おや、キャンプといえば惨劇です。
こんにちは、蓮華です。
今、私達、昆虫採集部は、キャンプに来ております。
正直あまり乗り気では無かったのですが、たまには外の空気も吸った方がいいと思いましてね、渋々三人で来る事に。
私と白頭巾は結構な荷物を持参してきたというのに・・・・・・。
「え、円お姉ちゃん、なんで手ぶらなの!?」
白頭巾が驚くのも無理もありません。
私達はシュラフ、チェアなどの他に、料理のためのグリルやらなんやら色々持って来たというに、円さんだけは何も無しです。
「は? 逆になんでそんなに色々持って来てるの、だ。普通は全部現地調達だ」
ん、円さんがなにを言ってるかよくわかりませんね。
どこが普通なのでしょうか。
「私は、もっと森の奥に行くのだ、白頭巾は、どうする?」
ここで、円さんが白頭巾に問いかけます。
この時、白頭巾の脳では天秤が現れた事でしょう。
高級な食材、最高級品で揃えたキャンプ用品、もはやグランピングに近い蓮華サイド。
食材、寝床、全部現地調達、夜は寒い、暗い、何が起こるか分からない、円サイド。
天秤は一瞬で傾きます。
「う~ん、これは蓮華お姉ちゃんっ」
まぁ、妥当ですね。
「そうか、なら、私は森の奥でソロキャンする、のだ」
「一応言っておくけど、円お姉ちゃんのはソロキャンじゃなくて、ソロサバイバルだからね」
こうして私達は別れました。
少しシーズンには早いとはいえ、ここには他にも人がおりました。
仲の良さそうな男女のグループ。6人程でしょうか。
最初に少しだけ挨拶をしました。
どでかいテント、中はふかふかの絨毯、ソファとかもあってもはやコテージのようです。
設置はスタッフに全部やってもらいました。
Wi-Fiもあるので、いたせりつくせりですね。
「いや~、こういうのもいいですねぇ」
「うん、最高ー」
心地よい風が抜け、私と白頭巾はローチェアにゆったりと座りながら目を瞑ります。
大自然を感じ、心なしか精神が洗われるようです。
「もう少ししたら夕食の準備をしましょうか、高級な肉を用意してます」
「わ~い、お肉ー」
辺りも薄暗くなり、私達は食事の用意に入ります。
道具は全て揃っていますので、簡単です。
ここら辺は金に物を言わせております。燃料もガスなのでグリルも楽です。
「さぁ、最高級A5等級シャトーブリアンですよぉ!」
「いえ~いっ」
レアでいただきましょう。
切れ目を入れると血の滴る肉汁があふれ出ます。
「円さんは、なに食べてるんでしょうねー」
「・・・・・・多分、蛇とかだよ」
一方、その頃の円は。
「蛇、うめぇーの、だ」
蛇を食っていた。
夜はどんどん更けていきます。
私達は明るい室内でボードゲームをしたり、星を眺めてたりしていたのですが。
「そろそろ、寝ますかー」
「そうだねー」
そんな時です。
こちらに近づいてくる気配。
「あ、あのっ! すいませんっ!」
ん、誰かが私達のテントに来ましたね。
「どうしました?」
慌ててこちらに来たのは、近くでキャンプをしていたグループの女の方ですね。
「あ、あの、大変なんですっ! 実は友達が2人、森の先に行った後、帰ってこなくて・・・・・・」
それは心配ですね。時刻は0時過ぎ。周囲はもう真っ暗です。
「その二人というのは?」
「えっと、私達の友達で、二人は付き合ってまして、星を見に行くって、いちゃいちゃいながらすぐ戻ると・・・・・・」
なるほど、いちゃいちゃカップルでしかもすぐ戻るって言ったんですね。
これは、中々の死亡フラグです。
「電話してみたんですか?」
「それが・・・・・・私達のスマホが無くなっていて連絡出来ないんです」
それは妙ですね。普通は肌身離さず持ち歩くものですが。
「折角の大自然でのキャンプ。スマホを弄るのは気分を壊すからって、最初にみんな一つに纏めてリュックに入れていたんですが、そのリュックごと無くなってしまって・・・・・・」
ふむ、それは誰かが持ち去ったという事でしょう。
ここには私達とそちらのグループしかいません。勿論私達ではないですから、犯人はそちらの誰かか、それとも他の得体の知らない者が潜んでいるかです。
「自分の番号はわかりますか? 私のでかけてみましょう」
もしかして近くで音がなるかもです。私はそう提案しましたが、生憎誰も番号は曖昧のようで。
「仕方ありません、この時間だとスタッフにも連絡はつかないでしょう。なので、私達も探す事にしましょう」
これから寝ようと思っていた所に、思わぬ事態が起こってしまいました。
こうして、私達は、夜の森に入っていきました。
あちらの残り四人のメンバーも二人組になって、3方向から探します。
ランタン片手に気を張りながら進んでいきます。
夜の森は、不気味で、今にも何かが起こりそうな雰囲気でした。
「蓮華お姉ちゃん、どう思う?」
後ろを警戒する白頭巾が呟きます。
「・・・・・・まだ、分かりませんけど、リュックが無くなっていたのが気になりますね。単純に二人はもっと奥でただただ情事にふけっているだけというならいいのですが・・・・・・」
そんな考えも、間違いだと、すぐに気付かされます。
地面を照らしていた明かりが、あるものを目にさせました。
「・・・・・・これは、血ですか」
土、枝、落ち葉、それらを染める赤い液体。
「お姉ちゃん・・・・・・」
緊張が一気に。
森は相変わらず、シンと静まりかえっていて。
血を目印に辿っていくと。
「・・・・・・・・・参りましたねぇ」
「あ~あ」
終着点、そこで私達が見たものは。
鉈が頭の途中まで突き刺さったままの女の死体でした。
女性は大きな木に背中を預け、両足を広げたまま座り込むように息絶えておりました。
その見開いた目をランタンで照らします。
「他にも傷がありますね」
「うん、首、胸、周辺に傷が多数」
この時点で可能性の一つが消えます。
「先ほどいたメンバーじゃないので、この人は消えたカップルの一人」
「じゃあ、男の死体も近くに・・・・・・」
日中なら僅かな痕跡も見つけられそうですが、今はこのランタンの光だけが頼り。
周囲を探ろうと、光を別の方向に向けた瞬間。
静寂の森が。
「きゃあああああああああああああああああああああああああ」
悲鳴に包まれました。
「白頭巾、あっちですっ!」
「うんっ!」
私達はすぐ声の聞こえた方へと。
とにかく視界、そして足場が悪い。
急行した時にはすでに遅かったのです。
「く、またですか」
「今度は男の人」
これもさっきの死体と手口が似てます。
背中を刺された後に、胸周辺を滅多刺し。
この人はもう一人の女の子と行動していたはずです。
その子はどこに。
先ほどの悲鳴は女のもの。
てことは、これをやった犯人に遭遇した可能性が高い。
男の方がやられて逃げたのでしょうか。
地面に複数の足跡が。
比較的小さいものが奥へと続いております。
歩幅からして走ってますね。
「白頭巾、追いますよ」
「うん」
普通なら立て続きに惨殺死体を見れば、逃げるか戻るかするでしょう。
ですが私達は違います。
この犯人が例え化け物だとしても・・・・・・。
「白頭巾、一応、いつでも応戦できるように」
「わかった」
私は銃を、白頭巾はナイフを取り出して。
さらに森の奥へと。
しばらく先に進んでいくと。
「きゃぁああああああああああああああああああああああ」
再び、森を振るわすような大きな悲鳴。
「あっちから聞こえましたっ」
「行こうっ、お姉ちゃんっ!」
声の方向へ向かった私達。
しかし、またも後手に回りました。
「くそ、また間に合わなかった」
「倒れた所を馬乗りで滅多刺し」
生存を確認するまでもないほど、夥しい血。
途中で転んだのでしょう。背中を中心に刺し傷が集中しておりました。
これは先ほどの男性と共にいた子です。
なので、逃げてる最中に捕まったのでしょう。
でも、そうなるとこの死体にはおかしい部分があります。
声とは別に、途中見つけた足跡も手がかりに追ってきたのですが。
死体の頭がこちらを向いています。これでは逆です。
私が死体をまじまじ確認していると。
「っ! 白頭巾、あそこっ!」
「っ!?」
気配を察して光をそちらに向けた時、木の陰から一瞬、人影が見えました。
「あ、待ちなさいっ!」
「お姉ちゃん、追おうっ!」
人影はすぐに消えました。
これがホラー映画なら、私達は逃げる側。
でも、私は深緑深層のマーダーマーダー。
そう、追い詰めるのは私の方。
人影を追って、どんどんどんどん奥へと。
その途中で。
また死体が。今度は男、これまた上半身を滅多刺しです。
「白頭巾、そのまま追って下さいっ」
「うんっ!」
これで死体は4体。
いくらなんでもおかしい。
私達が追いかけてるにも関わらず、こうも殺し続けられるでしょうか。
あり得るとすれば、犯人が円さんだった時でしょうか。彼女なら私達を撒きながら殺し続けるのも容易いでしょう。ですが、この無数の刺し傷は殺しに慣れてない臆病者がする手口。もし円さんなら一撃で仕留めオーバーキルはしません。
「てことは・・・・・・」
ここで、私のスマホに着信が。
「お姉ちゃん、どうも、途中で反転してるね。これ以上行くと私も迷っちゃうよ」
「テントの位置は登録しておきましたので、迷ったらGPSを頼って戻ってきてください」
登山でもですが、GPSがあれば迷っても遭難する可能性はぐんと下がります。一応バッテリーの事を考え機内モードにしておくといいかもですね。これはよく誤解されがちですが、GPSは電波が通じない場所でも使えます。今は精度も高いですし、事前にアプリなどをいれておくといいかもしれません。
他にもなにか危険な事に巻き込まれた場合、スマホで警察などに連絡すると、その時点で位置情報が送信されますので、すぐに電話した方がいいでしょう。
ここから奥に行こうか、戻ろうか、そう考えていた時、
再び、私に連絡が。
「蓮華お姉ちゃん、戻ってる途中で、あっちの人に会ったの。このまま戻るね」
「会ったのは一人ですか? そうですか・・・・・・わかりました、そのまま戻ってきて下さい。くれぐれも気をつけるように」
なるほど、これで大体分かりました。
私は戻らず、スマホで位置を、そして別の情報を確認します。
ここの設備を使っていたなら逆に利用できる。
その時、背後から気配が。
すぐに振り向きます。
「誰です?」
「あ、私ですっ!」
ん、最初に私達の所に知らせにきた子ですね。
私は慌てて構えていた銃を隠します。もう少しで見られるところでした。
「お、無事でしたか。今まで一人でどこに?」
「え、えっと、途中、良子の悲鳴が聞こえて、でもどこからだか分からなくて、鎌治と別れて良子を探してました」
「はー、そうでしたか。私も連れとはぐれましてね、今、合流しようとしていたところでした」
私はこの女性を引き連れ、白頭巾の元へと。
位置は先ほどから捕捉しております。
しばらくして、森の中。
この季節、早めに朝日が昇り始め、うっすらと辺りが明るくなってきました。
探しに森に入った時からすでに三時間ほど経ってます。
ここで私達は漸くもう片方と合流を果たしました。
「鎌治っ!」
「恵子っ!」
二人は顔を見るなり駆け寄り抱き合います。
私達は四体の死体を見ました。
なので、このグループの生き残りはあの二人だけです。
私はまるで独り言のように呟きます。
「ホラー映画などでの犯人はよく瞬間移動しますよね。逃げてるのに、いきなり前に現れたり。今回も一緒です。私達が追っていたのに、間隔がないように死体が見つかる」
これが現実に起こった場合、考えられるのは一つです。
森に潜むモンスターなどはいるはずもありませんので・・・・・・。
「私達は森で複数の死体を見ました。これを一人でやるのは不可能。従って犯人は最低でも二人以上」
ここで、私はあちらの男女を見据えます。
「悲鳴を聞いて、二手に分かれた? 普通ならこんな夜の森、その状況で絶対一人になりませんよ。じゃあ、どうしてか、考えられるのは一つです」
見据える瞳は細く。
「お前らが犯人だって事だ」
一方その頃円は。
熊と遭遇していた。
「うおー、熊なの、だ」
暗い森の中、熊さんと出会ったのだ。
夜中、小腹が空いたので、なにか探しに行っていた最中。
熊に出くわした場合、やってはいけない事。
まずは、死んだふり、これは論外。
そして、大声を上げたり、背中を見せて一気に逃げようとする事。
ならどう対処するか。大声を出して威嚇するのもいいが、相手を刺激してしまう可能性もある。まずは熊を宥めるように静かに声をかけ、目を離さないように、ゆっくり後ろに下がるべき。
だけど、今の私は。
「このまま、戦ってみたい気もするが・・・・・・」
姉御が動物は大小関わらず自分達より下のカテゴリーだからむやみに傷つけちゃ駄目って言ってたの、だ。
ここに入ったのは私の都合。いくら相手がこっちを襲おうとしていたとしても攻撃するのは筋違い。
なので、もう一つの楽しみをするの、だ。
「さぁ、追いかけっこなのだ、捕まえてみろ、私は簡単にはいかない、のだっ!」
あえて、大声で挑発、背中を見せて一気に駆け出した。
ようやく日が昇り始めてきたとはいえ、まだ周囲は薄暗い。
だが、それはあちらも同じ。
来てる。
背中にビリビリと感じる。
熊が本気で走れば時速50キロにもなる。これは普通なら逃げ切るのは非常に困難。
「うくく、これだ、これなのだ、久しく感じられなかった、纏わり付く死の感覚っ」
ジグザクと、全力で走る。
木々をうまく避けながら、途中、蹴り上げ、急角度で方向転換。
熊を翻弄しながら森を下っていく。
「ほら、追いつけっ、引き裂いてみろ、私の体はどこも柔らかいぞっ」
もし一撃でも受ければ致命傷は必至。
首ならへし折れるか吹き飛ぶ、腹なら内臓が飛び散り、腕ならもぎれる。
円が熊と命がけの鬼ごっこをしている頃。
蓮華の方では。
「は? なに言ってるんです? 私達が犯人?」
「そうだ、いい加減にしろ、なんで俺達が4人を殺さなきゃならないんだっ!」
2人はシラを切りますが。
「私、死体は複数とはいいましたが、4人とは言ってませんよ、なんで知ってるんでしょうねぇ」
他にもあるんですよ。貴方達が犯人と示す証拠が。
最初に一瞬見ただけでしたが、貴方達の服装も微妙に変わってますし、最初に無いと言っていた携帯を所持してるのも分かってます。ここのWi‐Fiに繋いだのがまずかったですね。
私が自信たっぷりな態度を見せていると、男の方が動きました。
「・・・・・・もういいこいつらも殺っちまおう」
「・・・・・・そうね、私達だけ生き残ったら怪しまれると思って巻き込んだんだけど・・・・・・」
男女ともにナイフを取り出しました。
でも、私達の反応は変わりません。
「はぁ、貴方達、分かってませんねぇ。見て下さい、夜の森で四体もの死体を見たってのに、私達、怯えてますか? 震えてますか? そうじゃないでしょう」
狂気を持った人間は何をするか分かりませんから、冷静に対処しなくてはなりません。
「貴方達、いい加減気付いた方がいいですよ、追いかけ追い詰めたのは私達の方です」
白頭巾も二本のナイフを取り出し臨戦態勢。
相手は素人とはいえ刃物を持っています。
これは普通なら逃げるべきです。決して素手で立ち向かったりしてはいけません。
ガチャプレイと一緒で行動も読みづらいですし、なにより変な脳内物質が出ているので中々怯まないかもしれません。
じゃあ、立ち向かっていい場合は。
こちらが刃物の扱いに長け、殺し慣れてる場合か。
私のように・・・・・・銃を持ってる場合です。
素早く取り出したシグちゃんで、男の足を撃ち抜きます。
白頭巾の投げたナイフが女の両太股に深く突き刺さりました。
「あぎゃあ」「ひゃああぁあ」
すぐに行動不能に陥った2人。
「な、なんで、そんなものを・・・・・・」
「い、痛い、あああ、いた、いぃぃ」
二人とも機動力を失いましたね。
どれ、まずは武器を取り上げて・・・・・・。
私が二人に銃を構えながら近づいた、その時。
ガサガサガサと木が大きな音を立てました。
「うおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおっ!」
あれ、今、凄いスピードで通り過ぎていったのは円さんですね。
それでも木々の擦れる音は止まりません。
円さんのすぐ後に、その場に現れたのは。
「く、熊ーーーーーーっ!」
そりゃ、いくら私でもびっくりしますよ。
目の前に、いきなり大きな熊が出てきたんですから。
でも、すぐに冷静さを取り戻します。
「白頭巾、ゆっくり下がりましょう」
幸い、熊の方も数人の人間に遭遇して驚いているようです。
「あああああ、熊ぁああああ」「きゃああああああああああ」
熊の注意が大声を出してくれてる男女に移りました。
私達はそれを期に静かにその場を離れます。
熊が動けない男女の元へ。
そして。
「ぎゃああああああああああああああ、た、たすけて」
「いやぁあああああああああああああああ」
あぁ、助けようにも無理です。
銃で撃てばどうにかできるかもですが、そちらのテリトリーに入ったのは私達の落ち度ですし、下手に攻撃してこちらに襲いかかられても困ります。
「ごめんなさい、このまま生きたまま食べられるかもですが、私達にはどうしようもありません。私達が逃げるまで時間稼ぎのほうよろしくお願いしますね」
さぁ、戻りましょう。
あの二人がなんであんな惨劇を起こしたのか少々興味はありますが。
どうせサークル内の色恋沙汰が原因でしょう。
円さんも帰ってきたようなので、ちょっと早いですが、朝食の準備を始めましょうか。
どうも、私達が何かしようとするといつもこんな事が起きてしまいます。
たまにはちゃんとイベントを楽しみたいものですねぇ。
書きたかったのとなんか違う。




