第78話:どんな店でも、回せる
翌日。
学校が終わると、そのまま三つ目の店へ向かう。
通りに入る。
人は少ない。
流れは速い。
条件は相変わらず悪い。
だが――
一つだけ違う。
止まる人間がいる。
“大盛り無料 500円定食”
その前で、一瞬だけ足が止まる。
見る。
考える。
そして――
入る。
(……入口前は完全に通ったな)
そう判断する。
店の前に立つ。
次に中を見る。
客がいる。
昨日より多い。
明らかに。
だが――
(……まだ詰まる)
すぐにわかる。
席に座る。
注文は早い。
だが、料理が出るまでが遅い。
その間に――
少しだけ空気が止まる。
(……ここだな)
最後のピース。
「来たか」
田中が出てくる。
「はい」
短く答える。
「どうだ?」
(……やるだけだ)
そう思う。
「中」
短く言う。
「回す」
それだけ。
田中が頷く。
「やるか」
迷いはない。
厨房に入る。
「おい」
店主に声をかける。
「最後だ」
それだけ。
店主が少し緊張した顔をする。
(……ここで決まる)
そう思う。
「順番変える」
短く言う。
「注文順じゃない」
「時間かかるやつから」
それだけ。
店主が頷く。
昨日までで理解している。
動く。
揚げ物を先に仕込む。
焼き物をまとめる。
軽いメニューは後で出す。
最初はぎこちない。
だが――
すぐに変わる。
「早いな」
客の一人が言う。
料理を受け取りながら。
「昨日より全然いい」
(……通ったな)
そう思う。
さらに見る。
(……まだある)
準備。
遅い。
注文を受けてから材料を出している。
(……これで止まる)
「準備」
短く言う。
店主がすぐに動く。
野菜を切る。
肉を出す。
火を整える。
すぐ出せる状態にする。
(……これで全部だ)
そう確信する。
夕方。
結果が出る。
明確に。
客が入る。
注文する。
すぐ出る。
「早っ!」
思わず声が出る。
「もう来た」
笑う。
食べる。
すぐ終わる。
席が空く。
次が入る。
回る。
止まらない。
(……完成だ)
そう思う。
入口前。
入口。
中。
全部が繋がる。
条件は関係ない。
場所も関係ない。
「……すげえな」
田中が呟く。
本気で。
「こんな店でも回るのかよ」
(……回る)
そう思う。
やることは同じだからだ。
夜。
店を閉める。
売上を見る。
店主が固まる。
数秒。
「……これ、昨日の倍以上ある」
声が震える。
(……出たな)
そう思う。
最悪条件。
それでも――
結果は出る。
「なんでだよ」
店主が言う。
本気で。
「場所も悪いし、店も古いのに」
(……関係ない)
そう思う。
「流れ」
短く言う。
「変えただけ」
それだけ。
店主が黙る。
理解はしていない。
だが――
納得はしている。
結果があるからだ。
「……ありがとう」
小さく言う。
それで十分だ。
田中がこちらを見る。
「これで?」
(……一区切りだな)
そう思う。
「終わり」
短く言う。
それだけ。
三店舗。
全部通した。
条件が違っても。
場所が違っても。
結果は同じ。
(……証明したな)
そう確信する。
「……マジで全部いけるんだな」
田中が笑う。
少し呆れたように。
だが――
嬉しそうだ。
「で」
田中が続ける。
「次は?」
(……来るな)
そう思う。
ここからが本番だ。
一店舗。
二店舗。
三店舗。
それは“検証”。
ここからは――
“拡大”。
「増やす」
短く言う。
「一気に」
それだけ。
沈黙。
数秒。
「……面白いな」
田中が言う。
低く。
だが、強い。
「やるか」
それだけ。
(……やる)
そう思う。
答えは決まっている。
「やる」
短く言う。
それだけ。
夜。
家に帰る。
机に向かう。
ノートを開く。
書く。
・店①(成功)
・店②(成功)
・店③(成功)
共通点。
入口前。
入口。
中。
理由。
(……完成だ)
そう確信する。
どこでも通る。
条件は関係ない。
やり方がすべて。
「……次は」
規模。
一気に増やす。
人。
金。
全部動かす。
その準備は――
もう終わっている。
「……いける」
小さく呟く。
ここからは別物だ。
小さな店の話じゃない。
もっと大きい。
もっと速い。
その段階に、入った。




