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24 覚醒・・・って何のことでしょう?



 目の前が真っ赤になる。


「スモーク幻影!インディゴはあの剣を壊して!」


 振り下ろそうとしている剣士の前にスモークが作った剣士そっくりの幻影が現れ、突如現れた自分に驚いている間に、インディゴが剣に向かって【錬成】をかける。

 インディゴの【錬成】は私より早い。だが、動いているものに魔法をかけられないので、止める必要があるのだ。

 振り上げたまま固まってしまっている剣に錬成陣が現れる。しかし、


『きゅきゅう!』

「出来ないの?あの剣の方がレベルが高いから?」


 いつもならグレイを挟まないと詳しい言葉は分からないのに、今はどういうわけか彼らが言っている言葉が分かる。


 やはりあの剣は龍の鱗を切り裂いてしまえる特殊な剣だったのね。

 パープルの【重力】を使って重くしても軽くしても振りきられてしまうだろう。まず、レベルの低いスライム達には太刀打ち出来ない。

 だったら、


「シルバー全力で傷を治して、お願い!」


 傷が付けられる前に回復をすれば、深くならないはず。


『きゅっきゅきゅう!』

「え?」


 マナポーションが切れて、魔力も殆ど残っていないですって?

 スライムは魔物の底辺、私から生まれて能力は素晴しいが、魔力は乏しい。

 私にはまだまだ魔力が残っているのに、悔しい!私には何も出来ないの!?


 スモークが作り出した幻影が何も出来ずにただあるだけに気づいた剣士は、自分そっくりな幻とともに水龍を切りつけた。


『ぐああっ!!』


 再び水龍からの悲鳴と赤い血が飛び散る。


「嫌、やめて!!」


 咄嗟に【転移】で剣士の元へ行き彼の腕をつかむが、子供の力では止めるどころか、飛びついた腕を振り払われて数メートル飛ばされる。


「邪魔をするな。お前は後だ!」


水龍討伐があと少しで叶うのだ。私のような雑魚は彼らにとってはハエが飛び回っているのと同じなのだろう。目もくれようともしない。


 悔しい!悔しい!悔しい!何も出来ない自分が悔しい!こんなにも魔力があるというのに、私は無力だ。


 再び目の前が真っ赤に染まった。

 さっきも真っ赤に染まったのだけど、それは水流が流した血だと思っていたのだけど、どうやら視界全体が赤く染まっているようだ。

 何・・・?何かを訴えるみたいにちかちかしている。

 自分自身に【サーチ】を唱えたのは無意識だ。変わった草や興味が引かれた物に【サーチ】を唱えていた習慣だろう。

 そのお陰で、自分に付いた新たな能力に気づくことができた。


【従魔】のレベルが上がっていたのだ。さっき浅葱を従魔にしたからレベルが上がったのね。【従魔】で出来ることはどうやら自分の魔力を従魔に譲渡できるよう。

これは使えるわ!


「シルバー!私の魔力をあげるから全力で傷を治して!」

『きゅ!』


 私もっと力があったのなら!光魔法の適性があるのだから【治癒】も身につけていたならっ!

 この水龍討伐で冒険者と対峙してから何度思ったことか。自分の不甲斐なさに怒りすら覚える。


 枯渇しかかっているパープルやインディゴ、スモークにも魔力を与えて、冒険者からの攻撃を、水龍と私からそらしつつ全力でシルバーに魔力を注ぎ込んだ。

 

 シルバーが使える魔法が【治癒】魔法の最下位だとしても掛け続ければ、きっと良くなるはず。私のチート並みの魔力がようやく役に立つ!と思っていた。

 だけど現実は小説のように円満になることはなく、非情だったのだ。

 スライム達の陽動からかいくぐって攻撃を仕掛けてくる冒険者達。私にも少なくない被害を被っているが、どれもまだ掠り傷だ。それよりも的が大きく動けない水龍のほうが負う怪我が数多く、シルバーの【ヒール】が追いついていないのだ。

 シルバーだけでなく、陽動してくれているスライム達にも魔力を与えていたから、私の高い数値である魔力量であってもいつかはなくなる時が来る。そう、それが今である。何も状況が変わっていない今。


 睨み付けてた冒険者の姿がダブった。そしてついには立っていることも困難なぐらいに世界が回る。


 やばい、これは魔力の枯渇だわ!


『きゅうぅ・・・』


 グレイの心配そうな声が聞こえたけれど、耳鳴りも酷くて返事を返すことも出来ない。

 なんたること!唯一自信を持てる魔力量すら役に立たないなんて!

 私は・・・私は・・・・・・なんて無力なの・・・・・・

 黒髪黒目をいとわず、種族すら関係なく接してくれた貴重な水龍さんが生きて欲しいだけなのに。怪我を治したいだけなのに。それだけなのに、そんな小さな願いすら―――


 目眩も吐き気も酷い。本当に自分は地面に立っているのかも怪しく感じられるほど五感が狂っている。だけどそんなことが些細に感じられるぐらいに私は腹を立てていた。


 水龍さんも私も小さな幸せだけで良いのよ!何も世界を手にしたいとか、誰かを支配したいとか思っていない!

 静かに暮らしたいだけ!それのどこか悪いのよ!

 不幸になると分かっている結末を変えようとして何処が悪いのよ!

 物語の強制!?補正!?ふざけるな!誰が流れを作っていようとも生きているのは私達よ!

 ここで流れが変わらないというのなら、私は記憶を持って今世に生まれ変わった意味が無い!

 何が何でも水龍さんを助けるわ!


『きゅきゅうぅ・・・』


 シルバーから魔力が無くなりそうだけどどうしよう?って言ってきている。


 私の魔力も枯渇していて渡す物がない。でも、無ければ絞り出せば良いのよ。

 濡れた布を手で絞って水気が出なくなったとしても、遠心力を与えたり更なる力を加えたら水が出てくるのと同じ。

 それに生き物には火事場の糞力というものがあるのよ。

 無いと分かっていてもシルバーに【魔力譲渡】を自分に命令する。枯渇しようとも私は生きているのだからどこかにあるはずなのだ。指の先髪の毛の先のどこかに。


『きゅ!?』


 私の体からシルバーに何かが流れていった。ほらね。どこかにあったでしょう。

 それを使って水龍さんを治して。と言おうとした。だけどその前に


『きゅきゅいきゅうぅ!』


 それ以上譲渡してはダメ。ご主人様の生命力が流れているから!とグレイからの警告が発せられた。

 それと当時に目の前が再び真っ赤に染まった。


 これは・・・さっき【従魔】のレベルが上がったと同じ?


 シルバーに与えた【魔力譲渡】と同じか感覚で【サーチ】を使うと、自分のステータスに驚くことが書かれていた。


 【光魔法】【育成MAX】。


 詳しく見ることが出来なかったけれど、【育成MAX】になるとどうやら熟練度やレベルすら上げることが出来るようになるらしい。

 こんなに便利な魔法には反動という物があるのかも知れないが、考える間もなく早速、シルバーのレベルを上げてやる。グレイの忠告も聞かずに。


『きゅ!きゅう!』


 ダメ!ダメだよ!と何やらグレイが叫んでいるけど、気にしている余裕はない。レベルが上がれば【ヒール】より上の【ハイヒール】を覚える可能性もあるのだ。希望に繋がる。これが留まっていられるわけがない。


 レベル30で【ハイヒール】を覚えたシルバーは魔力量も増し、水龍さんの傷を今までの数倍の早さで癒やしていく。


 後は冒険者だ。これ以上水龍さんの傷を増やすわけに行かない。さっさと退場して貰いたい。

 【育成MAX】を使って他のスライム達もレベルを上げる。そして私の【転移】の熟練度もMAXまで引き上げた。


「スライム達反撃よ!」

『『『きゅ!』』』


 パープルは操れる重さが変わって、そこら辺の石をぶんぶんと放り投げ、スモークは幻影を動かせるようになり冒険者を翻弄させ、インディゴは【錬成】の大きさもさることながら、スピードも格段に速くなって、走っている冒険者の上に【錬成陣】を発動させ水を浴びせ邪魔をする。


「なっ!!」


 今までろくな反撃が出来ずに稚拙な翻弄しかしてこなかった私達・・・もとい、冒険者の目には私しか映っていないわね。そんな私から今まででは考えられないレベルの反撃を食らって一様に驚きを隠せないでいた。


「軌道を変えて石が飛んでくるぞ、気をつけろ!」

「くそっ!水を含んだ服が重くて動き辛いぜ!」

「なんだこの闇は!?俺が切ったのはゴブリンだぞ!」


 それぞれのスライム達がいい仕事をしてくれて、冒険者達が連携できなくなり動きが鈍い。

 だが、遠巻きにスタンバっている魔法士達は被害がない。スライム達から距離が保たれているから、彼らの魔法が届かないのだ。よって遠距離の魔法はスライムの攻撃を物ともせず飛んでくる。

 そこで私の出番だ。

 飛んでくる魔法、【ファイアーアロー】だろうか、それをレベルを上げた【転移】を使って消し去る。いえ、【転移】で空の彼方へと移動させる。


「わしの魔法が消滅しただと!お前は一体何者なのだ!!」


 魔法で作り出した攻撃、石つぶてやエアカッターなどを全て他に【転移】させていると消滅したかのように見えるみたいだ。

 魔法士達にはどのように消しているのか分からないようで私が得体の知らない者として写っているのかも知れない。


 私達には攻撃手段が限られていて、これ以上どうしようもない。だったら


「ふふふ・・・それを私が答えると思って?たかが冒険者風情に?」


 意味深に答えて恐れを抱いて貰った方が隙が出来る。上手くいけばこの場を立ち去ってくれるかも知れないとそう思って芝居じみたことを口にしたのだけど、心の奥底で違う感覚がふつふつと沸き上がってくる。


 ・・・恐れろ・・・恐怖しろ・・・おののけ・・・そして地に伏せろ・・・


「どうせ、貴方たちは私が何者かを知ったところでそれを伝える術はないわ」


 自分の不甲斐なさに対して、事情も知らずに攻撃してくる馬鹿な冒険者達、優しくない世界に、全てにおいて私は怒りを覚えていた。

 その感情が振り切れたのかもしれない。

 暴走した感情が勝手に私の口を動かし



「だって貴方たちは―――」


 忌み嫌い私を受け入れてくれないのなら・・・私の力を恐れて嫌うのなら・・・いっそのこと・・・・・・無視できないぐらいに・・・恐れろ!


 この地で死ぬのだから―――


 自分の思考から外れた感覚が全身を染め上げようとしていた。





ようやくゆっくりと出来る休みが来た。

遅くなって申し訳ありません;;

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