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第56話:流れに触れてくるもの

朝、教室に入ると、すぐに違和感に気づいた。


視線の向き。


いつもは窓際に集まる。


だが今日は違う。


教室の前方。


教壇の近くに、人が固まっている。


「……なんだ?」


小さく呟く。


そのまま近づく。


輪の中心にいるのは――担任だった。


「これ、誰がやってるんだ?」


手に持っているのは、一枚の紙。


見覚えがある。


基準。


昨日更新したもの。


(……拾ったか)


そう思う。


隣にいたやつが小声で言う。


「先生に見つかった」


「どこで」


「提出したやつ見てたら気づいたらしい」


(……まあ、そうなるか)


隠していたわけではない。


広がれば、必ず目に入る。


担任が続ける。


「これ、全体的に似てるんだよな」


紙をひらひらと振る。


「最初に結論。無駄を削る。最後にまとめる」


教室が静かになる。


「誰か説明できるやついるか?」


沈黙。


誰も手を上げない。


当然だ。


(……どうする)


少しだけ考える。


ここで前に出るか。


それとも流すか。


「……」


数秒。


そして――


「俺です」


口が動いた。


全員の視線が集まる。


担任もこちらを見る。


「高瀬か」


「はい」


一歩前に出る。


教壇の前。


紙を受け取る。


「これ、お前が作ったのか?」


「最初は」


そう答える。


嘘ではない。


だが、全部でもない。


「最初は?」


「今は違います」


少しだけ間を置く。


「みんなで使って、変えてます」


それだけ。


担任は少しだけ目を細める。


「変えてる?」


「はい」


紙を指す。


「これは、途中の形です」


教室がざわつく。


(……いい反応だ)


そう思う。


固定じゃない。


更新されるもの。


その認識を入れる。


担任が聞く。


「なんでこんなことしてるんだ?」


シンプルな問い。


だが、本質だ。


「早く終わるからです」


即答する。


「早く?」


「迷わないと、直さなくていい」


それだけ。


担任は少し黙る。


「……なるほどな」


完全には納得していない。


だが、否定もしていない。


「面白いことやってるな」


そう言って、紙を机に置く。


「ただな」


一拍置く。


空気が変わる。


「全員が同じ書き方になるのは、どうなんだ?」


(……来たな)


そう思う。


予想していた。


“均一化”の問題。


「問題ないです」


即答する。


少しだけ空気が揺れる。


担任が眉を上げる。


「理由は?」


「同じじゃないからです」


一瞬、沈黙。


「どういう意味だ?」


「形が同じだけです」


それだけ。


「中身は違います」


教室が静かになる。


「読むとわかります」


短く言う。


担任は紙をもう一度見る。


数秒。


「……確かに」


小さく呟く。


「内容はバラバラだな」


それで十分だった。


(……通ったな)


そう思う。


否定されなかった。


つまり、続けられる。


担任は軽く頷く。


「まあ、いい」


その一言。


空気が一気に緩む。


「ただし」


もう一度だけ釘を刺す。


「自分で考えることはやめるなよ」


「はい」


短く答える。


それで終わり。


席に戻る。


周りから一斉に視線が来る。


「お前、言ったな」


「普通に」


「止められるかと思った」


「止まらないだろ」


それだけ。


(……これでいい)


そう思う。


外部の干渉。


それを通した。


しかも――


否定されずに。


昼休み。


窓際。


いつも通り人が集まる。


だが、空気が少し違う。


「さっきのやつ、やばくなかった?」


「普通に答えてたな」


「止まるかと思ったわ」


(……意識が変わったな)


そう思う。


今までは内側の話。


だが、今日は違う。


“外から見られた”。


それが全員に伝わっている。


一人が言う。


「これさ、もう公認みたいなもんじゃね?」


「まあな」


別のやつが笑う。


(……違うけどな)


そう思う。


公認ではない。


許されただけだ。


その差は大きい。


だが、今はいい。


一人が紙を持ってくる。


「これどう?」


見る。


短い。


いい。


「そのまま」


即答。


流れは止まらない。


むしろ――


速くなっている。


(……意識が揃ったな)


外部に触れたことで、逆に固まった。


それが大きい。


放課後。


教室を出るとき、誰かが言う。


「なあ」


「ん?」


「これさ、止まると思った?」


少し考える。


「思わない」


「なんで」


「止める理由がない」


それだけ。


相手は少し笑う。


「確かに」


(……まだいけるな)


そう思う。


家に帰る。


机に向かう。


ノートを開く。


今日ははっきりしている。


・外部が介入

・否定されない

・むしろ固定される


「……通ったな」


小さく呟く。


ここが分岐だった。


止まるか、続くか。


結果は――


続いた。


原稿用紙を出す。


今日のテーマは決まっている。


“外からの干渉”


それが入ったとき、どうなるか。


書き始める。


見られる。

問われる。

答える。


それでも、崩れない。


その理由。


最後に一文。


「止まらないものは止まらない」


そこに絞る。


書き終える。


「……いいな」


そう思う。


これまでで一番、緊張感がある。


封筒に入れる。


迷いはない。


外に出る。


ポストの前。


投函する。


音がする。


家に戻る。


布団に入る。


目を閉じる。


今日の光景が浮かぶ。


見られる。

問われる。

通る。


その流れ。


「……次は」


小さく呟く。


外部は一つじゃない。


もっと強いものが来る。


そのとき――


どうするか。


その段階に、確実に入っていた。

私の2作目

「神様転生したはずが赤ん坊の自分に転生していた件」

は修正のために一時的に更新を停止しました

代わりとして新作を投稿します

「遊びで山をいじったら、日本が変わり始めた。」

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