第100話 魔人ギリアムと黒龍
遂に100話です。
ここまで頑張って書いてこれたのも、ここまで読んでくださった皆さんのおかげです。
ありがとうございます。
100話っていってもまだ物語は続いていきますので、これからも是非お付き合いください。
「カイさん!」
シオンが目の前の人物の名前を呼んだ。
「まさかこんなに早くまた黒龍と戦う羽目になるとはな」
カイは目の前の黒龍を睨みつけた。
「シオン、こいつは俺達が引き受ける。お前らは魔人を頼むぜ」
カイは自分が魔人に手も足も出ないことをわかっている。
だから今はそれが最善だと考えていた。
「わかりました!」
シオンも意図をすぐに汲み、カイに黒龍を任せることにする。
そして、シオンはギリアムの方へと向かうのだった。
「お前らは向こうへ行かないのか?」
カイは近くに来たエストとエリーに話し掛ける。
「私達は魔人に太刀打ちできないのでな」
「そうか。そんなら手伝ってくれ!」
「ああ!」
エストの後ろではエリーも頷いていた。
「まったく、お前はいきなり走り出したと思ったら」
「そうですね。兄さんは向こうに行ってしまったようですし」
「また黒龍討伐するのね・・・」
「あわわわわ」
そこへリシア達も追いついてきた。
アカネは黒龍を見て慌てていた。
「緊急事態だったからいいだろ?」
「まぁ、兄さんを助けてくれたことには感謝はします」
「それよりこいつをどうにかするか」
「幸いにもシオンさん達がダメージを与えてくれているみたいね」
リシア達は黒龍を見据えた。
「ま、これだけダメージがありゃすぐに終わるな」
カイはそう呟いたのだった。
「兄様、この人達は・・・」
「話からするにシオンの妹の仲間か?」
エストはシオンのことを兄さんと呼ぶリシアの方を見て呟くのだった。
こうして黒龍討伐が再開した。
「さっきはよくもやってくれたわね!!」
リィナはギリアムに向かい短剣に炎を纏わせて切り込んでいた。
「くっ!使えん黒龍だ!」
ギリアムは瘴気を操り、リィナの攻撃に応戦していた。
「こちらもいますよ」
「ぐはぁ!!」
ギリアムはリィナの接近戦に対応している内にレィナを見ていなかったので、突如後ろに現れたレィナに気が付かなかった。
リィナとレィナは穴の中からシオンとエスト、エリーで黒龍を抑えているのを確認した後、すぐにギリアムに切り込んだのだ。
魔物使役をしていない状態のギリアムなら二人で太刀打ちが出来ていた。
ギリアム自身も常に使役する魔物で戦っており、魔物を使役しなくても瘴気を使えば何でも出来たため、自ら戦闘するのに慣れていなかったのだ。
「くそっ!何故そこにいる!瓦礫しかなかっただろう!!」
「そう思っていたのはあなただけではないですか?」
レィナはそう言って微笑んだ。
「む?あの女はどこ行った!」
気付けば近くにいたリィナが消えていることに気付く。
「もらった!!」
そう言ってリィナは太陽の光を収束した短剣をギリアムの背後から付き刺そうとする。
「声に出せば気付くわ!!」
ギリアムが声がした方を向き、瘴気を収束させ防ごうとする。
次の瞬間、辺りは昼より明るい光に包まれた。
「・・・なぜ・・貴様がそっちに・・・いるのだ」
ギリアムの背中に短剣が刺されていた。
ギリアムが瘴気を収束させ防御した方向には誰もいなかった。
「さぁ?なんでだろうね」
リィナはそう言って短剣を抜いた。
すると血ではなく瘴気がこれでもかってほど溢れ出てきた。
そして、支えを失ったギリアムは地面に倒れた。
「く・・・そ・・こんな・・とこ・・・」
そして黒い霧となり姿を消してしまった。
「リィナ!レィナ!」
そこへシオンがやって来る。
「シオン!上手くできました」
そこにレィナの髪の後ろからフィーが出てきた。
「フィーちゃん、ナイスでした」
「フィーちゃん、ありがとね」
「はいです!」
ギリアムがレィナの姿に気が付かなかったのも、リィナの姿を見失ったのも、そして、最後のリィナの攻撃の方向を間違えていたのも、全てはフィーによる幻術だったのだ。
「ギリアムは倒したけど、黒龍はどうなったの?」
「カイさんが何故かここにいて助けてくれたんだけど・・・」
「カイさんのことだからこっちに行けっていったのでは?」
「うん、まぁ、そんな感じ」
「じゃあ、一度カイさんの所へ行こうよ」
「そうだね、一旦戻ろう」
シオン達は無事に魔人ギリアムを倒し、黒龍の場所へ戻るのだった。
「くそ!頭潰れているのになぜ動きやがる!」
どす黒い血を流しながら放った尻尾の振り回しにカイは吹き飛ばされてしまう。
カイはあの後、サラマンダーの力を借り、巨大な青白い炎を大剣に収束し、身体強化を掛けに掛けまくって黒龍を10秒程で討伐してしまった。
「ま、こんなもんだろ」
カイがリシア達の方へ戻ろうとした時
「カイさん!後ろ!!」
リシアが咄嗟に叫ぶ。
「なに!?」
カイは身体強化が解いていなかったので、黒龍が放った黒い液体を避けることが出来た。
「なぜ動くんだ?頭は潰したし、体に風穴空いてんだぞ?」
カイがさっき与えたダメージでは普通生きれるはずがないのだ。
それなのに黒龍は頭が無い状態で起き上がっていたのだ。
そして、近くにいたカイに歩き出した。
「くそ!頭潰れているのになぜ動きやがる!」
どす黒い血を流しながら放った尻尾の振り回しにカイは吹き飛ばされてしまう。
「リシア!何か感じるか?」
「いえ、特には・・・」
フィルジアとリシアもあの黒龍に起こったことが理解できなかった。
「全然魔法も効いていないわ!」
ルシルも魔法を放っているが効果が見られない。というのも魔法自体は当たり、その部分がはじけ飛ぶのだがすぐに再生をしてしまうのだ。
黒龍はカイの剣やフィルジアの弓矢、リシアやルシルの魔法も全て受けても再生を繰り返していた。
「兄様・・・あれはグール?」
「恐らくはな・・・。誰かがグールにしたんだ」
エストとエリーは黒龍の状態に見覚えがあったので検討がついた。
二人はここに来るまでにオオカミのグールと戦っているのだ。
「おい!今なんて言ったんだ?」
近くにいたカイが話し掛けてきた。
「あれは恐らくグールと化している」
「ぐーる?」
「詳しくは分からないが、遙か昔の戦争で魔人のなりかけだとか」
「よくわからねえがあれは黒龍じゃねぇってことだな」
カイはカイなりに理解した。
「だが、あの再生力をどうにかしないと厳しいな」
「でも、あれだけの再生力を持つ魔法を掛けるには核のようなものが必要だと思います」
フィルジアとリシアも話しに入って来る。
「カイ、一旦離れるぞ。あいつは今の俺達じゃ倒しきれない」
「っち!俺が引きつけるから皆は逃げろ!」
カイはそう言って大剣に炎を纏い目立つように動き始める。
「私達は今のうちに離れましょう」
「リシア!」
リシアがそう言った時に声が掛かった。
「兄さん!」
リシアもシオンに気付き体が勝手に動き抱き付いてしまう。
「おっと、今はこんなことしてる場合じゃないでしょ」
「ごめんなさい、つい」
リシアは少し頬を赤らめて謝ってきた。
「シオン君、あれってグールになってない?」
「ですよね。黒龍でグールって卑怯ではありません?」
リィナとレィナはカイが引きつけている黒龍を見て言った。
カイはぎりぎりで避けては青白い炎を乗せた大剣での一撃をお見舞いしている。
黒龍はグール化してからの再生力が高く、壊れてもすぐに欠損を再生していた。
「私が一時的に動きを止めます」
「レィナ、お願い。僕がカイさんをフォローする」
「二人共!危ないですよ!」
リシアが心配して声をかける。
「リシアちゃん、私が一番あれを止めるのに適しているのです」
「それに、あそこにボロボロのリィナを連れて行くわけにもいかないしね」
リィナはさっきの戦いでだいぶボロボロになっていた。
「まぁ、怪我はレィナが治してくれたけどね」
リィナは笑って言った。
「でも、被害は少ない方がいいからね。じゃ、行ってくる」
シオンはそう言って飛び出していった。
「私も準備を始めます」
黒龍を足止めする程のマナを扱うのにはすぐにとはいかない。
レィナもマナを集めるのに集中するのであった。
「カイさん!」
シオンがカイに降り注ぐ黒い液体を風の精霊魔法で吹き飛ばす。
「おう!シオン、サンキューな」
カイはシオンが近付いて来るのが見えたので普通に返事をする。
「で、どうすんだ?」
「レィナがこいつの足止めの魔法を使います。発動する直前に僕が合図をしますので、離れてください」
「了解っと」
カイは黒龍の尻尾や後ろ足での攻撃を軽々と避けながら答えた。
「シオン!そういえば後で紹介したい奴がいるからな!」
「紹介?」
「ま、後で話すわ」
それから二人は黒龍に攻撃を与えつつ、避けに専念する。
「っ!カイさん!今です!」
シオンはレィナのマナが黒龍を包むのを感じたのでカイに合図をする。
「あいよ!」
カイとシオンは一気に黒龍から離れる。
次の瞬間、黒龍の足から胴体の上ぐらいまでが凍結した。
足を完全に止めた黒龍からシオンとカイは急いで皆のいる方へと走っていった。
「凍りなさい!!」
リシア達の方ではレィナが氷の精霊魔法を使うのを見ていた。
「レィナさん、精霊魔法の扱いがよりうまくなりましたね」
「リシアちゃん、ありがとうございます」
レィナは褒められて少し嬉しそうだった。
「あの二人が来たみたいだ。急いでここから離れるぞ」
フィルジアがそう言い終わった時にはシオンとカイは戻ってきていた。
「レィナ、助かったぜ」
「カイさん、無事で何よりです」
「お前ら、挨拶や自己紹介は後だ。ここから離れるぞ」
そして、シオン達は町の隠られそうな場所へと向かうのだった。
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「あのおっさん、やられちまったな」
上空からイマーゴがギリアムの最後を見届けていた。
「ま、黒龍が手に入ったから良しとするか。後は人間でいいのがいないか探すとするか」
黒龍はまだレィナの氷の魔法で動けないでいた。
「あれは帰りに回収するか」
そう言ってイマーゴは城の中へと素材を探しに入っていった。
「ベッフェルの奴、結構いい感じに暴れたんだな」
イマーゴは城の中庭から中へと入った。
城は原型を留めてはいるが、戦いの跡は痛々しく残っていた。
時間が経ち、人や魔物の死骸も腐り始めている。
「もう少し形が残っていた方がわかりやすいんだがな」
イマーゴはぶつくさ言いながら城を徘徊する。
そして、玉座がある部屋へと辿り着いた。
「ここに玉座があるってことは王様もここにいたのか?」
イマーゴは辺りを見渡した。
「ん?あれは・・・」
それは人としての形を成していなかったが、イマーゴにはそれが人にしか見えなかった。
「こいつはいい素材だな。よし、こいつにするか」
イマーゴはベッフェルから貰った瘴玉をその人だったものに埋め込むのだった。




