第107話 激戦の後
「良かった。皆無事だったか」
ある廃屋に近付くとフィルジアが声をかけてきた。
リシアの案内で一つの廃屋にやって来ていた。
その中ではアカネが横になり、ルシルが横で看病していた。
「あれ?カイさんは何処にいったのですか?」
リシアはカイがいなかったので尋ねた。
「ん?あいつはじっとしてられないとか言って、見回りに行ったぞ」
フィルジアの言葉に皆は苦笑してしまった。
魔人を倒し、気が緩んでいるのだろう。
「それよりなんでリィナとレィナはシオンとリシアの後ろに隠れているのだ?」
フィルジアはいつも前に出るか、シオンの隣にいるリィナとレィナが後ろにいるのが気になった。
「二人とも怪我もそうだけど、服もぼろぼろなんだよ」
「そういうことか、しかし、服はあるのか?」
「一応持ってきているから大丈夫だけど・・・、アカネさんもいる?」
廃屋の中で寝ているアカネの服もかなり扇情的な格好だったので、シオンは尋ねた。
「お、お願いします」
アカネは顔を赤らめながら答えるのだった。
廃屋には女性陣とシオンだけが残った。
シオンがいるのは服を出すためだ。
リィナとレィナの服はいいとして、アカネさんのはどうしようか?」
そう言ってシオンはアカネの身体を見た。
(アカネはリィナとレィナより背が高い。胸もリィナとレィナより大きいかな。腰幅は・・・同じぐらいか)
「その、シオン君・・・そんなにまじまじ見られるのはちょっと」
シオンはアカネに大きさに合うような服を探すために、身体を見ていたため、アカネは恥ずかしくなってしまった。
「ごめん、でも一応身体の大きさに合う服を探すために・・・ね?」
「うぅ・・」
「取り敢えず兄さんが持ってきている服を見せてもらっていいですか?」
「わかった、ちょっと待って」
リシアはアカネに助け船を出すことにした。
「あーあ、結構お気に入りだったのになぁ」
「ですね。でも、この服も可愛くていい感じじゃないですか」
隣ではリィナとレィナがピンク色の下着姿で服を身体に当てながら話していた。
「・・・兄さん、なんで二人は兄さんに下着姿を見られても平然としてるのですか?」
リシアが小声でシオンに尋ねた。
「たぶん何回も見ちゃったから慣れたんじゃない?」
「兄さんは何回も見たんですね」
「・・・・・・」
シオンは何も言い返せなかった。
「あ、シオン君、下着も着替えたいから二人分出してもらってもいい?」
「えっと・・・これでいい?」
「ありがとうございます。シオン君」
シオンが白い下着を二セット渡すと二人は廃屋の奥へと着替えに行った。
「ここで下着も脱いだらどうしようと思いました」
「さすがに裸は数えられるくらいしか見てないよ」
「数えられるくらいは見たことあるのですね」
「しまった!」
シオンは墓穴を掘ったことにリシアに言われて気付いた。
「そういえば、未開の森でも私の・・・」
「リシア!ごめん!謝るからこれ以上変なこと言わないで!!」
シオンは嫌な予感がして、リシアに制止の声をかけるのだった。
「あの・・・服を」
アカネはこの時完全に忘れ去られているのだった。
「うーん・・・これが妥当なところですね」
今アカネはリシアが選んで、少し手を加えたのを着ていた。
「少し恥ずかしいかも」
アカネは下はミニスカート、上は下乳が見える服を着ていた。
シオンが持っていた服をアカネが着たところ、どうしても胸の部分がきつくなってしまったのだ。
リシアはレィナに一言謝り、胸の下部分に切れ込みを入れた。
切れ込みを入れたことで、胸部に余裕ができたのだが、下乳が丸見えという状態になってしまった。
元々着ていたぼろぼろの服よりは全然マシになってはいたが。
因みにシオンもこの場にいたが、着替える時だけは外へ退出していた。
「それよりアカネ、本当に着けないでいいの?上は大きさが合わないから仕方がないけど、下は・・・」
「あれ着るときつくてなんか嫌なんだ」
「でもスカートだってそんなに短いし」
「頑張って気を付けるから」
リシアが懸念しているのは下着だ。
アカネが住んでいた場所は下着の概念がない。
パンツみたいに締め付けられるのが嫌いらしく、今もミニスカートなのに着ていないのだ。
「着替え終わったか?」
いつの間にか帰ってきていたカイが廃屋の中を覗き込んで聞いてきた。
「はい、もう大丈夫ですよ」
リシアは答える。
リィナとレィナは相変わらず可愛らしい服だ。
「二人の服っていつもより魔導師っぽい服だね」
二人の着ている服は可愛らしくもありながら、どこか魔導師を連想させる服だった。
「これは二人で一緒に選んだんですよ」
「いい感じの色違いがあったんだよ」
リィナは赤、レィナは青の色合いが多い服だった。
「凄く似合っているよ」
「ありがと」「ありがとうございます」
そう言って二人はシオンに抱き付いた。
「そこでイチャイチャしないで下さい」
リシアほ羨ましく思いながらも注意をする。
「それにしてもアカネに合った服があって良かったな。これで吹っ飛ばされずに済む」
「あれはカイさんが変なところ見るからっ!」
アカネが抗議した時、いい感じの風が吹き、アカネのスカートを捲った。
「あ・・・やべ」
カイがヤバいと感じ逃げようとする。
「見ないでー!!」
ドガン!!
「ぐはぁ!!」
またもやカイはアカネに吹き飛ばされるのであった。
「だから下着は着た方が・・・」
「・・・うん、我慢して着る」
結局、アカネはパンツを履くことにした。
「シオン君、町で野宿した方がよくない?」
「いや、魔物の死骸が沢山あるから、それを狙って違う魔物が寄ってくるかもしれないんだ」
バレスの廃屋での野宿をしなかった理由を説明した。
シオン達は今、全員で南の街道を歩いていた。
シオン達は王都アルマブルクに帰るのに、未開の森を迂回する道を選んだのだ。
というのも、急いで戻る必要がないため、安全な迂回ルートを選択したのだ。
それと予言者ラケルにも報告が必要だったのだ。
因みにラケルのことを話すとエストとエリーがラケルの生存していたことに喜んでいた。
どうやら、二人はラケルに対し悪い印象を持ってはいないようだ。
エストの話によると、ラケルの件は国の上層部の貴族達が勝手に判断してラケルを追放したらしい。
エストとエリーは王族としてラケルに謝りたいそうだ。
「シオン、あの遺跡でいいんじゃないか?」
フィルジアが一つの遺跡を指差した。
その遺跡は中は完全に崩れて埋まっているが、天井が一部残っている状態だった。
壁も残っている場所があるので、敷居にもなりそうだった。
「そうしようか。これだけ町から離れれば影響も無いだろうし」
もう完全にに陽が落ちていたが、今夜は月が真ん丸と出ていたので、思ったよりは明るかった。
「シオン君、テント出そう」
リィナがシオンの隣に立って言ってきた。
シオンもそのつもりで、異空間袋からテントの道具を出している最中だ。
「兄さん、夕飯も作るから調理器具と食材もお願いします」
「ちょっと待って」
シオンはリシアの要望の物を探す。
「なぁ、シオン。後で軽く打ち合おうぜ」
「時間があったらお願いします」
シオンはカイから練習相手を申し込まれる。
「シオン、ちょっと聞きたいことがあるのだが」
「シオン君、その袋はどうなっているの?」
フィルジアとアカネからも何かを言われた。
「シオン様、私も・・・」
「ちょっと!そんな同時に言われても出来ないよ!」
「ぴ!」
シオンは頭がパンクしそうになり叫んだ。
「・・・あ」
「ただ・・・・私はシオン様を・・手伝おうと・・・」
涙目でエリーがシオンを見ていた。
「・・・・・・・・・」
「エリー、ごめん。エリーは何も悪くないから」
無言の圧力をエストから受けてしまい、慌ててエリーに謝った。
その後は皆でいろいろな準備を手分けしてやった。
流石にこの人数となると、食材の量も必然と多くなる。
「シオンのその袋にはいつも驚かされるな」
フィルジアが食事の量を見て感激していた。
「その袋凄いね。テントも入っているなんて信じられない」
異空間袋を初めて見たアカネは興味津々だ。
「でも量産は出来ないからね」
シオンは出来ない理由を話す。
主に材料とマナの流れの複雑さを説明した。
「・・・ごめん、全然わからない」
「アカネは精霊魔法使えるようになったばっかりですから、仕方がないです」
確かにマナの精密制御が出来ないと出来ない芸当だ。
「ほえー・・・、シオン君って凄いんだね」
「それは私達の婚約者ですから」
「だね。私達の婚約者だもんね」
そう言って隣にぴったりとくっついてくる。
「でもそこほつれてない?」
アカネが袋の一か所を示した。
「あ、ほんとだ」
リィナも気付いた。
「シオン君、これ大丈夫なんですか?」
「ん~・・・まだマナの流れは正常だから大丈夫だとは思うけど、帰ったら一度見てみるよ」
シオンは異空間袋の状態を見て言った。
もうこの異空間袋とも長い付き合いになってきている。
いつもはシオンが持っており、障壁とかで守ってきていたが、ベッフェルの攻撃を受けた際にはその余裕がなかった。
恐らく、その時に糸にダメージが通ってしまったのだろう。
「そうだ、シオン。お前の中の精霊とやらはどうなっているんだ?」
カイが思い出したように聞いてきた。
「そうですよ。精霊が孵化したってノームさんは言ってましたけど、まだ姿を見てませんよ」
「それ私も見てみたい!」
レィナとアカネもシオンの中の精霊を見たいって言ってくる。
「それなんだけど・・・。呼びかけてはいるんだけど、反応がないんだ。あ、でもちゃんといるって感じはあるから大丈夫と思う」
シオンは自分の中に意識すると今でも精霊を感じ取れた。
(たぶん寝ちゃっているんじゃないかな?)
(精霊も疲れたら眠るからね。それに産まれたばっかりなのに力をあんなに使ったんだ。しばらくは起きないと思うよ)
サラマンダーとノームが精霊の状態を教えてくれる。
「そうなんだ」
「それなら目が覚めるまでのお楽しみってことだね」
シオンとリィナは目を合わせて頷き合った。
「・・・なぁ、今何か言っていたのか?」
カイはなぜか首を傾げていた。
「ああ、すまない。サラマンダーとノームが精霊の状況についてだな・・・」
精霊の声が聞こえないカイとルシル、エストのためにフィルジアが説明した。
「なるほど・・・精霊の子供か」
「ちょっと見てみたいわね」
エストとルシルは精霊の子供に興味があるようだ。
「シオン君、せめてどんな姿をしているかわかりませんか?」
レィナはそんなことを聞いてきた。
「姿か・・・」
シオンは夢であった少女のことを思い出していた。
「僕も夢みたいのでしか見ていないけど・・・」
「うんうん!」
リィナが顔を近づけてくる。
「確か女の子の姿だったような・・・」
『・・・・・・・』
シオンが女の子の姿と発言したら、皆が白い目で見てきた。
「え?見た姿をそのまま言っただけなんだけど!?」
シオンは皆に白い目で見られているのが不思議でしょうがなかった。
「皆、今日はもう寝よう」
「そうですね。シオン君はきっと疲れているのでしょうから」
「兄さん、精霊が女の子がいいからってそんなこと言っちゃだめですよ」
フィルジア、レィナ、リシアが好き放題言ってくる。
「いや!実際に夢の中で!!」
シオンが何か言おうとすると
「シオン君、男の子だもんね」
「シオン君、一緒に寝てあげるから」
アカネとリィナもそんなことを言ってくる。
「シオン・・・お前というやつは」
「シオン様・・・、その、私じゃだめですか?」
エストは呆れたように、エリーはなぜか自分じゃダメかとシオンを慰めて来た。
「・・・僕、もう寝るよ」
シオンは諦めて寝ることにする。
「シオン、私はシオンのこと、わかっていますからね」
最後にフィーがシオンの耳元でそう言ってくるのであった。
戦いも疲れたが、皆の信用を得る方が疲れる。
そう感じるシオンであった。
シオンが横になると当たり前のようにリィナとレィナが両側に寝てくる。
そして、両側から二人は抱き付いてきた。
「シオン君、皆無事でよかったね」
「危ない時もありましたけど、今こうして温もりを感じられる」
「それだけが本当に嬉しいの」
「私達がいつまでもこうしていられるように」
「また頑張っていこうね」
魔人イマーゴには逃げられてしまった。
いや、イマーゴがやる気だったら死んでいたかもしれない。
これから魔人との戦いはまだ続いて行く。
これからはどうなるか分からないが、シオンはこの温もりを失わずに守っていこうと決心する。
「そうだね。それに・・・」
シオンは今日共に戦った仲間を思い浮かべる。
「あ!リィナさんレィナさん!ずるいです!!」
「私も・・・その、混ぜてください」
リィナとレィナがシオンと一緒に寝ているのを発見したリシアとエリーも介入してくる。
「ちょっと!重いって!」
シオンの両側が空いていないので、上からのしかかる二人。
「兄さん!女の子にそれはないと思います」
こくこく!
リシアの言葉にエリーも頷いている。
「今日は私達でいいでしょ!」
「そうです!シオン君を助けたのは私ですよ!」
リィナとレィナも二人に抗議の声を上げる。
「なにやってんだ。あいつらは」
「でも賑やかでいいじゃない」
「だな、あいつらがいなきゃ勝てなかったんだ」
「皆仲がいいんだね」
その様子をフィルジア、ルシル、カイ、アカネが見守っていた。
「皆、シオンのことが好きみたいだね」
フィーは皆の感情を見てみるとシオンにそれぞれ違う形の好意を寄せているのがわかった。
「私も寝よっかな」
フィーはシオン達が騒いでいるのを、少しうるさい子守歌として聞きながら眠りに就いた。
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(ふふふふふ・・・、あのシオンとかいう男。面白いではないか)
「魔人王様、何か面白いことでもあったのですか?」
黒いドレスを着た魔人の女が魔人王に問いかけた。
(いや、なに。ちと面白い奴がいたものでな。次に会うのが楽しみになってきたのだ)
「ガルディア様、まだ封印が解け切っていません。もう少し自重をなさった方がいいのでは?」
こちらの魔人はスーツのようなものを着ている男の魔人だ。
(別にいいであろう。私が復活し、人間を滅ぼす前のいい余興になるではないか)
そこへ年をとった老魔人が姿を現す。
「ガルディア様、報告します。双璧の精霊具は巫女の元へ渡った模様です。他の精霊具に関してですと、業の精霊具は行方不明、静流の精霊具にはリンネ様が向かっております。悠久の精霊具は封印が施され近付けない状況になっています」
(リンネとはあやつか?)
「はい、どうしても行きたいと申されまして」
(あやつは戦いとは無縁。他の奴らに同行させたのだろうな?)
「先程戻ってきたイマーゴの奴に追いかけるようには伝えております」
(イマーゴか・・・あやつはお調子者だから不安ではあるが・・・。まぁよかろう)
「ありがとうございます。ガルディア様、封印の方はどうなっておいででしょうか?」
(四大精霊の封印はほぼ解けた。後は巫女の封印だけだ)
「おお!すばらしい」
魔人王ガルディアが封印されている場所ではこんなやり取りがされているのであった。
皆さま、いつも読んで頂きありがとうございます。
ここまで来れたのも、皆さま読者のおかげです。
今話で『第四章 廻り出す運命』は終わりとなります。
ですが、この先もシオン達の冒険はまだまだ続きますので、最後まで是非お付き合いください。




