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ういうい、薄れた血の臭いは再び、なの、だ(分岐 続人形争奪戦 其の六)

ういうい、円、だ。


 現在、謎の武装集団からの襲撃を受けている最中なの、だ。


 螺苛達との鬼ごっことは訳が違う。


 こっちの鬼は完全武装。


 銃をバンバン撃ちまくってくる。


 市街地を離れたのが逆に仇となったの、だ。


「しかしっ」


 こいつらまるで離れない。


 私は全力で逃げてるというのに。


 全身がピリピリする。


 これは殺人鬼や、はたまた拷問士の類いのやつではない。


 蛇師匠や血色と同じ。


 強者のプレッシャー。


「こいつら、強いの、だ」


 人数は不明。


 だが、連携は完璧。


 うまく、逃げ道を塞がれているの、だ。


「ちっ!」


 なるべく標準を外すように小刻みに動く。


 転がりながら、壁の向こうへ。


 コンマ何秒前に存在していた体を弾丸が通り抜ける。


 これ、後一人でもいたら終わりだったの、だ。


 私を過小評価したお陰か。


 自分達を過大評価したせいか。


 いづれにせよ、私はまだ生きている。


 ここから起死回生を狙うなら二択。


 ここで選択を間違えれば。


 

      ◇


 同時刻。


 ど~も、種ちゃんですっ。


 今、私達は謎の武装集団の襲撃を受けております。


「種さんっ、どうするっ!?」


「こいつら、やばいですよっ!」


 両隣には螺苛ちゃんと刺苛ちゃんもいて。


 絶賛逃走中です。


「う~ん、追ってくるのはプロだね。多分、瑞雀部隊。なら戦闘はあり得ない」


 あっちは完全武装。


 引き替え、こっちは怪我人だらけの素人。


 人形はすでにある場所に隠してきた。


 そちらは雲美さんが目を光らせている。


 でも、私達がここでやられたらもう動けるのは円ちゃんしかいない。


 このタイミング。


 連携されないために同時と考えるべきか。


 ここで絶対死ぬわけにはいかない。


 円ちゃんを助けにいかなきゃ。


 本当不甲斐ないなぁ。


 姉様ならこんな状況になってないだろう。


 私、円ちゃんの役に全くたってない。


「戦況は絶望的。でも、追いつめられたら・・・・・・やるしかない」


 窮鼠猫を噛む、となればいいんだけど。



   ◇


 ういうい、円、だ。


 もう追いつかれると判断した私は閉鎖されたショッピングモールへ逃げ込んだ。


 人の気配はないが。


 何故か、血の臭いがこびり付いている。


 以前、何かあったか。


 そんな事は今はどうでもいい。


 ここなら身を隠せる場所はいくらでもありそう、だ。


 時間だけは稼げる。

 

 私の脳裏をやぎった二択。


 その一つは消去。


 だが、選んだその一つを今だに悩んでいる。


 実行すべきか、どうか。


 全力で走る。


 銃弾が迫る。


 やつら無言で襲ってくる。


 姿は視認されている。


 ここでどこかの部屋に立てこもるのは自殺行為か。


「うっ!」


 銃弾が腕を掠めた。


 血色との戦いの傷もまだ癒えてない。


 こんな状態では破れかぶれに突っこんでも絶対勝てない。


 いや、例え万全でも何人いるか分からない武装集団を相手にはできまい。


 もうとっくに詰んでいて。


 ただ足掻いているだけなの、だ。


 この状況をひっくり返せる人物を私は一人だけ知っている。

 

 だけど、これは私達の問題で。


 

 悩んでいる間にも死へのタイムリミットは迫る。


 脚を一瞬でも止めれば蜂の巣。


 無数の銃弾が私の体をズタボロにする。


 さっきからずっとスマホを握りしめている。


再び銃弾が顔の横を通り過ぎていった瞬間。


 私は通話ボタンを押していたの、だ。



「・・・・・・やっとかけてきましたか」


 通話はすぐに繋がる。


「レ、レンレン、わ、私・・・・・・」


 その声を聞いて何故か涙が出そうになった。


「何も言わなくていいですよ。今現在、襲われているのは貴方だけではありません。他の葵シスターズ、シードさん達もです」


 それを聞いて体が強ばる。


「・・・・・・やはりそうなの、か」


 あちらは三人とはいえ、その分襲撃者の人数は多いかもしれない。


「で、何のご用です?」


 口がぱくつく。


「あ、あ、そ、そ・・・・・・」


 いざ、言おうとするもその一言が出てこない。


「・・・・・・最初から分かっていたんでしょう? ドールコレクターは人形の完成なんて望んでいない事を。だから、貴方は最初に私に教えたんです。あの場に人形が無い事を」


「・・・・・・そ、そんな事は、ないの、だ」


「・・・・・・貴方は止めて欲しかったんです。私に、あれを見せる事で。じゃなきゃあの行為は無意味ですよ」


 でも、私より姉御をよく知ってる皆が。


「人形はもう諦めなさい。仲間の命と人形どちらが大切なんですか?」


 見えないレンレンの手が目の前に差し出される。


「それは・・・・・・仲間、なの・・・・・・だ」


 手を伸ばす。


「助けてくれ、レンレン」


「はぁ、全く水臭いですねぇ」


 その手をしっかり握った。



     ◇


 はいはい、種ちゃんですっ!


 流石にもう無理そう。


 螺苛ちゃんや刺苛ちゃんはともかく私はそこまで体力はない。


 さっきから数カ所、弾が肉を裂いている。


 とにかく走る。


 後ろは振り向かない。


「・・・・・・私はもうこの先足手まといになる。だから少しでも足止めするから、螺苛ちゃん達は先に行って」


 この子達さえ何とか逃げて円ちゃんと合流できれば首の皮一枚繋がる。


 私はもう駄目だ。


「何を言ってるんですっ!?」


 刺苛ちゃんの怒号まじりの声が飛ぶが。


「・・・・・・いや、それも無理そうだ」


 螺苛ちゃんの絶望的な呟き。


 進行方向に五つの影。


 挟まれた。


 目を見開いたのち。


 ゆっくり閉じた。


 これで、万事休す、か。



 いや、様子がおかしい。


 もうとっくに撃たれてもいいはず。


 恐る恐る目を開いた。


 五人のうち、二人は銃を構え後ろを向いている。


 中央の人物が叫んだ。


「ミドガルドシュランゲ、戦闘開始。敵勢力を殲滅せよっ」


 瞬時に全員が動いた。


 目にもとまらぬ速さで三人が飛び出す。


 追っての武装集団もこれには流石に虚をつかれただろう。


 丸腰相手を追い詰めたと思っていたら。


 いきなりMP7、PDWをぶっ放してくるんだから。



      ◇


 ういうい、円、だ。


 先ほどまで雨あられと飛び交っていた銃弾が一時やんだ。


 やつらにとって想定外な事象が起きたのだ。


「よっ!」


 ふけ抜けの上階から飛び降りてきたのは。


「蛇師匠っ!?」


 レンレンに助けを求めて数分もたってはいない。


「感謝するぞー、久しぶりに楽しい一時が訪れそうだ」


 そういう蛇師匠はいつもは持っていない銃を装備していた。


「相手もプロならこっちも本気だせそうだよ」


 そう、これが蛇師匠の本来のスタイル。


 今までの戦闘は相手に合わせていたからほぼ素手だった。


「せっかくだ、円も参加しな。心配するな、ちゃんと援護してやるから」


「お、おう、分かったの、だっ!」


 先ほどまで微塵も考えてなかった。


 ここで180度反転する。


 これほど頼もしい助っ人を私は知らないの、だ。


「そこっ!」


 蛇師匠が左方向へ銃を連射。


 人影は壁に身を潜めた。


 声と同時に私は駆け出していた。


 両手にはナイフ。


 その間、蛇師匠の援護は続く。


 背後から撃たれて、この安心感。


 壁の影。動きを封じられていた相手の元へ。


 視認。


 銃は構えているが。


 もうこの距離は。


 私の領域なの、だ。


   

蛇師匠は大体の敵の位置はすでに掴んでいた。


 始まる前から勝負は始まっている。


 それを考慮しての戦闘。


 遠距離からの援護。


 近距離で私が少しでも分が悪くなると。


「円、飛べっ」


 瞬時に距離をつめるスライディング。


 相手がよろけた所で。


 宙の私が顔面へ鋭い蹴り。


 落ちる相手への追撃は蛇師匠。


 脇腹へ回し蹴り。


 敵は中央へ吹っ飛び、吹き抜けから落下。


 本来ならこれで満足。


 だが、蛇師匠はさらに追いかける。


 飛び降り、先に地面に落ちた相手への腹部へと着地する。


「うごあっ」


 とんでもないの、だ。


 味方で良かったの、だ。


 これがもし敵だったら絶対勝てる気がしないの、だ。

 

 

 その後も蛇師匠の圧倒的な強さの前に何一つ苦戦する事なく敵勢力を削いでいった。  


 一息つく余裕もできた、その時。


 レンレンから連絡が入る。


「あっ、円さんですかっ!? 大変ですっ! し、白頭巾がっ!」


「っ! 白頭巾がどうしたの、だっ!」


 何でも、またレンレンの予想外の行動を取ったらしい。


「自分から火中の栗を拾いに飛び込みましたっ! 私はカードを使い切ってます。そうなると・・・・・・」


 元々思いもよらぬ行動を取る子ではあったが。


 でも話を聞くかぎり私のせいらしい。


「ほら、円」


 ここで蛇師匠が何かを投げた。


「お前の車だ。ここに来るまでちょっと借りたぞ」     


受け取ったのは私の愛車のキー。


「さっさと行ってきなー、ついでにケジメもね」


「蛇師匠はっ?!」


「こいつらはチームだ。この後も続々と増援が来る。私はもう少し遊んでいくよ」


「蛇師匠・・・・・・」


 本来なら、はいそうですかとはならない場面。


 でも、蛇師匠ならなんの心配もなくこの脚を踏み出せる。


「行ってくるの、だっ!」



 外より少し離れた場所にそれはあった。


「久しぶりなの、だ」


 なんだかとても長い間乗っていないような気すらした。


 ランボルギーニ、アヴェンタドール。


 姉御から受け継いだ私の愛車。


「ちょっと無茶な運転になるの、だっ」


 私のその言葉に応えるように。


 鳴動が空気を振るわせた。

 一瞬だけ無印リョナ子がジャンル別日刊でランキングしてました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 今週もありがとうございます。 円ちゃん、ついに蓮華ちゃんを頼りましたか。 悩んでも最後は仲間をとるのが円ちゃんの良さでもあるんでしょうね。 蓮華ちゃんが、根回しをたくさんしておいてくれたお…
[一言] やはり蓮華さんが力をかしてくれましたね。ミドシュラだけではなく蛇苺さんも来るとは。でも、瑞雀ちゃんも来ちゃってもうヤバイという所で助っ人が入ると思っていたのですが、瑞雀ちゃんが来ちゃったら蛇…
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