なんや、また屑が湧いたんか。
スイッチのオンオフで多少変わります。
こんにちは。うちは柘榴いいます。
現在13人いる特級拷問士の一人どす。
尊敬する先輩達に早う追いつきたく努力は日々おこたりまへん。
ふんわり崩し捻れを入れた髪は耳下で二つに纏めて。
頭の上にはキツネ様のお面。
服は、オリジナルの学生服。
ブレザーのポケットに手をつっこみ通路をずんずん進んで行く。
うちの部屋はすぐそこ。
途中、前から来る人が目に入る。
それに気付いたうちは、すぐさまポケットから手を出し、背筋をピンと伸ばした。
「お疲れ様どす、リョナ子はんっ」
「お、柘榴ちゃん、お疲れー」
銀髪、眼鏡、黒い白衣。
特級の中でも最上位のリョナ子はん。
うちの姉さんと肩を並べる天才拷問士。
もう、尊敬してやまへんっ。
「最近頑張ってるみたいだねー」
「とんでもないー、うちなんかまだまだで~」
二言三言話してリョナ子はんと別れた。
これから仕事やろうか、その後ろ姿から真っ黒いオーラが沸き立っている。
あれが目に見えるように錯覚するのは特級の中でも一握り。
「さて、うちも張り切っていきましょか」
やる気をもろうて、うちもやる気まんまん。
仕事場に入り、早速書類を確認する。
「今日の罪人は~」
執行レベル4。対象、19歳男性。
罪状、未成年者誘拐、強制わいせつ。
男は、当時小学3年生の女児の前でわざと財布を落とし、財布を拾って追いかけてきた女児に「クレジットカード取ったでしょう、ポケットを確認する」などと言って自室に連れ込みわいせつな行為をした。女児が途中で泣き出したため、途中で解放したと。
読み終えて。
「・・・・・・なんやこれ、とんでもない屑野郎やんか」
人の善意を踏み躙る、卑怯なゲス人間。
小さく息を吐き。張り裂けそうな感情を無理矢理押し込める。
「連れてきてくれやす~」
職員に連絡し。
頭の上の仮面を降ろした。
「罪人入りますっ!」
職員が拘束された男を部屋に入れた。
「おおきに~」
扉が閉まり、この部屋にはうちとこの男だけ。
男は、椅子に座らされ、手首、足首を固定。
仮面越しから、男と目を合わせた。
ここでうちのスイッチが切り替わる。
「お~、ワレ、よー来たの~。うちが今回、担当する柘榴や」
「あ、は、はい、あ、あの、す、すいません、な、何卒、お手柔らかに、お、おね・・・・・・」
細身の男は震えながらもあほみたいな事を口にした。
言うに事を欠いて、手加減してくださいやて。
その一言、一気にうちの沸点まで上がりきる。
「あぁあああああああ? ワレ、今、なにいうた? あ? 調子に乗るんもいい加減にせいやぁああっ!」
「ひっひっ! ご、ごめん、なさっいっ!」
うちはそのまま、男の一差し指を握りしめる。
「謝って済むなら、うちらはいらんねんっ!」
そういい力いっぱい折り曲げる。
「ひぎゃああああああああああああああああああああああああああ」
男の指はすぐさま、腫れ上がりどす黒い色に変化する。
「ワレのような悪意の塊がおるから、落とし物を届ける、こんな善意すら出来なくなる世の中になるんじゃっ、ボケェぇえ!」
反対の指も握り、逆へと。
「あへあがあああああああああああああああああああああああ」
あぁ、耳元でギャンギャン五月蝿いんじゃ。
「このまま、腹かっさばいて、腸引きだし、それで首締めてやろか、なぁ? ええ考えやろ? なぁ、おい、なんか言わんかい、おらっ!」
髪を掴み、上下に激しく揺さぶる。
そうは、言ったが、こいつのレベルは4。
悔しいが執行が終われば、また野に放たなければならへん。
こういう変態的な奴の再犯率は高い。
「ほな、あれや・・・・・・烙印押そか?」
うちは棚からある物を取り出す。
それのコードをコンセントにいれると、スイッチを押した。
先端に取り付けたディスクが高速回転。
「これ、グラインダーいうてな。本来金属加工の研磨や切断とかするんや」
でも、今は用途がちゃう。
「指なんか簡単にいくで、烙印前にやってみよか?」
男は涙を流しながらブンブンと首を振る。
「なら、目いこか」
けたたましい音、回転による風圧。
うちは片手で男の目を無理矢理開けると、そこに刃を近づけていく。
「あああやああ、やあめえええ、やめえて、やめえええ」
力いっぱい顔を押さえて、どんどん刃が見開かれた目に。
「どうや、怖いか? あ? 女の子はこれより恐ろしかったで、知らない人に知らない場所に連れていかれて・・・・・・」
後、数ミリ。これ以上進めば、男の眼球はぱっくり割れる。
「ひああああああああああああ、やああめえええててくだだだ」
男の懇願。
うちの手はギリギリで止まった。
「なんてな、これやったらそこで終わりや、だからやらへんよ」
うちの声に、男は心底安堵したようで。
「烙印押せなくなるやん?」
「はぁ、はぁああ・・・・・・え?」
再び、スイッチ、風を切る回転。
うちは、それを男の顔、右上からゆっくり斜めに押しつけていく。
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああ」
斜めに切り開かれる肌。
同時に血が派手に飛び散る。
「おらああああああ、動くなやああああああああ」
こいつはバツや。×で罰、うひひ。
「いだあぁああああああああああああああああああああああああああああ」
眉間から鼻上を通り、頬を切り裂く。
それが終わると同じようにまた逆から。
「びびゃあああああああああああああああああああああああああ」
顔に×をつける。
これが烙印。これが証明。
「おい、ワレ、もしまたここに来たらあれやで、今度はうちの姉さんに回すからの」
うちの姉さんはやばいでぇ。うちの一〇〇倍怖い。
なんせ、リョナ子はんと並んで拷問士のトップ張ってるお人や。
「って、なんや、気失っとるんか」
男は頭を垂らして、ピクリとも動かなかった。
ただ、その顔からはポタポタと赤い鮮血が床に落ちる。
細い針金を新たに摘まんで。
「ほな、起こそか。どこの神経刺激すればええかのー」
男はすぐ飛び起きる事になるやろ。それまでの数秒ゆっくり休んでや。
仕事を終えて、外に出る。
執行は終えたが、まだ胸くそが悪い。
あいつにはもっと罰を与えたかった。
あー、イライラするんじゃぁ。
不機嫌ぎみに廊下を歩いていると、今度はまた別の人と鉢合わせる。
「おー、柘榴じゃないっすか」
長い前髪が顔半分を多い、うちと同じくオリジナルの学生服を身に纏うお方。
「あっ! 殺菜姉さんっ!」
モヤモヤしていた心が一気に吹き飛ぶ。
殺菜姉さん。うちの直属先輩。
あの人の執行を見て、うちはここまで来たんどす。
ダッシュして姉さんの胸に飛び込む。
「あぁ、姉さん、うちが特級になってからというものあまり会えなくて、本当寂しいどす」
「こらこら、もう柘榴は特級になっても甘えん坊っすね」
頭を優しく撫でてくれる。
殺菜姉さんは、いつもうちを温かく包んでくれる。
その度、心の闇は振り払われる。
「姉さん、うち、今日も頑張ったんどす、褒めてくれやす~」
「そうっすか、よしよし、柘榴はいつもよくやってるっす」
罪人には阿修羅のように怖い人だけど、うちにはめっちゃ優しいんやー。
うちはこれでもかと腰に回した腕に力を込める。
「姉さん、姉さんっ!」
「うんうん・・・・・・ちょっと痛いっす、柘榴、ちょっと・・・・・・」
「姉さん、姉さんっ!」
「ちょっ、痛っ! 痛いっ! 折れるっ! 柘榴っ! 痛いっ!」
「姉さん、姉さんっ!」
「ざ、柘榴、やめっ! やめろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、こらぁああああああああああああああああああ」
こうして、たまに調子に乗って怒られるけど。
うちはいつかこの先輩に追いつきたい思てます。




