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第58話:上からの否定を通す

予約忘れてました

昼休みの少し前。


授業の終わり際だった。


担任が教卓に手を置いたまま、ふと口を開く。


「高瀬、ちょっといいか」


教室の空気が止まる。


(……来たな)


そう思う。


今までのは“様子見”だった。


今回は違う。


「はい」


短く答える。


「放課後、職員室来い」


それだけ。


理由は言わない。


だが、全員が理解する。


(……本格的に触れてきたな)


昼休み。


いつもの窓際。


だが、今日は少し空気が違う。


「呼ばれてたな」


「やばくね?」


「止められるかもな」


そんな声が混ざる。


(……いいな)


そう思う。


不安がある。


それでいい。


そのほうが、通したときに効く。


「どうする?」


誰かが聞く。


「普通に行く」


それだけ。


変える理由がない。


一人が言う。


「もし止められたら?」


少しだけ考える。


「止まらない」


短く答える。


それだけでいい。


(……止められる構造じゃない)


そう思う。


午後の授業。


内容は頭に入っていない。


考えているのは一つだけ。


(どこを突いてくるか)


・均一化

・思考停止

・教育的にどうか


そのあたりだ。


だが――


(全部返せるな)


そう判断する。


放課後。


職員室の前。


少しだけ空気が違う。


扉の向こうは“大人の場所”だ。


ノックする。


「失礼します」


「入れ」


担任の声。


中に入る。


机の前に立つ。


そこには、担任と――もう一人。


見たことがある。


学年主任だ。


(……上が来たな)


そう思う。


担任が口を開く。


「これ」


机の上に置かれる紙。


基準。


そして、いくつかの作文。


「お前が関わってるやつだな?」


「はい」


否定しない。


意味がない。


学年主任が口を開く。


「面白いことしてるな」


低い声。


だが、柔らかくはない。


「ただな」


一拍。


空気が締まる。


「教育としてはどうなんだ、これは」


(……来たな)


予想通り。


「どの点ですか」


先に聞く。


相手に言わせる。


学年主任は少しだけ眉を動かす。


「全員が同じ型で書く」


「個性が消える」


「考える力が育たない」


一つずつ並べる。


(……全部来たな)


そう思う。


順番に処理する。


「型は最初だけです」


まず一つ。


「最初?」


担任が聞く。


「迷わないためです」


短く答える。


「最初に形を決めると、削ることに集中できる」


それだけ。


学年主任が続ける。


「削る?」


「はい」


一枚の紙を取る。


例として見せる。


「これ、削る前です」


次に別の紙。


「これ、削った後です」


二人が見る。


「どっちが読みやすいですか」


数秒。


「……後だな」


担任が答える。


「それを全員やってます」


それだけ。


次。


「個性が消える」


「消えません」


即答する。


「形が同じだけです」


紙を指す。


「中身は全部違います」


学年主任が目を細める。


「それはわかる」


「なら問題ないです」


短く切る。


空気が一瞬揺れる。


(……いい)


流れが来ている。


最後。


「考える力が育たない」


ここが一番重要。


少しだけ間を置く。


「逆です」


はっきり言う。


担任が反応する。


「逆?」


「はい」


一歩だけ前に出る。


「削るときが一番考えます」


静かに言う。


「何を残すか」


「何を消すか」


「それを毎回判断する」


それだけ。


「何も考えないで書くより、よっぽど考えてます」


沈黙。


数秒。


空気が変わる。


(……通ったな)


そう感じる。


学年主任が息を吐く。


「……なるほどな」


低く言う。


完全な納得ではない。


だが――


否定ではない。


担任が苦笑する。


「理屈は通ってるな」


それで十分だった。


学年主任がもう一度言う。


「ただし」


空気が少しだけ戻る。


「やりすぎるな」


「はい」


素直に答える。


「自分で考えることを忘れるな」


「はい」


それで終わり。


止められない。


止める理由がない。


職員室を出る。


廊下。


静かだ。


(……終わったな)


そう思う。


否定は来た。


だが――


通した。


教室に戻る。


数人が待っている。


「どうだった?」


「普通」


短く答える。


「止められた?」


「止まらない」


それだけ。


全員が息を吐く。


「マジかよ」


「通したのか」


(……効いてるな)


そう思う。


外部の“上”を通した。


それは全体に効く。


昼休み。


窓際。


空気は、昨日より強い。


「これ、もう大丈夫だろ」


「先生も何も言ってねえし」


(……違うけどな)


そう思う。


許可じゃない。


だが――


止められていない。


それで十分だ。


流れは、さらに強くなる。


放課後。


家に帰る。


机に向かう。


ノートを開く。


今日ははっきりしている。


・上からの否定

・理屈で返す

・止まらない


「……これだな」


小さく呟く。


強い否定ほど、通したときに強くなる。


原稿用紙を出す。


今日のテーマは決まっている。


“上からの否定”


それをどう通すか。


書き始める。


止められる。

疑われる。

だが、崩れない。


その理由。


最後に一文。


「上でも止められないものは、本物だ」


そこに絞る。


書き終える。


「……いいな」


そう思う。


これまでで一番、明確な勝ちだ。


封筒に入れる。


迷いはない。


外に出る。


ポストの前。


投函する。


音がする。


家に戻る。


布団に入る。


目を閉じる。


今日の光景が浮かぶ。


否定。

対話。

通過。


その流れ。


「……次は」


小さく呟く。


もう学校内じゃない。


外の“大人”が来る。


そのとき――


どうするか。


その段階に、確実に入っていた。

私の2作目

「神様転生したはずが赤ん坊の自分に転生していた件」

は修正のために一時的に更新を停止しました

代わりとして新作を投稿します

「遊びで山をいじったら、日本が変わり始めた。」

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