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30 村の奇病 2

すみません;;30話が抜けていました。

2016.11.26 投稿




 ゆっくりと話せる状態になったので、その場で座って話しを聞くことにしたけど、ロイドの話はそんな悠長なことをしている場合じゃなかった。


「お姉さんが、あの病気にかかったの?なんでもっと早くに言わないのよ!」

「いや、言おうとしていたんだけど、お前が・・・」


 ロイドのお姉さんはミラークさんと言って、村一番の器量よしの15歳。この奇病で亡くなってしまうのは知っている。そしてそれが原因となってロイドは私を恨むことになるのだ。

 もし、この病気からミラークさんを助けることが出来たのなら、私の運命を変えることが出来るかも知れない。


「一体いつから?ランス神父に伝えないと!」


 手遅れになる可能性が高い致死率の高い奇病。だけど、初期ならなんとかなるかも。ランス神父に見てもらわないと。と教会へと向かうべく立ち上がったのだけど、ロイドはその場で座ったままだ。


「ど・・・」


 どうしたの?と言いたかったのだけど、


「ランス神父様も倒れたんだよ。あの奇病ではなくて疲れからだと思うけど、今のランス神父様は動かすことが出来ないそうだ」


 ああ、何てことなの。村で唯一の治療できるランス神父様が倒れてしまうなんて・・・これじゃ、奇病を食い止めることが出来ない。原因も感染ルートも分かっていないのに・・・


 奇病が発生して既に6日たっている。その間、私は私で出来ることを、痛み止めと熱冷ましの薬草を作りランス神父に渡したり、帰ってきたランス神父から様子を聞いて症状を書き留めたりはしている。教会から外に出してもらえない私が出来るのはそこまでだ。

 発病者はもうすでに40人を超え、その内の9人が死亡している。

 高熱が出て身体から痛みを訴える症状は一緒なのに、痛みを訴える場所が腕だったり喉だったり、内臓や頭だったり、それぞれ違うのだ。そして死亡した方々は血まみれで発見されている。

あれから分かったことは、症状が重くなると、意識がなくなり身体の何処かにこぶが出来る。そのこぶが死亡時には破裂しているらしいということ。

 こんな症状は、前世でも聞いたことがない。こちら特有の病気だと思うけど、私には専門的な知識は持っていない。唯一ランス神父が頼りだったのに・・・。連日の疲れがたたったのだろう。

 手の討ちようがなくなった。


「どうしたら・・・・・・」


 村の人たちには感染ルートが分かっていないので、むやみに出回らないことと、手洗いうがいを徹底してもらっているにもかかわらず、急速的に広まっていく。

 CTやMRI、レントゲンなんかあれば原因が分かったかもと思うと、前世の記憶がある分、悔しい気持ちが膨らんでいく。

 一体何のための前世の記憶なのよ!全く役に立たないわ!


「ルイス神父がダメなら、もうルーシアに頼むしかないんだ。ルーシア、俺の姉貴を助けてくれ!」


 今全く私は役に立たないって感じたとこなのに、どうしてロイドは私に頭を下げるのよ。


「私は医者でもないし、光魔法の治癒は使えないのよ。私に頼んでも何も出来ないわ。出来るとしたら薬草を分けてあげるぐらい何だけど」

「いや、ルーシアなら出来るかも知れないと思っている。俺たちを助けてくれたんだから」


 どんな理屈よ。あの時も結局クロエも水龍さんも誰も救えていないのに、落ち込むようなことを言わないで。それに貴方たちを助けたのはついでで、目的は水龍さんを助けることだったのよ。勘違いしないで欲しい。


「ランス神父様が出来ないようなことが私に出来るはずないでしょ!貴方の目にはあの時の私がヒーローのように写ったかも知れないけど、現実を見なさい!クロエは足を失い、子供達はトラウマになっているのよ!私は冒険者達をやっつけたわけでもないし、ただ時間稼ぎをしただけよ・・・」


 嘘をつかれてさらわれた子供達の殆どが外に出られなくなっていると聞く。本当のヒーローや勇者ならそうなる前に助けられたはずなのだ。私にはこの子達がいたから逃げる時間を稼ぐことが出来たけど、私自身の力とは言えない。

 子供の思い込みで何でも出来ると思われるのは不快だわ。


「それでも俺たちは生きている。無理でもいいから、姉貴を見て欲しい!なんでもいい、何もしないよりは何かにすがりたいんだよ!頼むから姉貴を見てくれ!」

「・・・・・・」


 なんだ、私が出来ないのも分かっているんだ。それでもじっとしていられなくて自分よりも力がある、不思議な力をもっている私に縋ることによって壊れそうな理性を保っているだけなんだ。

 私が運命に逆らうのと同じなんだ。じっとしてられなくて、ダメで元々、少しでもあがいてみようと・・・希望を捨てなくないんだね。

 自分の首を絞めかねないけど、しゃあないよね。


「・・・何も出来なくても恨まないでね」

「っ!ルーシア!!有り難う!」

『お人好しだな』

「浅葱!」


 また急に叫んでどうしたんだ?とロイドは不思議そうな顔をしているけれど、それに答えることはない。

 助ける手立てを探し出せなかったら、恨まないでと頼んだところで、ロイドは私を恨むだろう。手を尽くしても助けられなかった場合も同じく。このまま無理だと押し通したところでも、何もしてくれなかったのだからと恨まれる。恨みが私の矛先に向けられないのは、助けられたときのみ。

 無謀だよね。本当。見なかったことにすれば、少しは心の痛みが減るのに、あえて飛び込んで悲惨な結末を見にいこうとするんだから、馬鹿だよ、私。


 ミラークを見ることにしたはいいけど、私は村を歩くだけで非難され、水汲み以外に教会の外に歩くことは許されない。だから、ここは変装するしかないのだ。


「スライム達も一緒に行くけどいいよね?でないと私はいかないよ、というか行けないよ」

「こいつ等にも助けられたから、俺は怖くない」


 何が必要になるのか分からないから、全ての薬草の種類を鞄に詰め、スライム達を身体に巻き付けて準備する。

 スライム達が変形して私の腕や頭にくっついたのを見て、ロイドは腰を抜かしそうになっていた。

 おやおや、そんなんでこの先勇者達と一緒に旅が出来るの?というぐらい驚いていた。


 人間嫌いである浅葱が珍しく付いてくると言うので、小さくなってもらって私の首に巻き付いている。動かず大人しくしていたら鬣が上手い具合に落ち着いて水色のおしゃれな襟巻きに見えるのよね。

これで準備万端。蘇芳はお昼寝中なのでお留守番になった。身体は大きくなったけど、まだ子供なのでよく寝るの。


「す、すげえな。こんなスライム見たことないぜ」

「そう?」


 私にとってはもう変形なんて当たり前なんだけどね。スライムは魔物の底辺だから、変形するまでレベルが上がらないのかも。


 町中に入る時点になって、スモークに頼み私の変身してもらう。といっても茶色の髪と瞳を変えてもらい、なんとなく男の子に見えるようにしてもらった。


「へぇ、これだったら村人はルーシアと分からないよ」


 目立つ黒髪黒目を変えただけだったら、ロイドみたいに見破る人がいるかも知れないので念のためだ。


「変わっていられる時間は限られているから、直ぐに貴方の家に向かうわよ!」

「ああ、父ちゃんと母ちゃんは丁度隣村に買い出しに行っていていないから、家の中は大丈夫だ」


 ロイドの家は金物屋さんをやっていたわね。両親はその仕入で丁度いないらしい。姉と弟で農作業をしていると聞いたことがある。


 駆け足でロイドの家に着くと彼の言ったとおり、両親はいなかった。一階は作業場兼金物屋の店みたいで、二階が彼らの住処のようだ。すぐさまミラークが寝ている部屋に案内してもらうと、彼女は村一番の器量よしとは思えないほど顔色が悪く、苦しんでいたせいか綺麗な髪はもつれ絡まって、ぐったりとしてベッドに横たわっていた。頬も幾分かこけている。

 ベッドの横には水を張った桶と、彼女の額には濡れたタオルが。

 こんな姉をロイド一人で気丈に看病をしていたのね。偉いじゃない。

 ランス神父から聞いた話しによると、高熱と身体の痛みを伴う。痛みのせいで気が狂ったように暴れる人もいるらしい。が、ミラークは疲れ切った顔色をしているが、寝ているようだ。


「姉さんはいつから熱が出始めたの?」

「昨日の夕方から。裏の畑で倒れているのを見つけたんだ」

「意識はある?それともずっと眠ったまま?身体の何処かに痛みを感じるとは聞いた?」


 ミラークの症状とランス神父が見てきた村人達との症状が同じかどうかを確認する。出来れば違って欲しいと願いながら。


「起きているときはずっと息が荒くて苦しそうだ。たまに身体の何処かが痛いと言ってた。あ、そうだ、倒れる直前に虫に刺されたと言っていた。その時は少し赤くなっていたけど、今は何ともないから、関係ないのかも」

「・・・虫・・・?それはどこを刺されたの?」


 何の虫か分からないが、虫が病原菌を運んでくることもあるのだ。

ロイドが言うには右の手の甲だという。確認してみるが、腫れどころか赤みすら見当たらなかった。


「う~ん、倒れてから何処が痛いか言っていた?」


 ミラークが起きているのなら、本人に聞くのが一番だけど、寝ているのを起こして苦痛を味合わせるのは可哀想だ。


「昨日は腕が、今日は喉が痛いって・・・何か分かりそう?」


 ロイドが言う場所にこぶがないかどうかを確認してみるが、今のところはない。だからといって油断できないだろう。いつこぶができ、それが破裂するか分からない。

 さて、どうしようか。私に出来ることは本当に僅かしかない。


「ここで見たことは全て内緒に出来る?」

「ああ」

「本当に?」

「しつこいな!誰にも言わないよ!そんなことで姉貴が助かるんだったら、安いもんだ!」

「じゃ、約束だよ。シルバー、ミラークさんにヒールを」

『きゅ!』


 シルバーの返事とともに、ミラークの身体がほのかに光り出す。シルバーがかけたヒールの効果だろう。その光が消えた後、ミラークは回復に向かうのではなく苦しみだした。

 ランス神父から聞いていたけど、やっぱり回復系が効かない。それどころか苦しみだした?どういうこと?


「【サーチ】」


ミラーク・・・15歳

状態【寄生】

VL.5

HP 118

MP 21


 女性一般のHPは180、MP50が普通だけど、病気に犯されているからHPが少ないのは分かる。でもMPが少なすぎないだろうか?

 それに寄生って、やっぱり虫に刺されてのが原因で何かに寄生された?


 ミラークに二重の【サーチ】をける。


HP 118/174

MP 21/70


 最高値が出る。地味なことなんだけど、これが結構役に立つ。特に【育成】なんかしているとガンガン魔力を使っていて、ぶっ倒れる直前まで集中してしまうことがあるけど、これのお陰で気をつけることが出来るのだ。


 それにしてもこのミラークの数値は・・・シルバーの回復魔法で多少回復したとしても、熱と痛みでそれまで体力を消耗しているからこの数値は分かる。しかし、何故魔力が減っているのだろう?魔力は寝ている時間に回復するのに・・・


「ロイド、ミラークさんは昨日、なにかの魔法を使った?」

「姉貴は魔法は使えないぜ」


 魔法を使えないのに一般平均より上の数値って勿体ないね。じゃなくて、じゃあどうして魔力が減っているの?これって病気と何か関係あるのかな?


 そうして見ていると、魔力が21から20に減った。


「ん?」


 暫く【サーチ】を切らずに観測していると、また魔力が一つ減った。そして一つ増える。

 増えるのは多分、寝ているから回復しているのだろうけど、減るのは何故?


『ルーシア、魔物の気配がある』

『きゅ!』

「え?」



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