ういうい、一騎打ちなの、だ(殺人鬼決定戦其の八)
読み直してないので後で修正するかもです。
叶夜と種。
この二人は動かない。
操作不能。
この二人は私に協力しない。
協調性はゼロ。
叶夜には理由がある。こいつは、キラキラ(シスト)に仇をなすニルヴァーナだけが目的。
なので最終的にニルヴァーナを含むゾディアックファミリーを殲滅できればいい。
そして種が私に協力しない訳はとても単純。
私が嫌いだからじゃない。
私が姉御に可愛がられていた事への嫉妬からでもない。
ただ私を認めていないから。
[これより10秒後に指令を出しますー。各自、何を言われてもいいように心の準備をしといてくださいねぇ]
機械的なアナウンスがそう告げる。
さて、10秒後に何を言われるのか。
多分無茶ぶりだろうと予想は出来るが・・・・・・。
心でカウントを開始する。
姉御の時もこんな唐突な指令が出たのだろうか。
まぁ、姉御ならどんな指令も眉一つ動かさず微笑みの中それを遂行したはず、だ。
数えていたタイムが1からゼロへ。
[はい、それでは皆さん、30秒以内に一番近くにいる仲間を一人殺してくださーい]
予想の斜め上。
一番最初に動いたのは。
ニルヴァーナ。
隣にいた幹部らしき男が地面に急に倒れ込んだ。
手には血がべったりついた大きなナイフ。
続いて行動を起こしたのはゾフィアベーゼ。
懐から出した拳銃を、仲間のこめかみに突きつける。
ゾフィアは下を向いたまま小さく呟いた。
「ブローム。エミールの無念を晴らすため犠牲になってはくれまいか?」
「勿論です。エミール姉さんのためならこの身、喜んで捧げましょう」
「すまんな。先にヴァルハラでエミールと合流していてくれ」
一言、二言短くかわし。
響く銃声。そしてエミールが横へと弾かれた。
[はい、30秒経過です。この時点で仲間を殺せなかった方は失格となります]
私達、そして他の参加者三人は一切行動を起こさなかった。
それもそのはず。
「ねぇねぇ、アナウンスの人ー、聞こえてるなら質問なんだけど、仲間がいない場合はどうなるのかな~?」
種がスピーカーのある辺りに声を上げる。
[えっと、指令は一番近くの仲間を殺せなので、仲間がいない場合はなにもしなくて結構ですよー]
これはほっとすべきか。
しかし、一応、仲間ではないとはいえ行動は共にしてきたから、他から申し立てがあるかもしれない。
「元々優勝者一人を決めるイベントだ。ここまで仲間同士で進んできた報いともいえよう」
「僕は、切り裂き、お前さえ失格になってないなら何も言わないよ」
仲間の一人を失い、さらにもう一人が失格になったものの、二人が提言することはなかった、のだ。
これで一気に優勢になった。
ようにも思えるが。
このゾフィアベーゼ、単純な戦闘能力は私よりも上。
もしまた直接戦闘になった場合、叶夜と種と私、その三人がかりで戦ったとして果たして勝てるかどうか。
同じ指令は二度はないはず。
ここから叶夜と種を仲間にする事が先決。
それには。
「おい、ニルヴァーナ。どうせ、お前の目的は私なの、だ。なら早々に決着をつけるのだ」
ここで、二人に認められる必要がある。
「はぁ? 僕は望む所だけど、それを決めるのは運営であって・・・・・・」
そんなのは知ってるの、だ。だが、ここで宣言する事によって、次の指令がもし全員参加の場合うまくいけばタイマンに持っていけるかもしれない。
他の参加者はどうか分からんが、ゾフィアベーゼに関しては正式な決闘に横槍をいれるような奴ではない、はず。
むしろ他を牽制してくれるとまで期待する。
[その提案認めますー。次の指令はその二人でやって頂きます。勝った場合は次の次の指令は免除、負けた場合は即失格。それでよろしいでしょうか~?]
おっと、言ってみるものなの、だ。
結局はこのイベントも見世物なのだ。
面白くなりそうなら運営も認める、か。
「うくく、おい、叶夜。これで私がニルヴァーナを倒せば、お前の役目は終わり。なら、その後は私を手伝うの、だ」
私が横目で叶夜を見ると。
「・・・・・・まぁ、いいよ。そうなりゃ僕はここにいる意味がないしね。だけど、切り裂き円、あんたにあれを倒せるの?」
6つの人格を持ち、世界で最大規模の殺人鬼組織を束ねる人物。
それぞれなにかに特化した人格を纏める主要コア。
それがニルヴァーナ。
「一つ言っておく、僕はルークには劣るけど身体能力は低くない。そして、全人格の中で一番聡明だ、どんな指令が来ても嘘つきには負けない自信がある」
こいつの底はまだ見ていない。
それでも、ここでやらなければならない。
叶夜、そして種に認めてもらえなければこの先はない。
[それでは特別指令ですよぉ。お二人にはモニターを見て頂きますー。これから、モニターには順番に30枚の写真映像が出ます。これを全て順番に覚えて下さい。次に顔写真と名前が50人分映し出されます。それも全員記憶してください。その後、80桁の数字が流れます。これも全て覚えてください。最後に、50個のワードが出ます。これも全部頭に入れて下さい]
メモリースポーツ、か。
要は記憶力の勝負。
イメージ、ネーム、ナンバー、ワード。一瞬でそれらを記録して答えろというの、か。
[では、スタートですー]
深呼吸する暇もないまま、モニターが光りだした。
まずは写真なの、だ。
キリン、椅子、ベッド、リモコン、熊のぬいぐるみ・・・・・・。
こんな感じで、一秒間隔で物が映し出されていく。
それが終わると、ネーム。
顔写真、その下には名前が。
眼鏡の女、ステファニー。厳つい黒人 ゾッスル。小さな女の子・・・・・・。
これも一秒間隔で50回切り替わる。
映し終われば、今度はナンバー。
右から左へスライドするように数字がどんどん流れていく。
846791225478546387945・・・・・・。
80桁通り過ぎた所で、最後のワード。
アルファベットで言葉が出てきた。
ドリーム、ファミリー、ハウス、ミュージック、アップル・・・・・・。
[はい、課題は以上ですぅ。それでは同時にお答えくださーい。先に詰まった方の負けとさせてもらいますねぇ]
いくらなんでもこんなの一瞬で覚えられるはずがないの、だ。
せいぜい、覚えられても、どれか二つまで。
[まずはイメージをお願いしますっ! さん、はいっ!]
アナウンスのタイミングで、私とニルヴァーナが声を同時に出した。
「キリン、椅子、ベッド、リモコン、熊のぬいぐるみ、ライター、テレビ、バック・・・・・・」
「キリン、チェアー、ベッド、リモコン、テディベア、ライター、テレビ、バッグ・・・・・・」
多少は言葉は違えど、正解には変わりなく。
私達は三十枚の写真に写っていた物を全て順番に言い終えた。
[はい、お二人とも正解です。続きまして、モニターにランダムで顔が映ります。その人物の名前を答えてください。さん、はいっ!]
私、そしてニルヴァーナがモニターへと瞬時に顔を向ける。
先ほど出てきた人物が写る。
赤毛の女。
「アンリ」
「アンリ」
モヒカンの男。
「ライアン」
「ライアン」
アジア系の老人、中東系の中年、北欧系の女性、東南の少年・・・・・・。
「ローフェン」「サリム」「ビアンカ」「チナワット」
「ローフェン」「サリム」「ビアンカ」「チナワット」
順番はランダムに、50人の顔が次々を切り替わる。
「ナオミ」「パリス」「マイクル」「デェイジー」
「ナオミ」「パリス」「マイクル」「デェイジー」
[はい、お二人とも全て正解です。続きまして、ナンバー。これも、合図と同時にお答えくださいねぇ。はい、さん、はいっ!]
次に行くまでが早いぃ。
正直、私が完璧に覚えられたのは今のネームまで。
次のナンバーは途中までしか覚えてないの、だ。
じゃあ、ここで終わりなの、か?
ニルヴァーナの顔にはまだ余裕が見える。
私はここで答えに詰まり、ニルヴァーナに敗北。
うくく。
そんな訳がない。
こっからは選手交代、なのだ。
(姉御ぉぉぉぉぉぉぉおおお、後は頼んだの、だっ!)
ずっと近くに。
揺らめくように、姉御はつねに私の傍で。
耳を澄ませる。
姉御の影と重なるように。
今、私達は一つに。
なる。
〈84679122547854638794564879512300240678403978540126458794530125784601573451058746だよぉ〉
姉御の声をなぞるように、トレースしていく。
「84679122547854638794564879512300240678403978540126458794530125784601573451058746だよぉ、じゃない、なの、だっ!」
[はい、お二人とも、正解です。では、最後、ワードっ!]
ニルヴァーナ、やはりただ者ではなかった。
本当なら負けていた。
本当なら勝てなかった。
だが、お前でも相手が悪かったの、だ。
お前には見えまい。
お前には感じまい。
今、お前が戦ってるのは私ではない。
最悪の殺人鬼、ドールコレクターなの、だ。
真っ白な広い広い室内で。
オートマタ、天宮種は確かに見ていた。
もうどこを探してももういない。
さよならも言えなくて。
声も聞けず、触れられず、感じられない、そんな人。
愛して、恋して、届かず、それでも良かったと。
「葵姉様・・・・・・」
重なる背中。
青と黒のストライプドレスのその後ろ。
まるで同化するように、愛する者も姿が目に映る。
〈ドリーム、ファミリー、ハウス、ミュージック、アップル、スカイ、プレイ・・・・・・〉
単語を一つ、一つ、答えていく、その声。
「姉様、姉様、姉様、ね、え、さ、ま・・・・・・」
種の目からは涙があふれ出す。
まるで花に水を与えるように、上から下へとめどなく。
〈カード、ボール、ウェーク、シュガー、シット、ライブ、シューズ、タワー・・・・・・〉
このメモリースポーツ。
種が記憶できたのは、この辺りまで。
さすがに全部は無理だった。
種が知る限り、これら全てを完璧に覚えられるとすれば一人だけ。
〈スピーカー、サード、ミルク、アスリート、ウォーム、シック、レモネード、ネイル〉
立ってる。
声を出している。
両手を伸ばす。
フラフラと、光に導かれるように。
一歩、一歩。
真っ白な広い広い室内で。
オートマタ、天宮種は確かに見ていた。
ういうい、円なのだ、
声はすでに私が発するものだけに。
それ即ち。
最後まで言い終えて。
[はい、そちらの金髪のかた、お見事、全問正解です。発音が少しおかしい部分は大目に見ましょう]
ニルヴァーナはワードのどこかで詰まったの、か。
私は姉御の口頭を代弁するのに夢中だったの、だ。
[では対戦者の方は途中で止まったので、失格ということで・・・・・・]
実感がないまま、勝利を手にし。
反対に敗北をきしたニルヴァーナは・・・・・・。
一瞬の気の緩み。
二人分の脳の負担は焼き切れるほど重く乗りかかっており。
解放された事による安堵の瞬間。
そこを狙われたの、だ。
最初からニルヴァーナはこの大会には興味がない。
興味があるのはキラキラ(シスト)、そして嘘つきと憎む私だけ。
ならば、失格になった今、する事は一つ。
「死んで詫びな、この嘘つきがぁああああああああああああああああああ」
ナイフが私に迫る。
今度こそ万事休すか。
死ぬ間際は時間がゆっくり進むという。
まさにそれを体現していた最中。
ニルヴァーナのナイフが別の金属によって挟み込まれる。
「円ちゃんになにする気かな?」
種が直前で相手の攻撃を防いだ。
「・・・・・・種」
まさか助けてくれるとは思っていなかった私は唖然とした。
「見えちゃったものはしょーがない、うん、しょーがない。だからこれはお礼だよ。そうお礼なの」
なにを言ってるかよくわからんが。
漸く風向きがこちらに向いてきたような。
そんな気がした、のだ。




