わわ、またしても私の赫々たる登場だよっ(分岐 続人形争奪戦 其の四)
ども、紅子ですっ。
いつの間にか気を失っていたみたい。
「早く着替えなー。今日は早退だ。なんだか嫌な予感がする」
目黒さんが私に袋を手渡す。
中身を見るまで自分の惨事に気付かなかった。
「え? あっ、あああ、ええええぇぇぇ」
顔を真っ赤に染めて急いでトイレに駆け込む。
「シストくんやタシイには繋がらないか・・・・・・」
その間、目黒さんがシストさんやタシイさんと連絡を試みたが駄目だったみたい。
「アタシはこのままアジトに向かう。紅子はどうする?」
目黒さんがそういいながら着替え始めた。
「わ、私は・・・・・・」
実は私も虫の知らせか、理由の分からない胸騒ぎがしていた。
「・・・・・・眼球アルバム。私も連れてって」
私が答える前に、白雪ちゃんがそんな事をいう。
「・・・・・・お前は帰りな、深緑深層に連絡して迎えを頼めばいい」
「・・・・・・嫌」
なんて真っ直ぐな瞳。それは覚悟と我が儘が混合した厄介なもの。
「さっきの二人は只者じゃない。思うにあれはシストくんの血族。それに刃向かった以上報復は必ずある」
シストさんの血族といえば、あの恐ろしいヴィセライーターこと、お母さま。
確かにあの二人はあの人と同等クラス。
折角逃げ切ったのに、また逢うかもしれない。
正直、もう二度と出会いたくない。
「時間がない。一度助かった命、捨てたいというなら好きにしな。ただこれだけはしときな・・・・・・」
え、白雪ちゃんも付いてくる流れなの。
これじゃ断れないじゃないの。
まぁ、でもアジトにあの二人が来るとも限らないか。
◇
廃工場。
古びた長机がひっくり返される。
四本の脚が天を向き。
その一つに。
「あああ、ああぎゃあああああああああああああああああああああああ」
メンバーの一人が上から落とされ体が突き刺さる。
「ほらぁ、シストはどこ行ったの~?」
包丁を片手でくるくる回しながら他のメンバーに問いかける。
この場にいたのは4人。
いや、タイミング悪くアダムキラー奏も学校帰りについ先ほど寄ったばかり。
なので現在、5人のメンバーがヴィセライーターの対応に追われていた。
「いや、本当に知らないんですっ!」
「わ、私もですっ!」
皆、目の前の相手に畏れを抱いている。
選ぶ言葉を間違えれば次は自分がああなる。
比較的一番近くにいたファイアーフラワー。
その脇腹に包丁が突き刺さる。
「っあああああ」
手首を何回か回したのち、刃を上へと引き上げていく。
「ああああががあああががかやうあやああああ」
「ほら、早く教えなさい、私、気が短いのよ、ねぇ、早く」
逆歯に膝を打ち付けて、一気に切り裂く。
「なんなの、なんで、教えないの、ねぇ、ねぇってばっ」
地面にひれ伏すファイアーフラワーの髪を掴むと。
片手で体を引き上げる。
「もう、いいわ」
無造作に放り投げる。
そこには机の脚があった。
貫通。
標本の虫のように飾り立てられる。
「ひぃい、あああ、た、助け、いい、いいだあああああああああ」
手足をばたつかせる二人。
「次は、誰かしら~」
メンバー達の顔が青ざめる。
そしてさらに最悪な事態が襲う。
「・・・・・・うぴゃうぴゃ、なんだ、糞姉、楽しい事してるな」
「姉さん、私達もま~ぜ~て」
扉から二つの影。
目の前の女と同等の狂気。
全員の息が止まる。
「あら、貴方達、切り裂きの仲間を探してるんじゃなくて?」
「ああ、なのに、邪魔が、邪魔しやがった、こいつらだっ!」
「そうなの。何故か私達に喧嘩売ったのよ。この殺人鬼連合のメンバーがっ」
この場のメンバーにしてみれば何の事か全く分からない。
ただとんでもない敵意と殺意を向けられている。
「おい、そこの眼鏡、前に来いっ! 早く、すぐっ!」
トリムが奏を指刺す。
「え・・・・・・」
奏がなんとか声を絞り出した時には。
待ちきれないトリムがすでに飛び出していた。
「きゃああがあああああああああ」
棒立ちだった奏が吹っ飛ぶ。
「早くって、すぐって、言っただろがあぁああああああああああああっ!」
頬への強烈な一撃。眼鏡はその場に落ちた。
「それじゃ私はぁ・・・・・・」
マキナの品定め。
白羽の矢は長身長髪のシルバーメダルへ。
腕が伸びたかのよう。
瞬時にマキナの指先がシルバーメダルの喉元に食い込む。
同時にナイフが太股に刺さる。
「ひあああああああああああああああああああああ」
二、三度深く差し込むと。
手を離す。
「あひあああ、ひぃいいあああ、ひあああああ」
地面を這い、なんとかその場から離れようとするが。
今度は裏側の脚を突き刺す。
「ああぎゃあああ、あああひあああいがあ」
それでも両手で地面を泳ぎ、なんとか逃げようとする。
それを笑顔で見下ろしながら。
今度は尻。
悲鳴。
次は、背中。
致命傷になる場所は絶対狙わずに。
「あひゃひゃ、ほら、逃げて、逃げて、じゃなきゃまた刺しちゃうぞ、ほらほら」
必死で逃げる様を笑いながら見ている。
「もう、シストがどこに行ったか聞いてる最中なのに」
カリバも呆れながら他のメンバーの元へ。
コートの下にはナースの格好、殺人鬼エンジェルナース。
カリバの瞳に彼女が映る。
「ああ、あああああ、あああああぁああああああ」
彼女も他のメンバー同様に恐怖で戦いている。
カリバはそんな彼女の手首を掴むと。
「くあああああああああああああああああああああああああ」
指を一本、切り落とす。
「でね、こっちはさっきから聞いてるのよ」
「きゃがああああああああああああああああああああ」
また一本。
「シ、ス、トは、ど、こ、か、しら?」
さらに一本。
「し、し、しり、しりりっっ、あああいあうああ、いあやああ、知り・・・・・・やああがああああああああああああ」
地面にまた一つ、また一つを落ちていく。
「うぴゃぴゃ、ほら、眼鏡、立て、じゃなきゃ馬乗りだぞ、眼鏡、いやもう眼鏡じゃない、うぴゃあや」
トリムが落ちている眼鏡を踏みつけ、奏に近づいていく。
一〇本の指がそれぞれ別に動く。
死の足音。
骨、骨、骨、と奏の耳に入る。
それを遮ったのは。
「おいおいおいおい、これはどういう事ですかね~」
扉から新たな影。
「ん~~~?」 「ああぁあああ?」 「・・・・・・あらあら」
三姉妹の視線が扉へ向かう。
そこにはおかっぱ頭で目の周りが真っ黒な女。
「確かシスト達とよく一緒にいる子よね~」
「あああかあああっ!!!!! こいつっ! こいつ、だっ!!!!」
「こんなに早くまた会えるなんて、お姉さん嬉しいっ」
目黒の背中に隠れていた紅子も顔を半分だした。
「ひいいいい、まじでいたあああああああ」
三姉妹を見た瞬間紅子の体が震え出す。
「目、目黒、さん、む、無理っす、うちらだけじゃあ、殺され、ま、すって」
そんな紅子の意も返さず。
「シストくんとタシイがいないんだ、その場合、アタシがここを仕切らなきゃならないんだわ」
目黒がどんどん前で出て行く。
「この子なら知ってそうねぇ~」
「殺す、殺す、お前、絶対、だ。一番だ、殺すぅううあっ!」
「まぁまぁ、ここは私にやらせてよ。二人じゃすぐ殺しちゃうじゃないの」
三姉妹の興味を一身に集めながらも。
目黒の歩みは止まらない。
「おい、紅子、周り見てみ。これでもそこで震えてるのかい?」
「え・・・・・・」
紅子は改めて周囲を見渡す。
机の脚に突き刺さっている仲間。
指を切り落とされ腰を抜かしている仲間。
両足から血を流しながら地面を這いずる仲間。
そして。
頬を大きく腫らせ、涙を流しながら呆然としている、友達。
「・・・・・・奏ちゃんっ!」
名を叫ぶ、そして紅子の震えが止まり、それは別の震えと変わる。
紅子は思う。
いつも居場所が無かった。
必死で周りに合わせようと。
でも駄目だった。みんな自分とは違うと。
どこか孤独だった自分を唯一受け入れてくれる場所。
ありのままの自分を見せられる仲間たち。
「・・・・・・そうっすね。私も殺人鬼連合のメンバーっす。恐怖より今は怒りが勝ってますわ」
紅子がナイフを取り出し。
目黒の隣に並んだ。
「殺人鬼連合、眼球アルバムだ」
「同じく殺人鬼連合、スキンラバー」
二人は三人と向き合って。
「あんたらの目玉抉ってやるよ」
「私は顔の皮剥いであげますわ」
そう言い放つ。
「へぇええ? 大きく出たわね~」
「あぁあああああああああああああああ????????????? なんだ三下ぁああああああああああああああああああああああ??????」
「お姉さん、そういうの嫌いじゃないよ、ただ大嫌いなだけぇえええええええええ」
大気に罅が。
それは音を立てて。
崩れ落ちる。
次はシスト視線ですかねぇ。




