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第77話:弱い場所には、強い入口を

翌日。


学校が終わると、そのまま三つ目の店へ向かう。


昨日と同じ道。


だが――


足取りは少しだけ遅い。


(……条件が違う)


そう思う。


二つ目の店とは明らかに違う。


人が少ない。


流れが速い。


そして――


店が弱い。


(同じやり方じゃ足りない)


そう判断する。


店の前に着く。


昨日貼った紙。


“大盛り無料”

“500円定食”


その前で、一人が止まる。


見る。


少し考える。


そして――


入る。


(……入口前は通ってる)


そう思う。


問題はその先だ。


中に入る。


「いらっしゃい……」


店主の声。


昨日よりは少しだけ強い。


だが――


まだ弱い。


店の中を見る。


客は一人。


昨日よりは増えた。


だが――


(……止まる)


すぐにわかる。


席に座る。


メニューを見る。


時間がかかる。


「……どれにするか」


小さく呟く。


迷っている。


(……ここだ)


そう思う。


入口前は通した。


だが――


入口で詰まる。


意味がない。


「来たか」


田中が奥から出てくる。


「はい」


短く答える。


「どうだ?」


(……予想通りだ)


そう思う。


「弱い」


短く言う。


「入口」


それだけ。


田中が頷く。


「やっぱりか」


「どうする?」


(……一つじゃ足りない)


そう思う。


二つ目は一つで通った。


だがここは違う。


もう一段強くする。


「繋げる」


短く言う。


「え?」


「外と中」


それだけ。


田中が少し考える。


「……ああ」


小さく言う。


「バラバラってことか」


(……理解早いな)


そう思う。


外で止まる。


だが――


中に入ると別物。


繋がっていない。


だから迷う。


「同じにする」


短く言う。


紙を出す。


ペンを取る。


書く。


“500円定食 大盛り無料”


そのまま。


外と同じ。


「これでいい」


短く言う。


「……それだけか?」


田中が言う。


「それだけ」


短く返す。


「迷わない」


それだけ。


メニューの一番上。


目に入る位置に貼る。


高さ。


角度。


調整する。


(……これで通る)


そう確信する。


客が一人入る。


昨日と同じ流れ。


入口前で止まる。


入る。


席に座る。


そして――


今回は違う。


メニューを開く前に、目が止まる。


“500円定食 大盛り無料”


「これか」


小さく言う。


「じゃあこれで」


即決。


(……繋がったな)


そう思う。


止まらない。


入口前→入口→注文。


一直線。


流れが途切れない。


次の客。


同じ動き。


止まる。


見る。


入る。


「これでいいか」


即決。


(……再現したな)


確信する。


複数で通る。


それが重要だ。


「……違うな」


田中が呟く。


「昨日よりいい」


(……当然だ)


そう思う。


繋げた。


それだけ。


昼。


客はまだ少ない。


だが――


止まらない。


迷わない。


注文が速い。


(……ここまではいい)


そう判断する。


だが――


まだ足りない。


見る。


さらに見る。


(……雰囲気か)


気づく。


店の中。


暗い。


弱い。


“入ってよかった”がない。


(……ここもやるか)


「明るくする」


短く言う。


「え?」


田中が聞く。


「声」


それだけ。


店主を見る。


「いらっしゃい」


もう一度言わせる。


「……いらっしゃい」


弱い。


「もう一回」


短く言う。


「いらっしゃい!」


少し強くなる。


(……これでいい)


それだけで空気が変わる。


小さい。


だが、効く。


次の客が入る。


「いらっしゃい!」


店主が言う。


少しだけ大きい声。


客が少しだけ顔を上げる。


(……違うな)


そう思う。


空気が変わる。


夜。


店を閉める。


売上を見る。


昨日より上。


確実に。


「……なんか、違う」


店主が言う。


ぽつりと。


「客の反応が違う」


(……そこだ)


そう思う。


数字だけじゃない。


体感が変わる。


それが重要だ。


田中がこちらを見る。


「次は?」


(……来るな)


そう思う。


「中」


短く言う。


「回す」


それだけ。


田中が笑う。


「やっぱりそこか」


(……最後だ)


そう思う。


入口前。


入口。


通した。


次は――


中。


そこまで行けば――


完成する。


夜。


家に帰る。


机に向かう。


ノートを開く。


書く。


・止める

・繋ぐ

・強める


順番通り。


「……いけるな」


小さく呟く。


条件が悪くても通る。


やり方が合っていれば。


それが証明されている。


「……次で終わる」


そう思う。


三つ目も通す。


それで――


どこでも通用する。


その段階に、入った。

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