3.かき回しちゃった
車に乗って学校から自宅へ帰っている最中のことだ。
(ありえません。レオク様にあんなこと言ってしまうなんて本当にあなたは悪霊ではなのですか?)
(悪霊じゃないってば。この世界の悪霊がどんなのかもよく分かんないけど、アタシはわるいもんじゃないから。でもさ、アンタはあの王子のことが好きで王子もアンタのこと好きっぽかったじゃん。もうくっついちゃいなよ)
(そんな簡単な話じゃありません! お話になりません!)
(やれやれ)
身体の持ち主にガミガミ言われながら自宅へ到着した。この世界のしがらみとかよくわかんないけどめんどくさいなって思ってしまう。身分の違いだかなんだか知らないけど、好きな人同士がくっつかないのはなんだかもやもやする。
この身体の持ち主の意識が戻ったからにはアタシもできるだけこの子のために動きたいと思ってしまっている。
それが余計なお世話だとしてもアタシは自分がスッキリしないのも嫌だからこの子のために動くことに決めた。
家に入ると、母親がまたいろいろと小言を言ってきていた。
ただ、もうこの身体の本人が中にいるから、返答はこの子に任せてアタシは仲介役に徹することにしてなんとかやり過ごすことができた。
母親をやり過ごし、習い事も苦戦しながらこなした後ようやく大きなお風呂で一息つくことができた。
(いやー、アンタも大変だねーこんなの毎日やってたら頭おかしくなっちゃうよ)
(あなたが庶民であることは理解しました。礼儀作法がなにもかもできておりませんもの)
(うるせーな、アタシには強気に出れるくせに周りにはだいぶいい子ちゃんの顔見せてたみたいじゃん)
(あなたが礼儀をわきまえて無さすぎるのです)
(はいはい)
いろいろとやかましいが、身体の持ち主がいることで不安はだいぶなくなった気がする。この世界のことはもうフィアナ本人に聞けばだいたい分かるようになったのは心強い。
問題はアタシがこれからどう行動していくかだ。
前まではとにかく分かんないことだらけで流れに身を任せるしかなかったけど、今は少しこの世界のことが分かってこの身体の持ち主とも会話できるようになった。
じゃあ、これからのアタシはアタシ自身として生きていけばいいのか本来のこの身体の持ち主であるフィアナとして生きるべきなのか、そこが難しいとこだ。
アタシとしてはフィアナの身体に勝手に入っちゃったわけだから、まずフィアナの意思を尊重したいって思う。
でも、アタシにも意思があるしこれからこの身体で生きなきゃいけないんだとしたら自分が納得できないことはしたくない。
だから、フィアナの気持ちを優先したいというアタシの気持ちに従って動いてみようと思う。
一週間が経過した。
アタシはフィアナの指示を聞きながらなんとかこの世界で暮らしていけていた。
今日も学校でまるで興味がない授業を受けていた。
アタシの中にいるフィアナが授業を聞けるように授業中は起きていないといけないのが結構大変だった。
どうやらアタシが寝ると身体を共有しているフィアナの意識も途切れてしまうみたいだった。
「フィアナさん、今日のお昼レオク様とご一緒するのでしょう。羨ましいですわ。でも私はレオク様が近くにいたら頭の中が真っ白になってしまって何を話したらよいか分からなくなってしまいそう」
「そーなんだ。まぁ王子様だもんねー、じゃあ行ってくるね」
ベローチちゃんの過剰な反応に適当な相槌をうち、別れることにした。
今日はあの王子様とお昼を一緒に食べる約束をしていたので、指定されていた空き教室へと移動する。
「もういるなんて早いじゃん。王子様やっぱ楽しみにしてた感じ?」
「どうやらまだフィアナの身体に取り憑いているようだね悪霊さん」
(ミリム、失礼な態度をレオス様に取るのはおやめなさい)
(向こうもアタシを悪霊扱いしてくるから失礼だけどね。じゃあさこれからはアンタの言葉をそのまま王子様に伝えてあげるよ)
(きゅ、急に困ります!)
「きゅ、急に困ります!」
「困る? 何を言っているんだ?」
「いえ、レオク様に対してじゃありません。この失礼な態度を取っている悪霊に対して言っているのです」
「どういうことなんだろうか。本当のフィアナが話しているのか、悪霊が私をからかっているのか、どっちかわからないな」
「レオク様、数回に渡っての失礼な発言申し訳ございませんでした。私の声でとんでもないことばかり言ってしまってどう責任を取ったらいいのか」
「今話しているのがフィアナ本人なら別に気にすることはないよ。すべて悪霊が悪いわけだからな。もし、悪霊が私を騙しているのだとしたら本当に許さないぞ」
「マジで疑いすぎなんだけど。あの子に喋らせても話が進まなそうだからまたアタシが喋ることにするけどさ」
「お前と話すことなどないがな」
「さすがにそんな言われるとムカついてくるね。でもさ、アンタが怒ってるのって結局フィアナのことが好きだからなんじゃないの?」
「そういうことではないと前も言っただろう」
「フィアナはアンタのこと好きになってるんだけど、アンタはそうやって誤魔化すんだ。王子様だかなんだか知らないけど、男としてカッコ悪いね」
「言わせておけば⋯⋯、やはりお前は祓わなければいけないようだな」
「そうやって逃げるんだ、フィアナに対しても、自分の気持ちに対してもさ」
「⋯⋯、もし私がフィアナに好意を持っていたとしても私はこの国の第一王子なんだ。既に決められた婚約者もいる。私の気持ちがどうとかいう問題ではない」
「フィアナにも婚約者が今いるんだけどさ、そっちに関してはアタシがなんとか話をなかったことにしようかなって思ってる」
(あなた急に何を無茶苦茶なことおっしゃっているんですか! そんなことしてよいわけがありません!)
「アンタは所詮自分のことも自分で決められない周りの言いなりの王子様ってことなんだね。それならフィアナも大人しく今の婚約者とくっつくしかないか」
「非常に腹が立つ。腹が立つが、お前のその挑発に乗ってやろう。確かに私はフィアナに好意を抱いている。ただ、その気持ちを明かすことが許されない立場にいることを自覚している。だがしかし、お前のような悪霊にそこまで言われたままにしておくのも気分が良くない。フィアナが私のことを好きだと言うのであれば、私はフィアナを妻にするために動こう」
(フィアナ、王子様がアンタにプロポーズしてるよ。アンタの気持ち聞かせてよ)
(そ、そんな⋯⋯、信じられません)
(そういうのいいから。どうなの?)
(私はレオク様のことが好きでございます。けれども⋯⋯)
(分かった。あとは任せときなって)
「フィアナはレオク様のことが好きだってさ。じゃあ、両思いなことが分かったわけだし後は行動するだけじゃん。こっちのことはアタシに任せてアンタは周りを説得して見せてよ」
「悪霊に指図されるのは気に食わないが、一旦お前の言う事を信じて動いてみようか」
王子様が動くことを決めたらしいので、こっちもがんばらないとってことで。




