うん、これが条件みたいです。(分岐 続人形争奪戦 其の五)
こんにちは、シストです。
今、僕とタシイの二人は。
「こちらでございます・・・・・・」
屋敷の地下。
元々有事の際の避難場所兼脱出先。
追っ手を撒けるよう中は非常に複雑になっており、正しいルートを知らないと永遠に彷徨うことになる。
事の発端は数十分前。
「・・・・・・僕達の命をかけます」
お祖母様に面と向かってそうはっきり告げた。
「・・・・・・確かに私にとってお前達の命は安いものではない」
そう、今は序列が一番下とはいえいずれは僕達のどちらかが当主になる。
そのための準備は生まれた時から始められており、今僕達が死ねばその計画といってもいいものがまた数十年遅れることになる。
母さん以外の娘はあれだ、ここから後継者を残すという可能性は極めて薄い。
まぁ、お祖母様なら強制的にどうとでもできそうだけど、それでも時間はかかる。
これは賭けだった。
「しかし、それでも・・・・・・」
お祖母様の顔に険しさが増す。
「一族の掟を変えるほどのものではないっ!」
一喝。
僕達の背筋が凍る。
まるで極寒のブリザード。
その瞳、その口調、その佇まい、その全てが僕達を凍りつかせる。
やはり、無謀な話だったか。
一族の掟は絶対。
それは長年続いてきたもの。
若輩の僕の一言でおいそれと変えられるものではない。
でも。
若輩でもなく。
現当主のお祖母様なら。
「仮に掟を破ってまで今お前を当主にした所で、一族にとってなんの有益があるんだいっ」
猛烈に襲い来る吹雪。
それを縦に引き裂く。
瞳は合わさり。
僕は口を開いた。
「一族、永遠の繁栄、それをお約束しましょう」
まぁ、そんな啖呵をお祖母様相手に切った訳だけど。
「では、最初の試練でございます」
僕達を案内するは、屋敷のメイド。
其の甲斐あって僕達は条件次第で提案を受け入れられる事に。
その条件とは。
「まず、お前らはまだ半人前、二人で一人と考える」
つまり僕達のどちらかではなく両方で一人前と認められた。
そして。
「当主にするのは一日限定、つまり仮だ」
将来を見据え、あくまで資質を計る建前。
「さらにそれを認めるのは私が出した試練を乗り越えたらだ。命を賭けるといったね、なら本当に賭けてもらう」
僕達の命はお祖母様にとって大事ではあるけど。
他に選択肢がないわけではない。
別に無くなったらそれまでのもの。
「当主には鋭い判断力、そしてそれに伴う力も必要です」
メイドがそう告げ、僕達は最初の広い部屋へ。
「まず、この壺には、赤のコイン二枚と青のコイン二枚が入っております。私が同時に二枚取り出した場合、同じ色が二枚の場合私の勝ち、別々なら貴方達の勝ちとします」
そう言うとメイドが壺に四枚のコインを入れた。
「この勝負受けますか、受けませんか? 実際、コインの取り出しはしません」
「ん、どう言うこと?」
タシイが首を傾げる。
「つまりは判断力という確率計算かな。瞬時にどの選択が正しいか見極めるつもりさ」
「仰る通りでございます。なので結果は重視いたしません」
確率だから確実な結果はでない。
「う~ん、なんとなく確率というなら半々くらいな気がするんだけど」
「いや、これは同時に取り出すと言っているけど、結局は一枚ずつ取り出すのと同じ事、その場合、最初に取り出したコインが赤だとすると、残りは赤一枚、青二枚だ。そうなると確率的に同じ色を引くのは三分の一。つまり僕達の勝つ確率は三分の二になる」
従って、この勝負は受けた方がいいという事になる。
「お見事でございます。次の部屋に案内いたしましょう」
こうして僕達は地下室を進んで行く。
「今度もこの壺にコインを入れます。このコインは三枚、一枚は表が生、裏が死。もう二枚は表も裏も生、表も裏も死の両面同じのコインでございます」
メイドが例によってまた壺にコインを入れた。
「この中から私が一枚取り出し手の平に置きましょう。その時、そのコインは生を上にします。この場合、裏が死であれば文字通りお二人には死んで頂きます。生が出たなら正解のルートに導きましょう。この勝負受けますか? 受けませんか?」
「えっと、生も死も三面ずつだから、これも五分五分??」
「違うね、最初から生が上を向いてるならその反対側が死になってるのは表裏が別々の一コインだけだ。そうなると死が出る確率は三分の一。てことでこの勝負受けるよ」
「・・・・・・正解のルートにご案内します」
次の部屋についた。
「また壺を使います。この中には不特定数のビー玉が入っております。私がそれを握り取り出した場合、偶数の場合、シスト様達の勝ち、奇数の場合、私の勝ちとします。この勝負、受けますか? 受けませんか?」
「これは完全に確率同じじゃないの?」
「一見そう思える、でもこれも違う。なぜなら数字は奇数から始まるからだ。握るビー玉の数が多くなるほど確率の差は縮まるけど、奇数になる可能性の方が僅かに高い。なので、この勝負、僕は受けないよ」
「かしこまりました。では、次のお部屋にご案内いたします」
僕達はさらに奥へと。
「さて、ここでは二つのゲームに参加して頂くか決めていただきます。貴方のライフを100とします。一つ目のゲームはやる度にライフが1ずつ減っていきます。二つ目のゲームはゲームをする度にライフが偶数の時にライフが3回復、奇数の場合はライフが5減ります。ゲームを進めてライフが200になればシスト様達の勝ち、ライフがゼロになった場合は死でございます。さて、このゲーム、受けますか、受けませんか?」
「・・・・・・ちょっと、待って、これどっちで勝負しても結局ライフ減っていくんじゃないの? なら受けないほうがいいよっ」
「そうだね、どちらを選んでもライフがゼロになるのは明らか。でも、どちらのゲームとは言ってない。なら、僕はどちらのゲームも交互にやることにするよ。ただし、最初は二つ目のゲームからだ」
こうすることで、最初のゲームで僕のライフは103になる。次のゲームでライフは102、これを交互にすることで僕のライフは毎回2ずつ増えていくことになる。
「次の部屋へご案内いたします」
メイドは簡単にそういうが、そこまでの道のりは中々複雑。このメイドが完璧に正解ルートを把握していないと無理だろう。
そして次の部屋でも試練が待っていた。
「貴方には仲間がいます。その数は貴方を含めて四十人。そして貴方達は絶対絶命な状況に追い詰められました。リーダーである貴方はどうにか一人だけでも逃げ延びて助けを呼びたい。逃げ道は人数と同じ40通りです。ですが貴方と仲間にはそれぞれ特性があり自分に完璧にあったルートでしか逃げられません。さて、貴方は全員で逃げますか、それとも現状で抗いますか」
「はぁ? 訳が分からない」
「そう難しい事じゃない。仲間全員に番号を振り当てて、正解ルートが同じ番号でしか通れないと考えよう。一人がそれを引き当てる確率は40分の1だ。ようは完全順列、モンモール問題と同じように考えれば、その確率は思ったほど低くはない、これは人数とルートの数が同じに増えればどれほど大きくなっても平均的に一人は同じ数字を引き当てるはず。確率的には60%ほど。なので、この場合全員で逃げれば誰かしらは逃げ切れる可能性が高い」
「よし、なら全員で逃げようっ!」
「承りました。では次の部屋へとご案内いたします」
どんどん奥へと進んでいく。いや、複雑な構造なだけで、ただグルグル回ってるだけかもしれない。
その後、数回、似たような質問をされ。
そして。
「ここが最後の部屋となります」
という事はあの扉が出口かな。
ん、見渡すとこの部屋の壁には色々な武器が飾られている。
「ここまでの判断力、流石時期当主様でございます。ですが、判断力だけでは当主は勤まりません。やはり時には力を持って進まなければならない局面も多くなるでしょう」
メイドが僕達に背を向け、壁に向かう。
取り出したのは、巨大なチェーンソー。
「わたくし、分家、百目鬼 濁音と申します。現当主様から・・・・・・」
回転するエンジンがけたたましい音を響かせる。
「別にあんたらを殺していいって」
顔付きが変わる。
この屋敷には部外者は入れない。
つまり、メイドとはいえ一族の者なのは知っていた。
これも一つの試練か。
「やれやれ、やっと私の出番だね」
バールを取り出し、タシイが僕の前へと出る。
「お祖母様の孫で、ヴィセライーターの娘、そしておネニー様の妹だ」
部屋に一気に充満するタシイの禍々しいオーラ。
「血筋ってのは重要だぞぉ、分家ぇえええええええええええええええええええええ」
ここから先はタシイの領分。
僕は見守るしかない。
◇
うううううう、紅子です。
怒りとかですね、勢いとかで元々の身体能力ってのは変わらないもので。
「ほらほら、どうしたの~」
必死で、お母様の両手包丁を防ぐ。
全く攻撃できる隙がない。
あちらの手数が多すぎる。
でも、それでもなんとか食らいついていられるのは。
数分前。
「本当に~? 本気で私達に逆らうの、たった二人で~??」
単純に個々の能力ですら劣ってるのに、人数でさえこっちは少ない。
「いや、三人だよ」
目黒さんが、建物の二階に目線を送る。
「お~い、お前も手伝え。いつまで寝てる気だい」
そこには。
「・・・・・・あぁ、五月蝿いなぁ、もう静かにしてよ」
気怠そうに寝ていた体を起こした。
あぁ、そうだ、ここにはこいつがいたんだ。
私もあまり喋ったことがない。
歳は同じくらいか。
でも、私よりずっと古株。
「・・・・・・今は、目黒さんがお姉ちゃんの代わり?」
飛び降りる。結構な高さだったけど。
「そうそう、だから引き継ぐまでの間、あいつの相手してやんな」
ナンバーレス、キラープリンス叶夜。
「・・・・・・あれか、この前はどうも」
「あぁああ? お前、見た事ある、ぞ、こいつも私を邪魔した、そうだ、邪魔したなぁああああああああああ」
「いやいや、あれはそっちがいきなり襲いかかって来たんじゃないの。しかし、参ったね、この前はあのゾディファミのお姉さんがいたから何とか凌いだけど・・・・・・」
首をコキコキ、言葉とは裏腹に意外と協力的。
「お前があれを抑えられれば多少は時間を稼げる」
よし、正直、一番、あの人とはやりたくなかった。
まぁ、どれもそんなに変わらないけど。
そんなこんなで現在に至り。
正直ずっとピンチっす。
体に切り傷が増えていく。
今だ致命傷にはなってないが確実に動きが鈍る。
目黒さんも、キラープリンスも善戦しているように見えて確実に押されてはいる。
このままではジリ貧。
後はどちらかに賭けるしかない。
「ほらぁあああああああああ」
「うぐあっ」
包丁が私のナイフをすり抜け上半身を切り裂く。
お嬢様学校で良かった。超高級の制服がしっかりしていた分、傷口はそこまで深くない。
でも、切っ先は素肌に到達している。
一撃でこれっすよ。次今のようなのがきたら、どこを切られてもやばい。
あと、何分持つ?
あと、何秒?
あと、どれくらいでこの体は切り刻まれる。
そんな中。
私のブレザーの中が。
震え出す。
「っ!」
近くの目黒さんを見る。
その顔が一気に開けた。
同じだ。
同じなんだ。
「紅子、喜びな。私のスマホがブルブルって呼んでるよ」
確認するまでもない。
これにかけてくるのはメンバーだけ。
殺人鬼連合だけ。
ていうことはだよ。
「シストくんとタシイが来てくれるっ!」
私と全く同じ思いを。
目黒さんが叫んだ。
こうなりゃ殺菜回を見直そう。
今回のは見直してないので、最後の計算間違ってるかもです。




