おや、外は相当盛り上がってるようです(分岐 続人形争奪戦 其の七)
こんにちは、蓮華です。
「あっ、円さんですかっ!? 大変ですっ! し、白頭巾がっ!」
思いっきり慌てて見せます。
「っ! 白頭巾がどうしたの、だっ!」
そしてなんの疑いもなく乗ってきてくれます。
これで、円さんはこっちに来てくれるでしょう。
現在、眼球アルバム、スキンラバー、キラープリンスの三人が、あの三姉妹と交戦中。
私の見立てでは戦力的に殺人鬼連合側が大きく劣っています。
三姉妹側にはさらに瑞雀部隊まで付いてますからね。
私のカードは使い切ってます。
正直、私には葵シスターズを助けるメリットはないのですが。
彼がどうしてもというので影ながら護衛させていました。
私にはよく分かりませんが彼にはなにか考えがあるのでしょう。
どうしても葵シスターズを死なせたくないみたいです。
彼は彼女達の死が特異点になると。
「何はともあれ、これで貸し借りなしです」
◇
はいはい、紅子ですっ!
もう無理っすっ!
私はまだ発展途中。ヴァセライーターなんて殺人鬼界の超有名人を相手にできるほどの実力は備わってないっす!
それは他の二人も遠からず。
「うぴゃうぴゃ、どうした、死ね、いますぐ、いや、まだ死ぬな、もっと楽しませろっ!」
「ちっ! なんだよ、そのスピードっ!」
破壊的な握力、一度掴まれれば肉、骨は粉砕される。
「ねぇ、それ刺すだけ? 避けてくれって言ってるようなもんだよ?」
「あぁ、それ前も言われたよっ!」
目黒さんの突攻撃が全て躱される。
そもそも、あの千枚通しは眼球を抉るためのもので元々武器ではない。
スマホが震えて、すでに3分ほど。
体感的にはもう1時間くらい経ってるっ。
長い、長すぎる。
屋敷からここまでどんなに飛ばしても30分はかかる。
どう考えても持たない。
「紅子っ! 後、5分死ぬなっ! そうすれば援軍が来るっ!」
援軍? シストさん達の事、いやそんなに早くくるはずがない。
でも、最初から死ぬ気などない。
まだまだやりたいことはある。
美味しいものを食べて。
いっぱい人の皮を剥いで。
白雪ちゃんともっといっぱい遊ぶんだ。
◇
ういうい、円なの、だ。
アクセルベタ踏みなの、だ。
「うおぉおおおお、どけどけ、なの、だっ!」
車線を右へ左へ。
救急車も真っ青な強行走行なの、だ。
タイミングを計算して速度調整。
これで赤信号も回避。
これなら10分ほどで到着できる。
どうなの、だ、これがランボルギーニ。
これがムルシエラゴの後継車、アヴェンタドール。
最高速度、350キロ以上。
一般公道用のストラーダモード?
なわけがない。
今は、サーキット用、凶悪加速の。
コルサモードっ!
一瞬の判断ミスが即死に繋がる無謀な運転。
「今行くの、だっ!」
良い具合に頭もフルスロットルになってきた。
◇
はいはい、紅子ですっ!
マジ無理っすっ!
もう色んな所から血が流れてます。
「本当、しぶといわねぇ~、いい加減切り刻まれなさーい」
お母様の動きは最初よりは僅かに鈍っている。
若さの分、体力は私に分がありそう。
でも、火力に攻撃スピード、そして経験、なのもかもあっちが上。
もう絶対五分経ってる。
「め、目黒さんっ、まだっすか!?」
「・・・・・・・・・・・・」
私の必死の叫び、反応はない。
もしやと思ったが、まだ攻防は続いている。
ただ話す余裕がないだけ。
「く、くそぉおおおおおおおおおおおお」
やけくそにもう一度叫んだ。
建物内を反響してもおかしくないその大声は。
別の。
さらに大きな音にかき消される。
青い車。
そのエキゾースト。
空に向かって開いたドア。
「白頭巾はどこ、なの、だ?」
金髪、ギザギザの歯。
現葵シスターズの王。
切り裂き円。
「ここだよ、お姉ちゃん」
白雪ちゃんが円さんの後ろからひょっこり現れた。
え、なんでここに白雪ちゃんが。
「おぉ?? なんなんのだ、レンレンがお前が無謀に突っこんだと」
「蓮華お姉ちゃんが、あの三人の誰か一人でも死んだら帰ってこいって。その前にお姉ちゃんが来たら出てきていいって。それまで隠れてろって」
白雪ちゃんが付いてくるって言った時、目黒さんが深緑深層となにやら電話で話してたけどこういう事か。
「お姉ちゃん、私これから突っこむから、ちゃんと守ってね」
「はぁ、全くしょうが無い妹なの、だ」
二人が同時にナイフを取り出す。
「紅いの、そういう事だから手伝ってあげる」
「なら、私は他の二人のサポートに入るの、だ」
増援とは、昆虫採集部。
私達殺人鬼連合とは本来敵同士なんだけど。
今だけは仲間。
白雪ちゃんと仲間。
「よしっ! これで勝てるっ!」
私の気力は一気に回復した。
とオープニングが流れるような勝ちムードだったんだけど。
「おい、切り裂き、危ないってのっ!」
「お前こそ、蹴りが当たりそうだったの、だっ!」
「紅いのっ! 今、チャンスだったのにっ!」
「白雪ちゃんこそ、さっきナイフ擦ったよっ!」
本来敵同士が共闘してもコンビネーションはバラバラだった。
「まぁまぁ、仲良くやろうよ。元々、これで勝とうとは思ってない」
そう、連携は取れないとはいえ人数が増えた事で余裕はできた。
本命はこの二人ではない。
「あぁああああああああああ、こいつらウザすぎるっ、さっさと死ね、死ね死ね死ねぇええええええええええええ」
「姉さん、あっちからターゲットが来た。もう遊びは充分じゃない?」
「そうねぇ。本当は私達だけで仕留めたかったけど」
しぶとく食い下がる私達についに痺れを切らせたか。
「瑞雀ちゃ~ん、とりあえずみんな動けなくしちゃって~」
折角湧き上がっていた余裕が消し飛ぶ。
赤い、赤い、血のような赤い髪。
私は姿を見るのも怖い。
以前みた拷問士から感じた恐怖とはまた違う。
あちらはじょじょに命が削られていく感覚、猛毒のような。
そしてこっちは即死、一気にナイフで喉元をかっ切られるような。
瑞雀さんはずっとお母様の近くにいたのか。
全く気付かなかった。
その気になれば私達なんていつでも殺せたんだ。
顔色が変わったのは私だけではない。
キラープリンスも、そして円さんでさえも。
その強さはよく知っている。
「血色・・・・・・」
脚には痛々しい包帯が巻かれているが、その存在感は変わらず。
さらに絶望的なのは。
瑞雀さんが手を掲げる。
それに伴い。
外からぞろぞろと人影は現れる。
「瑞雀ちゃんだけじゃないわよぉ。瑞雀部隊も勿論一緒」
瑞雀さんが自ら選び抜いた精鋭私兵部隊。
個々の能力は言わずもなが高水準。
「さぁ、2ラウンドよぉ。混戦になるから銃火器は無しにしてあげる」
お母様の悪魔のような笑顔。
蹂躙される。
このままでは確実に。
でも、目黒さんだけは先ほどから全く動揺していない。
「そうだね。2ラウンドだ」
目黒さんがそういった直後だった。
この場に楔が打ち込まれる。
白い車、青い車の横に止まり。
そこから降りる二人から光りが溢れる。
「ちゃんと全員生きてるかな?」
「やっほー目黒ちゃん、お疲れー」
シストさんとタシイさん。
迎えるように目黒さんが歩みよる。
「遅い、でも、よく来てくれた」
そこでタシイさんとハイタッチして。
シストさんの横に並んだ。
殺人鬼連合の顔が揃った。
「シストォ、よく来たわぁ、貴方には色々聞きたい事があるの」
「おぉ、私もだわ、返答しだいじゃ、可愛い甥っ子でも容赦なしだぁあああ」
「お姉さんもだよ。そこの虫けら共はシストくんの仲間でしょ?」
おぞましい三人の威圧。
あんなの一身に浴びれば気が狂う。
「聞きたいのはこっちだよ。僕の仲間になにしてるのかな?」
それを無表情で受け流す。
「仲間? そんな事、今は関係ないでしょ。貴方は私の質問に答えればいいの」
「糞姉のいう通りだ、こいつらなんてどうでもいい、なんなら今すぐ皆殺しにしてやろうかぁあああああああああ、お前の前でぇええええええええ」
「シストくん、目上の人には敬意を払わなくちゃ駄目よ。一族ならなおのこと」
そうだ、シストさん達が来てくれたとはいえ、相手は血族。
確か、シストさんの一族はとても序列に厳しい。
この三人に逆らえるはずもない。
なら、この絶望的な状況は変わらないの?
「ママも伯母さん達も口の利き方に気をつけた方がいいよ」
ここでタシイさんが口を挟む。
「はぁ?」「あぁああああ?」「はい??」
三人は言葉の意味が理解できない。私も一緒。
「今、序列でいえば、私達が一番上って事だよ」
「だから意味が分からないわぁ~、ちゃんと説明しなさい」
「つまり・・・・・・」
ここでシストさんが一歩前に出て。
同時に後ろから黒塗りの車が数台出現。
見慣れない人達がぞろぞろ降りてくる。
「・・・・・・あんた達、どういう事?」
お母様には車から降りてきた人達を知っているようだ。
「分家、木目沢 十日でーす」「分家、九曜桜 軍星」「分家、甘露寺 良門」
「分家、百目鬼 天音でございます」「分家、万里小路 賜です」「分家、大下倉 弥生どす」
なんだ、なんだ、どいつもこいつも只者じゃないぞ。
着物、車椅子、大男、ワイアーグラス、ギャル、オールバック。
そして。
「なっ、貴方までっ、冗談でしょ!?」
最後にひょこひょこ姿を見せた、とても小さい少女。
それは小柄とかそういう話ではない。
あれは小人症とかいうやつだ。
見た目は言葉通りだけど。
「・・・・・・超強者」
瑞雀さんが自然と構えをとった。
「・・・・・・当然。お母様の直属護衛部隊の長よ」
実際、この場にいる誰よりも大きく見える。
「彼女に攻撃しても無駄。超人的な反射神経で全部カウンターで返してくるわ、それでついた異名が・・・・・・」
魔鏡。
「何故、ここに分家のみならず魔鏡までいるのかしら。本来彼女はお母様の傍を離れないはずよっ」
お母様が珍しく慌てている。
「そりゃ、当主に尽くすからだよ」
「は? だから当主はお母様でしょうっ!?」
ここで、タシイさんも一歩踏み出しシストさんの隣へ。
「違うよ、ママ。今日だけは・・・・・・」
二人が同時に声を上げた。
「僕(私)達が当主だ」
二人に従うように分家の皆さん、そして魔鏡とかいう人が連なる。
「はぁぁ? 意味が分からないわっ!」
「糞姉、もういい、こいつら分家の分際で私達に刃を向けたぞ、なら、やることは一つだろがあああああああああああああああああああ」
「本当よね。私も飼い犬に噛まれて気分だよ」
ボルテージが上がっていくのを肌で感じる。
数秒後に始まる。
この場の全てを巻き込んだ。
大乱戦。
作中にありました円の公道を350キロで走行するような運転は大変危険ですので絶対真似しないでください。




