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第57話:正しさだけでは通らない

昼休み。


いつもより少しだけ、空気が重かった。


窓際には人が集まっている。


だが、会話のトーンが違う。


「聞いたか?」


「うん」


「さっきのやつだろ」


(……来たな)


恒一は席を立つ。


窓際に向かう途中で、視線が一箇所に集まっているのが見えた。


教室の中央。


一人の男子が立っている。


見覚えがある。


クラスの中でも、成績がいいやつだ。


「それさ」


その男子が、少し大きめの声で言う。


「同じことやってるだけじゃねえの?」


教室が静まる。


(……いいな)


そう思う。


完全な否定ではない。


だが、疑問としては鋭い。


「型に当てはめてるだけだろ」


続ける。


「それってさ、自分で考えてないってことじゃね?」


数人が顔を見合わせる。


さっきまでの空気が、少しだけ揺れる。


(……崩しに来たな)


そう思う。


ここでどう返すか。


それで流れが変わる。


恒一は、そのまま近づく。


「それで?」


短く言う。


全員の視線が集まる。


男子は少しだけ目を細める。


「それでって?」


「問題あるかって聞いてる」


静かに言う。


男子は一瞬、言葉を選ぶ。


「……あるだろ」


「どこが」


間を詰める。


「考えてない」


「考えてる」


即答する。


教室が一瞬静まる。


男子が言い返す。


「どこがだよ」


「削るとき」


それだけ。


男子が止まる。


「削るってことは、選んでるってことだ」


続ける。


「何を残すか、何を消すか」


「それ、考えてるだろ」


一歩だけ前に出る。


「型に入れるのは、その後だ」


静かに言い切る。


男子は数秒黙る。


「……でもさ」


まだ食い下がる。


いい流れだ。


「同じ形になるだろ」


「なるな」


認める。


そこで一拍置く。


「で?」


返す。


男子が詰まる。


「……いや」


「形が同じで何が困る」


さらに詰める。


「中身が同じか?」


男子は何も言わない。


周りの空気が変わる。


「違うだろ」


静かに言う。


「読むと全部違う」


それだけ。


男子は目を逸らす。


(……通ったな)


そう思う。


だが、ここで終わらせない。


「逆に聞く」


今度はこちらから。


「お前、どうやって書いてる?」


男子が少しだけ驚く。


「……普通に」


「普通ってなんだ」


沈黙。


「最初から最後まで書いてるだけだろ」


答えない。


それが答えだ。


「それで何回直される?」


少しだけ強く言う。


男子の顔が、わずかに歪む。


「……」


「三回か?」


反応でわかる。


「四回か?」


沈黙。


周りから小さな声が漏れる。


「……それだよ」


静かに言う。


「考えてないのはどっちだ?」


教室が、完全に静まる。


男子は何も言えない。


数秒。


そして――


「……わかった」


小さく言う。


「それ、貸してくれ」


基準の紙を指す。


(……いいな)


そう思う。


折れたわけじゃない。


理解した。


それが重要だ。


「見ればいい」


短く答える。


それで十分。


男子は紙を見る。


真剣に。


(……変わるな)


そう確信する。


昼休みの後半。


空気は完全に戻っていた。


いや、少しだけ強くなっている。


「これ、削るのムズいな」


「だからやるんだろ」


そんな会話が増えている。


一人が言う。


「さっきのやつ、普通に納得してたな」


「あいつ結構言うタイプなのに」


(……いい影響だ)


否定してきたやつが納得する。


それは、全体に効く。


放課後。


帰り道。


さっきの男子が横に並ぶ。


「なあ」


「ん?」


「さっきの」


少し間を置く。


「ありがとな」


短い言葉。


だが、それで十分だ。


「別に」


それだけ返す。


男子は少し笑う。


「これ、使うわ」


「使え」


短く言う。


それで終わり。


(……崩れないな)


そう思う。


外部の干渉。


否定。


それを通した。


しかも――


強化された。


家に帰る。


机に向かう。


ノートを開く。


今日ははっきりしている。


・否定が来る

・理屈で返す

・納得させる

・強くなる


「……これだな」


小さく呟く。


正しさだけでは通らない。


だが――


通す方法はある。


原稿用紙を出す。


今日のテーマは決まっている。


“正しさの通し方”


書き始める。


否定される。

止められる。

だが、崩れない。


その理由。


最後に一文。


「正しさは、通して初めて意味がある」


そこに絞る。


書き終える。


「……いいな」


そう思う。


これまでで一番、“戦ってる”回だ。


封筒に入れる。


迷いはない。


外に出る。


ポストの前。


投函する。


音がする。


家に戻る。


布団に入る。


目を閉じる。


今日の光景が浮かぶ。


否定。

対話。

納得。


その流れ。


「……次は」


小さく呟く。


同じレベルの相手じゃない。


もっと強い否定が来る。


そのとき――


どうするか。


その段階に、確実に入っていた。

私の2作目

「神様転生したはずが赤ん坊の自分に転生していた件」

は修正のために一時的に更新を停止しました

代わりとして新作を投稿します

「遊びで山をいじったら、日本が変わり始めた。」

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