大探偵『勝田 麟太郎』見参!!
ワイの名前は、勝田 麟太郎。
日本、いや世界に轟く大探偵...になることを夢見て、大阪の雑居ビルで今日も浮気調査とか迷い犬探しに奔走しとる探偵や。
孤高に生きるストイックな生活を続けて、早十数年。
実家戻っても、親から孫の顔見たいとか言われることがなくなってきた、中年の独身貴族や。
毎日、飯の心配を続けて、このままワイどうなってまうんやろなぁ...なんて考えてたワイに、最大のチャンスが訪れたんや!
最近、世間を賑わしとる「大富豪 多田 和正変死事件」、知っとるか?
知っとるわな、連日ニュースで取り上げられとるんやし。
なんやて、知らん?んな、あほな。
あんなけ毎日テレビやらネットやら、あほみたいに垂れ流されとるんやっちゅうのに、知らんやて?
ほんまかいな、そりゃぁすまんかったなぁ。
ようし、そしたらワイがざっくり説明したろやないけ。
大阪に、『多田 和正』ちゅう金持ちがおんねん。
大阪人やったら誰もが知っとる、亀の大きな看板の飯屋。
道頓堀のグリコの看板より目立ってとる、訳の分からん看板でおなじみの店や。
観光客相手にぼったくり商売を続けておって、地元民は誰も行かん店。
ここ数年のインバウンド需要っちゅうもんに乗っかって、外国人相手にボロい商売続けておった、成り上がりの業突く張りや。
個人資産も数千億超えてるとか言われとったわ。
そのおっさんが、先週の土曜日に本社事務所の中で死んだんやて。
社員が第一発見者やったらしくて、事情聴取されてるみたいなニュースが流れとった。
死因は心筋梗塞。
元々、肥満体型やったから突発的なもんか、せいぜい事故ってなるんやろうが、いかんせん有名なおっさんやから。
訳の分からん陰謀論まで出てきて、毎日大騒ぎしとるっちゅう感じや。
で、もう一つネタになってることがあってな。
どうもおっさん、死ぬ前に遺書を書いてたらしいんだわ。
その遺書ってのがかなり問題で。
普通、遺書ってのは残された家族に金とかを分配するもんやろ。
おっさん、何思ったか、遺書にこんなこと書いとったらしいんだわ。
『今から書かれている暗号を解いた資格者に、わたしの財産を与える。タイムリミットはわたしが死んでから3か月以内とする。資格者はわたしの血を分けた一族のみとする。探偵等を雇うことを許可する。また、この遺言は、わたしが死んだらすぐに全世界に公開する。』ってな。
で、公開されたんだわ、おっさんの遺書。
タイムリミットがあるから、まぁ、一族の連中必死でよ。
自称他称関係なく、色んな探偵に召集がかかったってわけよ。
もちろん、ワイもその一人ってわけ。
ワイの依頼人は、おっさんの9番目の娘ってやつ。
おっさん子沢山。
今の時代で、まさかの25人兄弟姉妹とか...やばすぎやろ。
でもって、暗号解読して遺産入ったら5%くれるってよ。
おいおい、数千億の5%って大きすぎやろ。
一生、遊んで暮らせるわ。
こりゃ本腰入れてやらんとな...。
そんなこんなで、招集があったんや。
依頼主ごとに個別やなくて、『多田家』の依頼っちゅうことで、一斉に行われたんや。
公民館みたいなとこに集められて、探偵全員で合同説明を受けた。
でもって、それぞれの依頼主のとこに行って打ち合わせとかする流れになった。
大きなスクリーンに自分に仕事を依頼した依頼主がいる場所が張り出されてたから、それを見て、ワイは依頼主に会った。
ワイの依頼主は、多田 左衛門尉彩(タダ サエモンノウジョウアヤ)と言った。
多田 和正はんの9女で、ワイの師匠が顧問契約結んでいた、スマホかなんかのアプリ制作会社の社長やったわ。
師匠が年齢的に無理だってことでワイにお鉢が回ったってことや。
彼女は、20歳そこそこの気の強そうやけど、憎めないタイプの女子って感じ。
初対面のとき、なかなかべっぴんはんやなぁと思ったんやけど、つい「サエモンはん」って呼んだら、ぶち切れされてボディガードに連れて行かれて注意されたわ...。
多田家って、こどもみんなに『左衛門尉』ってつけるらしいけど、古風すぎて嫌なんだとさ。
だから、サーヤと呼べと言われた。
...『サ(エモンノウジョウ)アヤ』ってことね。
で、肝心の依頼内容なんやけど。
公開されている遺書の通り、遺書に書かれている暗号を解いて多田のおっさんが残した財産を見つけろって内容やった。
「ま、ワイ天才やし、大船に乗ったつもりで任せぃ。こんなもんワイが華麗に解いたるわ!」って言ったら、ちょっぴり胡乱な目で見られたわ。
ま、まぁ、とにかく、暗号を見てみんとなんとも言えんなぁと思ってたら、目の前の大きなスクリーンに遺書に書かれとる暗号が表示されたんよ。
遺書には、次の数字が書かれておった。
①8401071072
②22652555456291551391
ワイはそれ見て瞬間的に理解できたわ。
...あぁん?分からん、嘘やろ、滅茶苦茶簡単やでこれ。
ま、ええわ。
他の探偵もさっぱり分からんみたいな顔しとるから、こりゃラッキーなんて思うてすぐサーヤはんに報告したわ。
こんなに早く解読できるなんて、サーヤはんもびっくりしとったで、ワイの天才っぷりになぁ!
大探偵、勝田 麟太郎を舐めとったらあかんでほんま。
奥歯に腕突っ込んでガタガタ言わしたるさかいな!
えっ?解決方法教えろって?
はぁ...もうしゃあねーのぅ。。
昔流行ったやろ、ポケベルやポケベル。
知らん?
お前ら、何歳や?
ワイらの時代、一世を風靡しとったポケベルや。
おっさん、ワイらと同世代やからな、ポケベルよう使っとったんやろ。
ワイもすぐ答え出せたわ。
ええか、耳の穴かっぽじてよう聞いとけや。
①8401071072→「柱時計の中」
②22652555456291551391→「金庫の扉の裏」
な、すぐ分かるやろ
あん?分からんやて?
ええか、耳かっぽじてよう聞きや。
まず、①の方やけど。
これは、ポケベルの語呂合わせちゅうやつやな。
ポケベルちゅうのは最初、電話と違って数字しか打てんかったんや。
それでも、凄かったんやで。
出始めの頃はピーピー音が鳴るだけのもんで、音が鳴ったらすぐ近くの公衆電話に駆け込んだもんや。
数字が打てるってだけで超画期的やったんや。
でなぁ、日本人ってのは無駄に頭が回るやろ、今も昔も。
当時の日本人は、その数字に日本語を語呂で当てたんや。
「0840」で「おはよう」とか、「4649」よろしくとかやな。
今でも、おっさん世代がメールとかで「4649」使う奴おるやろ、そう言うのは当時の名残やな。
で、「8401071072」なんやけど。
「はしらとけいのなか」って読めるんや。
何で最初の「7」が「け」で、次の「7」が「な」と読むのかなんて忘れたわ。
ただ、当時は一つの数字で色んな読み方したからな。
素直に読むと「な」なんやけど、何か変わった読み方して「け」って読んでた気がするわ。
ほんでもって、次の②の方やけど。
これは、語呂合わせやなくて、ポケベルコードやな。
実は、ポケベルって最初数字だけしか送れんかったんやけど、途中からカタカナとか漢字でも送れるようになったんや。
結果、語呂合わせと別軸で、五十音表に沿って作られた文字コードみたいなもんが出来たんや。
で、この「22652555456291551391」なんやけど、コード変換すると、「きんこのとびらのうら」になるっちゅうことや。
まぁ、こんなもん今の若い世代に言うても分からんやろうなぁ。
暗号解いたっちゅうことで、内容をサーヤはんに伝えたら、すぐおっさんの家に向かうことになった。
ワイが公民館やと思っとったところは、多田家の執事が使うミーティングルームみたいやった。
多田家の屋敷の中には、暗号に書かれとる「柱時計」と「金庫」があるっちゅうことで急いで屋敷の中へ見に行ったんや。
で、柱時計と金庫の中を開けたら、案の定、紙が貼っておった。
時計の中には「I 0 K 2 Y」、金庫には「R E K D Q」ってな。
で、これもポケベルかって?そう思うやろ?
ちゃうちゃう。
これは、かな入力。
おいおい、パソコン触ったことあらへんのか?
普通のキーボードの打ち方やないか。
これくらい常識やで、ほんま。
で、解読の仕方なんやけど、ようくキーボード見てみぃ。
アルファベットや数字の横に、日本語書いてあるやろ?
それや、それを使うんや。
日本人が日本人向けに作った、日本人のためのキーボード配置。
それが、かな入力や!
日本人が一番使いやすいような配置になっとる...ちゅうのがウリやな。
けど、いつの間にかローマ字変換の方が主流になってもうて、逆に使いづらくなっとる。
ま、実際、ワイら世代でも知らん奴おるけどな。
ほんで、③「I 0 K 2 Y R E K D Q」を解読してみる。
そしたら、「ふんすいのなか」っちゅう言葉が出てくるやろ。
サーヤはんにそれ伝えたら、屋敷の外へ走っていったわ。
慌ててワイも追いかけたら、バカでかい庭に意味分からん彫像なんかを飾ってある、その辺のプールより大きな噴水があったわ。
サーヤはんのボディガードが一斉に噴水の中に入っていった。
しばらくして小さな箱が見つかったって報告が入り、特に鍵もかかっとらんかったからその場で開けた。
そしたら、石板が出てきた...なんで、石板なんや?
水に濡れて文字消えたらまずいからか?
なら、噴水の中になんか隠さんかったらええんとちゃうんか?
そんなこと考えとったら、サーヤはんから呼ばれた。
暗号が出てきたけど、意味が分からんってな。
はいはい、しゃあねえな。
まったく、ワイがおらんかったらほんまどうしようもなかったで。
で、石板に書かれている文字を読んだんだわ。
④『Nz30000Wz55000』って書かれとった。
一瞬、うん?何やこれ?とはなったんやけど、すぐ分かったわ。
滅茶苦茶簡単やな、これ。
さすがにもうネタ切れか?おっさん。
これは、方角やな。
古典的やのぉ。
要するに、『Nz30000ST→Wz55000ST』。
ここに全財産を埋めるということやな。
North(北)に『30000』West(西)に『55000』ってことや。
いや待てと。
ほな、「z」はどう扱うんだって。こいつはおまけ...ってなこともなく、まさかのゼタ単位やったわ。
つまりどういうことかというと。
北に30000Z=30000000000000000000000000(30杼)。。
西に55000Z=55000000000000000000000000(55杼)。
...どこやそれ?
噴水をゼロと見立てるのはええけど、STって何や?って考えた。
STEPか...、歩数ね。
簡単簡単。まぁ、ワイ天才やし。
すぐ答え出たけどさ、最後は単純やしのう。
で、噴水から歩いたら終わりっちゅう訳や。
それをサーヤはんに伝えたんやが、滅茶苦茶切れてた。
なんでやって?まぁそりゃそうやろ。
どうやって歩くんや、そんなアホみたいな距離。
一応、歩いたと仮定してどこに着くんか計算したらしいわ。
1歩を1メートルと計算すると、地球を75京周できるらしいわ。
アンドロメダ星雲なんて一瞬で通り過ぎるらしい...って、どんな距離や。
行けるか、そんなもん。
だから、ワイがもう一回頭捻って、宇宙に行くんやなくて、地球をグルグルって回って、回り切って余った距離行けばいいんじゃね?って言ったんや。
再計算したら、北に30杼行くと「パプアニューギニアの北東の海」なんだとよ。
そこから西に55杼行くと、アフリカのジャングルにたどり着く。
なるほど、ここか!...やないねん。
ジャングルて。
どんだけ広いと思っとるんや、冗談やないで。
ま、ワイはしっかり暗号を問いたし、役目は十分果たしたやろ。
後は報酬もらって家帰ればええだけや...!?
ってあれ、サーヤはん、そんな探検服みたいな着て、これからどっか行くんすか?
えっ、俺の服っすか?なんすかこれ??
今から、ジャングル?
いやいやいやいや、無理無理無理無理。
ワイ、今晩は、まるるーとまりりん(通称、まるまり)見なあかんし。
アニメなんていつでも見れる?早く準備しろやて!
あほぬかせ!リアタイしてなんぼやろ、こんなもん。
暗号は解けたが、まだ遺産は入っとらん?
そやから、依頼料払わん...前払いした分取り立てるやて。
ちっ、しゃあねーの、行ったるわ。
この天才、大探偵『勝田 麟太郎』に全て任せい。
ジャングルだろうが何だろうが、全てお見通しや!
そん代わり、報酬は5...6%はもらうで!
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その後、彼を大阪で見ることはなかった。




