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第70話:中を変えると数字が跳ねる

翌日。


学校が終わると、そのまま田中の店へ向かう。


昨日と同じ道。


同じ店。


だが――


入口の空気が違う。


人の動きが速い。


立ち止まる時間が短い。


(……入口は機能してるな)


そう判断する。


看板を見る。


“おすすめ定食”


昨日と同じ。


だが、意味は違う。


「来たか」


田中が店の前で待っている。


「はい」


短く答える。


「昨日はやばかったな」


少し興奮した声。


「客の入り、明らかに変わった」


(……当然だ)


そう思う。


だが、言わない。


「今日は中」


短く言う。


田中がすぐに頷く。


「詰まりだな」


「そう」


それだけで通じる。


中に入る。


客は昨日より多い。


だが――


(……まだ止まる)


すぐにわかる。


入口で入る。


注文する。


だが、そこから遅い。


厨房の動き。


店員の動き。


全部見える。


「……やるか」


田中が言う。


(……いいな)


そう思う。


話が早い。


「順番変える」


短く言う。


「重いの先」


それだけ。


田中が厨房に入る。


「おい」


店員に声をかける。


「やり方変えるぞ」


少しざわつく。


当然だ。


「注文順じゃない」


続ける。


「時間かかるやつからやる」


それだけ。


店員が戸惑う。


「でもそれだと順番が――」


「全部遅れる」


田中が被せる。


(……いいな)


そう思う。


そのまま言っている。


理解している。


「いいからやれ」


一言。


それで決まる。


(……回るな)


そう確信する。


そこから動きが変わる。


揚げ物を先に仕込む。


焼き物をまとめる。


軽いメニューは後で出す。


最初はぎこちない。


だが――


すぐに変化が出る。


「早いな」


客の一人が言う。


料理を受け取りながら。


別の客も言う。


「昨日より全然いい」


(……来たな)


そう思う。


流れが変わった。


目に見える形で。


さらに回る。


一人が食べ終わる。


席が空く。


次が座る。


回転が上がる。


それだけで――


店の空気が変わる。


軽い。


止まらない。


「……すげえな」


田中が小さく言う。


横で。


(……まだだ)


そう思う。


見る。


さらに見る。


(……もう一つ)


気づく。


準備。


遅い。


注文を受けてから材料を出している。


(……ここだな)


「準備」


短く言う。


「先」


それだけ。


田中がすぐに理解する。


「ああ……下ごしらえか」


「そう」


短く言う。


「やる」


それだけ。


すぐに動く。


開店前に仕込む。


野菜を切る。


肉を準備する。


火の準備。


すぐ出せる状態にする。


(……これで完成だ)


そう思う。


夕方。


結果が出る。


明らかに違う。


「早っ」


客が言う。


料理がすぐ出る。


「もう来た」


笑う。


そのまま食べる。


回る。


回る。


止まらない。


(……完全に繋がったな)


入口。


中。


準備。


全部が一つになる。


その結果――


数字が跳ねる。


夜。


店を閉める。


売上を見る。


田中が黙る。


数秒。


「……これ、昨日の倍近いぞ」


低い声。


だが、はっきりしている。


(……出たな)


そう思う。


結果。


明確な。


「なんでだよ」


田中が言う。


本気で。


「同じ店だぞ?」


(……違う)


そう思う。


「流れ」


短く言う。


「変えただけ」


それだけ。


田中が頭をかく。


「……意味わかんねえ」


苦笑する。


だが――


否定ではない。


完全に受け入れている。


「次」


田中が言う。


(……来るな)


そう思う。


「まだあるんだろ?」


短く聞く。


「ある」


即答する。


「最後」


一拍。


「理由」


それだけ。


田中が眉をひそめる。


「理由?」


「また来る理由」


短く言う。


沈黙。


「……確かに」


小さく言う。


「今は回るだけだな」


(……理解が早い)


そう思う。


「そこやれば終わりだ」


短く言う。


田中が笑う。


「終わらせてくれよ」


その言葉。


(……違うな)


そう思う。


終わりじゃない。


始まりだ。


だが、言わない。


店を出る。


夜の空気。


少しだけ軽い。


(……通ったな)


そう思う。


他人の店。


他人の人間。


それでも――


同じように結果が出る。


しかも、明確に。


(……これで証明だ)


自分のやり方は通用する。


場所を選ばない。


人を選ばない。


それがわかった。


「……次は」


小さく呟く。


最後の一手。


“理由”。


それを入れれば――


完成する。


そして――


その先に行ける。


「……いいな」


そう思う。


流れは止まらない。


むしろ、加速している。


その段階に、完全に入った。

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