大探偵『勝田 麟太郎』推参!!~アフリカジャングル編~
ワイの名前は、勝田 麟太郎。
日本、いや世界に轟く大探偵...になることを夢見て、大阪の雑居ビルで今日も浮気調査とか迷い犬探しに奔走しとる探偵や。
孤高に生きるストイックな生活を続けて、早十数年。
実家戻っても、親から孫の顔見たいとか言われることがなくなってきた、中年の独身貴族や。
今、ワイは...アフリカのジャングルにおる。
まじで、冗談やないで、なんでこないなことになったんや。
ワイは、ただ金が欲しかっただけやのに...。
ことの発端は、「大富豪 多田 和正変死事件」の遺書が発見されたことや。
それは個人資産も数千億超えてるとか言われとるアホみたいな金持ちのおっさんが、突然死したことから始まった。
おっさんの遺書が公開されたんやが、そこに『今から書かれている暗号を解いた資格者に、わたしの財産を与える。タイムリミットはわたしが死んでから3か月以内とする。資格者はわたしの血を分けた一族のみとする。探偵等を雇うことを許可する。また、この遺言は、わたしが死んだらすぐに全世界に公開する。』って書かれてて、ほんでもっておっさんの一族が色んな探偵を招集したんだわ。
ワイもその内の一人で、ワイの依頼人は、多田 左衛門尉彩(タダ サエモンノウジョウアヤ)。
スマホなんかのアプリ制作会社の社長やったわ。
名前から、てっきり男や思うとったら、20歳くらいの気の強そうな女子やった。
多田のおっさんの9番目の娘らしく、ちょっぴり気位の高い、それでいて憎めないタイプの女子。
最初、サエモンはんって呼んだら、ぶち切れされてボディガードに連れて行かれて注意されたわ...。
多田家って、こどもみんなに『左衛門尉』ってつけるらしいけど、古風すぎて嫌なんだとさ。
だから、サーヤと呼べと言われた。
...『サ(エモンノウジョウ)アヤ』ってことね。
ま、名前のことはどうでもええねん。
とにかく遺産争いの火ぶたは切って落とされたちゅうことや。
資格者は合計25人。
全員兄弟姉妹...って、おっさん子沢山過ぎるわ。
みんなで必死に遺産に書かれた暗号を解こうとしてたっちゅうわけや。
はっきりいって、ワイは天才やからな。
一瞬で暗号を解いて、サーヤはんとこに伝えてやったわ。
これで依頼は無事解決。
前金ももらっとるし、残りの金は遺産がきちっと相続されたのが確認されてからの払いやってんのは分かってるから、気長に待つわ。
...って終わるはずやったんやけどなぁ。
遺産がアフリカのジャングルにあるってことが分かって、サーヤはんぶち切れとったわ。
とはいえ数千億の財産やからなぁ、行かなあかんわな。
けど、ワイまで巻き込まんでもえんとちゃうか?
もう終わったんやさかい、後は自力で頑張ってくれんか。
ワイ、まるるーとまりりん(通称、まるまり)リアタイできんやん。
今晩は、まりりんが宇宙から飛来したライバルキャラのくるるんと、にらめっこ対決の回やっちゅうのに。
勘弁してくれよ~
まるまりの原作中でも人気ある回やっちゅうのに。
一応暗号解読したんやから、前金取り立てるっちゅうのはあかんやん。
もう、一円も残っとらんのや。
借金返済と、後輩たちに奢りまくって吹っ飛んだんや。
...と、ここまでが前回までのあらすじちゅうもんや。
詳しくは「大探偵『勝田 麟太郎』見参!!」でも見てくれ。
こっからが本題。
今、ジャングルで、おっさんの遺産を探してるちゅうことや。
さすがに行き当たりばったりやないで。
アフリカジャングルって、日本が10個以上入るくらいクソでかいからな。
行き当たりばったりなんかで行ったら、死ぬまで出てこれんわ。
ほな、どうしたかっちゅうと。
アプリを使ったんよ。
サーヤはんとこの会社が開発した「歩数特定アプリ~地球の裏側まで行ってみ~」を使って。
え、何そのアプリって?知らん??
そりゃそうやろ、ワイだって知らんかった。
三年前に作ってロールアウトしたらしいのやけど、全くDLされてないらしいし。
方角を指定して歩数を入れると、半径1000メートルくらいの誤差で場所が特定できるっちゅう、何のために使うんか全く分からんアプリや。
今回はまさかの大当たり。
ようやく日の目を見たとか、ボディガードの一人が泣いて喜んどったわ。
で、大まかな場所を特定して、現在に至るちゅうわけや。
半径1000メートルくらいの誤差やったら人海戦術で何とかなるやろってことでウロウロ探し回ってとった。
小一時間くらい探し回っとったら、それは見つかったわ...。
クソデカモニュメントが建っとったからな。
そいつは、石でできたモニュメントやった。
高さ5メートルくらいで幅は3メートルくらいの。
...いやいやいや、あかんやろ!
ここ、ジャングルやで!
許可取っとんのか??
いや、絶対取っとらんやろ、これ!?
無許可でこんなもん、日本でもヤバいのに、アフリカやぞ!
国際問題なるわ、シャレにならんで。
「キタァァッッッ!」
サーヤはんが叫んどる。
あ、これがお目当てのものだったんや...、ようやく終わりか。
終わってみれば意外にあっけなかったな。
ま、さっさと日本帰って、アーカイブ見よか。
「ぅん?」
なんか、さっきからサーヤはん、全く動いてないんやけど、何や?
「ク...クソガァッッ!」
突然、叫び出すサーヤ。
「え、え、どうしたん?サーヤはん??」
そう言ってサーヤはんに近寄ってみたら、モニュメントの裏に書かれてる文字を見て地団太踏んでた。
文字...。
何やこれ?
『正しい順番でボタンを押せ。さすれば扉は開かれん』
文字の下には、人の頭くらいのサイズで「1」から「9」までの番号がふられている9つのボタンがあった。
「こ、これは!?」
う、うそやろ、これアスコンやんけ!
懐かしいわ~、ガキんときやったわ~
こんなデカなかったけどな。
で、これを押せばいいっちゅうわけか。
ふん、こんなもん簡単やで!
大探偵『勝田 麟太郎』を舐めとったらあかんで!
「ポチッとな。」
ゴゴゴゴゴゴ
扉は開いた。
ほらな、簡単やろ。
うん?何が簡単か分からんて?
これはな。
『3→6→1→2→2→5→7』や!
え?何やこれって?
これは...、昔のゲームに使われてた入力方法や!
アスコン...正式には『アスターコンピューター』
昭和に生まれた『ファミリーコンピューター』(通称、ファミコン)が一世風靡して、その人気に便乗した色んな会社がハードを数種類だした。
まぁ、そのほとんどが淘汰されていったがな。
その淘汰されて消えて行ったハードの一つが、アスタリングクリエイト社が出したアスコンや。
上下左右のボタンを使わずに、ただ9つのボタンだけでゲームを動かすっちゅう、冷静に考えるとつっこみどころしかないコントローラー。
変にカルト的人気が出過ぎて、全然無関係のアニメや漫画で未だにネタにされている超有名なもん。
で、なんでこれやと思ったかっちゅうと...。
多田のおっさんってネタ古いやん。
前回見た奴なら分かる思うけど、暗号のネタが昭和やねん。
アスコンボタンやし。
...ってことは、昭和のアスコンネタしかないやろ。
今の世代には全く響かん言葉かもしれんが、昭和を生きた奴なら絶対分かる!
あぁ、それそれってなやつやな。
で、扉開いたわけなんやけど、また扉が出てきた。
で、次の暗号が...。
『みんてんしょうほうえんけん』
で、左右の方向ボタンと、「1」から「6」までのボタンがある。
あぁ、『眠天掌崩炎拳』ね...。
サーヤはんたち、何コレ見たいな顔しとるなぁ。
まぁ、そりゃそうやろ。
これ、『アスコンネクスト』のコントローラーやし。
カルト的に有名になったけど、正直売れているとは思わんかったアスコンの次世代機『アスコンネクスト』。
さすがに方向キーがないとまずいと思ったんやろな、左右の方向ボタンが加わった新しいハード。
ボタンが6つに減り、バランスが大分良くなっていたわ。
ただ、正直あんまり売れたっちゅうイメージはないけどな。
で、『眠天掌崩炎拳』なんやけど。
これ、格闘ゲームぽい技名やけど、実はただの乙女ゲーム用のキー操作。
当時よくネタにされとったから覚えとるわ。
『左・6・1・右・左・左・5・右・2』
「ポチッとな。」
ゴゴゴゴゴゴ
扉は開いた。
で、次の扉の暗号はっと。
『とうどうきみひこ』『10秒以内』
上下左右のボタンなんだが、斜めも押せるようになってるものだけがある。
『藤堂公彦』?やと...。
って、あのくっそ面倒なやつ??
10秒以内に押せって。
きっついわ。
『藤堂公彦』...それは、『アスコンファイブ』で一番有名なソフト、クイズゲーム『世界100周夢クイズ』で出てくるキャラクター。
アスコンファイブっちゅうのは、アスコンネクストの次世代機や。
ネクストの次がなんでファイブになったかは知らん。
上下斜め方向キーが追加され、360度動かせるようになったのは画期的やねんけど、アスコンの象徴ともいえるたくさんのボタンを廃止した、何考えてるんや!って当時散々言われた特殊な家庭用ゲーム機や。
その中で一番売れ、当時のワイも遊びまくったゲームが、世界100周夢クイズ。
で、藤堂公彦っちゅうのは、隠しキャラクターで秘密のボタン操作で出てくる強キャラや。
クイズゲームで強キャラって何?と思うもしれんが、このゲームはただのクイズゲームやない。
時折、敵キャラが出てきて戦わんと次に進めんのや。
そのときの攻撃力がダントツに高く、一発で相手を倒すことができる純粋にクイズを楽しむためには必須のキャラや。
...ってそんなことどうでもええねん。
今はさっさと暗号解かんとな。
とりあえず、一人でやるのキツ過ぎるからサーヤはんたちにも手伝ってもらうか。
振り向いたけど、誰もいねー
あれ?どこ行ったんや、あいつら?
仕方ないから入口近くまで戻ったら、顔が固まって動かん連中を見つけた。
ちっ、しゃあねーなぁ。
「天才のワイにかかったら、この程度の暗号なんて、あってないようなもんや!はよ次行くで!」
そう、声をかけたら、ハッと目が覚めて動き出すサーヤはんたち。
ワイの元へ集まってきよったわ。
とりあえず、ボタンの押し方を教えて一緒にやることになった。
10秒以内やからな、タイミング取らんと...っていうかそもそもどうやってカウントしてるんや?
大体、暗号入れたら扉が開くって昔からよく使われるネタやけど、どういう原理でどういう力が働いているんや?
こんな重いもん、てこの原理くらいじゃどうしようもないで...。
ま、まぁええわ。
『左下→左→左上→下→上→右下→右→左→下→左→上下左右同時押し』
「準備はええな?ほな、いくで!」
ゴゴゴゴゴゴ
扉が開き、中から小さな宝石箱が出てきた。
近寄ったら、箱の蓋が自動で開き出した。
センサー?...動力源は何や?
あ、よう見たらモニュメントの裏に、なんか太陽光パネルみたいなもんついとるやん。
そうか、さっきまでの扉もこれで開くんやな。
...って、アホか。
なんでこないなもんに金かけとんねん。
ほんま、金持ちのやることはよう分からんわ。
箱の蓋が開ききり、中から1個の指輪みたいなもんが出てきた。
「どきなさい!」
ワイを押しのけて指輪を掴むサーヤはん。
そのまま、左手の薬指にはめよった。
そんなよう分からんものを、自分の指に嵌めるってやばないか?
「エンゲージ!!」
え、え、ええ?
急に、何か叫び出したで?
その言葉に反応して指輪が真っ赤に輝きだした。
...ちょ、ちょ、ど、どういうことや?
どういう原理?
意味分からんのやけど、何なんこの状況?
ワイが、戸惑っていると、一人のボディガードがすーっと近づいてきた。
「よく見てください。サーヤお嬢様の指を。」
サーヤはんの指?
あれ?よく見たら...血だらけやんけ!
指輪が真っ赤に輝いたんやなくて、指が血だらけになって真っ赤になっとるだけやん!
「あれは、血染めの指輪(薬指用)というものです。指に嵌め、エンゲージと叫ぶとその声に反応し、中から針が飛び出すのです。」
声に反応?針?こわっ...、な、なんやその怖い指輪。
「多田家の後継者のみが使用できる指輪で、その指輪を嵌めた者だけが多田家の莫大な資産をコントロールできるというものなのです。」
そう言うだけ言って、ワイのもとから去る男。
「これで私が後継者候補第一位だわ。フフフ...。」
なんか一人で盛り上がっとるわ、サーヤはん。
ま、まぁええか、これで依頼は完了ってことやな。
後は、さっさと日本帰って依頼料もらって終わりっちゅうことや。
ほな、日本へ帰ろうぜ!『まるまり』が、ワイを待っとる!
ジャングルを抜け、帰路に向かうため飛行場に着いた。
当たり前のように飛行機内に入る、ワイ。
「これでアフリカともお別れか...、特に何の感慨もないけどな。」
日本までは何時間もかかるし、ちょっと寝るか。
頭使って疲れたし...。
...................。
ふぅ、よう寝たわ。
飛行機が着陸準備に入ってた。
お、ナイスタイミング。
ちょうど日本に着くとはな、やっぱ、ワイ神。
タラップ降りて、外の空気を感じる。
あぁ、この肌が焼けるような感じ。
乾いた空気。
顔を覆いつくす布。
あれ確か、ニカブとかいう奴だよな...、イスラムの。
いつの間にか日本も色んな国の人がいる国になったよな...じゃないわ!
どこや、ここ!?
『مطار الملك عبدالعزيز الدولي』(King Abdulaziz International Airport)
ア、アラビア語?
サ、サウジアラビア?
な、なんでこんなとこに?
に、日本帰るんやなかったんか?
どうやら、血染めの指輪が入っとった箱の奥に、紙切れが1枚あったらしい。
それが。
『NE8600K』
今度はゼタ単位なしの簡単なやつやったらしいわ。
モニュメントあった場所から、北東8600キロメートル先の場所探したらサウジアラビアのメッカになったんだとよ。
あぁ...なるほど、それでここか...じゃねえわ!
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。もう指輪見つかったから終わりとちゃうんすか?」
そう尋ねたら、ニカブ被ったサーヤはんが左手の掌をワイに向けてきた。
既に血は乾いて綺麗に拭き取られていた。
「えっと、何すか?」
手を引っ込めて、こう言ってきた。
「ふん、分からないの?私の指、何本あるか?」
指?いや、5本やけど、それが??
...えっ、いやいやいや、まさか、嘘やろ!?
「指輪は5個あるの!手に入れたのは左手薬指用。後4個手に入れて私は後継者になれるのよ!」
「...いや、まぁ、そうっすか。それはまぁ、いいんすけど、ワイ関係あります?」
「依頼まだ、終わってないわよ。」
「へ...?」
「依頼は、暗号を全て解いて多田家の財産を手に入れること。まだ、終わってないわよ。」
え...ちょ...聞いてない。いや、聞いてたか。
でも、こんな話とは聞いてないぞ。
残り4個?
1個探すだけでも1か月近くかかっとんねん。
冗談やないで。
この調子やと、いつ日本に帰られるか分からんわ!
「確か、多田のおっさんが死んでから3か月以内に暗号解かないとあかんとか書いてませんでしたっけ?」
「ふふっ、これを見なさい。」
そう言って手渡された紙にはこう書いとった。
『ただし、指輪を嵌めたものは期限の縛りは設けない。』
「えーっと、これ、なんです?」
「これは、遺書の続きよ。」
「へ?」
どうやら、遺書は全て公開されていたわけではなかったらしい。
あぁ、だからあんなに叫んでたんや。
血ダラダラ流しながらはしゃいどったから、ちょっとヤバい女とか思ったやんけ。
「いいの?依頼取り消しても?お金ないんでしょ?」
くっ、痛いところを。
ま、しゃあねえか。
これも乗りかかったソバっちゅうやつや。
さっさと解決して、日本に帰ってやるわ!
はよ、帰らんと、『まるまり』に会われへんからな。
大探偵『勝田 麟太郎』
その力、存分に披露したろうやないかい!
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彼が再び日本の地を踏めることになるのは一体いつの日だろうか。
誰も知らない。




