第11話 学校生活
リィナとレィナに寮の部屋に案内されたシオンは私物を整理していた。
「シオン君?服とかどうする?タンスに入れる?」
「タンスが必要なら、私たちの場所少し詰めて空けましょうか?」
二人からそんな提案があり
「それなら引き出し1つ空けてもらえばいいかな?基本この袋に入れる予定だし」
「「あ!そっか!」」
二人はシオンの持つ異空間袋について思い出した。王都への旅では使わなかったため、存在を忘れていたのだ。
「その袋ってホント便利だよね」
「そうですね、いくらでも入り、食べ物も腐らないとなると旅には必須な袋に思えます」
「そうだね。一応服もこの中にいれてあるから大丈夫なんだけど、もし他の人から聞かれて確認されたら困るからね。だから1つだけ貸してもらってそこに衣類はしまうよ」
「わかった」「わかりました」
二人はそう言いレィナが使っているタンスの一番下を借りることになった。
シオンは早速その引き出しに肌着と服を何着か入れる。
「2人ともありがとね」
「これからしばらくは一緒に住むんだもん」
「これぐらいは当たり前です」
お互い少しまだ照れるところがあるが、最初よりは落ち着いた関係になってきていた。シオンも抱き付かれたりすることには慣れないが、一緒にいることに関しては王都までの道程でだいぶ慣れた。
そして、時間は夕食の時間になった。
シオンはリィナとレィナに連れられ食堂に向かって歩いていた。因みに2人の部屋は2階の端の部屋だ。食堂は1階にあるため廊下を歩き寮の中心にある階段で降りる必要がある。その道中
「え!お、男!?」
「ほ、ほんとだ!」
「どうして女子寮に殿方が?」
そんな当たり前のような騒ぎが起きた。
「みなさん、寮母さんが今朝、連絡していた方ですよ?」
と外向きの言葉でリィナが説明し
「そして始業式の日に正式に発表になりますが、私達の婚約者になる方です」
「「「え!?王女様達!?」」」
「「そうです」」
「えーと・・・よろしくお願いします」
シオンがそう言うと
「・・よろしくお願いします」
「よ・・・よろしく」
「こちらこそよろしくお願いします」
暫く変な空気が流れていたが
「「ほら、食堂に行きましょう?」」
リィナとレィナはみんなを食堂に行くよう促した。
食堂に着いて、食事をしていてもシオンはずっと注目の的だった。
(まぁ・・・女子寮に男子だもんなー)
そう思いながらずっと皆に見られていた。しかも、王女二人を両脇に添えての食事である。好奇の目の恰好の的にならないわけがない。それに恋愛ごとに興味がある年頃の女子生徒たちだ。なんかどんどん騒ぎが大きくなっている気がする。
「「シオン君・・・ごめんなさい・・・」」
「なんで2人が謝るのさ?」
「「だって・・・」」
「まぁ・・・気恥ずかしいけどさ。こうして2人を婚約者として迎えるのだから、これぐらいは覚悟してたよ。どっちかというと、男子生徒のほうが怖いかもしんないし・・・」
「「あぁ・・・確かに」」
2人にも想像できたのだ。女子生徒はあくまで憧れや興味が勝っているから騒いでいるだけだが、男子生徒は嫉妬で何か行動起こすかもしれないと思ったのだ。
「シオン君・・・学校ではあまり私たちから離れないようにね?」
「そうですね。その方がシオン君のためになります」
「それで余計嫉妬心を仰ぐことにならなければいいけどね」
きゃーきゃーと女子生徒が騒ぐ食堂の中で3人は別の懸念をしていた。
にぎやかな食堂を後にしとりあえず部屋に戻った。
「学校が始まる2日後までに寮内での騒ぎが収まればいいけど・・・」
「まだしばらくは掛かりそうな気がしますね」
「まぁ・・・しょうがないんじゃないかな・・・」
そのままシオンは2人から学校の基本的な決まりとかを聞くのであった。
そしてやってきた入浴の時間だ。リィナとレィナはシオンを部屋に残し普通に入ってきた。二人は例のワンピースの寝間着を着ている。
「ただいまー」
リィナが大浴場の使用状態を確認してきたのだ。
「どうでした?」
「うん、もう大丈夫そう」
「じゃあ、シオン君行きましょうか?」
そしてシオンは二人に連れられ、1階にある食堂とは反対側にある大浴場までやってきた。
「じゃあ入ってくるけど・・・二人は入っている間、どうする?」
「誰かが間違えて入らないようにここで待ってるよ?」
とリィナ言ってきた。
「え?でもそれはなんか悪い気が・・・」
「じゃあ・・・一緒に入ります?」
次にレィナも変なことを言ってきた。
「え!いや、それは!!」
「ふふ、冗談です」
レィナは冗談だと言いくすりと笑った。
「大丈夫だよ、シオン君。二人で話していればあっという間だと思うし」
「・・・わかった、できるだけ早く上がるようにするよ」
「ゆっくり入ってもいいですよ?」
「それは心苦しいから今日は遠慮しておくよ」
「わかりました。それでは」
「「ごゆっくり」」
2人にそう送られてシオンは大浴場に入っていった。
(本当に広いなー・・・)
大浴場は広くて数十人は余裕で入りそうなほど広かった。
(とりあえず余計な思考は捨てて、早く入っちゃおう)
シオンはここで多数の女子生徒が裸になっていたことを頭の片隅に置き、急いで入ることにした。
「なんかすごかったねー・・・」
「そうですねー・・・あんなに騒ぎになるとは思いませんでした」
二人は女子寮の皆の騒ぎ方を思い出し、少し疲れた顔をしていた。
「女子寮でこんなすごいってことは・・・」
「学園ではもっと騒ぎになるかもですね」
そんなことを危惧しながら大浴場前で話していた。
それから暫く経ち
「ねぇ、レィナ?」
「なんです?」
「シオン君を私たちが覗かない?」
「なっ!」
レィナは頬を染めて
「なに言っているのですか!?」
そう抗議すると
「だって、王都に来るまでに私たちの下着姿とか何回か見られてるんだよ?」
「た、確かにそうですが・・・」
「私はシオン君の裸に興味がある」
「私も興味がないわけではないですが・・・」
リィナの押しにレィナの言葉は徐々に弱くなっていく。
「じゃあ、覗こう!」
「何を覗くの?」
「「っ!!」」
2人は突然聞こえてきたシオンの声にドキッとした。
「「シオン君おかえりなさい」」
できる限り2人は平常心を保ちながらシオンに向かって言った。
「あーうん。ただいま」
「じゃあ部屋に戻ろっか」
「そうですね」
2人は足早に部屋に戻ろうとする。
(明日以降はもう少し早めに風呂出た方がいいかな?)
シオンは二人の会話をこっそり聞いていて、そう決心するのだった。
そして迎える始業式、寝起きのトラブル無く登校できた。
学校は寮から5分ほどの距離にあるので、シオンを中心にして3人仲良く手を繋いで登校していた。
何人かに目撃され少し驚かれてはいたが、まぁ、女子寮からの登校なので三人のことは、この二日間で知れ渡っていたようだ。
始業式では、シオン、リィナ、レィナの三人は婚約者として発表する場になるそうなので、講堂の生徒とは別に脇の方に並んでいる。そんな場所にいるせいか、やたら目立っている。
そんな視線に耐えていると校長の挨拶が終わったみたいだ。
「えー、校長先生、ありがとうございました。本来はここで解散なのですが、緊急事項があるとのことで我が国王陛下、アルバルト国王陛下に来て頂いています。それでは陛下、どうぞ」
司会者の先生がそう言うとアルバルトが出てきた。さすがに旅装束のような恰好ではなく王様らしい恰好をしている。
突然の国王の登場に学生たちは戸惑っているようだ。
「えー・・・。このような場での挨拶は不慣れなもんでな。少しおかしなところがあっても見逃してほしい」
そう言うと、生徒たちの緊張は解けたようだった。
「えーと・・・。まず今日この魔法学校に新たな仲間を迎えてもらうことになる。その人物はシオンと言ってな。ほら!シオン!こっちに上がって来い!」
そんな適当な感じに呼ばれシオンは壇上に上がる。
「なんか挨拶しろ」
(え~・・・そんなんでいいのか?アルバルトさん・・・)
内心そう思いながら挨拶をした。
「えーとアルバルトさ・・・じゃない。アルバルト国王陛下からご紹介に預かりましたシオンといいます。ある辺境の村から来ました。みなさん、よろしくお願いします」
シオンはアルバルトさんを言う時以外はありきたりだが、良い挨拶ができたと思っていたのだが
「おい、シオンよ。このような場所でもそんな他人行儀を取らぬでもよいのだぞ?はっきり言って違和感しかない」
「えー・・・」
「「父上・・・・」」
壇上の下でもリィナとレィナは呆れていた。
その言葉を聞いた生徒だけではなく先生も含め保護者の方たちも呆然としていた。
「まぁそれより、ほれ!リィナとレィナも上がって来ないか!」
そこに王女であるリィナとレィナも渋々壇上に上がった。
王女であるリィナとレィナがシオンを挟むように並ばされると、会場内はどよめきが起こってきた。
「国家機密にあたるため詳しい説明はできん。その上でここに我が娘達、リィナとレィナはこのシオンと婚約したことをここに表明する!」
そう言うと会場はしばらく静寂に包まれた
・・・・・・・・
『えーーー!!!』
当たり前のように大騒ぎとなった。
「あのー・・・アルバルトさん。もっとやり方があったのでは?」
「そうですよ父上」
「最初に言ったであろう。不慣れだと!」
「そんなところに変な維持張らないでください!」
(アルバルトさん、娘達の前での威厳がだんだんなくなっている気がする)
とシオンは思っていた。
「静かに!!まだ陛下の御前だぞ!!」
司会の先生が頑張って会場の騒ぎをなだめようとしている。
そんな中、シオンはすでに男子生徒からの嫉妬の目線を受けていた。
(けっこう嫉妬の目線はわかりやすいものだな)
暫く経ちやっとのことで静かになる。
「この婚約は本来この国で定めている1夫1妻の規定を破るものだが、何度も言うが詳しい説明はできない。が、特例として国でこの3人の婚約は決定事項とする。批難する者は当然いるだろうがこれは覆すことはない」
アルバルトがそう言うと1歩下がって目線で「何か言え」と訴えかけてきた。
(ここで何を言えばいいんだ?何を)
少し逡巡すると
「皆さんも突然のことで驚いているでしょうが、僕自身は全身全霊で2人を。リィナとレィナを幸せにするとここで誓わせていただきます」
「「私たちも、シオン君とこの先ともに歩んでいくことをここに宣言します。どうか見守ってもらえないでしょうか」」
シオンは恥ずかしいが、ここでこの宣言を言わないと、大変なような気がしたのだ。
そして、リィナとレィナは頬を染めながらそれぞれ腕に抱き付き、宣言するのであった。
会場内に盛大な拍手が起こった。
「先ほども言ったがこれは特例だ。特例はもう一つあってな。この3人は進級せずに1年生で卒業とさせる。これも国での決定事項だ」
アルバルトがそう言うともう騒ぐ者はいなくなっていた。
「以上だ。ほら、お前たちも戻っていいぞ」
そう言われ、会場内のすべての人からの視線を受けながら壇上から降りる3人であった。
「ええー・・・以上で始業式を終わります」
と最後に司会の先生が幕を閉じるのであった。
3人は人が来なさそうな場所に退避していた。その場所は教員棟の近くだ。教員棟は生徒が寄りたがらない場所なのでちょうどよかったのだ。
「あー・・・恥ずかしかった・・・・」
「だねー」
「皆さんの前で言っちゃいましたからね」
学校の始業式とはいえ生徒たちの保護者もかなりいた。そんな中あんな大々的に発表すればすぐ噂は広がるだろう。
「お?ここにいたか。3人とも」
そう言いながら少しやせ気味の教職員らしき人物がやってきた。
「「ご無沙汰しております。フレデリック先生」」
リィナとレィナはそう挨拶をした。
「シオン君だったね?わたしはリィナ様とレィナ様の担任をしているフレデリックだ。よろしく頼むよ」
「はい、フレデリック先生ですね。こちらこそよろしくお願いします」
「陛下から話は聞いているよ。シオン君は僕のクラスで預かることになったから、何か困ったことあったら聞きにきなさい」
「わかりました」
「「フレデリック先生」」
「何かな?」
「その・・やっぱりシオン君とは・・・」
「席とかも隣同士にしてくれるのですか?」
「一応そのことも陛下から伺っているよ。本当に両手に花の状態だね。シオン君」
「ははは・・・」
シオンは乾いた笑いしかできなかった。
「それと改めまして、リィナ様、レィナ様、シオン君、婚約おめでとうございます」
とフレデリック先生は祝ってくれた。
「「「ありがとうございます」」」
そう3人で合わせて言うと
「シオン君の取り合いとかは無く、本当に仲がいいのだね」
「「はい!もちろんです」」
「もちろんです」
シオン達は笑顔でそう答えるのであった。
今日は始業式いうこともあり、連絡をして終了という流れになる予定だ。シオンはリィナとレィナのクラス1年A組に来ていた。
「始業式でもご挨拶しましたが、改めましてシオンといいます。短い間ですがよろしくお願いします」
最初の挨拶をすると一番後ろの窓際にいるリィナとレィナから
「シオン君の席はここね」
「早くこっち来てください」
教室は3人掛けと4人掛けと机と椅子だった。窓際だけ3人掛けのようだ。
シオンは好奇な視線に当てられながら、リィナとレィナの間に腰を下ろした。
すると
「ホントに婚約したんだ」
「二人同時と婚約って羨ましすぎだろ!」
「三人共、応援してるからね」
と色々な言葉が掛けられた。
やっぱり嫉妬する男子生徒は少なからずいるようだ。
「えー・・・みんな、静かに!」
フレデリック先生はそう声を掛け静かになったのを確認してから
「今後の魔法実技の授業ですが三人は別でやることになっていますので、間違いないようにしてください。後は・・・」
「はい!先生それはどういうことですか?」
フレデリック先生が連絡事項を言おうとしたところに、女子生徒が手を上げ質問した。
「実は私もそのように言えとしか連絡を受けてないので、詳しくは判りません。三人は何か聞いていますか?」
フレデリックから水を向けられた。
「言われてはいないですけど」
「察しが付くことはありますね」
リィナとレィナが言ったことは恐らく精霊魔法のことだろう。精霊魔法は他の人にはできる限り秘密にするようにと注意をアルバルトから受けているのだ。
「そうですね。思い当たる節はあります」
最後にシオンが肯定すると
「言えないってことは国家機密に当たるということですか?」
フレデリック先生は何かを察したらしく、そう質問をしてきた。
「「「はい」」」
3人で同時に返事をした。
「わかりました。それでは深く追及はしないとしましょう」
「「「ありがとうございます」」」
その言葉にフレデリック先生は頷き
「皆さん、そういうことですのでこれについては追及しないようにお願いしますね」
そう言い生徒たちに釘を差した。
「では、残りの連絡事項ですが・・・」
そして残りの連絡事項を伝え、下校の時間となった。
3人はシオンを真ん中にして腕を組み町中を歩いていた。もちろんそんなことをすれば、周りのみんなはシオンと仲睦まじく腕を組むリィナとレィナに視線はいく。
「思ったより恥ずかしいですね・・・・」
「でも似たようなこと里でもやっていたよね?しかも率先して」
「あれはその・・・知り合いが全くいない場所だから出来たことで・・・」
そんなことを小声で話しながら歩く。小声で話すということは三人は密着することになるので、話す度に周りから「おお!」と歓声が上がったりしていた。
これの事実上のデートという名の公開処刑はアルバルトから言われたことであったりする。「学校で伝えたからその後の噂を信じさせるために、三人でデートに行ってこい」とのことであった。王都が初めてのシオンの案内をするという名目で三人はデートしていた。
三人は市民区画や商業区画の案内が終わったところで喫茶店のような場所に入った。
「えーと・・・こういう場所で王族がお茶していいの?」
周りからは「王女様が来た」と噂が持ち上がり、大事になり始めている。
「大丈夫でしょ、さすがに歩き疲れたし」
「それに、この喫茶店はクラスの友達が教えてくれた評判の店なんです。一度来てみたかったですよ」
「へー、そうなんだ」
シオン達は席に座り普通におしゃべりをしていたが、店員達はバタバタして、少し混乱しているのがわかる。
「リィナ様、レィナ様どのようなご用件でしょうか?」
「ここへは一般の客として来ているのです」
「変な気遣いはしなくていいですよ」
二人はそう言うが
「は!かしこまりました」
店員の方は一般の客としては扱えないようだった。
「ふぅ・・・やっぱりシオン君と話している方が気が楽ね」
「そうですね。みなさん王女として扱ってきますからね」
「まぁ・・・アルバルトさんに許可をもらったってのもあるけど、婚約者に敬語ばっかりってのもおかしな気がするしね」
「確かにそうですね」
「でもレィナは敬語っぽい話し方してるよね」
「リィナは砕けすぎな気がします」
「まぁまぁ、二人のい言葉使いはどっちも魅力的だから、そのままでも大丈夫だよ」
シオンがそう言うと、二人は頬を赤く染めてしまった。
「シオン君ってたまにずるいよね」
「そうですね、ずるいときがあります」
「ずるいって」
シオンは何がずるいのか分からなかった。
それから三人でメニューを決めて
「あ、店員さん、ちょっといいかしら?」
「は!はい!なんでしょう?」
「この紅茶とクッキーのセットを3人分お願いできるかしら?」
「はい!かしこまりました!」
レィナが外向きの言葉で店員に注文した。店員はカウンターの奥へ戻っていった。
「あそこまで堅くならなくてもいいのに・・・」
「普通の人はやっぱり王女様相手だと緊張しちゃうんじゃない?」
「やっぱりそういうものなの?」
「まぁ、人によるとは思うけどね」
そのまま談笑していると紅茶とクッキーがやってきた。
「ん~~。おいしい」
「本当ですね。この紅茶もいい風味が出ています」
二人はさっそくクッキーと紅茶に口を付け絶賛している。
「ほんとだ。こういう喫茶店でもこんなに美味しい物が出てくるんだね」
シオンも紅茶とクッキーに口を付け絶賛した。
「普通にここのレベルが高いだけだと思う」
「そうですね。王城で頂くのとレベルが近いように感じます」
「二人がそこまで評価するってことは本当に言い店なんだね」
三人はのんびりとした時間を店内ですごしていた。
だがスタッフルームでは
「私の店に王女殿下達が来て下さるなんて・・・夢のようだ」
と店長が店員と一緒に感動していたりしていた。
「あ!ほんとだ!王女様たちだ!」
「この店って評判はいいけど王女様たちも来るほどだったのね」
「入ってみましょうか・・・」
店の窓はガラス張りのため、外から丸見えだったため、王女様と噂の婚約者を見ようと集まり始めていた。それと同時に店の評判も上がりつつあった。
「「「ごちそうさまでした」」」
3人で会計に行くと
「王女様たちからお金なんて取れません」
と言われてしまった。
「私たちは普通の御客として来たの」
「特別扱いはしないでいいです」
「しかし・・・」
「じゃあ、僕が払うのはどうですか?」
シオンが名乗り出ると
「いえ、婚約者様からも受け取るわけには」
「いいから取っておいてください」
シオンは何時までも終わら無そうだったので、無理やり少し多めに代金を渡してリィナとレィナの手を引っ張り店を出た。
「シオン君、後で払うね」
「いいよ、別に」
「でも」
「案内をしてくれたお礼ってことで」
「「・・・ありがとう」」
2人は繋がれた手を離し、腕を組み直すのであった。
シオンを間に挟み、リィナとレィナはお互い目線を合わせると
「「ふふっ」」
と嬉しそうに笑い合うのであった。
3人は店の前にいた人込みを抜けて、しばらく歩いていると
「いやー!今日はかなり儲かったな!」
「お前は少し先走り過ぎだ。フォローする側も考えてくれ!」
「いいじゃねーか。結局無事だったんだから」
「そういうことじゃなくてだな・・・・」
男二人が儲かったとかの話しをしながら通り過ぎて行った。
「ねぇ、あの建物は何なの?酒場?」
シオンは男達が出てきた建物が気になった。
「あれは酒場っぽいね」
シオンの質問にリィナはすぐ答える。
「違います。あれは冒険者の拠点、通称ギルドです。まぁ、酒場としての機能もしているようですが」
その答えが違うのでレィナがすぐに正してきた。
「冒険者の拠点?」
「ああ!あれがそうなの?」
「そうです。わかりやすく言えば、魔物を含めた動物や植物、鉱物を含めた換金所ですね。さっきの男の人達は換金額が高い素材を売ったのでしょう」
この世界には冒険者の拠点と呼ばれる施設が存在している。この施設はこの国に留まらずにこの世界アル・アニムス全域に広がっている。
流石に辺境のような村や里にはないようだが・・・。
冒険者は魔物や植物や鉱石を採取し、その地方で決められた相場に換金できるシステムだ。多く素材が出るものは安くなるし、希少な物はそれなりの値打ちになるため、一攫千金を狙って冒険者になる者もいる。
因みにこの換金するためのお金は国や商人たちが支払っていることが多い。何故ならこの冒険者の拠点ギルドに国や商人が依頼し、仲介料を挟み、冒険者に取ってきてもらっているのだ。冒険者もその店や国に行かなくても、冒険者の拠点を利用すればすぐに換金ができるのだ。それを世界レベルでやればすぐに国や商人たちが望んだ物が手に入るというシステムである。
「と言うことですね」
レィナはシオンに説明した。
「ってことは僕たちも旅をする際に利用はできないのかな?」
「ああ!そっか!私たちも旅して魔物とか討伐して換金すれば旅の資金になるもんね」
「残念ですが、今は難しいかと思います」
「何かあるの?」
「リィナは何で忘れているか疑問ですが・・・。まず冒険者は危険な仕事が多いため、成人を迎えないと冒険者の拠点に登録ができないのです」
「ああ・・・それだと僕たちは、後3年近くは登録できないのか」
「そういうことです」
「ん~~・・・。父上に言って何とかできないのかな?」
「ギルドはこの国の施設ではないですから、難しいと思いますよ?」
「でも、言ってみるだけ言ってみない?」
「僕からもお願いしてみるよ。どれくらい長い旅になるかわからないしね」
「ん~・・・シオン君がそう言うのならば頼んでみましょうか」
レィナはシオンの意見を聞き、すぐに受け入れた。
「なんでシオン君の頼みだとすぐに頷くの?私のお願いは?」
「・・・リィナは私とシオン君の頼み事ならばどちらを優先します?」
「それは・・・シオン君かな?」
「そういうことです」
「ん?結局どういうこと?」
シオンは最後のやり取りは判らなかった。そのまま王城に赴き、冒険者の拠点を旅で利用したい旨を伝えて、寮に帰宅するのであった。
女子寮で夕食と入浴をそれぞれ問題なく済ませた後、毎晩恒例になりつつある、ベッドの上での談話が始まっていた。
「そういえば今日も体術の特訓とかやっていないけど、王都でする場所ってあるのかな?」
そう、王都に来てからドタバタもあり特訓をしていないのだ。
「あ!そういえばしていないね」
「確かにする場所もないですね・・・」
「明日の放課後もアルバルトさんに練習場所があるかどうか聞きに行きたいけど大丈夫?」
「私も旅に出るまでにはもっと強くなりたいからいいよ」
「私も賛成です。まぁ、さすがに用意してあると思いますけど」
そんな会話を続けているうちに眠たくなってきたので、寝ることにする。
「2人ともおやすみ」
シオンがそう言うと
「「シオン君、おやすみなさい」」
そう言ってそれぞれの手を繋いできてそのまま眠るのであった。
シオンは最初、手を繋ぐのもドキドキして眠れなかったのだが、3日目でだいぶ慣れてきたのか、手を握っていると安心感が出て眠りやすくなっていた。
問題が出てくるのは二人が寝た後だ
(早く眠らないと・・・)
シオンはそう考え眠り落ちようとしていた。
しかし、
「「ん・・・」」
何か腕に柔らかい何かに締め付けられるのを感じ、まだ、完全に寝ていなかったシオンは目が覚めてしまった。
横を見るとリィナとレィナがまたもや抱き付いて来ていた。
「・・・・・・・」
シオンは絶句した。また眠れない夜が来るのか、と
シオンはそんな考えをしながら2人の寝顔を見た。2人は寝る時に何かを抱きしめる癖があるとシオンは考えている。だからなのかシオンに抱き付いている二人は終始幸せそうにしている。
(まぁ・・・慣れればこの状態でも眠れるようになるのだろうか・・・)
その状態のまま今日も夜は更けていくのであった。
時は始業式の朝にまで遡る。
王都アルマブルクから南東に行った所に家畜を中心とした人口100人も満たない村があった。
「ん?なんだぁ?」
「どうした?」
「いや・・・ウチの家畜になんか黒い靄みたいのが・・・」
「・・・なんもないぞ?」
「気のせいかぁ・・・」
その日の晩、この村から家畜も人も、生きているもの全ていなくなっていた。
村の状態を誰かが発見するのは、数日後のことだった。




