うん、まずはごり押ししてみましょう(人形争奪戦 其の伍)
こんにちは、シストです。
駒は揃いました。
手前味噌ではありますが。
殺人鬼連合、総勢12人の最狂殺人鬼集団。
母さんを含む、最恐殺人鬼三姉妹。
ニルヴァーナ率いる最凶殺戮連隊ゾディアックファミリー。
瑞雀さん含む、最強戦闘部隊。
これで円さん達、葵シスターズを討つ。
「今回、深緑深層は無関係。すなわち円さんは昆虫採集部とは別道であり、蛇苺も関わってこない。僕達にとって最も厄介なこの二人が不参加。ならどうだろう?」
僕のメンバーへの問いかけ。
「それはヌルゲーだね」「まるで飛車、角落ちの将棋」「圧倒的戦力差ですね」
そう、葵シスターズ、個々の力は確かに高いが。
しょせんこの二人と比べれば質は落ちる。
「こうなるともう小細工はいらない。力技でねじ伏せるとしよう」
ここから各自に指示を送る。
母さん達は独自に動くだろうから方向性だけでいい。
◇
紅子、奏組。
「あ、〇〇さんすか?」
葵シスターズには各種情報のパイプラインがある。
それを担当している者がいるのだが、そこへの吸い上げ口がいるはず。
それは深緑深層も殺人鬼連合なども一緒。
まずは相手の情報元を断つ。
手当たり次第に。
「はぁ? 違いますけど」
ぼけっとした中年男性。
「あ、そうっすか、それは・・・・・・」
紅子の取り出したナイフが男の太股に突き刺さる。
「あがああああああああああああ」
「すいませんでしたねぇ」
刺しっぱなしのナイフを横にグリグリ回す。
「じゃあ、もう一回? 貴方、〇〇さんすよね?」
「ひぃあ、ちが、ぬ、抜いて、あああいいあああああああああああ」
「ちっ」
もう一本抜き出して。
今度は脇腹に。
埋めた。
「あひゃあああああああああああああああああ」
男は痛みに耐えかね絶叫を上げる。
「う~ん、やっぱこういうの苦手っすわ。いいや、次いこ、次」
当ては他にもあると紅子は早々にこれ以上聞きだすのを止めた。
「奏ちゃん」
紅子の後ろで怯える少女。
「後はどうぞ」
紅子が避けると奏の目に男の姿がしっかり映し出された。
「ああああああああ、お、男、お、おおとおお、男、おと、おとととと」
アダムキラー奏。病的なまでに男嫌いの彼女。
不幸にもこの男は男であった。
強く握ったナイフを振り上げ。
「い、いやあアア、男、男、男、し、ししっ死ね、死んで、死ね、死ねぇええええぇええええ、死んで、死んで、死んで」
目を瞑り、振り下ろす。
返り血が彼女をビッショリ濡らすまで。
目を瞑り、振り下ろす。
◇
他のメンバーも同様。
シルバーメダル、ヌードナチュラル組。
港周辺、色とりどりのコンテナが重なり連なっている場所。
「どうかしら、この体、自分自身鏡で何時間見ていても飽きない」
コートの下は生まれたての姿。
ヌードナチュラルの魅惑。
並の男なら抗えない。
「知ってる事全部話したら、これ、好きにしていいのよ」
この二人は紅子のように派手な真似はしない。
できるだけ穏便に行動していた。
しかし、一斉にコンタクトをとれば横の繋がりで一気に伝わる。
ターゲットにしているのは末端とはいえ情報を売りにしている者達。
「おい、ナチュっ」
離れて待機していたシルバーメダルが叫ぶ。
「いた、いた。この前ぶり」
「ど、どうも」
二人の前に現れたのは。
「黒い女、白い女。この前はずいぶん調子のってくれたなぁ」
葵シスターズ。揚羽と蚕。
「あら、思ったより早く遭遇。そして、一番会いたかった奴ら」
ヌードナチュラルも身なりを整えながらこちらへ。
対峙する四人。
「この前は逃げられたけど、今度は殺すね」
「そういう事なんで、すいません。殺します」
事実、シルバーメダルとヌードナチュラルは戦闘向きではない。
このままぶつかれば死ぬのは殺人鬼連合側。
だが、それでも二人に焦りはない。
それもそのはず。
「残念だけど死ぬのはそちら」
「俺らはハイエナ」
今まで人の気配は一切無かった。
しかし、ここで一斉に空気が動く。
「・・・・・・小物」
揚羽と蚕の前に一人の女性。
そしてその周辺、コンテナの上から二人を囲むように複数の人影。
「あ、揚羽ちゃん、あの人・・・・・・」
「うん、この前の。追い詰めてた私達を逆に追い返した奴・・・・・・」
血のように赤い髪。
口数は少なく、呟くように話す女。
殺人鬼連合側の最高戦力。瑞雀こと。
「血色だ。ここで出してくるか」
彼女以外でもその仲間が揚羽と蚕を完全にロック。
コンテナの上、高い位置で銃を構える。
「情報元を潰すのはあくまで建前」
「それでも来なきゃ来ないで良かったけど。本当に来た」
シルバーメダルとヌードナチュラルの余裕はこのため。
立場は完全に逆転した。
それでも揚羽たちに焦りは見られない。
反対に。
「大物が釣れた」
「これは幸先が、い、いいね」
口元が緩む。
その類い希なる集中力が災いしたか。
次々と。
揚羽たちに注視していた周囲の人間が地に伏せていく。
瑞雀の仲間達、その後ろにはまた別の影。
「うくく、一度しか使えない戦法。ここでお前を潰せるのはでかい、のだ」
◇
ういうい、円なの、だ。
今、ここには葵シスターズの非戦闘員以外全員揃っておる。
目的は勿論。
「円ちゃん、指示を」
隣の種がハサミをチョキチョキしながら聞いてくる。
見下ろすコンテナから飛び降りる。
「私、螺苛、刺苛で血色を倒す。種はその二人。他は周囲を警戒、なの、だ」
私に続き飛び降りてきた螺苛と刺苛が並んだ。
「・・・・・・強者」
キラキラはこう思う。
葵シスターズにはレンレンも蛇師匠も味方をしていない。
だから、容易い、と。
「確かに今の私は蛇師匠には敵うまい。しかし、それを補って余りある仲間がおる」
ナイフを二本取り出し構える。
左右の仲間と共に踏み込んだ。
◇
こんにちは、種ちゃんです。
今私はハサミ片手に殺人鬼連合の二人に近づいていくの。
チョキ、チョキ、チョキ、チョキ。
あちらの戦力は大きいね。
でも、脅威なのはその中でも一握り。
そして私の前にいるこの二人はそれではない。
「お、おいおい瑞雀さんに三人なら勝てるとでも?」
「そう、よ。瞬殺してくれるんだか、ら」
焦ってる、焦ってる。
怯えている、怯えている。
「自分達の心配しなよぉ~。貴方達の相手は私。そして、円ちゃんなら問題ない」
私はハサミを広げ、その間から目を覗かせる。
「あそこにいるのはレコード所持元第一級レベルブレイカー、昆虫採集部深緑深層の手、殺し屋ハイレンズがボス蛇苺が愛弟子。そしてドールコレクター(姉様)の正当後継者、現葵シスターズの王、通称切り裂き円・・・・・・」
言い終えてハサミをチョキンと閉じた。
「姉様の影を背負いし者」
どこぞのターガリ〇ン並の肩書きの多さ。
瑞雀戦では四魔貴族か決戦の音楽が流れます。