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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第五章 精霊の誕生、そして
111/199

第111話 それぞれの道

 風呂で女性陣の皆がのぼせて倒れてしまった翌日の早朝、シオンは屋敷の庭で異空間袋の中を整理していた。


「もう起きていたのか」

「エスト、おはよう」

「ああ、おはよう」

 エストは挨拶しながらシオンの傍に近寄ってきた。


「これだけのものがこれに入っていたのか?」

「そうだよ。前に説明したじゃん」

「だがこれは・・・」

 シオンの脇には食材や武器類に着替え、テントや魔物の素材等、様々な物が置かれていた。


「実際にこの数が入っていたと考えるとすごいな」

 これだけの物がこの袋に入っていたのだ。

 そう考えるとすごいとしか言いようがなかった。


「ってシオン、中身を出しているということは」

「そう。修理しようかと思ってたんだけど・・・」

 シオンは最後の方が尻すぼみになってしまう。


「ん?何か問題があったのか?」

「材料はともかく、瘴気に当てられたせいかマナの流れが全体的に不安定になっているんだ」

「不安定?」

「中に入っていた物がなくなっている物があるんだ」

 シオンは中を探したがそれは見つかっていない。

 というより、異空間袋は使用者が取り出したい物をイメージすることで、袋の中に実際にある物が取り出せるという仕組みだ。


「何が無くなっているんだ?」

「服と食材だね。後は魔物の素材とか」

「武器とかは無くなっていないのだな」

「うん、いつも出して使っているものは全部あるんだけどね」

「それが無くなっていないだけ良かったな」

「そうだね」

 シオンとエストは日常的に使っている物は無くなっていないことに安心した。


「だがどうする?また旅に出るのだろう?」

「どうしよっかって考え中だよ」

「シオンの剣にしろ異空間袋にしろ問題は山積みだな」

 エストの言う通り問題は山積みだった。


「あ、そうだ。今日だけどカイさん達に挨拶に行こうか考えているんだけど、一緒に来る?」

「そうか、カイ達は明日にはまた旅に出るのだったな」


 昨日の別れ際にフィルジアが教えてくれたのだ。

 魔物は減ってはきているが、まだ地方の方は手が回っていないから、それを討伐しに行くそうだ。


「だがシオン、出歩けるのか?」

「・・・難しいかな?」

「まだ難しいだろう」

「はぁ・・・本当に問題が山積みだ」

 今度はどうやってカイ達に挨拶に行くか迷うのだった。




 シオンはエストと一旦別れ、リィナとレィナを起こすため寝室を訪れていた。


「リィナ、レィナ、もう朝だよ」

「うん?シオン君?」

「もう朝ですか・・・」

 二人は目を擦りながら身体を起こした。

「・・・シオン君」

「何?」

 リィナが目を閉じたままシオンを呼んできた。

「・・・朝のチューは?」

「・・・私もおねふぁいします」

「・・・・え?」

 二人は寝ぼけているのかそんなことを言ってきた。


「していいの?」

 一応シオンは確認を取る。

 昨晩、二人に頼まれて一日一回は口同士のキスをする約束をしてしまった。

 それを今やってもいいか確認を取った。


 こくん


 二人は同時に頷いた。

「・・・わかったよ」

 シオンはそう言ってリィナから先にキスをする。


「・・・ん!?」

 シオンが口を付けた瞬間にリィナの目が見開いた。


「次は・・・」

 シオンは気付かずにレィナにも同じようにキスをする。

「ん!?」

 リィナより少し早い反応で驚くレィナ。


「おはよう」

 改めてシオンが朝の挨拶をする。

「「・・・おはようございます」」

 二人は同時に頭を下げて挨拶を返す。

 次の瞬間


「んにゃーーー!!」

「シオン君!朝から何を!!」

 二人はシオンに飛び付き左右から揺さぶりながら抗議の声を上げた。


「ええ!?二人が頼んで来たんだよ!?」

「そんなわけないでしょ!」

「そうです!朝から刺激が強すぎます!!」

「ええー・・・」

 二人は自分が言ったことを覚えていないようだ。

 シオンは相変わらず朝が弱い二人だと思うのだった。




「ったくもう!シオン君は!」

「節操がなさ過ぎます」

「・・・・・・」

 着替え終えた二人を連れて食堂へ向かう途中、二人は照れ隠しなのか赤い顔のまま抗議の声を上げ続けていた。


「シオン様、おはようございます」

「あ、シオン君。おはよう」

「おはよう、二人共」

 食堂へ入るとエリーとアカネが席に着いていた。


「リィナさんとレィナさんもおはようございます」

「おはよ、二人共」

「うん、おはよう」

「おはようございます」

 リィナとレィナの二人も挨拶をする。


「おはよう、二人共何かあったのか?顔が赤いが」

 エストはリィナとレィナにそんなことを聞いた。


「な、なんでもないよ」

「特にええ、いつも通りです」

 二人はそれがいつも通りではないと気が付かないのか疑問に思った。



「・・・おはよーございます」

 そこへリシアが寝ぼけた顔でやってきた。

「リシア、おはよう」

「あ、兄さん。おはよう・・・」

 リシアがここまで眠そうにするのは大変珍しい。


「リシア、何かあったの?」

「いえ・・・ちょっと調べ物を・・・」

 リシアはそう言っている今にも眠りそうだ。


「シオン様、ちょっとよろしいですか?」

 そこへメイドのセレンが話しかけてきた。

「昨夜遅くにリシア様は目が覚めて古い文献が見たいと言いだしたのです」

「古い文献?」

「はい、特に四大精霊のことをお調べしていたようです」

「精霊・・・」


 ふとシオンの頭に昨日のエリーがシオンの婚約者になったことを思い出す。

 アルバルトは四大精霊と契約している者は婚約者にみたいなことを言っていた。

 恐らくリシアは水の精霊を探そうとしているのかもしれないと考えていた。

 そして、ゆくゆくはシオンの婚約者になりたいのだろう。


「ほら、リシア。しっかりしないと」

「・・・うん」

 シオンは眠そうなリシアの手を引き席に座らせる。


「シオン君は優しいですね」

「あたしにもこんなお兄さんが欲しいな」

 レィナとアカネからそんな声が掛かる。


 その後朝食が運ばれてきて、皆でのんびりと食事をするのだった。



 シオンは食事後、庭で異空間袋の整理の続きを開始した。

 リィナやレィナにも着替えとかを部屋に運んでもらっている。

 そこへ

「シオン、ラケル殿は見なかったか?」

 エストの言葉で朝からラケルを見ていないことに気が付いた。

「そういえば朝から見てないね」


「ラケル様なら朝早くにお出掛けになりましたよ。同僚のナタリアをお供に付けてさせて頂いております」

 食材を運んで貰っているセレンが教えてくれた。


「それなら迷うこともないか」

 一人で出掛けたならともかく、お付きがいるなら迷うこともない。


「帰ったぞい」

 そこへ丁度ラケルが帰って来た。

「ラケル殿、その荷物は?」

 ラケルは両手に荷物を大量に持っていた。

「これは気になったものをあらかた買ってきたのじゃ」

「ら、ラケル様、一度部屋に置きに行きませんか?」

「おお、そうじゃな」

 後ろからナタリアというメイドの声が聞こえた。

 ナタリアも荷物を大量に持っており、重くて腕がプルプルと震えていた。

 ラケルは貸し与えられた部屋へと戻っていった。


「ラケル殿は何を買ったのだろう?」

「古い本みたいのは見えたけど」

「何か調べものでもするのだろうか?」

 ラケルは結局、戻って来ないで部屋で何かを調べ始めるのだった。




「ねぇ、シオン。また外に人がいっぱいいたよ」

「やっぱり待ち伏せされているのか」

 シオンは整理の途中、フィーに頼み外に人がいないか確かめに行ってもらったのだ。


 まだ外に人がいるとなると、どうやって冒険者の拠点(ギルド)に行こうか考えていると、屋敷にお客さんがやってきた。


「シオン、お前達のことだから屋敷から出られないと思って、こっちから来てやったぞ」

 フィルジアが昨日の状況から予測して、わざわざ来てくれたのだ。

 フィルジアの後ろにはカイとルシルもいる。


「おはようございます」

「ああ、おはよう。アカネの返事を聞きに来たのだが・・・。その前にシオン、アカネと契約したか?」フィルジアは突然そんなことを聞いてきた。


「えっと、どうしてそう考えたのですか?」

 フィルジアは『しないのか?』ではなく『したか?』と聞いてきたのだ。

「昨晩、カイが持っている大剣のマナがいつもと違う感じになったんだ」

「そうなんですか?」

「ああ、今までも見ていたが、あのマナの変質は視たことがなかったのでな。契約者であるアカネに何かがあったのかと考えたんだ」

 フィルジアはさすがに頭が切れる人だとシオンは思った。


「まぁ、昨晩アカネと契約をしましたよ」

「やはりそうか」

「で?そのアカネはどこだ?」

 カイがアカネの姿を探す。


「アカネなら着替えてもうすぐ出てくると思いますが」

 シオンがそう言うと、屋敷の中からアカネとリシアが出てきた。


「あ、おはようございます」

「おはようございます」

 アカネとリシアがフィルジア達に気付いて挨拶をした。


「おう、おはよーさん」

「おはよう、二人共」

「おはよう、二人で何処かに出かけるのかしら?」

 二人が外行きの服装をしていたので、ルシルはそうではないかと考えた。


「はい、リシアと一緒に服とかを買いに行こうかと」

「いつまでもリィナさんとレィナさんの服をお借りするわけにも行きませんから」

 二人はシオンからお金を受け取ってあるので、服を買いに行く予定だ。


「あ、そうだ。フィルジアさん。あたしシオン君と契約しましたから」

「ああ、さっきシオンから聞いたぞ」

「それでなんですけど、あたしはシオン君とリシアについて行こうと思います。だから」

「ふ、そんなことだろうと思っていたよ」

 フィルジアはアカネがそう言うのを予測していたようだ。


「だから、シオンと契約したのだろう?いざ瘴魔や魔人と戦う時にカイの大剣に力を持たせるために」

「・・・・・・はい」

 アカネはそこまで考えていたのだ。


「ま、あの炎があるだけかなり以前より、かなり良くなったけどな」


 カイは今まで身体強化だけで戦ってきたが、サラマンダーの意志が宿る大剣はアカネと契約することにより、青白い炎を出すことが出来るようになっていた。

 カイの元々の身体能力と相なって、凄まじい破壊力を生み出すことが出来るようになっているのだ。


「アカネ、オレ達はお前を拘束することはしねぇ。好きに生きていいんだ。お前が最初その炎のことを気にしていたが、ここにはそれを嫌う奴はいねぇ。だろ?」

「・・・はい」

 アカネは出会った頃は人を信用できなかった。

 カイに対しての最初の印象も最悪だったが、いつの間にか消えていた。

「アカネは頑張ってそこまでの強さも手に入れた。それを必要としてくれている人がいる」

 ルシルも最初の頃から精霊魔法を頑張って制御しようとしていたのを覚えていた。

「俺達が明日から行く旅はこないだの旅よりは安全だ。むしろ、お前達が気を付けろ。おそらく危険な旅になるのはお前達の方だからな」

 フィルジア達が行く旅はアルマブルクを中心に辺りの魔物を討伐して、沈静化するのが目的だ。

 シオン達の様に魔人討伐は目的としていないのだ。


「カイさん、フィルジアさん、ルシルさん。いろいろとありがとうございました」

 アカネは皆にお礼を言うのだった。


「シオン君、これからよろしくお願いします」

 そして、アカネはこれから旅に出る新たな仲間に改めて挨拶をするのだった。

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