うん、眼鏡は外さないほうがいいですね。
こんにちは、シストです。
本日、うちのメンバーの一人が動きます。
ターゲットは通称レディーワーストという殺人犯。
女性をとことん利用し、侮慢、金、金、暴力、金、金、価値が無くなった場合や、気分しだいで殺害します。
こちらで調べたところ、レディーワーストの犯行と思われる被害者は数十人。
その中には次の日、結婚式を控えた女性もいた。
こいつは僕達に関わってきた男の仲間。
まだ他にも仲間がいるかもしれない。
色々聞く必要がある。
なので、こちらから一人、刺客を送り出す。
担うのは。
「シストさん、奏ちゃん一人で大丈夫っすかね。やっぱり私も一緒に・・・・・・」
心配そうに僕へ進言するのは、同じ殺人鬼連合の紅 紅子。
彼女達は歳も近く仲がいい、だからだろう。
しかし、紅子が心配する必要はない。
「大丈夫だよ、紅子。たしかに奏は普段は気弱でとても心優しい。この殺人鬼連合の中でもっとも慈悲深く、およそ人殺しには無縁の存在」
でも、それはあくまで普段の奏。
「彼女は限定的にとてつもない狂気を見せる。それはこの狂人だらけの殺人鬼連合の中において1、2を争うほど」
奏の限定的な狂気。
そう、それは相手が男であった場合。
某日、アダムキラー奏、行動開始。
ターゲット捕捉。
ターゲット接触。
時刻は午前一時、場所はレディーワーストが最近よく通うバー。
奴はここで獲物を物色していた。
しかし、今日はめぼしい者が見つからない。
時間が過ぎるにつれてどんどん人も少なくなる。
この日は諦めて飲むだけにしようかと思っていた。
どれくらい飲んだだろうか。
レディーワーストがふと周囲を見ると、客がまるでいなくなっていた。
閉店時間も近づいたとはいえラストまでいる客は多い。
今は客どころかバーテンすら姿を消していて。
なにかがおかしい。
そう思ったのも束の間。
店内には一人だけ残っていた。
その者の違和感。
深夜の酒場に関わらず立っていたのはブレザー姿の少女。
抱いた違和感はそのためだけではない。
少女から感じるは自分と同じもの。
だが、それはとても細く弱く小さい。
「お嬢ちゃん、こんな時間に何してるんだい? ここはまだ君には・・・・・・」
見たところ女子高生。
レディーワーストは考える。
これはこれで金になる。
女は薄暗い店内でも分かるほどには端正な顔立ち。
こういう地味な感じを好む顧客は案外いる。
なら、こいつにしよう。
これはいい商品になる。
◇
こんばんは、奏です。
殺人鬼連合所属、第四殺(紅子調べ)らしいです。
今、私は本来なら足を踏み入れる事のない場所にいます。
ここは盛り場の一角。
ある時間から貸し切りにしました。
現在、この場にいるのは、私・・・・・・。
そして。
レディーワースト。
私達の標的です。
「お嬢ちゃん、こんな時間になにしてるんだい? ここはまだ君には・・・・・・」
声がかかる。
耳が腐り墜ちる。
視線が上から下へ。
嫌悪、嫌悪、嫌悪、嫌悪、吐き気、嫌悪、嫌悪、こみ上げる、嫌悪。
嫌だ、嫌だ、嫌、いやいややいやああいあやああああああ。
殺そう、そうだ、早く。
汚い、気持ち悪い、耳障り、鼓動が変な動きを始める。
この空間に、男と二人きり。
地獄、全身が焼かれるように、痛い、熱い、業火、溶ける、ああぁああああぁぁああああ。
私が死ぬ、殺さなきゃ、私はこい、つに無茶苦茶、にされる。
されてしまう。衣服をはぎ取られ、罵声を浴びせられながら、こいつは私を犯すのだ。
獣のように蹂躙される、この肌を、この髪を、この耳、口。
アアアア、喉に食い込むほど強く。
殺す、逃げる、殺す、この痛み、堪えきれない、この苦しみが。
呪いの文字が私の体、螺旋を描きながら、絡みついてくる、上から、下、腕、太股に、つま先が、頭を輪の、縄、きつく、縛る、痛い、苦しい。
ナイフを取り出す。
「ん? なんだ、お嬢ちゃん、どういうつもりだ?」
聞こえない。なにか口が動いたような、でも直視できないから。
エコーのかかったように、ノイズが、変換するなにもかも。
微睡む世界。
男は、テーブルにあったビンを叩き付け武器にした。
相手も臨戦態勢。
でも、私はまだ小さい。
出さなきゃ。
本当の私を。
じゃなきゃ、飲まれる、このまま、どこまでも。
男の狂気が勝る。
私は羊。
相手はオオカミ。
気持ち悪い、怖いの、吐き気を抑えて。
私は眼鏡に手をかけ。
それを地面に落とした。
それがスイッチ。
私、殺人鬼連合、アダムキラー奏が顔を出す。
◇
「奏は、極度の男性恐怖症。いつも怯えて萎縮してる」
「なら、やっぱり、今回のは人選ミスなんじゃないんすか? 奏ちゃん、相手が男だと我を失って滅多刺しにするだけっすよ。でも、今回は相手もそれなりに修羅場潜ってますから、そう簡単には・・・・・・」
「はは、大丈夫だよ。奏はうちの正式なメンバー。そんじゃそこらの殺人鬼に遅れを取ることはない。奏は視力がとても悪い。眼鏡をとればほとんど見えないんじゃないかな? でも、それで解放されるんだ」
「解放すっか?」
「そう、それによりアダムキラーの狂気が爆発する」
◇
世界が広がる。
黒から青に、青から灰色に。
「あ、あれ、お、お嬢ちゃん、あれ? なんだ、お前・・・・・・」
靄だけ。
煙みたいなのがね。
とても嫌なものの集合体。
感じる視線が解けた。
なにかいるの。前に、私の前にね。
とても嫌なもの。
振り払わないと。
でも、近づくのは嫌。
「ふぎゃあああああああああああああああああああああああ」
ああ、声かな?
叫ぶ声。
私のナイフが靄に向かって飛んだ。
「目がああ、ふぁぁ、なんだ、それ、ス、スペツナズナ、イフ?」
そう、これ刀身が飛ぶの。
強力なバネで刃を射出する事ができる。
だから、近づかなくていい。
この場で殺せる。
「ナイフまだありますよ? 後、何本いりますか?」
ブレザーを開く、中から何本も同じナイフが姿を見せる。
殺すなって言ってた。
だから。
どうしようか?
◇
こんにちは、シストです。
奏がレディーワーストを仕留めました。
といっても、まだ生きてますが。
むしろここからが本番です。
「今から、色々聞くからよぉー、早めに喋れな?」
「その方が、いいよー、じゃなきゃ死んじゃうよぉー」
狭い小部屋、連れてこられたレディーワースト。
「なん、なんでも、話すっ! あ、話ますからぁああああああああ」
木製のチェアに座らされた男。
拘束は縄などではない。
腕、足に直接、釘を打ち付けて固定していた。
「じゃあ、まず、仲間」
「早く、はい、後2秒」
中にはタシイ、目黒さん、紅子、そして奏。
「あひゃああああああああああああああああああああ」
目黒さんの千枚通しが頬を貫く。
「2秒って言ってるじゃ~ん」
「はい、次は1秒ね」
「はっ、ひゃいっ! ええええええっと」
はい、1。
「ふがやあああああああああああああああ」
タシイのバールが男の甲を潰す。
「な、か、ま。早く、急いでよ」
「ひゃい、か、ま、どうま!」
「あぁ? カマドウマ?」
「ひゃ、がひゃい! 鎌道魔っていう、ひゃい、殺人鬼、れすっ!」
「目黒ちゃん知ってる~?」
「いやー、聞いた事もない」
僕もないなぁ。
「ま、いいや。後は?」
「あ、あ、あと、は知りま、せんっ! ほ、本当で、れすっ!」
こいつもか。
仲間といいながら誰も全てを把握していない。
やっぱりなにか引っかかるなぁ。
他に情報を得たのは靴狩りか。
レアなスニーカーを片方、それも足首ごと奪っていく凶悪犯。
被害者には、次のオリンピックに選出された選手もいた事で注目を集めたね。
ん、そういえば、この前、切り裂きが僕からレアなスニーカーを借りていった。
「・・・・・・・・・・・・」
「おネニー様、多分、こいつからもう情報でないよ。どうする?」
「ん? あぁ、そうだね。じゃあ、もういらないよ」
「・・・・・・は~い」
開いてた小部屋のドアが閉まる。
「こっからは男子禁制~」
「タシイさん、目黒さん、私もやっていいっすか!?」
「いいけど、最後は奏に残せよー」
「そうそう、仕事は最後までだよ」
いままで散々、女性を持て遊んできたんだ。
こんな最後もいいだろう。
今更だけど。
うちの女性陣は。
少々怖い、いや、狂いすぎてる。
まだまだ死ねないから色々諦めた方がいいね。
一日遅れの葵の誕生日&命日記念回、近いうち更新できたらしたいです。




