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31 村の奇病 3

30話が抜けていることに気づいて、投稿しました。2016.11.26


 浅葱とグレイからこの部屋に自分たち以外の魔物がいると教えてもらったけれど、警戒しながら見渡せど、家具以外と自分たち以外に何もない。一応、タンスの裏とかベッドの下とか隠れられそうな場所も確認した。


『かなり小さい気配だ』

『きゅきゅきゅう?』


 自分の【ソナー】で確認する?とグレイから提案が来たので、探査をしてもらって共有すると、小さいながらも魔物の反応がある。ただ【ソナーの】範囲が広いので場所が特定しずらく、範囲をこの部屋だけにしてもらうと、どうやら反応はベッドの辺りらしい。って、ベッドの辺り?ミラークしかいないんだけど?まさかねぇ。


「グレイ、もっと範囲を狭めて、ミラークさんのみを対象にして」

『きゅ!』


 範囲を狭めることで性能が上がるのか、小さく淡い光の点がハッキリと写るようになる。その赤い点はミラークの胸の間だった。

 まさかが当たった。


「ちょっとミラークさんの服を脱がさせてもらうわね。ロイドは後ろを向いていて」

「おう」


 はだけた部分、丁度胸の谷間になる部分に小さいながらも不自然な膨らみが・・・こぶ・・・?じゃない、これ動いているよ!

 丸いこぶじゃなくて、楕円形よりもまだ細い。横1センチ縦2センチの小さな膨らみ。この中に何かがいるみたいで、少しずつ這うみたいに移動していた。

 私がそれに触れようとしたら、突きだしたかのように動き出す。まるで私の指めがけて動いたみたい。

 気持ち悪い!


「なにこれ!!?」

「何だ?なにがあった!?」

「こら、見ちゃダメ!いくら兄妹でも見たらダメでしょ!」


 駆け寄ってこようとするロイドに、結婚前の乙女の胸を見せるわけにはいかないので、来るなと指示を出す。


「う~ん・・・・【サーチ】」


 その気持ち悪い動きをする部分に向かって【サーチ】をかけてみた。ミラークの皮膚があるから上手く反応するかどうか分からないけど、ものは試しだ。


クリア・アイヤタル【幼虫】・・・下級魔物。成長すれば透明な羽と身体を持ち、見つけるのが困難な魔物であり、微弱な魔力を有する物に卵を産み付ける。卵からかえった幼虫は寄生体の魔力を餌とし、その後は植物を餌とする。幼虫も透明である。


 ダメ元で試した【サーチ】に反応があったのは良かったのだけど、これは・・・!


「魔物だって!?」


 ミラークは魔物に寄生されているということで、魔力が少しずつ減っていっているのは、この魔物の幼虫が餌として食べているから?でも、魔力が減っていくぐらいでは死ぬまでは至らないはず・・・


「おい、魔物ってどういうことだ?」

「ちょっとまって!考え中、邪魔しないで!」


 心配からロイドが口を挟んでくるが、それに構っていると思考が分散してしまいそうで、

答えられない。兎に角整理と考えに集中することにした。


 この魔物の特徴がどこかで聞いたか、見たことがあるんだよね。でも何処で?

 私が誰かから聞くなんてことは殆ど無いし、私と会話するのは限られている人数だ。ということは何処かで見た?

 !―――あ、思い出した!闇魔法のことが書かれた本だ!錬成の素材として書かれていたんだわ。

 透明な羽と身体を持っているから、下級魔物であっても魔物ランクがCで、攻撃は確か鋭い羽と・・・歯!


「そうか!羽は成虫にならないとないけれど、歯は幼虫でもある。もしかして、体内を食い荒らされている?それだったら早く治療しないと!」


 あれ?それだったら【ヒール】で治るよね?ランス神父も治療で治らなかったと言っていた。

 だったら、食い荒らされて弱っている身体に【ヒール】をかけるとどうなるのか?を考えてみることにした。

体力がある程度回復して傷は治る。魔力は【ヒール】で回復しないが、減っていた魔力は普段の回復力に―――!


「ああ!そうか。そういうことなんだ!」

「どういうことなんだよ!!説明しろ!」

「ミラークさんは魔物の幼虫に寄生されていて、そいつを取り除かないとやばいってこと!」

「な、何だって!魔物!?だけど、どうやって取り除くんだ・・・?」


 魔物で戦いてたロイドだったけど、そいつがミラークの身体に入っていることを知って、焦りと困惑に変わる。


 そう、そこなんだよね。どうやって体内に入っている魔物を退治するか・・・一番簡単な方法は魔物が潜んでいる部分を切り離すことだ。でも、実はミラークの身体の中には一匹だけではなく、3匹いるみたいなのだ。そいつらを取るために切り離すと、生きてはいられないだろう。地球のような技術があったとしても、幼虫は体内を食い破って逃げることが出来るから、時間のかかる手術は向かない。素早く切り離すことしか・・・

 胸の中央のこぶの下にいる幼虫はこのこぶを切り離せばなんとかなりそうだが、場所が場所だけに危険だ。

 うむむむむ―――取り除く方法かぁ。


「・・・・・・・・・・・・浅葱、話しを聞いてもらってもいい?」

『何だ?』


 首に巻き付いてマフラーごとく大人しく見守っていた浅葱に自分の考えを聞いてもらった。


『その通りだ。だが、それを実行しようとすると、寄生体の身体が持つかどうか危険な賭けとなるだろう』

「・・・・・・有り難う。浅葱」

「おい、こら、いい加減にどうなっているのか答えろよ!俺に聞く権利はあるだろう!!」


 弟であるロイドにも聞く権利はある。でも話したところで反対しそうな危険なことをしようとしているのだ。でも協力してもらう必要があるから話すしかない。


「ミラークさんは魔物に寄生されていて、治療魔法を使っても治せない。それどころか、治療することによって魔物に餌を与える状態になるから、酷くなる一方なの。このままでは死んでしまうわ」

「な・・・!」


 今の状況だけでも絶句するような絶望的なのだ。そこに私の話しを聞けば、希望は生まれるかもしれないけど、即死に繋がるものでもある。ロイドは悩み苦しむだろう。


「助かる方法はあるけど・・・とても危険なことで、例え助かっても後遺症が出るかも知れないけど、話しを聞きたい?」

「聞く!助かるかも知れないんだ、当たり前だろう!!」


 本当に簡単に返事していいの?私の考えは空想上のものであって、絶対に助かるものでもない。しかし、命がかかっているのだから勝手に進めるわけに行かないのも事実。家族であるロイドの許可が無ければ実行できないし、勝手に進めて失敗すれば、私はただの人殺しである。

 人殺しになる覚悟がないから、同意を求めて共犯者になって欲しいだけのずるい考えなんだけどね。分かっていても私にはそんな勇気が無い。


 私の考えと治療法を説明すると、やはりロイドはうろたえ、顔色をなくした。


「どっちにしろ、このままだと姉ちゃんは助からないんだよな。そして今はその方法しかない?」

「そうだね。もしかしたら、王都にはもっと良い方法があるのかも知れない。でも王都の人を待っている間に死者は増える一方だわ」

「だったら!ルーシア、頼む!俺も手伝うから、姉ちゃんを助けるために手を貸してくれ!」


 よく決断したわね。ロイド。流石は勇者一行と言ったところ?


私を恨み勇者一行のメンバーになるロイドが私に頭を下げている。なんだか変な気分だわ。

手を貸さず、あるいは失敗すれば彼は私を恨むことになるだろう。成功すれば・・・もしかして・・・という希望はあるけれど、彼はその先の未来を知らずに頭を下げている。憎む相手になるかもしれない私に向かって、一条の光を掴むために強いまなざしで強い意志で。それが闇に染められる先があるとも知らずに。

見ていられなくて私は扉の方へと歩いて行った。


「ルーシア・・・?」

「ぼけっとしている時間は無いのよ。言われなくても手伝ってもらうわ!まずは人と材料集めよ。貴方は教会に行って誰にも知られないようにクロムを秘密の畑に連れてきて!」

「わ、分かった。ルーシアはどうするんだ?」

「私は先に秘密の畑に行って、足りない薬草を採取するわ」


 ロイドの家を出てまともに秘密の畑に向かえば時間がかかりすぎるので、人が来ないだろう物陰に隠れて【転移】でとんだ。


「必要なのは麻痺薬、増血剤、眠り薬、解熱剤そして一応念のために回復薬も―――いっぱい必要じゃない!」

 

 元々作っていた熱冷まし用の解熱剤と、痛み止め用の麻痺薬の材料はある程度そろっているものの、後々のことを考えると丸薬よりも飲み薬の方がいいだろう。ということで作り直しだ。


「スライム達手伝ってね。倉からアカルバ、センカ、シャゼングサの種を取ってきてもらえる?分かるよね?」

『きゅうう!!』


 他にも色々と作らなければいけない薬草はあるけれど、先にその三種を作ろう。混ざってしまえば後でより分けが大変になる。


 ロイド達が来る頃にはあらかたの薬草を植えることが出来、上手い具合に頃合いに成長した物があるので、息を切らしてやってきた二人に休む間もなく指示をする。


「そこの赤い実を全部回収して、そしてこっちは根っこが必要なの。早く!」

「お、おう・・・!」

「ルーシア非常時なのは分かるけれど、何の草なのか、手で触っても大丈夫なのか説明はしてもらえないのかな?」


 前もって聞いていたのか、ここにいるスライムや蘇芳たちを見ても目を大きく開いただけで、見事にスルーしたクロムは通常運転だった。


「そんな暇はないわ!それに危険な物なんてないから、片っ端から採取して」

「あたしは何をすれば良い?」


 おずおずと口を開いたのは、クロエだった。


「クロエ、あなた・・・大丈夫なの?」


 クロエは片足を失ってショックを受け寝込んでいたはず・・・それなのにこんな所まで連れてきて男達は何を考えているのか。

 エミーリオがこの村からいなくなっても、出て行かない理由の一つであるクロエ。仲良くなったのだから、ショックで寝込んでいたら気になると言うものだ。


「大丈夫よ。最近は誰かさんにもらった無骨な義肢で歩く練習をしているんだからね。あたしを舐めないで!」


 うん、なんというか、クロエだなぁ。本当に元気になって良かった。


「んじゃ、採取した物を薬にするから手伝ってもらえる?そしてここで見たものは内緒にしてね」


 お手製の乳鉢と秤の使い方をクロエに説明して、薬草を粉末にして分量を量ってもらう。

 私はというと【錬成】で薬草を乾燥させたり、川の水で何故出来るのか未だに不思議だけど聖水を作ったり、粉末になった薬草を混ぜて薬を作ったり、足りなくなりそうな薬草を【育成】したりと、大忙しだった。


 私が【錬成】と【育成】を使ったことに、三人は驚きを表したが、前もってここで見たことは内緒にして欲しいと言っていたために、今のところは追求してこなかった。


 出来上がった薬を持って【転移】で先にミラークの元へと行きたいところだけど、手が必要だからクロムとロイドの三人で走ることになった。クロエは手伝うと言ってくれたけれど、魔物と戦うかも可能性もあるので、私の納屋で薬の続きを作ってもらっている。ミラークが成功すれば、薬はもっと必要になるからね。


「さて、覚悟はいい?」


 私達はロイドの家に着き、ミラークには必要な薬を飲ませた。今は苦痛もなくぐっすりと眠っている状態だ。


「ああ、俺も覚悟を決めた」

「段取りは聞いたからいつでもいいけど、ロイドは本当にいいの?僕、赤の他人の男だよ?」

「もし!不埒な考えに至ったら俺がクロムをぶっ倒す!んでもって、お前の記憶から消し去る!!」

「え~~、それって成功しても僕は記憶がなくなるまで殴られるってことだよね?」


 今から死ぬか生きるかの荒行事をするんだけど、何を言い合いしているのか。

 多少危険な目に遭ってもクロエに頼めば良かったかな?人選間違えたかも・・・


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