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第68話:外の店は、全部違う

翌日。


学校が終わると、そのまま店には戻らなかった。


約束の場所へ向かう。


昨日の男――田中が言っていた店。


駅から少し離れた通り。


人通りはある。


だが、多くはない。


(……立地は悪くない)


そう判断する。


悪くはない。


だが、“強くもない”。


つまり――


中身次第。


店の前に立つ。


看板。


メニュー。


入口。


一通り見る。


(……普通だな)


特別な違和感はない。


だが、特別な強さもない。


「来たか」


後ろから声。


田中だ。


「はい」


短く答える。


「じゃあ、入ろう」


それだけ。


中に入る。


「いらっしゃい」


店員の声。


二人。


カウンターとテーブル。


客は……三人。


時間帯を考えると、少ない。


(……まずここだな)


そう思う。


席に座る。


メニューを見る。


(……多い)


すぐにわかる。


種類が多い。


似たものも多い。


(迷うな)


そう判断する。


「何にする?」


田中が聞く。


「これ」


適当に一つ選ぶ。


理由はない。


(……これも問題だな)


選ぶ理由がない。


ただ選ぶだけ。


それは弱い。


注文する。


そのまま、店の中を見る。


客の動き。


店員の動き。


流れ。


(……止まってるな)


すぐにわかる。


注文を受ける。


少し待つ。


厨房で考える。


作る。


出る。


その間に、空白がある。


(後手)


昨日までの自分の店と同じ。


さらに――


「……遅いな」


客の一人が呟く。


小さく。


だが、聞こえる。


(……同じだな)


確信する。


入口。


迷い。


中。


詰まり。


全部揃っている。


「どう?」


田中が聞く。


「まだ」


短く答える。


「全部見る」


それだけ。


料理が出る。


食べる。


味は――普通。


悪くない。


だが、特別でもない。


(……勝負にならないな)


そう思う。


味で勝てる店じゃない。


なら――


流れで勝つしかない。


食べ終わる。


会計。


外に出る。


田中がすぐに聞く。


「どうだった?」


(……いい店だな)


そう思う。


悪い意味で。


問題がはっきりしている。


直せる。


「三つ」


短く言う。


「三つ?」


「入口」


一つ。


「迷う」


それだけ。


田中が頷く。


「多いから?」


「多いし、弱い」


それだけ。


「弱い?」


「選ぶ理由がない」


短く言う。


田中が少し黙る。


「……なるほど」


理解している。


「次」


続ける。


「中」


「詰まる」


それだけ。


「遅いってことか」


「後手」


短く言う。


「注文から動く」


それだけ。


田中がため息をつく。


「当たってるな……」


(……最後だな)


「三つ目」


少しだけ間を置く。


「戻らない」


それだけ。


田中が眉をひそめる。


「どういう意味?」


「もう一回来る理由がない」


短く言う。


沈黙。


数秒。


田中が小さく笑う。


「……きついな」


だが、その顔は納得している。


(……全部見えてるな)


そう思う。


「直せる?」


田中が聞く。


「直る」


即答する。


「全部」


それだけ。


田中の目が変わる。


「ほんとか?」


「同じだから」


短く言う。


「うちと」


それだけ。


(構造は同じ)


店が違っても。


人が違っても。


問題は同じ。


迷い。


詰まり。


理由の欠如。


それだけ。


「……で?」


田中が一歩近づく。


「どうする?」


(……ここだな)


そう思う。


前に進むか。


止まるか。


「一つずつ」


短く言う。


「全部はやらない」


それだけ。


田中が頷く。


「いいな」


小さく言う。


「順番があるってことか」


(……理解が早い)


そう思う。


「まず入口」


短く言う。


「次に中」


「最後に理由」


それだけ。


田中が深く頷く。


「わかった」


その一言で十分だった。


「いつやる?」


すぐに聞く。


(……早いな)


そう思う。


だが、問題ない。


「明日」


短く答える。


「入口だけ」


それだけ。


「いいね」


田中が笑う。


今度ははっきりと。


「じゃあ頼む」


その言葉。


(……違うな)


そう思う。


“頼む”じゃない。


「見るだけ」


短く言う。


「やるのはそっち」


それだけ。


田中が少し驚く。


「……なるほど」


すぐに理解する。


「俺がやるのか」


「そう」


短く言う。


「やらないと続かない」


それだけ。


沈黙。


数秒。


田中が笑う。


「面白いな」


小さく言う。


「普通は全部やるのに」


(……それは違う)


そう思う。


やらせる。


それが仕組みだ。


夜。


家に帰る。


机に向かう。


ノートを開く。


今日の店を書く。


・入口(迷い)

・中(詰まり)

・理由(欠如)


すべて同じ。


場所が変わっただけ。


(……通用するな)


そう確信する。


自分の店だけじゃない。


外でも通じる。


それが証明された。


「……いいな」


小さく呟く。


布団に入る。


目を閉じる。


今日の光景が浮かぶ。


観察。

分解。

判断。


すべて繋がる。


「……次は」


実際に動かす。


他人の店を。


他人の手で。


それができれば――


一つ上に行く。


「……やれるな」


そう思う。


流れは、さらに外へ出る。


その段階に、入った。

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