第127話
ふとこちらに歩いてくるその姿を見つけて、私は大慌てで道の先にいる柾輝くんに向かって猛ダッシュした。
「柾輝くん! ちょっと! ちょっと!」
「は? おい凛夏!?」
【モルフォ】の方々に頭を下げて柾輝くんを借りる。私たちのスペースに戻った時、その人は沢里と談笑していた。
「やー! 凛夏ちゃん、Masakiくん! 二人ともおめでとう!」
日に焼けて赤くなった顔をにこにこさせて、義父その人が立っていた。よく見ると【モルフォ】のグッズTシャツを身に着けているあたりしっかりライブを楽しんでいた様子だ。
「あれ、いつものおっちゃん。来てくれてたのか!」
「もちろんだよ!」
いつものおっちゃん。柾輝くんの義父の呼び方がおかしくて私は笑ってしまう。
「柾輝くん、この人、私たちの今のおとうさん!!」
「は!?」
「まあMasakiくんは再婚時にはもう疎遠だったから、親として会うのは初めてだねえ。なんなら戸籍謄本見るかい?」
「マジで……?」
いつもライブに来ていたファンが義父だと言われたら誰だって混乱するだろう。柾輝くんはしばらくフリーズして、頭を抱えてしまう。
「リンカん家って複雑だよな」
「そうなのかも」
義父と沢里と一緒に笑う。義父と家のことで笑い合えるようになったのはつい最近だというのに、ずっと昔から仲がよかったような気分だ。
「君たちのお父さんとは地元が一緒でね。片田舎だったから小学校から高校まで一緒だったんだ。よくギターを聴かされたもんだよ。で、感想を求められるから困ってしまったね」
「父さんと?」
柾輝くんは驚いた顔で義父を見つめている。
「ああ。あいつがデビューしたときに手紙を書いてそれきり連絡を取っていなかったんだが……不思議な縁もあるものだね。こうして君たちの家族になれたんだから」
義父はしみじみと言って空を見上げる。義父にもきっと色々なことがあって今ここにいるのだろう。前妻とは死別したと聞いている。
家族の形は難しいけれど、私たちは今こうして同じ空を見上げている。
それはやはり奇跡だと思うのだ。




