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車に轢かれてお嬢様になっちゃった  作者: 藤村 託時


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4/4

4.事件になっちゃった

 この家でのごはんは基本母親と一緒に食べることが多い。父親がなんの仕事をしているのかはよく分からないけど、あんまり家にいなくて一緒にご飯を食べることはない。母親との会話は二週間前にフィアナが現れてから基本的に任せるようにしていた。

 そしてまた母親とご飯を食べながらの会話が始まる。


「フィアナ、婚約者のフェルベルト・ヴェールさんに関してだけど、この前はちょっとあなた疲れていたのよね。今はもう元に戻ったようだから、また一度会ってお話をしてくださいね。前の件についてはしっかり謝罪をするのよ」


(みりむが前に無礼を働いた時の話ですね。私からフェルベルト様に正式に謝罪をしないといけませんね)

(それでまた婚約関係を継続するってわけ?)

(それは⋯⋯)

(今、アタシはこの身体を動かせる状態だけど、やっぱりこの身体はフィアナ、アンタのものだと思ってるよ。アタシはただの居候だけど、よくわかんないけどアンタのことはもう一人の自分のような感じがしてきてる。力になりたいと思ってるんだよ)


「お母様、フェルベルト様には私から謝罪させてください。そして、また伝えたいことがあります」

「伝えたいこととはなんですか?」

「今はまだ言えません」

「また、おかしなことをいい出したら承知いたしませんよ」


 そこからフィアナと母親の会話は無くなり、空気が悪いまま食事を終え自室へと戻った。


 一週間後、婚約者との話し合いの場が開かれた。

 前回と同じでウチの一室に許婚とアタシ、そして今回は両家の両親が集まっている。


(なんかすごい重い空気なんだけど、フィアナがんばれそう?)

(大丈夫です、私に任せてください)


「まずは先日の我が娘の無礼を謝罪させていただきたい」


 長身でメガネをかけた父親は婚約者とその両親達に頭を下げた。


「そこまで気にしておりませんよ。この子達のような年頃ではたまには情緒が乱れることもあるものです。フェルベルトも癇癪を起こしていた頃もありましたよ」

「父様、そのようなことは遠い昔の話です。もちろん、私もこの間の件に関しては木にしておりません。フィアナとは今後も婚約者として良い関係を築いていきたいと思っております」

「寛大なお返事ありがとうございます。フィアナ、お前からも非礼に関して謝罪しなさい」

「はい。フェルベルト様、以前私からあなたに対し大変失礼な言動をしてしまったこと、心から反省しております。申し訳ございませんでした」

「大丈夫だよ、フィアナ。どうやら元のフィアナに戻ってくれているようで安心したよ」

「ただ、一つ、お伝えしなければいけないことがございます」

「急にどうしたんだい?」

「フェルベルト様との婚約関係を白紙にさせていただけないでしょうか」

「ははっ、どうやらまだ様子がおかしいみたいだね。一旦落ち着こうか」


 フィアナの発言に周りの大人達も顔を引き攣らせて見合わせている。大人達が口を開こうとした瞬間、フィアナの言葉を聞いたアタシが再び言葉を発する。


「私はレオク・ゼルヴィス様のことを愛しております。この気持ちに背いてフェルベルト様と一緒になることはできません」


 アタシの、フィアナの発言の後、周りの時間が止まったかのように一瞬静まり返った。一番早く反応を示したのはフィアナの母親だった。


「フィアナ! おかしなことを言うのは辞めなさい! あなたが我が国の第一王子を愛しているですって? あなたはどうかしています!」

「フィアナ、冗談を言うにしてはちょっと強烈すぎるかもね。ははっ⋯⋯」


 フィアナは周囲の人間達から発言の撤回を求められた。だけど、フィアナは自分の意思を貫き先程の発言を撤回することはなかった。

アタシは今回フィアナの言葉をただそのまま喋っただけ。


 その後、フィアナが冷静ではないという話になりその場はお開きになった。婚約者側の人間の顔には流石に笑顔はなくなっており、神妙な顔でウチを出ていった。


「フィアナ、あなた今度はもう許されませんよ! 医師に念入りに脳を調べてもらいますからね」

「母さん、ちょっと席を外してもらえるかな。フィアナと二人で話がしたいんだ」

「あなた、この子に今まで優しくしすぎていたのです。またおかしなことを言い出さないように一度強く怒ってください」


 母親が部屋から出ていき、父親と二人きりで向き合う状態となった。


「フィアナ、さっき言ったことだけど、あれは冗談じゃないのかな?」

「冗談ではございません。私の本心からの言葉でございます」

「相手は第一王子だぞ。王子とはそんなに仲が良いのか?」

「はい、レオク様もまた私を好きでいてくださっています」

「それは本当だとしたら凄いな。この件は私からも確認させてもらう。今言ったことが事実でないのだとしたら母さんが言うように一度医師に見てもらわなければならないね」

「はい、それで構いません」


(意外と話のわかるお父さんじゃん。あの物わかりの悪いお母さんより全然会話できるね)

(お母様も別に話が通じないわけではございません。私が話している内容が非常識なだけですわ)

(でも、アンタと王子の気持ちの問題なんだから仕方がないじゃんね)


 家の中の居心地はどんどん悪くなっていく。

それでも、時間は進んでいく。


 翌日、学校へ行き教室に入ると騒ぎが起きていた。

 育ちの良いお坊ちゃんお嬢さん達は基本的に静かでおとなしい人種なので興奮した様子で話が盛り上がっていることは珍しい。

 なんかやたらアタシの顔をチラチラ見る人がいるような気がする。

 教室にベローチェちゃんが入ってきた。


「おはようベローチェちゃん」

「フィアナさん、あなたとんでもない方でしたのね。驚きましたわ」

「えっ、どうしたの?」

「レオク様が婚約者との関係を破棄してあなたと婚約すると言い出しているって噂が今出回っております」

「マジで! 王子行動早いな!」

「フィアナさん、あなたちょっと前から人が変わったような印象を受けておりましたけど、それにもレオク様が関係していたのでしょうか?」

「いや、関係あるようなないような。その噂ってどのくらい広まってるの?」

「今朝のニュースで流れておりましたので、多くの人が知っているものと思いますわよ」

「それもう噂とかじゃないじゃん」


 どうやらアタシが学校に来る途中で王子の婚約破棄の件のニュースが流れたみたいだった。

 授業中、教師がアタシの方を何回か見てきていたのでアタシのことを意識していることが伝わってきた。授業が終わって昼休みの時間になると、教室にきっちりとしたスーツを着た大人達がアタシの元へ近づいてきた。


「フィアナ・ルクレシアさん、レオク様との関係についてお話があるので同行していただいてもよろしいでしょうか」

「あ、はい」


 ただの日本の女子高生だったアタシが国を動かす事件を起こしてしまっている。

 実は壮大な夢だったりする?

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