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32 村の奇病 4

本日二回目の投稿です。


30話が抜けていることに気づいて、投稿しました。2016.11.26


「クロムには肌が比較的見えない部分をお願いするわ。それでいいわよね、ロイド?じゃ、始めるわよ。グレイ頼んだわ」

『きゅ!』


 まずは、ミラークの身体のどの部分に魔物の幼虫が潜んでいるのかを調べる。それはグレイの【ソナー】で情報を私の頭に送られてくるから、筋肉や臓器の下に潜り込んでいても、手に取るように分かる。


「左足の太ももと胸の中央、そして腹部。じゃあ左足の脹ら脛まで誘導するわよ。クロムは足を、ロイドは腹部、私は胸よ。いい?」

「ちょ、ちょっとまって!どの部分と言われても、胸に潜んでいるのはこぶで分かるけど、太ももや腹部にはこぶが見当たらないぞ」


 ミラークは今、寝間着を取り払い、下着姿である。ぴったりと身体に密着しているので、美人でグラマーな彼女の姿をみて不埒な考えを起こしてもおかしくないほどなまめかしい姿だ。だから不自然な部分は一発で分かるのだけど、太ももと腹部にはこぶが見当たらない。深くに潜んでいるのだろう。


「大体の位置は教えるわ。そこに緩く魔力を流していればその内浮上してくるから、その後は分かっているわね」

「出来うる限り痛感の鈍い足裏に移動させるんだろう?分かっているよ」


 二人とも位置に付き、手を患部に当てる。


「ロイドはもう少し左、クロムはそのままでいいけど、他を見ない!」

「クロム!絶対に後で殴る!」

「仕方ないでしょう?僕も年頃なんだから、女性の身体に興味があるんだよ」

「はいはい!始めるわよ。魔力を流して」


 私達は緩く魔力を患部に流し始めた。すると大人しくその場で動かなかった魔物の幼虫が動き出す。

 魔物は下級魔物であっても総じて魔力を好む。

 人も魔力を持っているので、意識しないでも微弱な魔力を放出している。初めに訪れたときにミラークの身体のこぶに触ったら動いたのが証拠だ。ミラークよりも魔力の多い私の魔力に興味を示したのだろう。まだ食い破るほど大きくなっていなかったのが幸いした。

 私に向かって惹かれるように動いたから、浅葱に下級魔物であっても魔力を好むのか、それと外からの誘導が可能かどうかを聞いて「可」の答えをもらったのだ。その後の治療方法は、人間の身体のことは分からないからやったみないことには分からないそうだ。


 幼虫は自分が成長するまで餌である寄生体を殺さないようにしているだろうから、移動の大幅は血管だと予測される。痛がっているから肉等も少しは食べられているだろうけど、血液の循環とともに魔力も循環しているので、血管に潜んでいる可能性は高い。

 血管が皮膚から近く、切断しても直ぐにショック死を引き起こさない場所・・・足先・・・私はそれしか考え付かなかった。


 私達はゆっくりと、魔力を餌に魔物を左足へと誘導する。

 先の到達したのはクロム、そしてロイド、私が一番遠かったので最後だが、左足のくるぶし辺りにこぶが三つ並んでいる状態になった。このこぶの下に魔物の幼虫が潜んでいるのだ。流石に足裏までは無理だったようだ。


「ここまでは成功ね。ロイドとクロムは飛び出してきた魔物を退治して。シルバーも瞬時にハイヒールをお願いね」

『きゅう!!』

「「分かった」」


 幼虫を寄り道させずに一直線にここまで誘導するには、細やかな魔力制御が必要になる。魔力を与え過ぎると成長して食い破るかもしれないし、弱すぎると他の臓器に隠れてしまう。

ハイヒールは傷を治療できるが失った脳や臓器の損傷までは治せないのだ。

 再生可能な【リジェネレイト】の呪文を覚えるまでシルバーのレベルを上げれば一番いいのだが、どのレベルで覚えるのか分からないのに時間を費やしている場合じゃない。


 細やかな魔力制御は魔法を使う者しか出来ない。それでも神経をすり減らすので、私達は大きな運動をした後のように汗を流していた。


 私の精神力、あと少し持ってね。


 ポーチからナイフを取り出し聖水で清めた後、ミラークの左足のくるぶしに当てる。


「ふぅ・・・・・・」


 大丈夫。私は蘇芳が取ってきた肉を何度も捌いて、ナイフの扱いに慣れている。力加減でどれ程切れるか手が覚えているわ。大丈夫よ。


 腱を切らないように、一気に引く!

 食料とする肉を切り刻んでいたのに、人間の身体を切るとなると嫌な感触が手に伝わる。その一瞬後、血があふれ出した。

 血の流れによって押し出されると思っていた、魔物の幼虫は一向に出てこなくて、血ばかりあふれていく。


「どうして出てこないの?」


 大きくなりすぎて動けない?流れに逆らっている?

 これ以上ミラークの身体を切り刻むのは、後で不安が残る。出てこないのなら無理矢理おびき出すしかない!

 といことで、ざっくりと切れた傷口に自分の指を当て、先ほどよりも多めの魔力を流し込む。するとこぶが揺れた。そして傷口から―――


『阿呆が!』

「え?」


 首に巻き付いていた浅葱が何かを呟いたかと思うと、私は後ろに引っ張られ床に背中を打ち付けた。

 ひっくり返るその瞬間にミラークから飛び出してくる何か、魔物の幼虫が私の上を飛び越えいく。

 あれ?もしかして流す魔力が強すぎた?あのまま立っていたら、私は幼虫に囓られていたみたい。


 背中を打ち付けたと同時に、幼虫が壁に激突する音が三つ。


「痛いっ!って、そんな暇はなかった。ロイド、クロム、幼虫をやっつけて!」

「おう!って、何処行った?」


 二人は私がひっくり返ったから驚いて、目を離した隙に幼虫が何処かに逃げたようだ。


「何やってるんだよ、ロイド。血の跡を追えばいいだろう」

「そういうお前も目を離しただろうが!」


 この二人って仲悪いのかな?なんだかずっと言い合いしているよ。


 血の跡を追ってタンスの後ろ、ベッドの下、天井へと移動している幼虫に短剣を振り回して追いかける二人。幼虫は彼らに任せて、シルバーに【ハイヒール】をかけてもらう。その様子を私は【サーチ】で観測していた。


ミラーク・・・15歳

状態【衰弱】

HP 76

MP 12


 HPもMPもかなり下がって衰弱しているようだけど、寄生という文字はなくなった。私が切った足の傷も【ハイヒール】で綺麗になくなっている。

 魔物に寄生されて身体が魔に汚されているから、この後どうなるか分からないけど、今のところは成功したと言ってもいい。


「良かった・・・」


 今すぐどうなるという原因は取り除けた。峠は越えたのだ。一気に脱力感が襲ってきたけれど、ロイドの言葉によって再び緊張が襲ってきた。


「くそ!後一匹何処に行った分からねぇ!」


 扉も窓も閉まっている、この部屋からは逃げられないのに、いくら探しても見つからないらしい。

 幼虫も成体同様、透明の姿をしているから血を吸収して透明な身体になったのだろう。


「グレイ!」

『きゅ!きゅきゅきゅう!』


 グレイに頼んで【ソナー】で探してもらうと、扉の隅で逃げる機会をうかがっている魔物がいた。


 赤い点に向かってナイフを振り下ろそうとしたら、点が私に向かって飛び跳ねた。


「!!」


 どうして私ばかりに飛びついてくるのよ!


 幼虫といえど、肉を切り裂く歯を持っている。噛まれたら痛いだろうと、咄嗟に顔を庇ってしまう。


『まったく世話が焼ける』


 浅木の声が聞こえたと同時に、「ぎぎやぁ!」という悲鳴?が耳に届く。


「・・・えっと、もしかして助けてくれたの?」

『向かってくる敵に目を背けてどうする。一直線に来ているのだ。本来ならチャンスだろうに』

「そういえば、さっきも助けてくれたよね。重ね重ね有り難う」

『ここまで鈍くさいとは、な・・・』


 酷い・・・事実だけど酷い・・・これでも頑張って鍛錬しているから、ぐっさりとくるんですけど。


「姉ちゃん!!」


 魔物がやっつけられたと知ったロイドは姉であるミラークの元へと駆け寄った。


「寄生状態はなくなったから安心して。でも、身体は魔物に汚されているから、この聖水と増血剤、回復薬を飲ませて様子をみてね」


 ポーチから取り出した薬をチェストに並べて、それぞれを説明していく。


「マジでルーシア有り難う!」

「皆の力を合わせたからよ。ロイドもクロムもお疲れ様。後でクロエにも言って置いてね」

「分かったよ」

「でもね、これからが大変なんだから、休めるのはもっと後だよ」

「んあ?何で?」

「やっぱり、そうなるのか」


 クロエに頼んで薬を作ってもらっているから、クロムには察しは付いていたようだ。


 私達はミラークの部屋をかたづける暇も無く、教会に戻り、ランス神父に奇病のことを説明する。

 もちろん、伏せなければいけないスライム達や私の能力を隠したままで、書庫で見つけた本に書いてあったと説明、そして四人で協力して原因にたどり着いたと誤魔化したけど。

 もちろん、ランス神父には怒られましたよ。人体実験したと同じだから人の命を何だと思っているんだと。軽々しい行動は慎みなさい。後、大事なことは相談して欲しいとも。

 そして、よく頑張ったね。とクロエも混ぜて四人とも頭を撫でられた。

 前世とも通算◯◯歳である私だったけど、頭を撫でられて嬉しかった。なんて感動している暇はありませんでした。

 その後はまるで戦場。深夜に近い時間になっていたけど、孤児の子供達も手伝ってもらって一軒一軒の家に赴き、病人を教会へと集め、私、ロイド、クロム、クロエ、ランス神父の五人でミラークに施した治療を手分けして治していった。

 五人で誘導し、飛び出してきた魔物はロイドとクロムが、治療の再に出来た傷は私とランス神父が、クロエには患者に薬を与えるのと掃除をしてくれた。血まみれとなっている教会の聖堂を綺麗にする掃除が一番きつかったかも・・・それでもクロエは文句も言わずに手伝ってくれた。クロエが失った足・・・その部分を切ると知った後でも気丈に動いていた。


 このことでランス神父が、私が光魔法の治療魔法が使えると勘違いされたけど、仕方ないよね?これを伏せてしまうと、調子の悪いランス神父が全員の回復をしなきゃいけないんだもの。

 素早くしなければいけないものを、能力云々とか言っていたら、亡くなってしまう人が増えるだけだもんね。

 【サーチ】とグレイの【ソナー】だけは隠したよ。何処に魔物が潜んでいるのかは、感と言っておいた。こればかりは神様からもたった力だし、身につけているのが魔物だとばれるわけにいかなかったからね。


 村を襲った奇病、魔物によって寄生された村人は全部で66名にまでのぼり、内、19名は私達が治療法を見つける前に死亡。治療中に亡くなった人も7名いた。40名助かった訳なのだが、素直に喜ぶことは出来なかった。亡くなった人が多すぎるということもあるが、ミラークのように卵を三つ産み付けられてのは当たり前で、まだ少ない方だったのだ。平均で5匹産み付けられており、寄生体が死亡しているということは、成長した幼虫が近くに潜んでいるということなのだ。130匹の幼虫が村にいる可能性があり、そいつらが成虫になって、再び村人を寄生し始めると手に負えない。卵を産み付けた成虫も近くにいるかと思うとまだまだ増え続けるということだ。

 村人の奇病の原因を取り除けたのは3日後、その後は、村中総出で幼虫と成虫探しとなったが、透明な身体を持つクリア・アイヤタルを見つけるのは困難だった。

 夜中に【ソナー】で村を探索すると、幼虫は畑の作物や浅瀬の土中に潜んでいることが分かった。これも似たようなことが本に書いてあったから、そのままランス神父に伝え、村人に伝達してもらったのだけど、透明な身体を持つ魔物だから一匹一匹を駆除・・・という訳にいかず、結局は畑を燃やして焼殺すしかなかったのだ。


 魔物を探し出すことが出来る私が駆除すると言ったのに、村人は私のことを信用せず、集団パニックになって畑という畑を焼き払ってしまった。

 成虫はその炎に煽られ何処かに行ってしまったようだけど、畑を焼くことによって、収穫間近の野菜は全て灰になってしまう。


 この奇病のせいで冬を越す食料がなくなってしまったのか・・・と、静まりかえった村を眺めて納得してしまった。

 私が手を出さなくても、その内王都に出した手紙の返事か、それともランス神父が手がかりを探し出して終息に向かっていただろう。だけどそれを待っていたら死人をもっと出していた。死人の数は少ない方がいい。だけど、魔物の幼虫を退治するために田畑を焼いてしまい冬を越せないほどの食糧難となってしまったのだ。残った食料で冬を越すのは、人数が少ない方が良かったのかもしれないと思うと複雑だった。


 それでも、やはり死人は少ない方がいい。自分が手を貸して、成果を上げられたのだけど、もの悲しい気持ちで村を眺める。

 この先に訪れる食料確保のために醜い争いが始まるとことに、分かっていても回避できなかった為、少しだけ心を痛めた。


 そして私は―――村を追い出されてしまった。

 奇病の原因を探り、村人達を救った私だったけれど、魔物を感で探し出すことが出来る。やはり魔物と意思疎通が出来るから危険だ!終いには今まで人を襲ったことのないクリア・アイヤタルを呼び込んだのは私だと言われ、ロイドやランス神父の弁解も聞かずに村を追い出されてしまったのだ。


 ああ、どうやっても運命には逆らえないの?


 村人総出で森へと追いやられ、帰ることが出来なくなった私は、一つの大きな岩に上って焦げ茶色に染まった村を眺めた。




村の奇病はこれで終わりです。次のお話までは少し日が空くと思います。

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