ういうい、ここからさらに過熱していくの、だ。(殺人鬼決定戦其の四)
反発。
二つの力。
ぶつかり、離れる。
行ったり来たり。
それはまるでメトロノーム。
「おらぁああああああああああああああああああああ」
我武者羅に相手を掴みにかかるルーク。
だが、それを素早い動きで全てかわすゾフィアベーゼ。
彼女は言った。激突の瞬間。
「1ラウンドだけ遊んでやろう」
立ち技主体の構え。
ルークの攻撃、それを避け、合わせるように彼女の脛がルークの足を叩く。
パン、と響く、続けてパンパンとまた響く。
下段、中段。
近づかれれば、足の裏、構えた両手で相手を押し出し距離を測る。
自分の、得意な間合いをつねに保ちながら。
華麗な足技で相手を翻弄していく。
ルークの方も、捕まえてしまえばと必死に突っこむが。
また、それに合わせられ、今度はパンチの応酬。
連打、連打、連打。顔、顔、顔、ボディ、ボディ、顔顔顔。
ルークのガードをすり抜け、顔面に何発も入っていく。
その都度、ルークの頭が震え出す。
堪らずぐらつくルークへ。
ゾフィアベーゼの高く上げた足。
ハイキックが顔面に直撃する、脛が耳を打った、その瞬間、足首がルークの後頭部に追いうち、巻き込むように、鞭のように撓る。
さらに、ゾフィアベーゼの体が廻る、勢いをつけての裏拳。
そのスピードを殺さず、最後に左のミドルで相手の脇腹を抉る。
ここまで一セット、目にもとまらぬコンビネーション。
全てを受けて。
ルークのガードが完全に下がった。
それはもうただの的。
ゾフィアベーゼがルークの顔を両手で掴む。
それを起点に。
跳んだ。
膝を突き出し。
鋭すぎるその体の凶器は。
「っっっがぁっ」
ルークの顔面に突き刺さる。
背中から地面に落ちるルーク。
「KO。階級は同じくらいか? それでもこちらの圧勝だったな」
当初想定していた扉の開放までの時間。
それを1ラウンドと決めていたが、実際はその半分ほどで勝負はついた。
「お疲れ様です。残りは如何なさいましょう?」
他のメンバーが問いかける。
「時間まで遊んでやれ。数だけいる無象有象の殺人集団と少数精鋭のうちとでは格が違うということを教えておかなねばなるまい」
ういうい、円なのだ。
ついに移動を開始した私達だったが。
新たな部屋に入るなり、今まで真っ暗だった部屋隅のモニターが光りだした。
「皆様、参加者もいい感じで減って参りました。ですので、ここからはこちらの指示に従って勝負していただくことにしましょう」
部屋にはすでに他の者達が。
珍しくゾディファミのメンバーはおらず、私達を除けば3人。
つまり部屋には6人。
「なんだー、さっきので少し興奮しちゃったのに。すぐに殺せないのかー」
種がネチャネチャと他の三人を見つめていた。
「もしチームで固まってる場合は代表者で構いません。参加者は部屋の奥にある首輪とつけて頂きます」
私達は仲間ではないが、この場合はチームと考えた方が都合が良さそうなの、だ。
「ここからはポイント制になります。一人につき50P獲得で勝ち抜け。最終ステージに進んで頂きます」
なるほど、そうなると、チームで参加する場合はその人数分ポイントを稼ぐ必要があるのだ。
逆にいえば、他が稼いでチーム内の誰かを先に勝ち抜けする事もできるということか。
私達以外の三人は、元々他人だったらしく、個人で参加する模様。
「ここは私がいくの、だ」
叶夜はスマホから目を離さないし、種の行動原理は姉御に基づいてる、てことはこんな毒ガス検知に利用されるカナリアのような真似はするはずもない。
私と、他三人が運営の指示通りに置いてあった首輪をつけた。
もうこの時点で嫌な予感がするの、だ。
「はい、皆さん、首輪はつけられましたね。それは皆様が思っている通り爆弾でございます。今から問題を出します。一番速く正解した方以外は爆発しますのでよろしくお願いいたします」
スピーカーから予想以上の無茶ぶり指示が飛んだのだ。
「は?」 「え? え?」 「なんだよ、それっ!」
私以外の三人が驚愕していた。
どうやら皆様が思っている通りではなかったようなの、だ。
「では早速出題したいと思います、問題は画面に映りますのでよく見て下さい」
中にはルールを聞いて首輪をはずそうとする者もいた。
すぐに諦めてとにかく画面を見ようとする者もいた。
私は最初から画面だけを見ていた。
[2以上の整数nでn2乗分の2n乗+1が整数となるようなものを全て求めよ]
画面中央に問題が映る。
数学問題。
一瞬簡単そうに思えたが・・・・・・。
ここで同じく問題を見ていた種が呟く。
「・・・・・・マスターデーモン」
聞いた事があるのだ。数学オリンピック辞典でそう呼ばれる超難問。
それがこれ、か。
「は?」 「どういうこと?」 「こ、この首輪、は、外れない・・・・・・」
良かった。他の三人でこの問題を即座に解ける者はいなそうだ。
なら。
目を瞑る。
脳が焼き切れるほど。
血は高速に。
ただ一点に集中。
「・・・・・・nが偶数なら・・・・・・奇数となれば式は整数には・・・・・・反理・・・・・・フォルマー、最小・・・・・・素因数が・・・・・・代入、矛盾、代入・・・・・・」
絡み合った糸を一つずつ。
その先にある光に手を差し伸べる。
「7・・・・・・倍数なので除外・・・・・・」
近づいていく。
掴める距離へと。
「・・・・・・答えは3、のみなのだ」
握りしめた答えを言葉に出した。
その瞬間。
弾ける。
私以外の三人の首が血と共に宙に舞った。
声を出す事もなく、唐突に散った。
「正解です。おめでとうございます。貴方様はこれにより25P獲得なさいました」
首を無くした三つの胴体がドサドサと地面に落ちていく。
「お、円ちゃん、答え知ってたんだ~良かったねぇ~」
種がニヤニヤと私に近づくも。
「いや、初めて見たの、だ」
「・・・・・・マスターデーモンをあの短時間で解いたっていうの?」
私の言葉で、種の顔が一瞬素に戻る。
が、それも束の間。
「そっかぁ~、でも姉様なら初見でも後5秒は速く解けてたよ、むしろ答えなんて最初から知ってるだろうし」
「・・・・・・それは同感なの、だ」
これで25Pか。
こいつらを次のステージまで連れて行くには。
後、125P。
先週は法事があったのでお休みしました。




