わわ、これは私の華麗なる登場だよっ(分岐 続人形争奪戦 其の三)
はいは~い、紅子ですよっと。
退屈な授業も終わり、部活もしてない私はもう帰るだけ。
最近、裏では結構面倒い案件に関わってる。
なんか知らないけどドールコレクターが作った人形を巡って円様達と争ってるの。
正直、私的にはどうも乗り気ではない。
まず、そもそもこれは外から来た話で殺人鬼連合は手伝わされてるだけ。
そして、相手が円様って事。
シストさんの命令ならメンバーとして何でもこなすけど、これはなんか違う。
「それにこの一件以来、白雪ちゃんなんか冷たいんだよねぇ~」
まぁ、それは前からか。
「っと、噂をすれば」
校門を抜け、ちょっと先を歩くのは。
後ろ姿でもはっきり分かる。
白雪ちゃん。
彼女も部活の類いはやってないから真っ直ぐ帰るのかな。
どら、声をかけて途中まで一緒に帰りますか。
そう思い立って、歩くスピードを早めた。
その時だった、前を歩いていた白雪ちゃんの足が止まる。
二人組が白雪ちゃんの進行方向を塞ぐように目の前に立つ。
「ん~?」
なんだなんだ、ここからじゃよく分からないけど知り合いか。
いや、もしかして勧誘か何かかも。
もしそうなら、これは好感度アップのチャンスじゃない?
困っている白雪ちゃんの前に颯爽と現れ、虫を払いのける。
〈なんすか、あんた達(鋭い眼光)、うちの親友になにか用っすか? 〉
〈え、い、いえ、別に・・・・・・〉〈あ、あぁ、すいません、し、失礼します〉
〈白雪ちゃん、大丈夫?〉
〈うん、紅子が来てくれて助かった。やっぱり頼りになる〉
〈いや~、いつでも頼ってくれていいんすよ〉
〈紅子、大好き〉
とまぁ、こんな感じでしょうね。
そうと決まれば、この殺人鬼連合第三殺、紅 紅子が一肌脱ぎますかっ。
にやけそうになるのを堪えながら白雪ちゃんの元へ。
「白雪ちゃ~・・・・・・・・・」
すぐ後ろで声をかけようとした瞬間。
私の体が膠着した。
原因はすぐに理解できた。
白雪ちゃんと対峙している二人の女性。
これが人ならざる者達だったからだ。
「あば、あばああ・・・・・・し、白雪ちゃん、こ、この人達、お、お知り合い、で、す、か?」
「・・・・・・知らない」
おいおいおいおいおいおいおいおい、一体なんじゃい、この私がこんなに畏れを抱いたのはこれで三度目。
曲がりなりにも殺人鬼のこの私が、だ。
「んあ~? なんだ、この餓鬼」
「あ~あ、君、運が悪いね。もうこの時点で終わりだよ」
白雪ちゃんの背に隠れながら恐る恐る相手を見る。
伸ばしっぱなしのボサボサの髪、その隙間から覗く眼光は鬼のよう。
もう片方は一見、普通にいそうなお姉さんだけど、こちらの目も尋常じゃないほど鋭い。
捉えたら逃さない野獣の瞳。
や、やばい、紅子、おしっこ漏れそう。
「どーでもいい、黙ってついてこい、じゃなきゃここで手足千切る、ぞ??」
「ほら、この怖いお姉さんが暴れない内にね? 今は優しくしてあげるから」
よ、よく分からないけど、なんか白雪ちゃんに用があるみたい。
勿論、こんなのについて行ってもろくな目に合わない。
「し、白雪、ちゃん? に、逃げよ、は、はやく、この人達、や、やばいから・・・・・・」
なんとか声を振り絞って白雪ちゃんに囁く。
それなのに。
「は? なんで私が逃げなきゃらならない、やるってなら別にやるけど」
当の白雪ちゃんは全く動じていない。
私のように怯える所か、逆に好戦的な態度を見せている。
おいおい、もうとんだラーテル娘やで。
相手の方が明らかに格上だってのに。
「うぴゃうぴゃ、なんだ、この餓鬼、威勢がいい、殺しがいありすぎっ」
「はぁ、もういいわ。とりあえず手足だけ折って連れていこうか」
二人が一応に見せていた表面上の皮。
それが剥がれた。
「ふぎゃああああああああああああああああああああああああああ」
その瞬間、私は一気に気が動転して白雪ちゃんの手を取り走り出した。
「あ、紅子っ!」
「あ~?? なんだ、逃げるか、逃がすか、殺す」
「ちょっと、ちょっと、面倒かけないでよ~」
とにかく白雪ちゃんを必死に引っ張りながらその場を離れる。
走る、走る。
「ひぃ~~~~~~~~~~~~~」
「痛い、痛い、ちょっと、紅子っ!」
相手も当然追いかけてくる。
余裕たっぷりで歩いてくる。
こっちは全力で走る。
でも、何故か距離は広がらない。
「あわあああ、あれは、やばい、あれは、やばい」
「痛いっての、ちょっと、紅子っ!」
逃げられる気がしない。
完全に標的にされている。
あの二人には諦めるとか見逃すとかいう感覚は絶対ない。
どこまでも追い詰め、どこまでも啄む。
どこがいい。
どこに逃げればいい。
アジトは遠い。
あそこなら誰かしら仲間がいるかも。
でも遠い。
なら、どこだ。
助けて。
誰か。
じゃないと。
まぢで殺される。
どこか。
ないの。
恐怖の中。
脳裏に浮かんだのは。
とにかくその場に向かう。
それはここから近い。
なんとか辿り着けるかも。
距離はどんどん詰まる。
津波のように迫ってくる。
お店が軒連なる路地へ。
人は大勢いるけど。
関係ない。
あれはそういう常識の外にいる。
たとえ交番の目の前でさえあれは平気で攻撃してくる。
全てを巻き込んでくる。
「うぴゃうぴゃ、逃げろ、逃げろ」
「逃げれば逃げるほど後が怖いぞ~」
逃げる気のない白雪ちゃんを無理矢理引き摺ってるからスピードが出ない。
でも、何故か、この手は離したくなかった。
声がどんどん大きくなる。
「うぴゃうぴゃ、もう少し、もうすぐ、後少しで八つ裂き、裂き、裂き」
「もういいや、逃げたくば逃げろ、もう慈悲はない、まぁ元からないけど」
目的地は目前。
丁度、店先にいたその人が目に入った。
自然と涙が流れる。
「・・・・・・2045。地下に行きな」
その人は私と白雪ちゃん、そして後ろの二人を見てすぐに判断を下す。
番号を告げ、私達を下へと通じる階段へと誘う。
私達を通すと、その人が後ろの二人の前へと出た。
「・・・・・・お客さん、何か探し物ですか~?」
◇
ここは表向きは雑貨屋。
しかし、地下は別の店になっていた。
「あ~っ? なんだ、お前、そこどけ、殺すぞ、どかなくても殺す、もう殺す」
「・・・・・・捜し者はあるけど、その下に行っちゃったみたい。だからちょっと見せてもらえますー?」
二人の女が店員に詰め寄る。
目、歯を剥き出しにして威嚇する。
周囲も気にせず狂気を振りまく。
今にも襲いかかりそうで。
事実女達にとって殺す事に躊躇いは一切ない。
すでにボサボサの髪を振り上げ、指先がかぎ爪のような形容に変わる。
「いや、通さないよ。だってほら、あれ見える? ここそうだから」
店員が店先に張ってあるステッカーを指刺す。
そこには子供一一〇番の文字。
「あぁ??? なんだ、お前、睨めてるな、ふざけてる、こ、こここ殺す、殺すっ!!」
「私達を不審者扱い? 失礼な店員だこと。これは万死に値するね」
店員の言動、態度に二人の怒りはどんどん膨張していく。
「どうみても不審者でしょ、ま、そういうわけだから匿った以上こちとら助けなきゃならないのよ」
店員も一歩も退かない。
「よし、よしよしよし、分かった、もうお前は勿論殺す、あいつらも、そしてこの店の客も他の店員も、全部だ、今ここで、殺す」
「そうだね、皆殺しだ」
導火線の火はついに本体に到達。
爆発した二人の周囲に闇が広がる。
それは全てを呑み込む夜を造る。
「ですってよ、店長~」
階段の下から。
小さな光が灯る。
コツコツと足音。
扉は開かれ。
階段を上るその音は。
「やれやれ、人がゆっくりゲームしてれば・・・・・・」
光はじょじょに強さを増し。
階段を上りきる頃には。
闇は一瞬で取り払われる。
とてつもない光がその場に降臨した。
「で、なんだい、こいつらは?」
「さぁ~? 悪質なクレーマーじゃないですかね? 少なくともお客様じゃないですわ」
見た目はただの歳をとった女性。
腰痛なのか体は曲がり、手足はとても細い。
どこの骨も簡単に折れそうなほど弱々しい外見だったが。
「・・・・・・なん、だ、この、ババア・・・・・・」
「・・・・・・トリム、行くよ」
二人は、奇しくも白雪達と同じような行動を取った。
動きを止めたトリムをマキナが無理矢理手を引きその場から離れる。
両目はしっかり相手を捉えながら、決して背を向けずに少しずつ少しずつ。
「ったく、なんだったんだい。まぁ、いい、目黒、二度と来ないように塩まいときなっ!」
「は~い」
◇
理解できなかった。
なぜ、自分達が何もせずにその場から去ったのか。
「くそっくそっくそっくそっがあああああああああああああああああああああ」
少し離れた場所。
見知らぬ通行人をとにかく殴りつける。
顔はもう原形を留めて折らずただ赤い塊。
「なんだ、なんなんだっ! あのババアっ! あれはまるでうちのババア並のっ!」
「・・・・・・そりゃそうだわ。今調べたら、あれ、カリスマどころじゃない、レジャンド級の元特級拷問士。そして、うちの婆さんの茶飲み友達だ。私達じゃ手が出せない」
この日もっとも運が悪かったのはこの女達の通る道にいた者。
行き場のない怒りが全てぶつけられる事になる。
マキナも片手にスマホを持ち、もう片方で人の首を力いっぱい握り締める。
「そんで、あの店員、そして白雪ちゃんと一緒にいた子。どっちも殺人鬼連合のメンバーだよ」
「あああああああああ? なんだ、シストのとこの奴らか、なんで私達に楯突く、生意気、生意気、まじで舐められた」
「そうだね、例え私達の事知らなかったとはいえ、あの態度は頂けない。これはお仕置きしなきゃ」
二人の前にまた一人、また一人と死体が積み上がる。
「あの二人は殺す、文句があるならシストも殺す、もうメンバー全員殺すっ」
「姉さんが、この前の一件を問いただしにシストくんのとこに行ってるはず。ついでに私達も行こうか。納得がいく理由がない限りシストくんにもお仕置きが必要だね」
二人の怒りは収まらない。
それは目につく者をいくら殺してもなお。
◇
ひぃひぃ、紅子ですっ!
今、なんとか目黒さんに匿ってもらってよく分からないけど地下へ。
扉にはナンバーを入れる所があって、さっき聞いた番号をいれたら開いた。
一目散に中へと入る。
「あぁ~? なんだい、お前ら、ここは特定の者しか入れない場所だよっ」
そこで座っていた人を見た。
そこから私の記憶がない。
薄れる意識の中で。
「あっ! 紅子がお漏らししてる」
白雪ちゃんの声が聞こえた。
そういやバレンタインデー回書こうと思ってたのに忘れてました。




