第109話 新たな婚約者!?
シオン達は謁見の間の扉を開けた。
「む、おお!お前達か!良く無事でぐほっ!?」
アルバルトがリィナとレィナの方へ走りながら来たのを、リィナとレィナはまったく同じタイミングで思いっきり殴り、アルバルトを吹き飛ばした。
「な、何を・・・」
「「父上」」
「は、はい!」
リィナとレィナの冷めた声を聞いて、アルバルトは正座をした。
「父上でしょ?あの騒ぎの原因は」
「いや、お前達が帰ってくれば、それは魔人を倒したことと」
リィナの問いに答えたということはアルバルトに原因があるということだろう。
そのことについて、アルバルトは頑張って説明をしようとする。
「町の人は魔人を知らないはずでしょ?」
「最近魔物被害が多くてな。冒険者の拠点だけでなく我ら城の方にも依頼が殺到していてな。国民を安心させるために娘達が帰ってくれば解決すると」
どうやら国民の心の平穏を保つためだったらしい。
「それにしても限度があるでしょ!」
「ここまで来るのにどれだけ苦労していると思っているですか!」
「す、すまん」
国王が娘達に叱られていた。
そんな様子をシオン以外の皆は、後ろからただ呆然と見ているのだった。
「なぁ、シオン」
「なんですか?カイさん」
「あれってどういうことだ?なんで国王が娘二人に怒られている?」
カイは、というより、他の皆もアルバルトとリィナ、レィナの力関係を理解出来ていないようだった。
「あれは・・・まぁ、娘を溺愛し過ぎた父親って見てもらえればいいんじゃないかな」
「なるほど」
カイはシオンの説明になんとなく理解したようだ。
「それと父上」
「は、はい」
「離れの倉庫に隠し通路、作っていたのですね?」
「な!?なぜそれを!!・・・あ」
アルバルトは言ってから『しまった』という顔をした。
「昔から不思議だと思ってたのよね」
「父上は放浪癖がある。それは知っていましたが、城門を通っていないのに放浪癖があるというのが疑問だったんです」
「あんな所に隠し通路を作っているとは思わなかったね」
二人の言葉を聞いて、アルバルトはガタガタと震えだす。
「ど!どうか!城の者には内密に!!」
アルバルトは娘二人に対し懇願し始めた。
「なぁ、シオン」
「なんですか?カイさん」
「あれが国王なのか?」
「名目上は」
「それとオレが昔世話になったおっさんって」
「たぶん、放浪しようと変装したアルバルトさんでしょうね」
「・・・謝ってきた方がいいか?」
「言わないでいいと思います」
「・・・そうか」
カイは目の前で怒られているアルバルトが自分のせいと思うと、申し訳なく感じるのだった。
それから暫くしてリィナとレィナの説教と、新しい面子の紹介も終わり、バレスでの顛末を報告していた。
「そのベッフェルとやらは倒したが、他にも魔人がいるのだな」
「はい、なので安心するにはまだ早いかと」
シオンは決して油断しないように伝える。
「こちらからも報告いいだろうか?」
エストが前に出てくる。
「構わん」
その言葉にエストは一礼してから、話し始める。
「私は魔人イマーゴと名乗る者と少し話をしました。その時、魔人ベッフェルは壊れていると申していたのです」
「壊れているだと?」
エストの言葉に怪訝な表情をする。
「確かに最初に戦ったベッフェルと最後に戦ったベッフェルは人が違うように感じました」
「それは私も思った」
「ですね。あれは狂気で狂ったというより、何かが取り憑いた。そう言った方が正しいかもしれません」
「ふむ・・・」
ベッフェルと戦った三人はそう感じていたのだ。
「たぶん最初におかしく感じたのは、私がベッフェルを押し切った後からだと思う」
リィナも戦いを思い出しながら言葉にする。
「再起不能まで持っていったと思ったら、いきなり跳んできて殺されかけたもん」
「だ!大丈夫なのか!?」
「大丈夫だから今ここにいるんだけど」
「そ!そうだよな!!」
アルバルトは慌てたがすぐに平常心を取り戻そうとした。
「でも、イマーゴが言っていた壊れているの意味と、その実際にベッフェルの人が変わる意味、同じだとは考えづらい」
「イマーゴも知らない何かがあるということでしょうか」
結局、この事についてはこの後も話したが、進展がなかった。
「後は・・・そう、シオンの中に新たな精霊が産まれたことについてか」
アルバルトは興味津々にシオンに聞いてくる。
「といっても、僕もベッフェルを倒すときしかその力を出せていません。それにノーム達が言うには今は寝ているそうなので」
「そうなのか」
「あ、でもこの精霊はリィナとレィナのマナ、太陽と月のマナから産まれた精霊なので、瘴気に対抗出来る力を持っているそうです」
「おお!それは今後の戦力にシオンも入るということか!」
今まではリィナとレィナの二人しか魔人に抵抗出来なかったのだ。
それが一人でも増えるのは嬉しいことなのだろう。
「それについてなんですが、その・・・エリーも僕と一緒にベッフェルを倒したんです」
「む?どういうことだ?」
「えっとー・・・」
シオンはどう説明しようか考えエリーを見る。
すると、エリーは少し頬を赤らめ頷いてくれた。
「そのちょっとした事故でエリーと・・・そのキスしたことがありまして。その精霊が目覚めて力を貸してくれている間、エリーにも恩恵があったのです」
「それは本当か!?」
アルバルトは声を上げて驚いた。
「はい、恐らくエリーがノームと契約していたことも関連しているのではないでしょうか」
「・・・ということはだ。シオンと四代精霊の契約者が接吻すれば、戦力が増えるということだな!」
「えっと、そうなるんですかね」
シオンはあまりリィナとレィナ以外とキスをするのはどうかと思い、曖昧に答える。
「そうなるとあの話を進めてもいいか・・・」
アルバルトは一人でぶつぶつと何かを考え始める。
「リィナ、レィナ」
「「はい」」
アルバルトは二人の名前を呼んだ。
「実は以前、エルネスト王子殿下から一つの打診があったのだ」
「「打診?」」
「・・・まさか」
リィナとレィナは首を傾げていたが、シオンは嫌な予感しかしなかった。
「そこのエスカリーテ王女殿下をシオンの婚約者にとな」
「「・・・え?」」
リィナとレィナは硬直する。
「・・・・・・・」
エリーも訳が解らず呆然としていた。
「今後の魔人討伐には恐らくエスカリーテ王女殿下も一緒に行くことになろう」
確かにアルバルトの言う通り、エリーとエストは共に旅に付いてくる予定だ。
だが、婚約となるとどうなのだろうか。
「エスカリーテ王女殿下がシオンに好意を寄せていることは聞いている。共に旅をするのにリィナとレィナとだけ婚約者で自分がそうではない。それは少女にはきついと考えるのだが」
アルバルトはそう言って、リィナとレィナを見た。
「・・・平等となると抵抗はあるかな」
「そうですね。私達が正妻になると約束して頂ければ、今後も一緒にシオン君と結婚するのも了承できます」
二人は譲れない何かがあるのだろう。
考えてそういう結論を出した。
「エスカリーテ王女殿下、我が娘達はこう言っているがどうだ?」
アルバルトはエリーに問いかけた。
「その・・・リィナさん、レィナさん、私もその・・・シオン様と婚約させて頂いてもいいのでしょうか?」
エリーは祈るように両手を前で組み、リィナとレィナに聞いた。
「うん、エリーちゃんはシオン君だけじゃなく私も助けてくれたし」
「エリーちゃんがシオン君を守ってくれなかったら、あそこで私達は皆やられていたのかもしれないのです」
「そうそう。エリーちゃんはもっと自信持っていいんだよ」
リィナとレィナはエリーにかなり感謝をしているようだ。
これからも共に歩んでもいいと思うほどに。
「私が・・・これからも一緒にいて・・いいのですか?」
エリーは涙目になりながら聞いてくる。
「うん、エリーちゃん」
「これからよろしくお願いします」
二人がそう言うと、エリーは泣き出してしまった。
これは嬉し泣きなので、皆は見守るようにその光景を見ていた。
「・・・いいなぁ、私も」
ただ一人、リシアだけはそれが羨ましく思うのだった。
「なぁ、ちょっといいか?」
ここでカイが声を挟んだ。
「今の言い方だとアカネも婚約者になるのか?」
『っ!!』
カイの言葉に皆ははっとする。
「へ?あ、あたし?」
アカネは突然のことで頭がついてこれていない。
「だってお前、サラマンダーの契約者だろ?」
「そ!そうなのか!!」
カイの言葉にアルバルトは驚き声を荒げる。
「まぁ、一応は」
アカネは押され気味に肯定する。
「で、ではシオンと接吻は!?」
「い、いや・・・って、しているはずないじゃない!」
「な、なぜだ!?」
「だってまだあたしはシオン君のことそこまで知らないし、精霊魔法だってまだ皆みたいに上手く使えるわけでもないし」
アカネは顔を赤くしながら答えていく。
「「父上?」」
「・・・・・何でしょうか?」
アルバルトは興奮するあまりにまたやってしまったと思った。
「アカネさん、ごめんなさい」
「アカネは気にしなくていいから」
レィナとリィナはアカネに謝る。
「べ、別に気にしてないからいいけど・・・」
アカネは父親を叱る二人を見て、少し引き気味に答える。
「シオン、これから大変そうだな」
エストがシオンの隣にいつの間にかきて声を掛けてきた。
「その・・・エスト、よかったの?エリーのこと」
「いいに決まっているだろう。私はお前を認めているんだ」
「そっか・・・」
「それよりアカネのことはどうするんだ?」
「アカネさんは・・・精霊魔法は教えるつもりだけど、契約についてはまだ」
「だろうな。今はエリーも加わって大変だろうしな」
エストの言う通り、シオンの方もエリーに対して何かをしてあげなくてはいけないのかと考えていたりする。
「あまり気を張り過ぎないでいいと思うぞ」
「え?」
「エリーはお前のことを好いている。ただその気持ちに答えてやればいい」
「・・・・・・頑張ってみるよ」
「ああ」
なんだかんだで相談に乗ってくれるエストの存在にシオンは気が楽になるのだった。
報告が終わり、解散になったのだが、城の城門にはまだ人だかりができていた。
「これじゃあ、帰れないね」
「それなら向こうから出るか?なんだったらシオン達の屋敷の場所も位置さえ教えてくれれば何とかなると思うぜ」
「それじゃあお願いします」
シオンは断る理由がないのでカイに甘えることにした。
城の倉庫から城壁の外へ出て、路地をくねくねと移動しているとシオン達の屋敷の裏手側へ出た。
「あれか?」
「そうです。カイさんありがとうございます」
シオン達は無事に屋敷の近くまで帰ってくることが出来た。
「いいってことよ」
「ではシオン、一旦ここで別れるが・・・。リシアとアカネはどうする?」
「「え?」」
「いや、リシアは元々シオンに会うために里を出たのであろう?アカネに対しては無理して俺達に付き合う必要はない。恐らく数日したらまた旅に出るからな」
フィルジアは二人に説明する。
「・・・兄さん、私も一緒にいてはダメですか?」
「僕は別に構わないけど」
シオンはリィナとレィナを見る。
「私達はシオン君がいいっていうならいいよ」
「リシアちゃんともそれなりに長い付き合いになってきましたし」
「・・・・・・。それなら私は兄さんと一緒に行きます」
リシアは逡巡して答えを出した。
「そうか」
フィルジアは静かに頷いた。
「フィルジアさん、今までありがとうございました」
「いや、俺達もかなりリシアには助けられた」
「少し寂しくはなるけど、お互い旅に出ていたらまたどこかで会えるかもしれないしね」
フィルジアとルシルがリシアに話しかけてくる。
「カイさんも色々とありがとうございました」
「いいってことよ。これからも元気でな」
「はい!」
リシアは元気よく返事をした。
「アカネはどうする?」
「・・・・・・あたしは」
アカネは迷っていた。
カイ達にはお世話になったけど、友人となったリシアはシオンについて行く。
どちらについて行くのか迷っていた。
「一晩時間を貰ってもいいですか?」
「・・・わかった。それなら今日は・・・」
フィルジアはアカネの願いを受け入れ、今日の宿をどうするかを考えようとする。
「あの、シオン君。今晩少し話ししてもいい?」
アカネの願望により今日はアカネも屋敷に泊まることになった。
結局、一時一緒に暮らしていた、エスト、エリーに加え、予言者ラケルとリシアにアカネと、この日はお客さんが多くなり、シオン達の屋敷のメイドのセレン達は大変な思いをすることになった。




