ」
「ん~・・・わかった、シオン君がそう言うなら授業ちゃんと受ける」
リィナはそう言い真面目に授業を聞き始めた。
「シオン君、なんか楽しそうですね」
今度は右に座っているレィナから声が掛かる。
「うん、楽しい・・・というか楽しみだったからかな」
「楽しみ?」
「僕は里と森から出ることはなかったから、同年代がこんなに集まっての授業初めてなんだ」
「なるほど、そういうことでしたか」
「そういえば2人って成績とかどうなの?学園は出来の良さを比べるために成績を取るって聞いていたけど」
シオンは教育機関に通うのは初めてなので、あまり詳しくはなかったのだ。
リィナは少し目を逸らしながら呟く。
「・・・大体同じぐらいだよ・・・ね?レィナ」
「そうですね。実技の方は同じぐらいでしたね」
「実技の方はってことは・・・」
「ご察しの通りです」
「う!なにも言わないで~」
涼しい顔で答えるレィナと頭を抱えるリィナ。どっちが姉か妹か分からなくなる。
「まぁ・・・普段の二人見ているとなんかわかる気がするけどね」
「あ!ひどい!シオン君!それ偏見っていうんだよ」
「でも当たっているではないですか。姉さん?」
(お?初めてレィナがリィナのことを姉さんって言っているの聞いたな)
シオンは今までレィナがリィナのことを姉さんと呼んだ所など見たことが無かった。
「う~~~・・・そういう時だけ姉として扱うのずるいよ!いつもは名前で呼ぶくせに」
「いいじゃないですか。実際、姉であるんですし」
(なるほど、からかう時に姉さんって呼ぶのね)
シオンはそう考えていると
「シオンく~ん、助けて~。妹がいじめてくるよ~」
とリィナが授業中だというのに抱き付いてきた。
「ちょ!その甘え方ずるいですよ!それに変なこと言わないでください」
そう言いながら反対からレィナも抱き付いてきた。
「おーい!お前たち、授業中いちゃいちゃするな~」
授業中にそんなことすれば注意さされるのは当たり前だった。
「「「すみません」」」
3人揃って謝るのであった。
そして昼休み
昼食をを取って教室の席に戻って何かおしゃべりしようとした三人の所へ
「リィナ様もレィナ様もあんな顔するのですね」
「「あんな顔?」」
二人で首を傾げると
「いえ、シオンさんを取り合っているときの顔が・・・そのですね」
「可愛かったんですよ」
「ちょっと!失礼でしょ?」
言いづらそうにしていた女子生徒の後ろから顔を出しもう一人の女子生徒が割り込んできた。
「「可愛かった?」」
「そうなんですよ。いつも王女様ってオーラ出していましたが、あれは恋する乙女ってオーラでしたね」
「「まぁ・・・シオン君のことは好きですし・・・」」
「本当に恋する乙女ですね」
そんな会話をしている中、シオンはじっと会話が終わるのを待っていた。リィナとレィナの間に座ったまま・・・
(本人の前でそんな会話しないでくれ)
シオンは昼休みの間、ずっと耐えるのだった。
午後は実技の授業だ。シオン達3人は別と聞いているが場所が分からない。みんなは練習場にいったようだが、3人は教室に残っていた。
「遅くなってすまない」
「フレデリック先生?」
「陛下からさっきお前たちの実技授業の監督を受けてね。とりあえず練習場に行こうか」
そう言い連れられてこられたのは学校の中でもかなり端にある室内型の練習場だった。
「ここなら誰にも見られる心配はないだろう?それに三人とも精霊魔法を使うと聞いている。私は名前は聞いたことあるが実物は初めて見るので、教えることはできない。だから、君たち三人の監督という名目で見学させてもらう形になる」
さすがに学校での協力者が必要となったのか、担任であるフレデリック先生には、精霊魔法のことを話したようだ。
「わかりました」
「じゃ・・・私たちはここで特訓していいってこと?」
リィナが聞くと
「ここは朝8時から夜9時までは開くように頼まれた。だが、監督として私も同席することが条件だ」
「フレデリック先生ありがとうございます。なんか時間を取ってしまって申し訳ないですが」
シオンがお礼を言う。
「私は教師をしているが魔法の研究員でもある。精霊魔法を見て魔法の研究に生かすから問題はないさ。口外はしないともちろん誓わせてもらうから、安心してほしい」
そう言い入口の付近に下がっていこうとする。
「あ、フレデリック先生、ちょっといいですか?」
「なにかな?」
「今からする特訓は精霊魔法で遠距離魔法を使う時もあります。無いとは思いますが一応魔法障壁の準備とかはしていてください」
「わかった。怪我には注意しなさい」
「「「はい!」」」
そして特訓が開始される。
「じゃあ、まずはマナの制御をやってみようか?」
「「はい」」
リィナとレィナはシオンの指示でマナを操り制御をして見せた。
「うん、里での頃よりはかなり増えたね」
「それは、王都までの道程でも特訓したもんね」
「ですね。次はどうします?」
二人は次は何をやるのかとシオンの声を待っていた。
「・・・せっかくだし模擬戦やってみる?」
「「模擬戦?」」
「そう、僕対リィナ・レィナのタッグで」
一応王都までの道程で2人は小型の魔物だったら難なく討伐できている。少しは実力がついてきたとシオンは読んでいる。
「でも、シオン君一人で大丈夫なの?」
「そうですよ。流石にそれでは・・・」
2人はシオンを圧倒してしまうと思っているのだろうか
「そこは条件を設けるよ」
そう言いシオンを異空間袋から何個か羽飾りを出してきた。合計12個。それを4個シオン自身の心臓あたりの胸、両肩とお腹のへそ辺りの4か所に取り付けた。
「二人も僕と同じところに取り付けて」
二人は言われた通り取り付けた。
「僕自身は精霊魔法は身体強化しか使わない。使うとしたら障壁を張るぐらいかな?で2人は中級クラスの魔法の威力までの精霊魔法は使えるよね?だから中級クラスの威力までの精霊魔法は使っていいから、お互いのこの羽飾りを破壊、もしくは奪取するゲーム形式でやろうと思うんだけど・・・どうかな?」
シオンがルールを説明すると
「シオン君と戦うってことだよね・・・?」
「まぁ、模擬戦だからね」
リィナが少し不安そうな顔をする。
「シオン君は大丈夫なの?魔法の中級クラスと言ったら殺傷性があると思うんだけど」
「まぁ・・・大丈夫だよ。精霊魔法での殺傷力ってのは殺意みたいな攻撃性のイメージをしないと出ないはずだから」
シオンは怪我しないことを説明し、納得してもらう。
「わかった」「わかりました」
そう返事をしてお互いある程度距離を取る。
「シオン君!行くよ!」
リィナが正面から突っ込んできた。シオンはそれを身体強化を使い対処しようとすると、リィナの脇から水球がリィナの左右からそれぞれ1個ずつ飛び出してきた。
後ろにいるレィナが飛ばしてきたようだ。
「おっと」
右の水球をバックステップで避け、左からの水球は右へのステップで回避しようとした。そこへ
「今!」
そういいながら肩と心臓付近の羽飾りを狙ってリィナが手を伸ばしてきた。
「まだ、甘いよっと」
そう言いながら上半身だけを少し後ろにずらし、リィナの伸ばしてきた腕を片手で捌き、後ろへ投げ飛ばした。もちろん足から着地できるようにだ。シオンは捌いた際に両肩の羽飾りを取っていた。
「え?いつの間に?」
腕を羽飾りに向けて伸ばしたと思ったら、投げ飛ばされ羽飾りも2つも取られていたことに驚くリィナ。
「リィナ!まだ終わってないですよ」
そう言いながらレィナは炎球を4つ出しシオンに向けて放ってきた。リィナが離れたことで火の精霊魔法を使用したのだろう。
「さっきのはそれなりにいい連携だった。・・・よっと」
そう言いながらシオンは、あえて炎球に向かって突っ込み羽飾りが燃えない位置取りぎりぎりを見極め通過した。
「簡単にやられません」
炎球を放った後なのにレィナはシオンが来ることを予知していたように、突っ込んできたシオンに向かって身体強化をして突っ込んできていた。そしてシオンが気づいた時には左肩の方の羽飾りを持っていかれた。
シオンは炎球という目暗ましでレィナの位置を一瞬見なかった。その一瞬をレィナは狙ってきたのだった。
「レィナ、今のはまんまと引っかかったよ」
シオンはバックステップで下がりながら褒めた。
「後衛だからって近接ができないわけではないですからね」
レィナはそう言いながら炎球をまた作り始めていた。
その時
「こっちもまだ残っているからね」
シオンの後ろからリィナがシオンみたいに風を纏いながら突っ込んできた。
その風を纏い加速する技はシオンの得意技だ。
シオンもその技を真似してくると思っていなかったので、右肩の羽飾りを取られてしまった。
「おわっとっと・・・」
しかし、制御が上手くいっていないのか着地は出来ていなかった。
「まさかそれを真似してくるとは思っていなかったよ」
シオンは称賛の意味を込めて言うと
「だてにシオン君を見ていたわけないよ」
「着地は失敗していましたよね?」
「それを今言わないでよ」
今の攻防を見てシオンは
「少し出力上げるか・・・」
そう呟いた。そして
「2人とも、今度はこっちから行くよ」
「「え?」」
見ていたシオンが消えたと思ったら
「うわ!」
リィナが咄嗟にバックステップを踏むが残りの羽飾りを取られていた。
「え?何今の」
何が起こったかわかっていないリィナは呆然としていた。
そしてシオンは、そのままの勢いでレィナに突っ込む。
「っ!」
シオンは両肩と心臓の辺りの羽飾りを同時に狙ったのだが、左肩しか奪えなかった。
「・・・なるほど、レィナの方がやっぱり策略が上手いね」
シオンはレィナの周りに霜が降りているのに気付いた。霜を踏み込んだ音で来る方向が分かったのだろう。
「でも!」
シオンは再度突っ込んだ。そしてレィナの一歩左で踏み込んでレィナが動き出してから、レィナが向いた反対へ後ろから回り込んだ。そしてシオンは右肩の羽飾りに手を伸ばした。
その瞬間
ふにゅ
「あぅ」
と手に柔らかい感触と変な声が聞こえてきた。
シオンは手の先を見ると、レィナの胸があった。
シオンはレィナの胸を鷲掴みしていたのだ。
実はレィナは回り込まれたことに気付いて、すぐに振り返っていたのだ。
「えーと、シオン君・・・」
顔を赤くしてシオンをにらんでいるレィナ。
「ご、ごめん!」
シオンは慌てて胸から手をどかす。
その瞬間
「えい」
シオンが油断した隙にレィナは顔を赤くしながらだが、シオンの残りの羽飾りを奪い取った。
「これで、私の勝ち、ですよね?」
「・・・。うん、負けたよ」
シオンは潔く負けを認めるのであった。
模擬戦が終了し反省点を考えていると
「いやー、お前たちはこんなに強いのか」
「いえ、まだまだ修行中の身です」
「いや、強さ的には騎士団や魔道師団を超えているではないか?それにしても精霊魔法は詠唱も術式も使わないのだな。どうなっているんだ?」
フレデリック先生は少し興奮気味に聞いてきた。
「え~・・・一応国王陛下の許可を取ってからなら説明しますが・・・」
「む?そうか。では今度会う機会があれば打診してみよう」
フレデリック先生はそう一人で納得するのであった。
そして特訓も終了し、寮へ帰宅した3人。部屋に入ると
「そうだ、シオン君」
リィナが声をかけてきた。
「私の胸も触る?」
「なっ!」
突然のことに声が出ないシオン
「だってレィナの触ったんだから私のだって触ってくれてもいいじゃん」
「あれは触ろうとして触ったんじゃないから!」
「え?そうだったんですか?」
「・・・レィナも何言ってるの?」
シオンはレィナからもわざと触ったと思われていると思うと少し悲しかった。
「・・・冗談ですから安心してください」
「そう、よかった」
シオンは冗談だとわかった途端、安堵の息を漏らした。
「で、シオン君触らないの?」
「触らないよ!!」
最後までリィナの胸を触る触らないという会話は続いた。
そして最後に
「シオン君なら別に触ってもいいのに・・・」
リィナはそう呟いた。シオンには聞こえていなかったが、同じく聞こえていないはずのレィナは、頷いていた。
「ん?レィナは何に頷いているの?」
「何でもないですよ。ね、リィナ」
名前を呼ばれたリィナは「なんでわかったの!?」という顔をしていた。
シオンは最後まで何のことか分からなかった。
こうして午前の座学と午後の特訓を繰り返す日々が始まったのであった。
3日に一度は朝にいろいろ騒動はあったが、順調に特訓は続き、2週間がほどが過ぎた所で、アルバルトに王城へ呼ばれるのであった。




