なんか、人は過ちを繰り返すみたい。
殺人鬼決定戦の途中ですが、小休止のリョナ子登場。
こんにちは、リョナ子です。
なんか、久しぶりな気がするけど気のせいかな。
今、僕がいるここは、拷問士のためのコミュニティールーム。
椅子やテーブル、自販機などがある、まぁみんなの休憩室だね。
僕達は丸いテーブルを四人で囲んでいた。
「だから、私はいったんすよ、無理だって」
「うちも姉さんと同意見どす~」
「殺菜ちゃんの言ってることもわかるけど、一応全部が全部じゃないからねー」
「そうですねぇ、こればっかりは難しい問題です」
雑談するは、僕を除けば。
特級拷問士殺菜ちゃん。
その直属後輩の柘榴ちゃん。
そして、僕の直属後輩のましろちゃん。
「それで、当時は誰が担当だったすかね」
「記録では今はもう引退してる方だね」
「となると、この事件の担当は・・・・・・」
「・・・・・・今現在現役で働く私達の中の・・・・・・誰か、ですね」
それは数十年前。
不良グループが起こした事件。
ある公園の駐車場に車を停車していたカップルがいた。
犯人グループの5人は日頃からカップルを襲い金品を奪っていた。
この日運悪くこのグループの標的になってしまったカップルは。
鈍器でフロントガラスを割り、男を無理矢理車から引っ張りだし暴行。
女の方も、引きずり出され、裸になれと命令後、集団で暴行。
警察に駆け込まれると困ると思った犯人グループは、二人を拉致。
男はその後、さらなる暴行を受け死亡。
女性の方は、その後も連れ回され、散々恥辱を与えれた後に、殺害された。
犯人グループは全員未成年。
その後、犯人達は捕まったが、全員未成年ということもあり主犯格でさえレベル4の執行だけで解放されたのだった。
「史上まれにみる凶悪事件だったっす」
「当時の執行レベルは今より甘かったって話どすな」
「皆、自分達は未成年だから死刑はないってふざけてたみたいです」
「なにはともあれ、あの時の犯人達は、生きたまま再び世に放たれたんだよ」
そう、人を人とも思わない凶悪な犯人達が。
そして、現在。
この犯人グループの一人がまた犯罪を犯した。
今度も殺人。ある者と口論になったあげく、刃物で首、胸を数回刺して殺害。
「三つ子の魂百までっす。屑はどこまで行っても屑っすよ」
「埋められた種が、本来咲くはずの花以外は咲かへんのと一緒どすな~」
「もし、あの時、この犯人が死刑になってれば、この被害者は死ななくて良かったのに」
「・・・・・・さて、この事件はこの時代で起きたもの。それを裁くのもまた、今の時代に存在する僕達だ」
四人はすっと立ち上がる。
休憩はお終い。
ここからはお仕事の時間。
「通して」
職員に声をかける。
運ばれてきたのは、五十近い男。
結局、この男の担当は僕になった。
殺菜ちゃんがとてもやりたがっていたけどね。
それだけでこの男は運がいいかもしれない。
でも、決して僕の方が甘いってわけじゃないよ。
「う・・・・・・うう」
男はとても怯えていた。
目隠し、口も塞がれ、職員によりその体は宙に吊されていた。
「・・・・・・記憶が蘇ったかい? ここの臭い、ここの空気、ここの雰囲気。お前は一度これを経験しているはずだ」
なのに、なぜ、またここへ。
そんな愚問は聞いたりしない。
こいつは、こいつのままだったから今ここにいるのだ。
「今回のレベルは5。・・・・・・皮肉だね、前回の方が酷い事をしてるというのに、今回の方が罪が重くなった」
今回のこいつを担当するにあたって、以前の事件の記録を見てしまった。
悲鳴が聞こえる。
空を切り裂くようなそんな絶望の声。
なんで、僕が、なんで私がと。
二つの若い命は無残に散らされたのに。
こいつは、今の今までのうのうと生きていた。
「悔しいね。こういう事が起こる度、僕は自分の無力さを知るよ」
鉛を取り出す。
「さぁ、始めよう。これより執行を開始する」
鉛の溶解温度は低い。それを鍋いっぱいに溶かした。
「まずは、肩からかな」
スプーン一杯掬いとり。
それを、男の肩へと流した。
「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんううううんんんんんんんんんっ!!!!」
男の声にならない声が。
「鉛はすぐには冷えないからね、それまでずっと肌を焼き続ける」
一滴、一滴。
男の執行後の生きた年月を刻むように。
「んんんん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
口を塞いだのは正解だったね。
男は苦しみのあまり首を必死に振るばかり。
「そろそろ次の段階に行こうか」
男の目隠しを取り払う。
男の目は、充血して真っ赤に、そして大量の涙を流していた。
「おや、目が真っ赤だね。どうしたのかな? これはいけない。目薬いるかい?」
僕の言葉の意図に、なんとなく男は気付いたのだろう。
伊達に一回ここに来てないね。
片手でそっとスプーンを持ち。
片手で強く、男の目をこじ開けた。
「動くな」
抵抗を試みる男の耳に、ふっと囁く。
世界が暗転するような感覚を。
体の機能が一瞬だけ停止する。
その隙に、僕はスプーンの中の銀色の液体を・・・・・・。
「んんんんんんんんんんんんんんあああああああああああああああああああああああ」
焼ける、灼ける、銀色に染まる。
男の絶叫が塞いでいた布からついに漏れる。
それほどの痛みのようななにか。
「んんなあああああああがあああああああああああああああああああああああ」
構わず、僕はスプーンに新たな液体を補充する。
「目はもう一つあるよ」
また指で男の目を力を込めて見開かれた。
「んあああああああああああああああ、なあああああああああああああ」
悲鳴によく似た苦しみの声。
暴れる男の耳に、僕の声が再び浸透する。
「動くな」
膠着、そして。
鉛色の目薬。
「んんんんなああああああああああああああああああああああああ」
そして絶望の声。
「さぁ、次は耳だ、そして最後に全部口から流し込もう」
囁かれるは死の宣告。
絶叫は聞こえるも。
それは男の者ではなく。
僕の頭を駆け巡るのは。
被害者の悲痛の叫び。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
悲しい、苦しい、助けて、助けて、助けて。
「なあうあがああああああああああああああああああああああああああああああ」
罪人の声はどんどん大きくなるが。
それは、被害者達の思念が容易にかき消す。
「ごめん・・・・・・貴方達の気持ちを全部分かるのは不可能、けれど・・・・・・」
せめて。
「口を開けな」
最後に口を塞いでいた布を取り払い。
熱された鍋の中身を全部。
「その気持ち、ある程度は僕に届いている」
流し込む、口から溢れるほど、ゴボゴボと、中へ中へと。
「うがごぼおぼっっっっっっっっ」
それはただの思い込みかもしれない。
僕の勝手な想像なのかも。
「それでも、僕には聞こえるんだよ」
男の顔が半分、銀に光り出す。
顔を上げたまま、絶命した男から離れる。
「被害者の悲痛、それは全部は分かりきれない、でも」
まるで蝋人形のようになった男の顔を、振り返って見つめる。
「お前達のような犯罪者の気持ちよりはよっぽど分かるよ」
なぜ、こんな事ができるのだろう。
平然と人を傷つけ、平然と人を苦しめる。
「ま、分かりたくもないけどね」
吐き捨てように、そんな事を口にした。




