第10話 王都
シオン達は徒歩で移動すること6日、王都アルマブルクが見えてくる所まできた。
途中、野宿も一度だけあったが、基本的には街道沿いにある宿場町や村で寝泊まりをしていた。
魔物は普通に出てきたが、特に問題なく対処できた。
道中、リィナとレィナもマナの制御が上手くできるようになり、魔法で言う所の中級クラスまでは地水火風の全属性使えるようになった。
魔法の中級魔法は初級魔法より少し応用が利くようになった魔法だ。
例えば、剣や槍の形に変化させて打ち出したり、他には小規模の渦や壁を作ったりすることができる魔法が多い。
通常魔法学校の高等部を卒業するぐらいで、中級魔法が使えるレベルらしいので、リィナもレィナも卒業生と同等かそれ以上の実力があることになる。
リィナはシオンとの特訓もあり、短剣による戦闘も精霊魔法を絡め立ち回るようになった。
これはシオンの戦い方を真似たようだ。
そんなリィナを双子の息が合うが如く、レィナのサポートも進化を遂げていた。
魔物の踏み込む先に障害物を作り出し、リィナの立ち回りやすい方向に向けたりしていた。
そして何より、一番驚いたのは、複合魔法を成功させたことだった。
本来、魔法や精霊魔法は個々が別々に発動しているため、魔法同士の衝突が起こると、強い方が残るか対消滅する。
複合魔法とは、どちらが残るとか、対消滅が起こるのではなく、お互いに増強し合い、爆発的に魔法の威力が上がったり、副次効果もたらすことがある。
複合魔法は一部の人が成功したと言われているだけで、実際に成功させる人はいないのではと、噂されているほどの魔法技だ。
これをなんとなく合わせただけでできた、というのは本当にすごいと、シオンは思った。
「王都も結界張っているのですね」
シオンが王都を見ながら、そんなことを言うと
「ほう、わかるのか」
「ええ、マナを視認できるように意識すれば見えます」
その説明を聞いたリィナとレィナが
「どうやるの?」「どうやるのです?」
と興味津々で聞いてきた。
「マナで身体強化する要領で目にマナを集中させるんだ」
そう説明すると二人はさっそく実行したようだ。
「ほんとだ。王都を膜みたいのが覆ってる」
「城門の辺りは膜が切れているのですね・・・」
二人はマナを視認できるようになり、はしゃいでいるようだ。
「二人とも、マナを視認し続けていると目にすごい負荷がかかって、疲れるからほどほどにしておいた方がいいよ」
「「はーい」」
そんなやり取りをしている間に、シオン一行は無事に王都へ到着した。
「へー・・・ここが王都かー」
市民区画や商業区画と言っても、城壁に囲まれた内側にあるので圧巻だった。
そんな街並みを見て、シオンは完全にお上りさんになっていた。
「すごいでしょ」
「でもここはまだ入り口で、さらに城壁を超えると貴族や役人が住む区画があります。で、さらに奥にいきますと」
「王城があるんだよ」
「因みに魔法学校はちょうど市民区画と貴族や役人の区画の間にあります」
「へー・・・そうなんだ」
シオンは簡単にリィナとレィナから王都の説明を受けていた。
「お前たちはどうする?1回王城へ行くか?」
アルバルトが王城へ来るかと問いかけてきた。
その時、周りの人が
「国王陛下だ」
「アルバルト国王陛下だ!!」
「ほんとだ!!」
「おい!王女様たちもいるぞ」
と、ちょっとした騒ぎになってきた。
「む?気付かれてしまったか」
アルバルトとリィナ、レィナは王都に入る前にローブを纏いフードも被っていたが、どうやら気付かれてしまったようだ。
「おーーー!!国王陛下様だ!」
「ほんとだ!王女様可愛い!!」
「え!どこどこ?」
どんどん人が集まってきているのがわかる。どうしようかと考えていると
「父上!」
と男性の声が辺りに響いた。
すると、やたら豪華そうな馬車が近くに止まった。そして扉が開き
「父上!お帰りなさいませ。これ以上騒ぎになると大変ですので、馬車にお乗りください」
「おお!ガイウスか!助かったぞ」
「ほら、リィナとレィナも乗りなさい。そちらのお客人もどうぞ」
その青年はこの国の第1王子のガイウスだった。歳は17歳で見た目は少しアルバルトに似ているかもしれないが、アルバルトよりはすらっとした体型である。
「ありがとうございます」
シオンはお礼を言いながらリィナ、レィナの後から馬車に乗りこんだ。ユーグスとカイルは馬を連れているので、一旦ここで別れることになった。
「いいタイミングできてくれたな。ガイウスよ」
「父上たちが徒歩で来ていると監視塔から連絡を受けまして、参上した次第です」
「「兄上、ありがとうございます」」
「で、そちらのお客人はどちら様なのだろうか?」
ガイウスはシオンのことを聞いてきた。
「こいつはシオンといって、お前にも話しただろう?例のリィナとレィナの婚約者になるだろうと説明した人物だ。一応もうすでに里にて婚約は結ばせてある」
「おお!そうでしたか!シオン殿、私はガイウスと申します。父より噂は兼ねがね」
ガイウスはシオンのことをアルバルトから聞いていたようだ。
「で、リィナ、レィナ。実際に会ってみてシオン殿はどうなんだ?」
妹達のシオンに対する評価次第では、態度も改めようと思っていたのだが
「兄上、シオン君はとても優しくて素敵な方です」
「兄上、シオン君は強く正しく力を使って、私たちの精霊魔法の師に当たる方でもあります」
「「この方となら生涯、共に歩めたらと望んでいます」」
二人の評価はガイウスの予想とは反し、すごく良い評価だった。
「そ・・・そうか。わかった。シオン殿これからも妹たちのことをよろしくお願いしたい」
「はい、任せてください。よろしくお願いします」
シオンは少し緊張しながらもそう返事をするのであった。
そして一行を乗せた馬車は王城へ向かうのであった。
「シオンも気を楽にして構わないからな」
アルバルトがそう言い案内してくれた客室にシオンはリィナとレィナと一緒に通された。
「リィナ様、レィナ様。お二人の荷物はこちらで預からせてもらいます」
メイドさんだろうか。二人の荷物を持ってどこかに行ってしまった。
「あの人は私たちの御付きのメイドよ」
「昔から大変にお世話になっているんです」
2人からそう説明があった。
「そうなんだ。2人とも本当に王女様なんだね・・・」
「そうよ」「そうですよ」
と同時に答えるのであった。
「それとアルバルトさんはどこに行ったのかな?」
「たぶん公務ではないかしら?」
「たぶんそうだよ。こんだけ城を空けていたんだから」
「・・・アルバルトさんが公務をしている姿が想像しづらい・・・」
そう呟くと
「ふふ、確かに想像しづらいかもしれませんね」
「父上は結構豪快な性格してるものね」
3人はそう言いながら笑い合っていた。
そんな3人から少し離れた場所にメイドさんが数人控えていたのだが
「リィナ様もレィナ様もあんなに楽しそうにお話しているの初めて見ました」
「私もです。本当に楽しそうですね」
「シオン様っていっていたかしら?お二人にお似合いですね」
シオンたち3人に聞こえない場所でそんな会話がされているのであった。
シオンはその日、リィナとレィナの王城の中にある私室に泊まることになり、いつも通り三人で寝ることになった。
そしてその夜、メイドや執事を含む従者たちに3人は婚約し、仲の良い恋人になっていると、一気に噂として知れ渡ることになった。
そして翌日、王城の食堂にて
「シオンよ。よく眠れたか?」
「はい、おかげさまで」
「そうか、それはよかった。娘達と眠るのも少しは慣れてきたか?」
「いえ、まぁ・・・最初よりは・・・」
「それなら結構!昨日の内に例の女子寮には話を付けておいた。リィナとレィナの部屋で就寝共にしていいそうだ。良かったな」
「「はい!ありがとうございます。父上」」
リィナとレィナは嬉しそうに答え
「そうですか・・・決まりましたか・・・ありがとうございます・・・」
シオンとリィナとレィナの同棲が完全に決まった瞬間だった。
食事を終え、シオンはリィナとレィナに連れられて、しばらく住むことになる女子寮に向かっていた。
「シオン君、大丈夫?」
「シオン君、緊張しています?」
「まぁ・・・ね」
シオンは緊張しているのは当然だと思った。
(なんで男である自分が女子寮に住むことが了承されるんだ?他の女生徒は大丈夫なのか・・・)
そんな疑問を持ちながら歩いているのであった。
女子寮の前には寮母さんと思われる女性が立っていた。
「あなたがシオン様ですね。陛下より話は伺っております。どうぞよろしくお願いします」
「・・・はい、よろしくお願いします」
シオンは少しためらいながら挨拶を返した。
「シオン様は基本寮内では、リィナ様とレィナ様のどちらかと一緒に行動してください。お食事は食堂でご一緒で構いませんが、入浴はリィナ様とレィナ様どちらでもいいので浴場までは一緒に行動して下る様お願いします」
「は、はぁ・・・わかりました」
シオンはそう説明受けると
(確かに女子寮を男一人で行動するのは遠慮しておきたいことだから助かる)
と心で思った。
「寮母さん、私達の部屋にいる時はどうするのですか?・・・その・・」
「私達が入浴している時はシオン君を部屋で1人で待機させても大丈夫なの?」
「はい、お二人様の部屋にいる時は大丈夫です」
「「わかりました」」
「すみません、いろいろとご迷惑をおかけして・・・・」
「ああ、そんな硬くならないでいいですよ。シオン様はリィナ様とレィナ様の婚約者と伺っておりますので。遅らせ場ながらここで、ご婚約おめでとうございます」
「「「ありがとうございます」」」
3人は寮母さんの言葉にお礼を言うのであった。
「さぁ、シオン君」
「ここが私たちの部屋です」
そしてシオンが案内されたのは王城の私室よりは手狭で普通に寮の2人部屋だった。違いがあるとすれば、キングサイズのベッドが1つしかないことだろうか・・・
「なんでベッドは1つしかないの?」
「それは・・・私たちが・・」
「その、小さい頃から二人で一緒にいたものでして・・・」
「一緒に寝た方が落ち着くの」
シオンは最初、二人部屋だから2つベッドがあると思い込んでいた。それならば、片方にシオンが寝れば何とか半年と少しは理性が持つと考えていたのだ。
その考えが完全に崩された。
「えーと・・・ベッドは一つだけ?」
「「はい」」
「2人部屋なのに?」
「「そう」」
「ってことは王都に来るまでみたいに一緒に寝るの?」
「「もちろん」」
リィナとレィナはにっこりと微笑んで頷いた。
「・・・・・・・」
シオンは絶句し固まってしまった。
「シオン様」
後ろから付いてきた寮母さんが同情するかのように肩に手を置き、シオンを呼んできた。
「決して問題が起こらないようお願いしますね」
寮母さんはニコニコしながらそう言ってきた。
(絶対内心楽しんでるよ!このひと!)
そう思うほどの笑顔だったのだ。
シオンはこの現状にリィナとレィナはいいのか聞いてみると
「私たちはシオン君と一緒で寝れるのは嬉しいよ」
「そうですね。シオン君と一緒にいるとドキドキしますが、安心感もありますし」
そう言ってきた。
(学園生活はどうなるんだろう・・・)
シオンは学園生活に不安を覚えるのだった。




