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血を与えたら進化しすぎた件~世に出回るアーティファクトも東京に出来たダンジョンも多分俺のせいだけど面白いからいいよね~  作者: 唯之助


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第42話「ワタシガ、マモル」

 墨田区役所。環境課。


 午前10時。


 課長補佐の中村亮介は、デスクの上に積まれた苦情書類を前に、こめかみを押さえていた。


 42歳。墨田区の環境行政に15年携わってきた地方公務員だ。不法投棄、騒音、害虫駆除、街路樹の管理。地味だが必要な仕事を淡々とこなしてきた。


 だが——ここ3週間で届いた苦情は、15年のキャリアでは対処のしようがないものだった。


「中村補佐、また来てます」


 部下の若い女性職員が、カウンターの方を指した。


 窓口に、60代の男性が立っていた。見覚えがある。先週も来た住民だ。作業着にゴム長靴。向島地区に残っている数少ない住民の一人。


「あの木、まだ何もしてくれないのか!」


 男性の声が課内に響いた。


「塀が完全に倒れた! うちの庭にまで根が入ってきてる! 車庫の基礎にヒビが入った! このまま放っといたら家が傾くぞ!」


 中村が立ち上がり、カウンターに向かった。


「申し訳ございません。現在、関係部署と対応を協議しておりまして——」


「前にも同じこと言ったろ! 協議してる間にあの木はどんどんデカくなってんだ! 先月は20メートルだったのが、今はもう25メートル超えてる! 1週間に1メートル以上伸びてんだぞ!」


 中村は何も言い返せなかった。事実だからだ。


 向島地区。東京からの人口流出で住民の多くが離れた地域だ。120万人以上が東京を去り、特に六本木封鎖線に近い区域やダンジョン入口周辺からは人が消えた。墨田区の向島も例外ではない。かつて生活の気配に満ちていた住宅街は、今では空き家だらけだ。雨戸が閉まったまま、庭は雑草に覆われ、郵便受けにチラシが溢れている家が並んでいる。


 だが全員が去ったわけではない。引っ越す余裕のない高齢者。動く気がない頑固な住人。ペットを連れて移動できない人。——そうした人々が、まばらに残っている。今、窓口で怒鳴っているこの男性もその一人だ。


 苦情を受けても、中村に打てる手は限られている。


 2週間前に環境課の職員が現地を確認した時、木の高さは約22メートルだった。昨日の計測では26メートル。異常な成長速度。そして——異常なのは高さだけではない。


 中村はデスクに戻り、ファイルを開いた。


「墨田区向島地区 異常樹木に関する経緯報告書」。


 最初の苦情が届いたのは3週間前。「空き地の木が急に大きくなって、銀色になっている」という住民からの電話だった。環境課としては通常の樹木管理案件として処理しようとした。空き地の所有者に連絡を試みたが、所有者は既に東京を離れており、連絡がつかない。


 その間にも、苦情は増え続けた。苦情の主はわずか4世帯——向島地区に残っている住民のほぼ全てだ。だが内容は深刻だった。


「根がコンクリートを割っている」「甘い匂いが24時間消えない」「虫が異常に集まっている」「夜中に木が光っている」「うちの犬が木の方角に向かって吠え続ける」


 そして1週間前——環境課の職員が現地調査に行った時、報告書の内容が一変した。


「樹皮が完全に銀色の金属質に変化。幹の表面に幾何学的な紋様が浮き出ている。根は周囲30メートル以上に広がり、道路のアスファルトを隆起させている。木の周囲半径50メートル以内で、通常の東京都では見られない植生変化が確認された。雑草が異常に繁茂し、空き地だけでなく隣接する空き家の壁面にも蔓性植物が這い上がっている」


 職員は現地で大気サンプルを採取し、区の環境分析センターに送った。


 結果が昨日届いた。


「大気中に微量の未知物質を検出。既知の花粉、胞子、揮発性有機化合物のいずれとも一致しない。ただし、品川ダンジョン入口付近で検出されるフェロモン類似物質との構造的類似性が認められる」


 フェロモン類似物質。


 中村はその一行を読んだ時、自分の管轄を超えたことを悟った。


 これは街路樹の問題ではない。


 中村は上司に報告し、上司は区長に報告し、区長は東京都に報告した。東京都は環境省に連絡し、環境省は——内閣官房の超常事態対策室に報告を上げた。


 ダンジョンの出現以降、超常現象に関する案件はすべて内閣官房の超常事態対策室を経由する体制になっている。


 報告が上がったのは昨日の夕方だ。


 そして今朝——中村のデスクの電話が鳴った。


「中村補佐ですか。環境省自然環境局です。本日午後、当省と内閣官房の合同調査チームをそちらの現場に派遣します。ご案内をお願いできますか」


 中村は受話器を置いた。


 国が動いた。



     



 同日午後1時。墨田区向島。


 黒塗りのワンボックスが2台、住宅街の狭い通りに停まった。


 降りてきたのは7名。環境省の技官2名、内閣官房超常事態対策室の職員2名、防護服を着た分析技術者2名、そして——私服の男が1名。


 中村が出迎えた。


「こちらです。車はこれ以上入れませんので、徒歩になります」


「分かりました」


 環境省の技官——40代の女性、名札には「藤井」とある——が頷いた。


 一行が路地を進む。住宅街は静まり返っていた。退避勧告が出ているわけではないが、住民のほとんどが既に去っている。雨戸の閉まった家。庭に伸びた雑草。郵便受けからこぼれるチラシ。——東京のあちこちで見られるようになった風景だ。ダンジョン出現以降、この国の首都は120万人を失い、特に周辺区ではこうした無人の住宅街が珍しくなくなっている。


 角を曲がった瞬間、藤井が足を止めた。


「……これは」


 住宅街の屋根の上に、銀色の巨木が聳えていた。


 高さ26メートル。周囲の住宅が2階建ての8メートル程度だから、3倍以上の高さだ。幹は完全に銀色で、午後の日光を受けて鈍い金属光沢を放っている。枝は四方に20メートル以上広がり、銀緑色の葉が微かな金属音を立てて風に揺れている。


 根が道路を完全に破壊していた。アスファルトが割れ、銀色の根が地表を蛇のように這い、電柱の基礎を押し上げている。隣接する空き家3軒は壁面を蔓と根に覆われ、建物の輪郭が崩れ始めていた。


 そして——匂い。甘い匂いが大気を満たしている。ダンジョンの入口で感じるフェロモンに似ているが、それとは異なる深みがあった。


「大気サンプルの採取を最優先で。それから根の硬度測定、土壌サンプル、樹皮のサンプル。——全部の計測機材を展開してください」


 藤井が指示を出した。分析技術者が防護服のまま世界樹の根元に近づき、機材を広げ始める。


 超常事態対策室の職員が周囲を見回した。


「住民は」


「半径200メートル以内には4世帯が残っています。それ以外は空き家です」


「4世帯だけですか。この規模の異常樹木が、なぜ今まで報告されなかったんでしょう」


 中村が答えた。


「人がいなかったからです。向島地区は人口流出が特に激しい地域で、住民の9割以上が東京を離れています。残っている方は高齢者が中心で、SNSや掲示板を使う層ではない。最初に異変に気づいたのは残った住民ですが、区役所に電話が来たのは木が20メートルを超えてからでした。——それまでは、文字通り誰も見ていなかった」


 藤井が頷いた。人口流出と行政機能の低下。ダンジョン出現以降の東京が抱える構造的な問題が、この木の発見を遅らせた。


 私服の男——超常事態対策室の上席調査官——が黙って世界樹を見上げていた。


「……掲示板では『世界樹』と呼ばれているそうですね」


「ええ。SNSでも写真が拡散しています。冒険者が実際に見に来て、ダンジョン攻略掲示板で話題になっている。民間での認知は既に広がっています」


「対応が後手に回っている、ということですか」


「率直に言えば、そうです」


 藤井が分析技術者の方に歩いていった。


 上席調査官は空き家の二階を見上げた。窓枠に——白い糸のようなものが張り巡らされている。蜘蛛の巣だろうか。随分と大きな巣だ。


 何も言わず、メモ帳に書き込んだ。



     



 同日夜。内閣官房。


 超常事態対策室の小会議室で、少人数の非公式会議が行われていた。


 出席者は5名。対策室の室長代理、環境省の藤井、防衛省の文官1名、警察庁の課長補佐1名、そして内閣危機管理監の補佐官。


「結論を先に言います」


 室長代理が口を開いた。


「この巨木は放置できません。ダンジョン、吸血鬼に続く超常脅威の第三種として扱う方針を提言します」


「第三種ですか。その根拠は」


 危機管理監の補佐官が尋ねた。


「三点あります。第一に、フェロモン類似物質の放出による周辺への健康被害リスク。第二に、根の拡大による建造物・インフラの物理的破壊。第三に——制御不能な成長速度です。週に1メートル以上伸びている。住民の証言では3ヶ月前は数メートルだったものが、現在26メートル。この速度が維持されれば、3ヶ月後には50メートルを超える可能性がある」


「50メートルの木が住宅街に」


「しかもフェロモン類似物質を撒き散らしながら。匂いの到達範囲も木の成長に比例して広がっています。現在は半径200メートル程度ですが、木が50メートルに達する頃には——数キロメートル圏に達するかもしれない」


 藤井が補足した。


「もう一つ。枝に果実が3つ生っています。この果実が地面に落ち、発芽した場合——同様の木が複数本生える可能性があります。1本でこの影響範囲です。それが10本、100本に増えたら」


 会議室が沈黙した。


「対処方針は」


「まず近隣住民4世帯に退避勧告を出します。墨田区から正式に発出してもらう。並行して追加調査を行い、早期の伐採を推奨します。根と樹皮の硬度は通常の7倍で、通常の伐採機材では対応できない。アーティファクトの切断系アイテムを利用するか、重機による物理的な除去が必要です」


「伐採に際して、抵抗は想定されますか」


「木から? されないでしょう。植物ですから。ただ——」


 藤井が言葉を切った。


「現地調査時に、空き家の二階に大規模な蜘蛛の巣のようなものを確認しました。通常の蜘蛛の巣としては異常な規模です。念のため、周辺の生態系調査も並行して行うべきかと」


「蜘蛛の巣。——ダンジョン周辺でも大型の虫が確認された例はありますが」


「まだ何とも言えません。ただ、あの木のフェロモン類似物質が周辺の生物に影響を与えているとすれば、通常サイズではない生物がいても不思議ではありません」


 室長代理が議題を締めた。


「方針を確認します。第一に、周辺住民の退避勧告を墨田区から発出。第二に、果実のサンプル採取と分析を最優先で実施。第三に、伐採計画の策定に着手。切断手段の検討を含む。第四に、周辺の生態系調査。——以上を今週中に並行して進めます」


 5名が席を立った。


 藤井が会議室を出る時、防衛省の文官に声をかけられた。


「藤井さん。一つ聞いてもいいですか」


「何でしょう」


「あの蜘蛛の巣。——本当に、ただの蜘蛛の巣だと思いますか」


 藤井は少し考えてから答えた。


「正直に言えば——思いません。あの規模の巣を張る蜘蛛は、日本には存在しません」


「対策室の報告には入れなかったようですが」


「確証がないものを報告書には入れられません。ただ、伐採の実施部隊には——念のため、武装した護衛をつけることを推奨します」


 文官が頷いた。


「超常脅威の第三種、ですか。——ダンジョンの時も、最初は地質調査のつもりだったんですよね。それが今ではこの有様だ」


「二の舞を演じないために、早めに動く。——それが今回の教訓です」


 藤井が廊下を歩き去った。


 文官はスマホを取り出し、防衛省の連絡先に電話をかけた。


「佐々木さんですか。——墨田区の巨木の件、非公式の示唆がありました。伐採実施時に護衛が必要になるかもしれません。超常性を持つ生物が周辺にいる可能性があるそうです。——ええ。まだ非公式ですが、鬼庭の関与を視野に入れた方がいいかもしれません」



     



 翌日。朝7時。


 真央はスマホのニュース通知で目を覚ました。



「墨田区の異常巨木、政府が調査チーム派遣 伐採も視野に」


 環境省は、墨田区向島に出現した異常巨木について、合同調査チームを現地に派遣した。フェロモン類似物質の放出、建造物被害の拡大を踏まえ、超常事態対策室は「第三の超常案件」として分類。近隣住民に退避勧告が出された。今後、伐採を含む対処方針を検討する。



「……国が出てきたか」


 真央はニュースを閉じた。特に焦りはなかった。


 ベッドから起き上がり、顔を洗い、コンビニの弁当を温めて食べた。いつもの朝だ。


 食べ終えてから、サンダルを履いて外に出た。


 甘い匂い。もう慣れた。前に世界樹を見に行ったのは3週間前だ。コンビニのシフトが増えて、足が遠のいていた。退避勧告が出たらしいが、対象は近隣の4世帯だけだろう。このアパートまでは含まれていないはずだ。


 通りに出た。静かだ。もともと空き家だらけの住宅街だが、昨日の調査チーム来訪の影響か、いつもより一層人の気配がない。


 空き地に向かった。


 世界樹は相変わらず聳えている。26メートル。昨日の調査チームが周囲にテープを張っていたらしく、根元に黄色い立入禁止テープが巡らされていた。もっとも、テープは根の圧力で既に何ヶ所か千切れている。


「アラクネ」


 声をかけた。


 世界樹の幹の中腹から、アラクネが降りてきた。


「……オヤ」


 体長2メートル半。前に見た時よりさらに大きくなっている。世界樹との共生で成長が加速しているのだろう。


「昨日、人が来ただろう」


「……ウン。ナナニン。キカイデ、キヲ、ハカッテタ。ツチモ、トッテタ」


「隠れてたか」


「……ニカイニ、イタ。デモ……クモノス、ミラレタ」


「蜘蛛の巣か。——まあ、巣があるだけなら蜘蛛がいるとは限らないからな。すぐには問題にならない」


 真央は鑑定の鏡を取り出し、世界樹に向けた。



 名称:世界樹(変異進行中)

 樹齢:推定40年

 状態:急速変異中

 変異進行度:65.2%

 根の到達深度:地下35メートル

 特記事項:地下水脈およびフェロモン含有土壌層との接続を確認。果実3個が成熟段階に移行。フェロモン類似物質の放出量が前回計測時の2倍。



「65パーセント。根が35メートル。——中層に入ってるな」


 次にアラクネに鏡を向けた。


 名称:アラクネ(世界樹共生体)

 状態:成長中


「共生体。——お前、この木と繋がってるのか」


「……ツナガッテル……ト、オモウ。ネテルトキ……キノ、ユメヲ、ミル」


「木の夢?」


「……チカクガ、フカイ……トオイ……ミズノオト。ムシノ、コエ。ネガ……ドンドン……ノビテイク……ユメ」


「ふーん」


 真央は特に驚かなかった。蜘蛛が人語を話し始めた時点で、この程度のことには慣れている。


「アラクネ。この木のこと、国が動いた。昨日来た連中がそうだ。たぶん——この先、伐採の話が出る」


 アラクネの8つの目が、真央に向いた。


「……バッサイ」


 その言葉は、以前にも聞いた。だが今回は——より現実味を帯びている。国が動いた。調査の次は対処だ。


「……キル……ノ?」


「たぶん、最終的にはそうなる。住宅の基礎を壊して、道路を破壊して、未知の物質を撒き散らしてる木を、政府が放置するとは思えない」


 アラクネが世界樹の幹に手を当てた。銀色の樹皮に、蜘蛛の脚先が触れる。


「……コノ木ハ……ワルイコトシテナイ」


「そうだな。木に善悪はない。ただ育ってるだけだ」


「……ソレナノニ、キルノ」


「人間はそうする。自分たちの生活を脅かすものは排除する。——悪いとか良いとかじゃなくて、そういう生き物だ」


 アラクネは黙った。8つの目が世界樹の幹を見つめている。脈動する樹皮。温かい表面。夢を共有する友人。


「……オヤハ、ドウスルノ」


「俺? 俺は何もしないよ」


 何の感慨もない声だった。


「お前が守りたいなら守ればいい。俺が止める理由も、手伝う理由もない」


 アラクネが真央を見た。


「……オヤハ……コノ木ガ、キラレテモ……カナシクナイ?」


「悲しい?」


 真央が首を傾げた。本当に分からないという顔だった。


「……残念だとは思うかもな。変異が完了する前に切られたら、最終的に何になるのか分からないままだから。でも——悲しいとは、また別かな」


「……ソウ」


 アラクネの声は小さかった。


「……ワタシハ、カナシイ。コノ木ガキラレタラ……トテモ、カナシイ」


「そうか」


 真央はそれだけ言った。


 沈黙が落ちた。風が吹いて、銀緑色の葉が金属音を立てた。


「……マモル」


 アラクネが言った。


「ワタシガ、マモル」


 その声は、以前の不安に満ちた声とは違っていた。静かだが、芯が通っている。決意の声だ。


「……コノ木ハ……ワタシノ、トモダチ。トモダチガ、コロサレソウナトキ……マモルノハ、アタリマエ」


 真央はアラクネの目を見た。8つの赤い目。その奥に、揺るがないものがあった。


「好きにしろ。——ただ、殺すなよ。人間を殺したら、もっと大勢が来る。軍が来る。追い払うだけにしとけ」


「……ワカッタ」


「あと——お前の存在がバレる。2メートル半の蜘蛛が人間と戦ったら、もう隠れてはいられない」


「……ウン。ワカッテル」


 アラクネが世界樹の幹に身を寄せた。蜘蛛の脚で幹を抱くように。


「……ソレデモ、マモル」


 真央は頷いた。止めるつもりはなかった。止める理由がない。


「じゃあ、頼むわ。——俺は帰る」


「……オヤ」


「ん?」


「……ミニコナイノ?」


「何を」


「……ワタシガ、タタカウトコロ」


 真央が振り返った。アラクネが8つの目で真央を見つめている。


「見なくていいだろ。——お前が負けたらニュースで分かるし、勝ったらお前がまだここにいるってことだ」


「……ソウダネ」


 アラクネの声に、何かが滲んでいた。寂しさか、諦めか。蜘蛛の顔では表情は読めない。だが声には感情がある。


 真央はそれに気づかなかった。気づいたとしても、たぶん何も変わらなかっただろう。


 アパートに向かって歩き出した。



     



 帰り道に、ふと立ち止まって鏡を取り出した。


 空き地の方角に向ける。——アラクネの情報が表示された。



 名称:アラクネ(世界樹の守護者)

 状態:覚醒進行中



 ——名称が変わっていた。


 さっきまで「世界樹共生体」だった欄が、「世界樹の守護者」になっている。


「守護者? ——さっきの会話で変わったのか」


 世界樹の時と同じだ。理屈は分からない。鏡に「世界樹」と表示された時も、名前が変わった理由は分からなかった。今度はアラクネが「守る」と宣言したら、それが反映された。


 鏡は対象の本質を映す。アラクネの本質が、今——「守護者」に変わったということだ。


「……ふーん」


 真央はスマホをポケットに戻した。


 あいつなら、やれるだろう。たぶん。


 特に何も考えず、アパートに帰った。部屋に入り、ベッドに寝転がり、天井を見つめた。


 窓の外から、甘い匂いが漂ってくる。


 世界樹が育ち、国が動き、アラクネが守護者になった。全部、自分が始めたことだ。


 そのことに対して、真央は何も感じていなかった。罪悪感もない。責任感もない。後悔もない。


 ただ——面白いとは思う。


 それだけだ。

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― 新着の感想 ―
某AI作品に似た雰囲気を感じる。主人公に魅力が無い。
ホント無責任で自分勝手で何の魅力もないクズだな(侮蔑)
アレクネがやれたら悲しいな。
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